---エレローラ・フォシュローゼ---
冒険者ギルドのマスターのサーニャが、私の元に駆け込んできた。そして、私の胸に顔を埋め泣いていた。その身体は小刻みに震え、とても冷たい。
「どうしたの?」
「アイツが盗賊の生首を50個ほど、ギルドに持ち込んだの」
アイツって、アイツだな。生首って…殲滅したのか?
「生首を見て怖かったの?」
声が震えるサーニャをあやすように言った。
「違うの…ギルド内にいた冒険者達全てが灰になって消されたのよ」
灰になって?それって、生きたまま燃やされたのか?
「いつもの新人イジメだったけど、相手が悪かった」
アイツ相手じゃ、ギルド内居座る冒険者程度では勝て無い。
「もう、この国には来ないって…」
それって、完全に敵に認識したのか?
やはり、私が行かないとダメか。家に帰り旅支度をし、元冒険者のサーニャを護衛に付け、アルメリア公国へ旅立った。
---ツバサ---
月に一度、クリモニアの街に行き、代理販売をしてくれている商業ギルドで売り上げを回収して、孤児院の院長先生とティルミナに給金を払う。
「すまんな。この国に住めなくなってな」
「何かしたんですか?」
「何もしていないんだけど、クリフの嫁にケンカを売られて…」
「領主様の奥様にですか?何か、失礼なことをしましたか?」
したかな?
「で、違う国で暮らさないか?」
孤児院の院長からは、亡命の承諾を受けているので、コカトリスの飼育場と孤児院ごとアルメリア公国にお引っ越しが決定である。問題はフィナ親子である。
「ここには想い出が一杯あります。だから、ここから離れたくないです」
「そうか。じゃ、またどこかで…」
その夜クリモニアの街から孤児院と飼育場と洋菓子店が消えた。
---クリフ・フォシュローゼ---
街から孤児院と養鶏場と人気のチョコ販売店が消えた。商業ギルドのマスターにやいのやいの言われた。俺が悪ぃのか?王都から知らせが届くと、今度は王都からエレローラと冒険者ギルドのマスターが消えたと言う。神隠しか?
養鶏場が消えたと言うことは、卵の供給が止まったと言うことだ。卵のある生活に慣れた街の住民達が、領主の館に苦情を言いに押し寄せている。以前、孤児院の件で評判を落としている。今回は孤児院の建物が消えたのだ。領主である私が何かしたのではと疑われているようだ。
「知らないし、何もしていない」
「養鶏業者を引き留めもしなかったのか?」
卵の生産の責任者を呼びだすが、突然の解雇に遭い、困っていると言う。どうしたものか。
商業ギルドのマスターのミレーヌがやってきた。
「エレローラ様から聞いていないのですか?王都での事件のことを」
「何も聞いていないが、妻が何かをやらかしたのか?」
やらかしたらしい。大金をはたいて手に入れた店を騎士団で取り囲み、追い出したらしい。王都の商業ギルドで建物と土地の権利の売買取引は正常に終わり、引き渡した後に、騎士団で脅しを掛けたと、王都の吟遊詩人達が歌っているらしい。で、その相手はエチゴヤだっった。
あぁ、アイツかぁ~。ならば納得である。この国から去ったのだろう。だから、商会の資産を引き上げたってことか。でも建物はどうやって、持っていったのだ?
---ツバサ---
孤児院の運営にコセットを絡ませた。彼女なら上手く熟すだろう。さぁ、今日は砂の除去作業だ。赤い十字マークのある病院を掘り出し、内視鏡などの医療器具が手に入った。発電システムがあれば、アルメリア公国でも使えるのに。森の館エリアに治療院を建設した。近代医療に多少近づけるかな。
ケーナに頼んで、次男坊をアルメリア公国に亡命させた。ドワーフは必要だからな。鍛冶職人に転職して貰い、家庭で使える調理器具を生産してもらう。金属はどこぞの国から強奪してきたので、大量にあるし。
ケーナにはギルド本部依頼のAランク以上の魔物の殲滅を頼んだ。ユナはアイリスの洋菓子事業のサポートを頼んだ。適材適所である。
砂の捨て場所は、あの粘着王族の城に捨てている。マイルに頼むと楽しそうに捨てに行ってくれるし。
マリア・キャンベルは、彼女の母親を生きた状態で発見したら、精神的にも立ち直った。今は二人で暮らし、アイリスと洋菓子作りに励んでくれている。
さて、次の一手はどうするかな?って、デパートを掘り出せた。ここは新宿辺りかな?トゥーリを連れて色々な服を見せて回る。ファンシーグッズ売り場に向かう元日本人の女性の集団。マインだけは、文具売り場に向かい、紙をゲットしていく。平和って、いいなぁ。
◇
しかし、平和は長く続かない。
いきなり地面が揺れた。地震である。何かが地殻を刺激したのか?地震慣れしている俺達元日本人は震度5程度では驚かないが、地震になれていないこの世界の住人達はパニック状態である。だが、再開発した公都の街は耐震性も考慮してあるので安心である。
『魔王の世界が臨界したぞ』
義父の声が脳裏に響いた。ついに来たか。俺は、どこかに強制転移させられた。