---ツバサ---
退院したアルファには『クマ&エルフ』の売り子を頼み、今日はケーナとケーナの子供達に会いに向かった。マイルとセイが興味津々で着いてきた。
「里子システムかぁ~。子育てはしっかりしましたか?」
セイがケーナに訊いたのだが、ケーナは吹けない口笛を吹いていた。
「コイツ、放任主義で、三人とも母親の愛情に飢えたマザコンだよ」
「それは言わないでくださいよ~。子育て経験がなかったから…」
「全員、エルフなんですか?」
「上二人はエルフだけど…末子はドワーフよ」
「エルフは優秀な種族で面白みが無いっていって、ドワーフにしたよな?手先が器用な子で、ケーナと工作をよくしていたような」
ケーナの伯父に頼まれ、暇が出来ると、ケーナの様子を見に行ったり、手助けをしに行ったりしたっけ…
「先生のいじわるぅ~」
少し拗ね気味のケーナ。その末っ子が働く造船所に向かった。上二人は、アポが無いと会えない名士であったから。
「いたいた!お~い、カータツ!」
俺の声で振り返るドワーフの親方。
「あれ?叔父貴…って、お袋か?」
厳ついドワーフの目に涙が…
「カータツも貫禄出たわね」
と、カータツに抱きつき頭をなで始めたケーナ。まるで、子供が親の頭をなでているように見える。微笑ましい様子に笑いを堪える外野が2名。
「お袋は全然成長していないようだな。叔父貴も…」
俺を叔父貴呼びするドワーフの親方。
「今、どこに住んでいるんだ?」
「先生の家よ」
「って、どこだ?」
「俺のねぐらは幾つもあるが、公式な現住所はトキオ共和国だよ」
「聞いたことが無い国だな。新興国か?」
「あぁ、そうだよ。でだ、この国の重鎮と友好条約を結びたいんだが、ケーナの長男と長女でいいのか?」
「一応、王族がいるから、そっちにだな。アニキは相変わらずだし」
ケーナの長男はスカルゴといい、この国フェルスケイロ公国の大司祭を務めている。人格者であるが、超マザコンで、ケーナが妙なスキルを与えた為、感情を乗せてポーズを取るとバックに過剰演出が付与されるので、見た目が結構ウザいキャラである。いや、ケーナに対する言動もだな。
「マイマイに会いたいけど…あぁ、スカルゴは面倒だから、内緒にしてね」
アイツを面倒な痛いヤツにしたのはケーナである。ケーナ本人はゲーム内でのネタとして設定したようだが、現実に存在するとなると、超ウザいな。
「姉さんは学校にいるぞ」
マイマイはケーナの長女で、王立学院の校長であり、魔法を教えている。
「ねぇねぇ、先生、ケーナさんの長男さんって、どんな人ですか?」
マイルに訊かれた。
「マザコンで感情を乗せたポースを取るとエフェクトが付くウザいヤツだ。確かエクストラスキル『薔薇は美しく散る(オスカル)』だったか」
「えっ、アレを着けたの?」
変な汗をかいているセイ。同じ会社で働いていたので、あのスキルのデモ映像をみているはずだ。
「セイ、あのデモ映像のモデルは、ケーナの長男のスカルゴだよ」
「あぁ~、あれね…ゲーム内でも連発されるとウザいのに、現実だと」
「最悪だよ」
一人分からないマイルだけがスカルゴに期待しているようだ。
◇
王立学園に向かった。アポが無いと面会が出来ない。なので、強奪でマイマイを呼び寄せた、
「叔父様ですか?こんな力業で私を呼び出すなんて」
「アポの取り方を知らないし」
ゲーム内ならメッセージを飛ばせば、アポは取れたが、ここではメッセージ機能なんて物は無い。
「先触れは手紙でお願いします。って、まさか…お母様ですか?」
俺に文句を言い終えると、漸くケーナに気づいたマイマイ。
「私のことなんて…」
地面に『の』の字を書いているし。
「お会いしたかったです」
ケーナに抱きつくマイマイ。
「う~ん、いつの間にか私より背が高いし…」
マイマイは順調に成長していたが、ケーナはつい先日、召喚されたばかりである。
「ねぇ、胸が私より大きいよね?」
マイマイの胸を鷲掴みにし、確認をするケーナ。そのシーンを唖然としてみている外野の2名。
「ねぇ、先生。ケーナさんって、内弁慶ですか?肉親に容赦ないですよね」
と、マイル。
「長男のウザさを我慢出来なくなると、雷撃を喰らわせたり、ぶん殴ったりもしていたな」
俺達との暮らしでは大人しいケーナだが、今目の前で繰り広げている親子のヤリトリは普段のケーナからは想像出来ないだろう。
「なぁ、マイマイ、王族を紹介してくれないか。俺の国と友好条約を結んで欲しいんだよ」
親子のヤリトリに一段落つき、俺はマイマイに本題を切り出した。
「叔父様の国です?作ったのですか?」
「まぁ、そんな感じだよ」
「国名は?」
「有名じゃないよ。トキオ共和国って言うんだ」