---ツバサ---
店の空き時間に何をするのも自由だが…目の前にサーベルタイガー、ゴブリンキング、ブラックバイパーの死体がある。クマさんことユナが狩ってきたようだ。
「コレって、売れるかな?」
死体の損傷は少ない
「売れると思うが、この街じゃ無理だな。せめて、王都かギルド本部で無いと金庫に金が無いだろうな」
狩りの腕が上がっているのか
「で、なんで、解体していないんだ?」
「それは…スキルレベルが少なくて…」
「Aランク以上の指定魔物が自動解体できないのか。解体出来るように練習有るのみだな」
「先生、プリン差し上げますから、手伝ってください」
新作か?プリン…美味しい。
「じゃ、ゴブリンキングで練習するか。サーベルタイガーとブラックバイパーは皮が高値で売れるから、損傷の危険があるマニュアル解体は避けた方がいい」
「はい」
ケーナが狩るとこうはならない。一撃必中の魔法をぶっ放し、地形その物を変形させるのだ。当然、魔物はバラバラで売れるのは魔石や牙、角などの硬い部位だけである。考える事より先に魔法をぶっ放す。『銀環の魔女』という二つ名の悪名は、その様な行動から恐れられていた。
◇
領主のクリフから横領犯を捕まえたと連絡あった。だから、なんだ?卵を売ってくれと??
「ユナ、ノアはプリンを買いに来ているか?」
ノアは、領主の娘のノアール・フォシュローゼのことだ。
「えぇ、毎日、チョコを1つとプリンを1つ買いに来ています」
ならいいか。領主の家族に売っている実績はあるので、クリフの訴えはスルーだ。
卵の出荷は順調である。作りすぎても問題はない。余剰分は総てアルメリア公国へ持っていくからだ。現在、チョコ作りは低価格帯から高級路線にも向かっているそうだ。遠距離で来る商人向けのお土産の定番にするには低価格帯では、目玉にならないという。まぁ、チョコはアイリスに丸投げである。
フィナの病気だった母親、ティルミナは全快し、職を探していたので、養鶏場の責任者に雇った。元冒険者で読み書き計算が出来るって、丁度良い人材である。娘のフィナは解体が得意らしいので、兎などの解体を頼んだ。兎のシチューがよく売れるのだ。『クマ&エルフ』の売れ筋はプリン、チョコ、シチューである。ウェイトレスが確保出来れば、喫茶室を営業したい。
◇
マイルの奪還に燃えるブランデル国が周辺国と合同で『女神解放軍』を編成し、アルメリア公国へ向けて進軍しているらしい。その兵力5万ほどらしいのだが、経路上にある小さな国々を占領しながら進軍し、占領した国から金銀財宝、女を奪っていると言う。どこが解放軍なのだろうか。ただ欲望を解放している盗賊に成り下がったと思う。ただ5万もいると大いなる理想の下の統制が効かないのだろうな。。
その軍勢がアルメリア公国まで後1週間くらいの距離まで到達したという。
「どうします?」
アイリスが心配そうに訊いてきた。
「アイツらの経路上には海があるんだが、どうするんだろうね」
金銀財宝を抱えている5万の軍勢。そんなに載せられる船は無いんだが…対岸の港町はエライ騒ぎらしい。領主を倒し、港ににある総ての船を強制徴収しているそうだ。だが、酒と女に飲まれた軍勢が翌朝、目が醒めると、港町から馬車で二日の距離にある砂漠にいたらしい。武器や防具に財布などの他、奪って来た金銀財宝が消えていたそうだ。
「先生、盗んだのですか?」
マイルが妙なことを言う。
「俺は、敵認定した者達に容赦が無いだけだよ」
答えた。
遠征軍は戦う前に撤退戦に転じたそうだ。武器などを持たずに、殆ど手ぶらで撤退する軍勢。占領された国の民から石をぶつけられ、集団でボコられた
り、途方もない災難に遭遇したという。
これで、当分、いや、もう来るな!
