梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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孤独の影から出ずる者

迷いの竹林に雪が降り始めていた。

この時期の空気は寒く、水は凍り息は白くなる。

しかし永遠亭の庭や内部はそこまでではなく、まるでこの辺りだけ温かく感じた。

 

その事を梟が永琳に聞いたところ、人間には真似できない妖術がこの辺にはかけられているらしい。

その為この辺は竹林の外より温かいとのこと。

 

梟は考えても解明できそうにない為『そうなのか』と受け入れた。

 

 

 

 

食事も終え、あとは寝るだけとなった。

梟は外の雪を見て、既にここにきて何ヵ月経ったかと考えていた。

そして今日の朝に修行として斬った短い竹を掴み、切り口をよく見る。

 

「...鈍ったか」

 

竹の切り口は少し粗く、竹もそれほど太くはない。

数ヶ月前の自分ならば切り口はもっと綺麗であったろう。

 

 

刀は悪くない。

己の腕が鈍っている証拠であった。

 

「.....人を斬らなければこうも鈍るか」

 

梟は竹を隣に置くと、奥の廊下からてゐが歩いてきた。

 

「やぁやぁ梟の旦那」

「因幡殿か」

「修行はどうだった?」

 

てゐはニヤニヤしながら、まるで全てわかっているかのような口振りで話す。

いや、全てわかった上で聞いているのだろう。

「見ていたか」

「まぁね」

「ならば言わなくてもわかるであろう」

「...見ていたけど、素人の私じゃ何が原因で落ち込んでいるのかわからないね♪」

「落ち込んでおらぬ...それで、何用か」

 

梟は少しイラつきながらてゐが話しかけた理由を聞くと、返ってきたのは驚きの答えだった。

 

「今竹林に忍びが来てるよ」

「!」

 

梟は一瞬目を見開き、ゆっくりと立ち上がった。

 

「それは失礼、ご苦労であったな」

「前に言ってた特徴と合ってたよ」

「では、案内を頼む」

「お任せ。けど永琳と姫さんにバレないよう静かにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は永遠亭から静かに出て、忍びがいる所まで竹林を歩く。

 

「この辺りだったかな」

「恐らく何処かで夜営している筈...兎を食っていなければよいが」

「食ってたらぶん殴ってやる」

 

すると目の前に焚き火をした跡があることに気づき、てゐが炭の暑さを確認しようとする。

 

「因幡殿、触らぬ方がいい」

「え?」

 

てゐが手を引っ込めると、目の前に顔を隠し白い頭巾を被った男が降りてくる。

そいつは刀を持っており、彼女の目の前に刃を突きつける。

 

「にぇ!?」

「ん...?なんだ梟か」

「久しいな正就」

正就は刀を背中にある鞘にしまい、尻を地面につけてるてゐを見る。

 

「こいつは何だ」

「儂が世話になっている者だ。この竹林を熟知しておる」

「成る程、だからここに俺がいることがわかったのか」

「さて、情報を貰おうか」

 

梟と正就はてゐをジッと見る。

すると彼女は察したのか、その場からゆっくりと離れていった。

 

「あ、ごめんごめん。終わったら呼んでねー」

 

 

 

 

 

 

彼女の姿が見えなくなると、二人は話始める。

 

「さて、何から話そうか」

「今、葦名はどうなっておる」

「平田屋敷が炎上して未だに影響は続いている。まぁ発生直後よりは収まってきたが...それもこれも一心がいるからこそだ」

「一心の病は」

「赤備えの密偵によると酷くなる一方らしい」

「.....」

「一心が病にて倒れれば行動に移す...そうお前は行ったな」

「左様」

正就は梟を睨む。

 

「俺がお前と組んだ理由を覚えているか」

「不死の力...であったな。お主が儂に協力する見返りは」

「...そうだ。俺は孤影衆になってから長いが...未だ太刀足や忌み手、それに正長には敵わない」

「修行が足りぬのだろう」

 

正就は舌打ちするも、話を続ける。

 

「お前に言われなくてもわかってる。だがそれも不死の力を得れば俺は孤影衆最強間違いなし。そうなれば戦の世が終わっても俺の偉業は残る」

「.....」

「その目的を果たす為お前と組んだのだ。他の孤影衆には内密でな」

「わかっておる」

「わかっているならば今すぐにでも行動を起こすべきだ。あの一心でも病に犯されてては」

 

すると梟は少し笑い、正就を見る。

 

