ウマ娘育成機関「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」、通称トレセン学園。
ここには全国各地から才能のあるウマ娘が集まり、トゥインクルシリーズに出るために日夜切磋琢磨している。
そこにあるウマ娘がいた。名をキサラギクレナイといった。
彼女は誰よりも走ること、勝つこと、そして楽しんで生きることに執着していた。
入学後こそおとなしかった彼女だが、年を重ねるにつれ自由奔放な生き方を出すようになった。例えば・・・。
・オグリキャップと大食い対決
・タマモクロスと粉もの料理研究
・スーパークリークに骨抜きにされる
・マヤノトップガンと飛行機見物
・ハルウララと気ままにお散歩
・ニシノフラワーとダンスレッスン
・メジロマックイーンとお茶会
などなどなど。
更には幼馴染であったシンボリルドルフ、エアグルーヴ、ナリタブライアン以下の生徒会メンバーにもドッキリを仕掛けたりして遊びながら過ごしていた。
かといってトレーニングをおろそかにすることもなく、トレセン学園に収蔵されているデータや実体験をもとに自己流のトレーニングを確立。また同じウマ娘であるミホノブルボンやライスシャワー達とトレーニングを重ね、果てにはアグネスタキオンの研究に付き合いもしてスカウトされる前から成績を伸ばし、挙句の果てには桐生院トレーナーとトレーニング談議で盛り上がる、そんな光景も目に付いた。それだけ早いからこそ、自由奔放がゆるされていたのもあるだろう。
実際、教官がつくスカウト前のウマ娘たちがトレーニングしている際、彼女たちにトレーニング指導をして、成績をぐんと伸ばしたこともある。それだけ彼女のトレーニング知識は卓越していた。
更に彼女はウマ娘の故障についても調べていた。それこそサイレンススズカにトウカイテイオーと、ウマ娘が故障する例は数多くあった。爆弾を膝に抱えるアグネスタキオンらと共に故障したウマ娘が復活するまで付き添い、そのデータ集めや治療法の研究に参加していた。特にテイオーのケガの時はメンタルケアに始まり、スピカチームとの協力で彼女を復活まで支えたということもあった。
そんな自由奔放かつ速く走ることに執着する彼女は、学内模擬レースでも他を圧倒。トゥインクルシリーズに出走しつつも、学内模擬レースでクレナイと対決したサイレンススズカは海外遠征前、彼女にこう言い残している。
「私はあなたと走ると、先頭の景色を見られませんでした。いつもあなたの背中だけ。海外に行って帰ってきた暁には、あなたに私の背中を見せます。あなたに勝ち逃げなんか、許しません」
そんな彼女だが、なかなかチームに入ることを選ばなかった。
というのも、本人のトレーニング知識は豊富で今更教わることはない。また既に自分のやり方を確立している以上、ここから他人の指導法に合わせたくはないと。
それを証明するように、スカウトをかけてきたチームのトレーナーには自作の筆記テストを課し、自分はこれに満点をとれる。最低でも満点をとれなければチームには入らないと告げていた。
実際今まで満点をとれる人はおらず、更に他のウマ娘にたまに指導していることから、桐生院トレーナー以外のトレーナーから腫物を触るような扱いを受けていた。
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ある時、いつものように会長にいたずらを仕掛けようと生徒会室に忍び込み、書類仕事に集中する会長の後ろに回り込む。
「クレナイ、いるのはわかっているぞ」
「なんだ、ばれてたのね」
振り向くことなく声をかけた会長にがっかりした視線を向けつつ、応接用のソファーに座る。
「そうだ、クレナイ」
「何かしら、ドルフ会長?」
「私はシンボリル ドルフではない! シンボリ ルドルフだ!!」
「わかってるわよ、ルナちゃん会長」
「私を幼名で呼ぶな!!! あとちゃん付けもするな!!!!」
「いいじゃないの、幼馴染なのに。っと、ここまでが様式美ね」
「様式美にするな面倒な」
二人きりの時にやるテンプレを済ませ、クレナイはルドルフ会長に向き直る。
「で、何かしら。何やらまじめな話のようだけれど」
さっきとは違い、真面目な顔をするクレナイに、ルドルフ会長も真剣な顔つきで書類から顔をあげる。
「いい加減チームに入らないのか? 君の足なら、トゥインクルシリーズで活躍も間違いないだろう」
「またその話・・・?」
うんざりした顔をするクレナイ。実際ここ最近、特にチームに入れという学校からの圧力が強くなっていた。
「ああ。いい加減君を走らせろと上からの圧力が強くてな」
「私より知識や経験のあるトレーナーじゃないと走りたくないって意見とテスト結果は?」
「あれで納得するのは秋川理事長くらいだ。実際理事長は君の意見を第一にほかの理事への説得をしてくれてはいるが、今回ばかりはどうにもならないかもしれん。早く君を走らせろ走らせろと他の理事が一致団結している始末だ」
「この前の学園内の準公式レースでサイレンススズカに勝っちゃったのがいけなかったかしら・・・」
「それが決め手だろうな」
二人そろってため息をつく。
「現実的な話をすると、多分君より知識を持っててしっかり指導できるトレーナーは現れないだろう」
「あなたもそう思う?」
「なんだ、君もか?」
「まあ、テスト結果を見るとねぇ・・・」
「すまない、本当なら君の眼鏡にかなうトレーナーを用意できない学園側の不始末なんだが・・・」
「まあ、さすがに私もレースに出たい欲はあるし・・・」
そのまま考え込むクレナイ
「ねえルドルフ会長」
「なんだ、クレナイ」
「ちょっと、悪だくみしてもいいかしら?」
「内容によるな。まずは言ってみろ」
それからしばらくして、デビュー戦でトップを駆け抜けるキサラギクレナイの姿があった。