魔王召喚
---大野晶---
いかん、ゲーム中に寝落ちをしたようだ…え?…ここはどこだ?大森林の中にいるのだが。木々の緑が眩しい。湖の湖面もだ。久しく、自然と戯れてなかったなぁ。ふと、視線を足下に向けると、高級な革靴を履いている。湖面に俺は俺の姿を写しだした。なんだ、これは…
俺は、ゲームの「GAME」のアバター姿であった。九内伯斗、「GAME」内では魔王と恐れられていた。
「あぁ降臨したのだが大野君で良かった」
突然、背後から声を掛けられた。振り返ると勤務先のゲーム会社の社長の息子のツバサがいた。
「九内伯斗って呼んだ方がいいかな?」
ツバサは冒険者のような服装をしているのだが…まさか、ラノベでありがちの…
「なぁ、」
「あぁ、そうだよ。ここは異世界だよ」
「異世界だと…」
なんで、俺はこんなオッサン姿で異世界に来たんだ?見た目が胡散臭いだろうが…
「大野君の選択肢は二つだよ。1つは、俺達の仲間になること。もう1つは敵になり、この場で消えることだよ」
ツバサの眼はマジである。後者を選択すると…まず死ぬな。あぁ、死ぬと思う。それは間違いない。
「俺がツバサを裏切ることは無いぜ」
「大野君、蓮ちゃんをバーチャル彼女にする約束、反故にしたよね?」
蓮ちゃんとは九内伯斗側近である宮王子蓮のことである。
「アレは、蓮の意思であり、俺は関与していない」
一体、いつの話をしているんだ?
ガサゴソと草むらから音が聞こえ、ツバサが臨戦態勢を取った。暫くすると、草むらから女の子が飛び出して来た。
「逃げてください」
と叫んでいる。
ツバサは、空に向け魔法を放った。そこにはバケモノが浮かんでいたが、ツバサの魔法で灰となり霧散していった。
「伯斗、お前。この世界で無防備だろ死ぬぞ」
ツバサの動きは速い。しゃがみ込んでいる女の子の傍に行き、ヒールらしき魔法を放っていた。
「伯斗は魔法使えないのか?」
「使える訳ないだろ?魔法の無い世界のキャラだぞ」
「ソドムの火は?」
「あれはスキルだ」
「結構汚れているな。ちょっと待っていろ」
ツバサが一瞬消え、再び現れると、勤務先の後輩であった小鳥遊がいた。
「小鳥遊…」
「あぁ、大野さんが召喚されたんですね」
って、九内伯斗を見て大野晶を即変換できる、この人達は怖い。俺のプライベートを知り尽くしていると思う。
「セイ、この子を湖で洗って」
「分かりました」
◇
少女の水浴中に、ツバサに現状を聞いた。この世界のバカ神が日本を丸々召喚しただと…で、俺は魔王召喚で召喚前の日本から召喚されたそうだ。
「この子、アクちゃんって、言うんだって」
小鳥遊が彼女の名前を訊いてくれたようだ。
「怪我していたから、治しておきました」
「治せるのか?」
「セイは聖女なんだよ。で、俺は聖者…でもって、伯斗は魔王様?」
「待て!ツバサが聖者だと?そんなもの、ダウトだ!」
苦笑いしている女性陣。
「じゃ、ためしてみるか?魔王様が灰になるかをさぁ~」
もの凄く悪い顔で宣うツバサ。
「大野さん、じゃなくて伯斗さんは、マフィアのボス?」
「銃は持っていない」
小鳥遊が聖女だと?あり得ない。なんと言ってもツバサの彼女だし。ツバサと後、誰だっけ?後、二人いたよな。徹夜に近い会社に在住組が…
「で、これからどうする?」
ツバサに訊かれた。
「ここは、お前の住処から遠いのか?」
「海を越えた先にある大陸だよ」
海越えかぁ…
「転移すれば、直ぐだけど」
転移できるのか。一瞬で目の前の景色が変わった。森の中にいたのに、目の前には田園風景が開けていた。
「ここはアルメリア公国。あの森のある大陸から海2つ越えた先にある大陸だよ」
そこの領主の館に連れて行かれ、ツバサの側室を紹介された。なに?この世界は重婚有りなのか?