「甘いのぅ...一心は例え病に犯されても剣術の腕は鈍らん。いや、むしろ...鋭く尖るだろう」

「それは言い過ぎだろう」

「相手の力を見誤る。だから他の孤影衆に敵わぬのだ」

「な、なんだと」

「ふっ...だが、お主はあの戦での一心を見ていない。見誤るのも仕方なし」

「あの戦?」

梟は目を閉じて、ゆっくりと昔の事を思い出す。

 

それは葦名家と田村家の大戦。

後に勝利を掴み取った葦名家は『国盗り戦の葦名衆』と恐れられ、自らの土地と誇りを奪い返した。

二つの名家が幾度と行われた戦も決着はつかず、とうとう田村家と葦名家の総力戦となり、その戦に梟も葦名側として参加した。

 

その戦は凄惨さを極め、忍びとして修行した梟すら無傷では済まなかった。

 

彼は主君である葦名一心の護衛として参加したが、あまりの混戦に彼の元から離れてしまう。

 

お蝶や鬼庭刑部雅孝、七本槍の武将達も苦戦し主君の元へ向かうことはできなかった。

 

一心の周りの護衛も全滅し、いよいよ彼一人となった。

 

 

 

梟はようやく辺りの敵を倒し、一心の元へと辿り着くがそこには驚きの光景があった。

 

一心の周りは大量の死体しかなく、それも全て一刀のもとに斬り伏せられていたのだ。

 

そして一心は敵の血がついた顔に笑顔を浮かべて、息を切らすことなく敵の総大将の元へとゆっくり歩いてゆく。

 

その姿に梟は人生で初めて圧倒的な力というものを思い知らされた。

 

 

そして彼は総大将への道に立ち塞がる敵を全て薙ぎ倒し、とうとう田村家当主を一騎討ちにて討ち取ったのだ。

 

そして一心の名前は天下に広まり、内府ですら手出しできない程恐れられた。

 

思えばその一心の姿が、梟の野望の切っ掛けだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

梟はゆっくりと目を開けて、少し笑いながら話す

 

「ふっ.....懐かしき事よの」

「...」

「ともかく、一心は例え病にかかっても油断できぬ。儂が言った『病に倒れたら』というのは...一心が病にて死が目前になればという事よ。奴を斬るならばそこしかあるまい...」

「死ぬ間際...ということか」

「その時こそ儂と孤影衆は行動を起こし、お主は葦名にある不死の秘密を探るのだ」

「くそっ...それまでは耐えろということか」

「うむ...」

 

正就はため息をついて、残念そうにガッカリする。

 

 

「仕方ないか...一心を近くで見てきたお前が言うのだからな」

「他に何かあるか」

「...聞いておくが、お前は葦名にある不死について何か知ってないのか?」

「ない」

「ふぅむ...葦名に長く住んだお主でさえわからんのか」

 

梟は正就の反応を見て、内心よくこれで孤影衆として生きてこられたなと馬鹿にした。

なぜなら梟の葦名の不死について何も知らないというのは嘘であり、彼はそれを見抜くどころか疑ってすらいない。

 

これでは例え不死となっても最強なんて千里先だろう。

だからこそ駒として扱いやすくもあるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く二人は情報を交換して、話がまとまってくると正就があることを話始める。

 

「そうだ、伝え忘れていた」

「...?」

「お主の息子の忍び...確か狼だったか?奴は葦名のある場所で監禁されているらしいな」

「!」

 

梟は目を見開いて驚く。

 

「まさか...」

「監禁といっても檻も何もない底で放ってあるらしいが...」

「.....何故そこから出ない」

「わからん」

「...主を失い、儂を失い牙が取れたか...」

「まぁいい。そんな状態の奴など脅威でもないからな」

「.....」

 

 

 

 

 

 

 

そのまま梟と正就は別れ、新たな情報を得たなら再びここに来ることを約束した。

梟はてゐを呼ぶ間、狼の事を考えていた。

 

「...不死の力を得たか」

 

狼の胸を突き刺した感触は今でも覚えている。

確実に死んだ筈だか、正就の話では生きている。

 

恐らく不死である九郎が狼に力を与えたのだろう。

お蝶がやろうとしたことを、狼が成し遂げたのだ。

 

梟はもう一度狼と会うだろう。

そして彼に問わなければならない。

 

刃を交えるか

掟を取るか

 

場合によっては野望を果たすため、もう一度倅を殺さねばならない。

 

だがどうしてだろうか

 

梟の心のどこかでは、自分の技術を教え成長した狼と死闘を興じたい感じていた。




UA2000突破!
ありがとうございます!これからも『梟の羽休め』をよろしくお願いします!


DARK SOULS3では脳筋奇跡スタイルです。
ハベル装備でグレートソード、竜狩りの大盾、連射クロスボウ、フィリアノールの聖鈴使ってます。
対人はクソ弱いです
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