梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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薄井のフクロウ

梟が刀を構えると、後ろにいた青いフクロウが飛び回り始める。

 

「何の芸だい?」

 

勇儀はフクロウを見た後梟を見たが、白い羽を残して消えている事に気づく。

 

「!また消える技か...」

 

しかし勇儀はおかしい事に気づいていた。

先程の消える技なら移動する場所に黒い残光を残す筈だが、今は青く光るフクロウが飛んでいるだけで何もない。

 

「どこいった...?」

 

するとフクロウが勇儀の真上で青い光を発すると、その光の中から刀を大きく振り上げた梟が現れる。

 

「なっ!?」

「むぅぅん!!」

 

流石の勇儀も油断していたのか、肩に梟の刀の攻撃を許してしまい苦痛で顔が歪む。

 

「このぉっ!!」

 

勇儀は攻撃を受けた瞬間飛び膝蹴りを梟にぶちかまそうとするが、彼は霧がらすを使い距離を取る。

 

「逃がすか!」

勇儀は距離を取らせまいと梟へ走ろうとするが、その瞬間彼は尋常じゃない早さで彼女へと向かってくる。

「っ!?」

 

勇儀はそのスピードに驚き、しかも梟は刀を構えて思いきり彼女の腹を斬った。

 

「ぐっ...」

 

勇儀は直ぐ様後ろに抜けた梟に攻撃しようとするが、彼は既に霧がらすで上空に移動していた。

そして彼は上空で手裏剣を何十も勇儀に投げる。

手裏剣は彼女の皮膚を貫きはせず、弾かれていく。

 

最後に梟は彼女の目の前に現れ、刀を強く振り下ろした。

 

刀は勇儀の頭に当たるも、彼女は倒れずに踏み留まる。

 

「何と...」

「鬼をなめるなよぉぉぉ...おりゃっ!!」

 

勇儀は頭の刀を弾いて、そのまま頭突きをくらわそうとする。

 

その速さに霧がらすも間に合わず、梟は刀で防御する。

しかし勇儀の頭突きの怪力に耐えきれず、刀は大きな音をたてて割れてしまう。

 

「っ!!」

 

梟は勇儀と距離をとり、刀を見る。

断面はパッキリと綺麗に割れており、修復も今すぐには無理だった。

 

「さぁどうする?」

「.....」

 

勇儀は好機と見るや梟へ向かって走り出し、足で彼の顔を蹴ろうとする。

しかしその瞬間彼女の攻撃は見切られ、彼の足によって踏まれ地面に叩きつけられた。

 

「うぇっ!?」

 

すると梟は勇儀の後ろに回り、羽交い締めにして肩に折れた刀を突き刺す。

 

「ぐあっ!!」

「ぬぅぅ...!」

 

勇儀は梟の腕を振りほどこうとすると、しばらくは抵抗していたが彼女の怪力を危険と判断し彼はすぐに離れて距離をとった。

 

彼女は自分の肩に触ると、僅かに血が出ている事に気づく。

 

「くそっ...自分の血を見るなんて久しぶりだな」

 

勇儀は梟を見るが、既に羽を残して消えていた。

 

「またか!」

 

勇儀は後ろを振り向くと、そこには青く光るフクロウを腕に乗せている梟がいた。

そして青く光るフクロウが赤く光始め、炎を纒始める。

そして腕を前に出すと、フクロウは巨大な炎を纒い勇儀目掛けて突っ込んでいく。

 

「うぉっ!?」

 

勇儀は両腕を構え、突っ込んできた炎のフクロウを何と素手で掴む。

彼女は暴れるフクロウを無理矢理地面に押さえつけると、思いきり蹴り飛ばす。

 

しかし次の瞬間炎の中から突きの構えをした梟が現れ、折れた刀を彼女の肩目掛けて突っ込んでくる。

 

「ぐあっ!」

 

折れた刀は彼女の肩に突き刺さり、皮膚を貫き血が梟の顔にかかる。

「ようやく貫いたか」

「いっ...たぁ...!」

 