軍勢が撤退している最中、俺とマイルとプライド、ケーナで、今回遠征をした国々を巡り、金属をゴッソリと頂いてきた。迷惑料だよ♪
◇
指名依頼が舞い込んだ。それも冒険者ギルド本部と商業ギルド本部の両方からだ。冒険者パーティー『エチゴヤ』には貴族の家族の護衛依頼で、商会である『エチゴヤ』には王都で珍しい物を売ってくれと。依頼主は両方ともクリモニアの街の領主のクリフだぁ。
「パーティーの依頼料はSランクに払うには適正価格である。が、商会には依頼料は無しだ。どうする?」
アイリス、マイルに相談をした。
「商会の方は商いに掛かる税を免除してもらえば?」
とアイリス。アルメリア公国では所謂消費税は無いが、他国では存在している。
「それで交渉してみるか。遠征メンバーは俺とマイル、プライド、セイ、とユナとケーナだ」
冒険者パーティー『エチゴヤ』のフルメンバーで指名依頼を受ける予定だ。今回の遠征の間、『クマ&エルフ』は休業とし、アルファ達は隠密業務を与えるか。アルファは前回と同じように仲間を増やし、隠密集団を構成していた。普段は『クマ&エルフ』で売り子をしている。
「王都に家を買って、拠点にするか」
予算は国家予算並以上あるし。買えない物件は無いだろう。
依頼の当日、クリフの館の前に行くと、
「あっ!クマさんがいるでしゅ、クマさぁぁぁ~ん」
と、クリフの娘がもふっとユナに抱きついた。
「お前が、Sランク冒険者なのか?」
呆れ顔のクリフ。
「ご指名ありがとうございます。冒険者パーティー兼謎の商会『エチゴヤ』見参」
商人らしく揉み手をしながら、クリフに近寄ると、イヤそうに距離をとりやがる。
「娘を王都にある私の屋敷に連れて行って欲しい。後、これを本邸にいる妻エレローラに渡して欲しい」
手紙と大きな箱を手渡して来た。
「箱の中身は王様に献上するゴブリンキングの剣だ。盗むなよ」
「盗まないよ。それを商業ギルドに売ったのは、お前の娘のお気に入りのクマさんだからな」
「なんだって…」
まぁ、見た目強そうに見えないし。客寄せ枠であるし。
「じゃ、行くか」
ノアを連れて、短距離転移で王都を目指した。
◇
夕方には王都に着いた。ノアの案内でフォシュローゼ邸まで練り歩く。勿論買い食いという市場調査をしながら。
「ここなら高級路線でもいけそうですね」
と男装の麗人であるプライド。この姿の方が戦い易いらしい。
「なんだろう?香辛料が弱くて塩味が強いのかな」
食べるの専門の魔女が呟いた。クマさんはノアが手を離さないらしく、先頭を歩いている。
「治安は良さそうね」
と安全チェックをするセイ。安全が一番だよな~
けっこう大きめな門を潜るノアとクマさん。それに続く俺達。突然、何者かが走り寄る気配を感じ、クマさん以外の者が一斉に臨戦態勢に移行した。
「ノ、ア、ちゃん!」
と、叫びながらノアに飛びつく女性。それをクマさんがはたき落とし、首根っこを押さえ制圧した。
「お母様!」
「ノアちゃん、会いたかったわ。って、なんで私が制圧されたのよ~」
ノアの母親らしいので、クマさんが解放したようだ。あれ?ノアの母親ってことはクリフの奥さん?クリフには勿体ない美人じゃ無いか。
「それで、クリフはいないの?」
預かってきた手紙を渡した。
「仕事がまだ終わっていないのかぁ。で、あなた達は誰?」
「指名依頼を受けた冒険者パーティーです。あぁ、この箱も渡しますね」
ゴブリンキングの剣も渡した。面倒事はゴメンである。
「ねぇ、メンバー紹介はしてくれないの?」
「俺がパーティーリーダー兼商人のツバサです。隣に居るのが妻のセイ、そこにいる男装の麗人がプライド、クマがユナで、エルフがケーナ、この子はマイルです」
「えぇ~、冒険者の自己紹介って役割も言うでしょ?」
なんか面倒臭い女だ。
「役割?全員戦闘職ですが…」
「きゃ~」
と叫び、膝から崩れ落ちたクリフの妻。苛ついた誰かが何かをしたようだ。ノアに完了依頼欄にサインを貰い、冒険者ギルドへ逃走だ。