---アラン・スティアート---
「おい!お前が何かしたんじゃないのか?」
俺の双子であり兄である第三王子のジオルドに詰め寄った。コイツが花嫁修業の為という口実で、軟禁していたカタリナ。その軟禁していた彼女が警戒厳重は場内から消えてしまったのだ。
「私も彼女の行方を知りたい」
優男顔のジオルドには珍しく、眉間には皺が生じ、難しい顔をしていた。
事態はそれだけでは無かった。俺の婚約者のメアリ、この国の宰相の子供であるアスカルト兄妹、光の魔力持ちであるマリア・キャンベル親子が、次々に行方をくらましていた。この国の将来を担う人材だったのだが…全員行方知れず、生死不明の状況である。
「お前じゃなければ、長兄、次兄達の勢力か?」
俺達は4人兄弟であり、兄弟仲はそれほど悪くは無いのだが、側近達が王位争いを水面下で行っているらしい。俺とジオルドを王位争いから脱落させる為に、その一端が暴走したのかもしれない。
「分からない」
ジオルドの顔は憔悴しているように見える。現在もカタリナの行方を配下の者に追わせているそうだ。
「マリアだけでなく、彼女の母親も消えたことが解せない」
母親は能力持ちでは無かった上、平民である。
「カタリナが生きていて、彼らを迎えに来たという妄想が、一番しっくり来るんだよ」
そうなんだが…
「その場合、なんでニコルなんだ?キースで無くて…」
カタリナが迎えに来たとすると義弟のキースだろう。いや、ニコルは妹のオマケか?マリアのオマケが母親なら
ば。そうなると、なんでメアリのオマケで俺が迎えられていないんだ?
わからん…
---ケン---
奥の部屋に着くと、ソファに座った俺の膝にネコ耳少女が載り、俺に身体を預けてきた。モフモフを堪能するかぁ~。しばらくの間、モフモフ堪能三昧をしていると部屋の奥にある扉からヤーシスが出てきた。
「これはこれは。仲睦まじいようですねお客様。それで夜分にいかがいたしました?」
表情は笑顔であるが目が笑っていないヤーシス。
「資金が出来た。この子と、他に有能な女性がいれば手に入れたい。値段の交渉を始めようぜ」
内心、国家予算並に吹っかけられたらと、ちょっとビクビクしている。俺、商人が本業で無いからな。駆け引きに弱いかも。
「その子は従属奴隷で1000万ノールです」
想定より安い。即金をアイテムボックスから取り出し、ヤーシスの前に置いた。
「迷わずに即金ですか?」
「他に有能な商品は居るのか?」
ヤーシスの問いはスルーをする。コイツのペースに嵌まると危険だからな。それに、この位の価格帯なら、どんと来いだ。
「特殊奴隷なのですが、良いですか?」
ヤーシスは即答してきた。既に俺の行動を予測していたようだ。えぇっと…特殊奴隷とは訳ありの身分の者で、奴隷の方に主を選ぶ権利があるんだっけ?
「価格は1億2000万です」
ヤーシスのプライス宣言と共に、奥の扉から出てきた女性。見た目は問題は無い。ただただデカイ。その一言である。この男が有能っていうのな
ら有能なのだろう。まさか栄養が胸だけに行っている訳では無いよな?ヤーシスの目の前に、イテムボックスから取り出した1億2000万を置いた。
「後、これはサービスだ」
ついでに、売れ残った最上級ポーションを1本置いた。
「なるほど、あなた様はわかってらっしゃいますね」
先ほどは笑わなかった目も含めて、目の前にいるヤーシスが笑っている。
「奴隷の首輪以外の隷属方法に出来るかな?彼女達の仕事場所は奴隷が禁止なんだよ」
アイリスの国は奴隷の売買は禁止である。ただ、抜け道で他国での買い物はオーケーらしい。
「追加料金になりますが、お土産のお返しでサービスします。身体の一部に奴隷紋を刻みます。普段は見えませんが、主に逆らうと光を放って、現れます」
「それで頼む」
俺は彼女達のデルタ地帯に奴隷紋を刻んでもらい、ウェンディ・ティアクラウンという訳ありの特殊奴隷と、シロというネコ耳少女の奴隷を手に入れた。家名持ちの奴隷…確かに訳ありのようだ。家名からすると、どこかの王族か?
「またのご来店をお待ちしています」
ヤーシスの見送りを受けて、買い上げた二人と共に、家へと転移した。
---ウェンディ・ティアクラウン---
初めて見たかもしれない。あのヤーシス相手に,無表情で買い物するお客様を。私を買うに当たり、何の躊躇もせずに言われた金額をヤーシスの前に置いていた。初めて会ったのに…ヤーシスの言葉を信じて、私を買い上げたご主人様。ヤーシスの見込んだ男性である。この方に買われないと、将来が不安になるかもしれない。ご主人様に買われることを了承した。
ご主人様の住んでいる場所は、この国では無いらしい。奴隷制度の無い国?どこだろう。この辺りの国では無いのだろうな。旅の間に気に入って貰えるかなっと思っていたのだが、ご主人様は無属性魔法の使い手で、一瞬で違う場所に転移していた。
目の前に大きなお屋敷がある。門番に何かを告げると、門が開いた。この規模のお屋敷だと公爵家だろうか?伯爵家だろうか?
「おかえりなさい」
屋敷の奥から走り寄ってきた女性。ご主人様に抱きつき、臭いを嗅いでいる。特殊性癖持ちなのだろうか?
「おかえりなさい。彼女達をお買いになられたのですね」
時間差でもう一人女性が現れた。所作は貴族…着ている衣服は二人に大差は無い。姉妹なのかしら?
「あぁ。こっちのネコ耳少女は有能な護衛らしい。二人を連れ歩けない場合、彼女を連れ歩こうと思う。どうだろうか?で、こっちの女性はメイド兼アイリス達のサポート要員だ」
サポート要員?まさか、あの二人の影武者?
「そうね。じゃ、ケンの側仕えと護衛にしましょうか。ケンの留守中はメイドと執務の手伝いをしてもらおうかな」
と、後から出てきた女性。彼女がこの館の主なのかしら?
「この家の護衛は?」
「問題は無いはないわ。欲を言えば、女性の護衛は欲しいわね。女性しか入れない場所の護衛としてね」
「後、あなた。夜のお供は必要無いから、部屋を用意しますね」
夜のお供は必要無い?なんで?私はご主人様の奴隷なんですよ。
「旅先ではお願いするかもしれないわ。私達は国外には出られないから」
「そうだね~。まぁ、その時は頼みます」
国外に出られない?この二人は、国の重鎮なのかしら?