---ツバサ---
朝、エチゴヤエルファニカ王国支店に着くと、表が騒々しい。王城が焼き討ちに遭っているのか、確認すると、エレローラを先頭に騎士団が店を取り囲んでいた。討ち入りか?
エレローラだけを強奪で店の中に入れた。
「強制転移も出来るの…」
エレローラの顔色が悪そうだ。マインドヒールでも掛けておくか。若干、顔色が良くなったようだ。
「で、なんで、騎士団が店を包囲しているんだ?新手の営業妨害か?」
「ちまいます」
あっ、噛んだ。
「どう違うんだ?事と次第によっては、敵認定をするぞ」
「ちょっと待って!ね、落ち着いて話し合おうよ」
落ち着いていないのは、お前だろうが!
「王様が会いたいって…騎士団は過剰に反応しちゃったのよ」
「マイルとプライドは来てくれ。セイ、ユナ、ケーナは一旦、帰ってくれ」
俺とプライドとマイルとエレローラで、王が待っている玉間に転移をした。
◇
「で、何のようだ?」
いきなり目の前にいた玉座に座っているおっさんに声を掛けた。
「いつの間に来たのだ?」
「用件を言え。俺は忙しいんだよ」
「国交を結びたい。お前の国と…」
「メリットは?」
「メリット?」
「メリットも無しに、遠くの国と国交を結ぶ意味が分からない」
「ならば、、欲しい物をやろう。何でも良いぞ」
「じゃ、エレローラをくれ!」
俺の言葉で王様は絶句し、当のエレローラは固まっている。出産経験があり、子育ての経験がある者は必要である。現状コゼットしかいないし。
「何でもくれるんじゃ無いのか?嘘つきヤロー!」
ダメだ、この国は。俺とマイルとプライドだけで店に戻り、店においてある。商材とともに、アルメリア公国へ戻った。そして、冒険者ギルド本部のグランドマスター、商業ギルド本部のグランドマスターにクレームを入れた。因みに、店を買った代金は商業ギルド本部で返還して貰ったよ。
---エレローラ・フォシュローゼ---
彼の護衛陣の圧に負け、彼らが去ると膝から崩れ落ちた。
「エレローラ、大丈夫か?」
王様が助け起こしてくれた。
「この国は敵認定されたのでしょうか?」
身体の震えが止まらない。威圧だろうか?気配だけで本能が逃げろと言っていた。こんなことは初めてである。
「メリットも無しに遠くの国と国交を結び気は無い…と。確かにそうだだな」
王様の表情は悲壮感で満ちていた。一万の魔物をほんの数分で殲滅した彼ら。この国が戦って勝てる相手では無い。
「だが、エレローラは差し出せぬ。他で代用できぬか、冒険者ギルド経由で尋ねてみるか」
彼は私をどうしたいのだろうか?既に正妻がいて、婚約者が二人もいて…まさかのハーレム要員?私は子供二人も産んでいるのよ~。
冒険者ギルドへ向かい、ギルドマスターのサーニャと面会をした。
「そうですか、そんなことが…」
玉間での一件を話した。
「エルフ絡みで彼らの仲間のエルフに話を通して貰えないかな?」
「無理です。相手が悪すぎます。彼女は銀環の魔女。200年前にスキルマスターになり、その後行方が分からなくなっていたのです」
スキルマスター?200年の間に何かがあったのか?
「彼女の長男はフェルスケイロ公国の大司祭、長女は王立学院の校長で、孫は境屋の会頭ですよ」
境屋って、世界に名だたる大商会じゃない。
「子孫が動けば、この国なんって…」
「ギルド本部に問い合わせをしてみましたら、罵詈雑言で怒られました。なんて相手にケンカを売ったんだと」
え?それって、彼のことかな?
「彼は世界で一番安全な国を作った功労者だそうです。それに彼は境屋をしのぐランクを持つエチゴヤの会頭ですって」
エチゴヤ…世界で一番ランクの高い商会である。あの商会の売上に優る商会は無いとも言われている。
「一番のポイントは謎の国家トキオ共和国の国王でもあることです。何しろ、誰もその国の場所が分からないんですから」
「それで国家として認められるの?」
「友好国に教皇領があり、アルメリア公国、魔王国、龍王国、フェルスケイロ公国と名を連ねているんです」
魔王国、龍王国って実在するんだ…
「噂では治癒士ギルドで治せない患者すら治せる能力と技術があるそうです」
あぁ、奥様は聖女ですものね。
「冒険者ギルド本部だけでなく、商業ギルド本部、治癒士ギルド本部、錬金術師ギルド本部からの信頼に厚い人物だそうです。そんな相手にケンカを売るって、どういう了見だって、言われましたよ」
それは大変な目に遭いましたね。って、どうすれば許して貰えるんだ?