そのまま勇儀を地面に押し倒し、梟は肩に突き刺さった刀を動かし抉る。

そして刀を抜いて距離をとった。

「.....」

「こんのぉ!」

 

勇儀が梟へ走り出し、殴ろうとするが拳が触れる瞬間霧がらすが発動し彼は真横に移動する。

 

そして勇儀は二連続による刀の攻撃を受けると、彼は再び霧がらすで移動し今度は旋風斬りを放つ。

 

そして最後に上空へ移動し、彼女目掛けて薙ぎ払う。

 

「まだまだぁ!」

 

全ての攻撃を受けきった勇儀は梟に反撃しようとするが、青く光るフクロウが前を遮り視界を邪魔してくる。

 

「邪魔だ!」

 

勇儀は飛んでいるフクロウを殴り飛ばそうとするが、拳は体を貫いてもまったく影響なく飛んでいく。

 

「な、何だ?実体がないのか?」

 

その瞬間フクロウが光を放つと、その中から梟が現れ折れた刀を再び肩に刺してくる。

 

「いたたた!」

 

勇儀は痛みながらも全身に力をいれ、肩に刺さる刀を抜けないようにする。

梟の力では動かすこともできず、刀は諦めて彼女の腕を踏み台にして距離を取った。

 

すると梟は勇儀へ向かって走り出し、手裏剣を構える。

 

走りながら手裏剣を投げると、彼女は飛んでくる手裏剣を掴んで投げ返す。

 

梟は投げ返された手裏剣を避けると同時に霧がらすを発動して、一気に勇儀の目の前まで移動する。

 

勇儀は目の前に移動してきた梟を殴ったが、霧がらすで避けられ別の場所へ移動する。

しかし霧がらすを使った時の移動場所を黒い残光で予測できることを知っている勇儀は、梟の移動した場所を蹴りあげる。

しかし梟は再び霧がらすを発動し、別の場所へ移動する。

 

勇儀は再び居場所を予測して攻撃するも、彼は再び消えてしまった。

しかし今度は黒い残光を残さず消えてしまい、勇儀はしまったと上空を見る。

 

彼女の上には光を放つフクロウが堂々と飛んでおり、そこから梟が現れ、肩に刺してある刀を思いきり体重をかけて蹴る。

 

刀はさらに深く突き刺さり、血が溢れ出す。

梟は刀を踏み台にして距離をとった。

 

「ぐぅぅぅ...」

 

勇儀は梟を睨むと、様子がおかしい事に気づく。

 

「ふぅ..ふぅ...」

 

息は乱れ、右手で胸を押さえている。

 

「やはり...鈍ると...こうなるか...」

 

梟は片膝を地面につけてしまい、頭から流れる汗が地面に落ちる。

 

かつて忍びの仕事を数多く受けていた平田屋敷時の梟ならばこのような事は無かった筈だ。

しかしここ迷いの竹林で何ヵ月も人を殺さず、竹相手の修行で体が鈍った梟にかつての全力はかなり体へ無茶を強いていた。

 

梟の側にいる青く光るフクロウも、光が弱っており不安定に飛んでいる。

梟はゆっくり立ち上がるが、苦しそうな表情は解けない。

 

「さぁ、続きをやろうぞ」

「.....」

 

その瞬間、梟の顔の横から矢が現れ勇儀の顔目掛けて飛んでいく。

彼女は矢を受け止めると、梟の後ろから弓を構えた永琳が現れた。

 

「永琳殿...」

「そこまでにして頂戴。その人は客人よ」

 

永琳は勇儀を睨み付け、構えを解かない。

 

「...あんたは」

「この先に住んでる者よ」

「へぇ...ってことは依頼主か。鬼をこいつに斬らしたのもあんたか」

「そう思ってもらって構わないわ」

「ふーん...」

 

勇儀は持っている矢を地面に捨て、肩に刺さっている刀を抜いて地面に捨てた。

 

「もっとやりたかったが...これ以上は無理らしいな」

 

