星熊勇儀との勝負から半年以上が過ぎた。
これは梟が永遠亭に世話になって一年と半年が過ぎたということになる。
勇儀との勝負で梟は気絶し、診察すると十数本も骨が折れていたり、ヒビが入っている等で全身に大怪我を負っている事が判明。
彼は即入院したが永琳の治療により、半年近くで軽く走れるようになるまで回復。
そして勇儀との戦で折れた刀も新調し、梟は久しぶりに外で散歩をしていた。
その散歩にはてゐが隣についてきており、もしも怪我が悪化したらと心配で同行していた。
「まさかあれほどの怪我がこうして治るとは...永琳殿には足を向けて寝られんな」
「刀はどうだい?」
梟は背負っている刀を鞘から抜くと、新品同様に美しく輝いている事を確認する。
そして軽く振ると、刀を鞘に戻した。
「まさか因幡殿が折れた刀を元通りに修理して持ってきた時は驚いたものよ」
「大変だったんだからね」
「感謝しているとも」
梟とてゐはゆっくり竹林の中を歩いていると、危険と書いてある看板が刺してある場所に辿り着く。
「ここか」
「本当にいいのかい?まだ完治はしてないのに修行して」
「構わぬ。それよりも...この体でどれ程動けるかを知っておきたい」
「注文通りに罠や案山子とか用意しといたよ。場所も適当に私が配置したからね」
「すまぬな」
梟は再び刀を抜き、看板をゆっくりと通り過ぎる。
「さて...」
すると梟が足を踏み入れた瞬間落とし穴が現れ、彼は直ぐ様避ける。
そして近くの竹の後ろから竹槍を構えた兵士に見える案山子が現れ、彼は刀で一刀両断する。
さらに遠くから竹槍が何本も飛んでくると、冷静に順番に飛んでくる竹を刀で弾いていく。
しかし飛んでくる竹に押され始め、新たな落とし穴が現れると落ちそうになる。
「ふ、梟の旦那!」
「心配めされるな」
梟は間一髪で地面に手をかけており、直ぐに這い上がってくる。
そして手裏剣を出すと、竹が飛んでくる罠目掛けて投げる。
罠が壊れると、遠くに案山子が現れる。
梟は突きの構えをして、案山子目掛けて突っ込もうとするが足に痛みが走り前転する。
「ぬぅ...」
すると縄でまとめられた竹が隣から勢いよく現れると、梟は霧がらすを使おうとする。
しかし霧がらすを使っても足が思うように動かず、瞬時に別の場所へ移動できない。
そのため仕方なく刀で防御するが、衝撃で後ろに吹き飛んでしまう。
「ぬぅ...」
するとてゐが梟に近づいて、汗をふく布を渡した。
「お疲れ様」
「罠はこれで全てか」
「...多分」
「...覚えておらぬのか」
「夢中になっちゃって」
梟はため息をして、眉間にシワを寄せている。
「いや悪かったって。罠になるとどうにも夢中になっちゃって。だからそんな難しい顔しないでおくれよ」
「いや、気にしているのは罠ではない」
「え?そうなの?」
梟は刀を背負っている鞘にしまい、その場に座る。
「.....」
「どうしたのさ」
「いや、思うように動けず少しの」
「そう?人間にしては超人的な反応だったけど」
「いやいや、足が動かぬよ」
梟は自分の両足を手で軽く叩くと、てゐは彼の足を見る。
「仕方ないよ。だって勇儀との戦いで足も折れてたからねぇ...まだ調子が出てないんじゃない?」
「いや、最早この足では今以上に動けぬだろう」
「うーん...」
「ああ、いや、それでも永琳殿には感謝している。普通ならば忍びすら続けられぬ怪我だったが...こうして動けるからの」
梟は立ち上がると、二人の後ろから永琳が現れる。
「ちょっと梟さん、激しい運動はダメって言ったでしょ」
「これはすまぬ」
「てゐも何練習場みたいなの作ってるのよ」
「い、いやぁ返す言葉もないね」
永琳はてゐと梟の頭を軽く叩くと、ため息をついて永遠亭の方を指差す。
「さぁ、患者は病室に帰りなさい」
「わかりもうした」
梟とてゐは渋々永遠亭へと帰っていく。
後日
竹林に再び孤影衆の正就が現れ、てゐの報告により梟に伝えられ二人は竹林の奥深くで密会していた。
「成る程...内府も苛立ちを押さえられんか」
「着々と天下統一まで歩を進めているというのに、未だ葦名に手出しできんからな...」
「しかし内府も人材不足というわけでもあるまい」
「葦名に攻めるという意見も無いわけではない。しかし誰もが一心を恐れている。それに大きな戦も終わり、内府は完全に日の本の勝ち組よ。そんな状況でわざわざ死地に足を踏み入れる者は少ない」
「ふふ...勝ち組か。皆勝利の美酒を味わいたいのだな」
「あの一心だ。まず最初に飛び込んだ者は斬られるだろう。勝つ事は確定しているのに、勝利を味わうことなく死ぬのは嫌なのだろう」
「腑抜けばかりよのぅ」
「それが人だ...それよりも梟」
「何だ」
正就は梟の足元を見ると、手術痕を見る。
「その足の傷は何だ」
「.....」
「既に治療されているようだが...忍びにとって足の怪我は」
「わかっておる。心配は無用だ」
「...本当だろうな」
「...ならば試してみるか?」
梟は殺気を放つと、正就は冷や汗が全身から流れ出す。
「...っ!」
「この梟、足に傷を負っても忍び一匹を狩る事なんぞ一捻りよ」
「い、いや...問題がないならば俺も何も言うことはない」
「.....」
梟は殺気を出すのを止めると、正就は悔しいが心底安堵する。
足を怪我しても『大忍び』の異名は未だに健在ということなのだろう。
「...正就よ、倅は未だ底か」
「!あ、ああ、そうらしい。葦名の者共もずっと動かぬから警備も要らぬと決めたらしい」
「.....そうか」
すると正就は辺りをキョロキョロ見渡し始め、誰もいないことを確認すると梟に小声で話始める。
「梟よ」
梟は正就の声の大きさで大事な話と察して、聞いていないふりをしながら聞く。
「実は...孤影衆の長である織部正綱様から...お前の事について聞かれたのだ」
「!」
「...あの方がただの世間話でお前について聞くわけがない」
「.....ふむ、用心しよう」
折れた刀がすぐ直るなんておかしいと思った方。
実は梟の折れた刀の修復については外伝として『梟の羽休め』が終わったら投稿しようと予定しています。
本当は本編として投稿しようと思いましだが、3話くらい書いてみたらビックリするほど梟が出る場面がなかったので外伝として投稿しようと決めました。
ぜひお楽しみに
それと同時にストックしてた話が外伝になってしまった為、また投稿が遅れるかもしれません。すみませぬ