---大野晶---
翌日、俺とツバサと、ツバサの教え子だった海里ことマイルの三人で、俺が呼び出された森へ転移をした。この俺を呼び出した者の目的を探る為と、敵対国家があるかを探る為である。
「けっこう、この世界は敵対国家が多いんだよ。まぁ、攻めて来たら潰すけどな」
昨晩は、アクを小鳥遊ことセイに預け、ツバサの本拠地にも連れて行かれた。ツバサの国、トキオ共和国の地下に埋まる東京の姿を見て、声が出なかった。
地下に広がる大都市だった東京。その姿のほとんどは砂の中だった。
「手分けして掘り出しているけど、終わりがまったく見えない作業だよ」
驚愕なのは、ツバサの元教え子達の戦闘力である。俺のステイタスをみるかぎり、管理者権限が一部ロックされているが、九内伯斗の「GAME」内のステイタスと変わらないのに、組手で負けた…あのクマと魔女、そして、目の前の少女は怖い。はっきり言おう、コイツらの方が魔王様だよ。
帰る場所が砂の中では…コイツらといた方が安全だし、楽しそうである。
「あぁ、そうだ。経験値とSPを増やしておいたよ。それで、出せる者が出せるだろ?」
ツバサの目が連を出せと言って居るようだ。いや、最初は違うのにしよう。悠とか田原とか…
「経験値を貰っていいのか?」
「あぁ、俺達は既にカンストだから、必要無い」
カンスト?それは強い訳だ…
「先生、祠を見つけました」
マイルのオートマッピングで祠を見つけたようだ。
「祠か…寄ってみるか」
祠に向かうと、『願いの祠』と書かれていた。入り口は封印されていたようだが、強引に破られていた。
「空に浮かんでいたアレが封印されていたのか?それとも伯斗か?」
いや、俺には祠の記憶は無い。祠に踏み込むと
「血の匂い、糞尿もだな。供物に命を捧げる儀式でもしたのか?」
ツバサが、『浄化』をしたのか、ヤツの周囲から青白い霧が湧き出た。
「浄化しながら進む。俺より前に出るなよ。マイルは伯斗の背中を護ってやれ。ちょっと、戦力を上げるか。『サモン ケーナ』」
ツバサの横に魔女が現れた。
「どうしたの?わぁ~、空気が澱んでいるわね。『クリーンエア』」
魔女の魔法により、祠内の空気がきれいになっていくのが分かる。一番の奥の部屋には死体があった。それらを見下ろす様に、石像がある。ツバサが触れると粉々の埃となって空を舞っている。
「ご神体のようだが、悪意に染まっている。俺が触れると悪意持ちは全て灰になるが、石像だったらから、砂になったのかな」
こわっ!何、触るだけで灰になるって…九内伯斗はそこまで凶暴でなかったぞ。間違い無い、魔王はツバサの方だ。
祠の近くに村があったが、ツバサが足を踏み入れただけで、村人を含む村全体が灰になっていった。これが、魔王クラスの聖者の力なのか…だが、ツバサ達が何かを葬ると、俺に経験値とSPが振り込まれてくる。俺のカンスト狙いか?それとも蓮狙いなのか?よくわからん。
◇
付近に街がないか、歩いていると、空が闇につつまれていく。所謂、夜である。
「どこに泊まるんだ?」
「マーカーを撃ち込んで、家に帰って、明日の朝にマーカーに転移するんだよ」
それは良い案である。トキオ共和国の館だと、日本と変わらない生活水準であるし。皆に訊くと、異世界で困るのはトイレらしい。亜空間収納が出来る者達は皆、移動個室なり、休憩所を持っているという。
「その辺の草でお尻拭くと、危険がいっぱいだし」
と、魔女が言う。宿のトイレも危険なので、トイレットペーパーも持ち歩いているそうだ。
翌朝、昨日の続きから歩き始めた。しばらく歩いていると、矢が飛んできた。気にしないで歩いていると、矢の飛来が止んだ。スーパーチーターのマイルが動いたようだ。
「一応、殺さないでおきました。装備が酷すぎて、奪う気にならなかったです」
「そうか。付近の百姓かもな。この辺の土では野菜は無理だろうし」
また暫く歩いていると、背後から金色の光を放った魔法が飛んで来た。が、ツバサの張った障壁にはじかれていく。
「光魔法か。聖者には届かないぞ」
ツバサが何かを放った。魔女もだ…魔女の放った魔法は、着弾地点にクレーターを造り出しているし。ツバサの方は、相手が全員苦しんでいるようだ。
「どこかのお偉いさんかも。装備も良いし、お金も持っていたよ」
マイルが戦利品の報告をしている。コイツらの動き迷いが無い上、容赦が無い気がする。マイルなんか常時笑顔であるし。
---ルナ・エレガント---
意識が戻ると、股間が冷たかった。ちびった?いや、そんな量じゃない。大放出したかも。周囲の護衛達は身ぐるみ剥がされ、下着姿であった。そして、私は服を脱がされていないが、財布がぬすまれていた。
馬車は地面に出来た大きな穴に吸い込まれているし。あの4人組は何者なのか?もしかして、アレが噂の魔王と側近達なのか?私の魔法が弾かれ、その直後、一瞬で意識を刈り取られていた。