勇儀は苦しそうにする梟を見て、溜め息をつく。

 

「久しぶりに楽しめたよ。あんたの名前は?」

「.....」

「何だよ、名乗る名前もないってか?ならこっちが適当に勝手に呼ばせてもらうか」

 

勇儀は腕を組んで悩むと、弱々しく飛んでいるフクロウをみて思い付いた。

 

「あ、フクロウ!フクロウでいいや」

 

その名前を聞くと、梟はピクリと動く。

名前が偶然にも合っていたことに、永琳は笑いそうになるが我慢する。

すると永琳と梟の後ろから息を切らしたてゐが現れた。

「はぁ...はぁ...間に合ったかい?」

「お陰でね、てゐ」

「因幡殿...」

 

てゐは苦しそうにする梟に近寄り、肩を貸そうとする。

 

「ほら」

「いや、構わぬ」

 

梟は姿勢を正すと、勇儀を睨む。

 

「そんな睨むなよ。いい戦いだったさ」

「...」

「私の肩もこの様だ。全く他の奴等になんて言えばいいんだい」

するとてゐが肩を痛そうに押さえる勇儀に話しかける。

 

「これで満足かい?星熊の大将」

「まだまだといいたいが、フクロウがそんな状態じゃなあ。寄る年波には勝てないってことかな」

 

梟は少し笑い、勇儀の地面に落ちている折れた刀を見る。

 

「ふふ...修行不足なだけよ」

 

梟はゆっくりと勇儀に近づき、折れた刀を拾い上げて鞘にしまう。

 

「いずれ決着をつけよう」

「へぇ...決着ねぇ」

「...」

「人間ってのは一度衰えたら後は弱くなっていく生き物だ...それともたとえ衰えたとしても勝算があるのかい?」

「.....」

「黙りか...まぁ楽しみにしておくよ」

 

勇儀は近くに落ちている盃を拾い上げる。

 

「あ、そうそう。下っぱの奴を斬った件については安心しな。ここは手出し無用ってことにしといてやる」

 

その言葉にてゐが反応する。

 

「それは本当なんだろうね、星熊の大将」

「ああ...約束は守るよ」

「.....」

「いやぁ、今日はうまい酒が飲めそうだ。あっはっはっは!」

 

勇儀は盃にどこから取り出したのか酒を注いで、飲みながら竹林の奥へと消えていった。

 

「まったく...鬼は相変わらず身勝手なもんだよ」

 

てゐは呆れながら、勇儀の後ろ姿を見送る。

すると梟の周りを飛んでいた光るフクロウが消え、彼はその場で倒れてしまった。

 

「梟の旦那!」

「梟さん!」

 

永琳とてゐはすぐに梟へ駆け寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷いの竹林は侵入者を確実に迷わせる場所である。

それは怪力を持つ鬼も例外ではない。

 

「あんれぇ...?さっきから同じ所回ってないか私...」

 

勇儀は酒を飲んで頬を赤く染めながらもゆっくり歩いていく。

すると遠くから子供の鳴き声がする。

 

 

 

 

 

「ちょっと文ぁ!出れないじゃないの!」

「ど、どうなってるのよここ!目印つけても消えてるじゃない!」

 

鬼の使者役であった二人の子供天狗も迷いの竹林の洗礼を受けていた。

 

「おーい、ガキ共」

「あ、星熊様!」

 

二人は勇儀に駆け寄る。

 

「星熊様!ここから出れないんですよぉ」

「あ、私もだよ」

「へ」

「あっはっは!三人で迷子か!」

 

二人の子供天狗は今にも泣き出しそうになっているのに、勇儀は酒を飲んで酔っぱらっている。

 

三人が竹林から出るのはもう少し後になりそうだ。




『梟』は忍びの方
『フクロウ』は飛んでる方です。
分かりにくくてすみません。

根拠はありませんが、梟の周りを飛んでるフクロウは老齢らしいです。
おじいちゃん同士なんだなぁ
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