梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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守り鈴

暑さも陰り、山も紅葉に染められる季節。

しかしこの辺りでは雨が続いており、てゐによるといくつかの川が氾濫したそうだ。

 

ここ迷いの竹林は穏やかな雨しか降らないので、関係のない事だが。

 

 

 

 

「うぅむ.....」

 

梟は永遠亭を歩き、部屋の隅や縁側の下を見ていた。

たまにウサギ少女に話しかけては、『鈴を見ていないか』と聞き回っている。

 

「少女よ、鈴を見ておらぬか」

 

梟に話しかけられたウサギ少女は、首を横に振る。

 

「そうか...邪魔をしたな」

 

梟は再び永遠亭を探し回る。

しばらくすると、てゐが梟の前に現れる。

 

「因幡殿」

「何か探し物かい?梟の旦那」

「うむ...鈴を見ておらぬか」

「鈴?」

「羽がついた小さな鈴なのだが」

「いつ無くしたんだい?」

「刀を手入れしておった時にウサギに持っていかれてのぅ」

「ウサギに?」

「勿論捕まえようとはしたが...軒下に逃げられてな」

「そのウサギの特長覚えてる?」

「いや...そのウサギの柄は真っ白で他とは変わらなかったのでなぁ」

てゐは腕を組んで、悩み始める。

 

「うーん、まずはその鈴を持ってたウサギが何処にいるか探してみるか」

「お頼み申す」

 

するとてゐはウサギ少女や野良ウサギをどこからか呼び寄せ、大声で話始める。

 

「梟の旦那の鈴を持ってった奴は誰だー?」

 

ほとんどのウサギ達は首を横に振るも、一匹だけ震えている野良ウサギがいた。

てゐは見逃さずに震えている野良ウサギを掴んで上にあげる。

 

「なーんで震えてるのかな?もしかして...持ってっちゃった?」

 

しばらく野良ウサギは抵抗していたが、逃れられないと悟ると首がゆっくりと上下に頷く。

 

「...じゃあ肝心の質問だ。鈴は何処だい?」

 

てゐはウサギの耳を野良ウサギの口に近づけると、何かを聞き取ってるのか頷きながら野良ウサギの鳴き声を聞いている。

 

「ふむふむ...じゃあ気に入って取ってったのはいいけど、遊んでたら無くしたと」

 

野良ウサギは申し訳なさそうに頷く。

てゐは野良ウサギを地面に下ろし、梟を見る。

 

「そういうことらしいよ...梟の旦那」

「うぅむ...」

「大切な鈴なのかい?」

「...いや、捨てた方が良いのは承知なのだが」

「?」

「.....」

「私の仲間のウサギが迷惑かけたね。任せといてくれよ梟の旦那。探し物は得意さ」

 

するとてゐは再びウサギ達に号令をかける。

 

「じゃあ皆で鈴探しだ!野良ウサギは毛が落ちるから永遠亭に上がらないように庭を探索!長寿ウサギは永遠亭内部を担当!野良ウサギは雨に濡れても後で拭いてあげるから存分に濡れな!じゃあ始め!」

 

てゐがそう言うと、ウサギ達は一斉に散会して鈴を探し始める。

 

「さ、私達もそれらしいところを探してみようか」

「すまぬな」

「いいってこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間程経ったが、まだ鈴は見つからない。

てゐがウサギ達に報告を聞いても、鈴は見つからないと答えるだけ。

 

鈴を持っていったウサギも、無くした場所を思いだしてその場所を確認しても何もないと困り果てていた。

 

二人は一旦休憩し、報告を整理していた。

 

「客室無し...梟の旦那の部屋も無し、私の部屋も無し...うーん...後は」

「庭はどうであったか」

「今のところ無しだね」

「では」

「いや、まだ探してない場所はあるよ。いや、探すのに許可が必要な場所なんだけどね」

「許可とな」

「『診察室』、『薬品倉庫』、『姫様の部屋』だね」

「その三つか」

「診察室と薬品倉庫はもしもウサギが入って薬品を床に落としたら大変だからね。あと姫様の部屋に入るのに許可がいることはわかるよね」

「永遠亭の主の部屋だからか」

「さて、どれから探そうか」

「ふぅむ...ならば姫様の部屋からでどうか」

「いきなり面倒くさいとこ選んだね。まぁいいや。じゃあ行こっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は輝夜の部屋の前に立つと、梟は静かに話始める。

 

「姫様、失礼します」

「...はいどうぞ」

梟はゆっくりと襖を開けると、てゐが部屋に入り輝夜の前に立つ。

 

「おっす姫さん」

「今日も元気ね、てゐ。それで、今日はどうしたの?」

「いやー、実は梟の旦那の鈴が無くなっちまってね。んで調べてない部屋を私達が...」

 

すると輝夜はあっという顔をして、掌を二人に見せる。

その掌の上には羽がついた鈴があった。

 

「あ!姫さんそれ...」

「これ梟さんのだったのね」

「何処でこれ見つけたの?」

「雨が降ってたから見に行こうとして縁側に行ったら落ちてたの」

「いやー、見つかってよかった。感謝するよ姫さん」

 

てゐは輝夜の持つ鈴をとろうとした瞬間、彼女は掌を下げて鈴を隠した。

 

「...えーっと、姫さん?」

「ふふ...返してほしい?」

「いや、あの、それ梟の旦那の...」

「拾ったのは私」

「え、えっと」

 

てゐは笑みを浮かべる輝夜に困惑する。

すると梟は少し笑い、輝夜の前に屈む。

 

「姫様。その鈴、差し上げまする」

「え?」

「ちょ、いいのかい?梟の旦那」

すると輝夜はあたふたして、梟に鈴を返そうとする。

 

「い、いや、あのね?イタズラっていうか、魔が差しただけというか」

「いや、丁度よい機会です。捨てようと思うておりましたゆえ」

「...本当にいいの?」

「はい、姫様なら存外な扱いは致さぬでしょう。では、失礼いたしまする」

 

梟は立ち上がると、輝夜の部屋から立ち去った。

てゐは輝夜に軽く一礼すると彼を追いかけた。

 

部屋に残された輝夜は鈴を見て、チリンチリンと鳴らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょいと梟の旦那」

 

縁側に座っている梟の後ろで、てゐが彼に話しかける。

 

「何かな」

「いいのかい?鈴あげちゃって」

「その事か...捨てようと思っていたのでな。ここに来て二年になるが...姫様にならばあげられる」

「全く、探す意味がないじゃないか」

 

てゐは梟の隣に座る。

 

「すまぬ」

「いいさ。元はといえばウサギのせいだし」

「...」

「ねぇ梟の旦那...何で捨てようと思ってた鈴を探してたんだい?要らないなら放って置けばよかったのに」

「.....因幡殿には恩がある。話してもよいかな」

 

すると梟は雨が降る空を見ながら、てゐに話始める。

 

「あれは倅にやろうとしていた守り鈴でのぅ」

「倅!?梟の旦那結婚してたの!?」

「いやいや、血は繋がっておらぬ。戦場にて拾うた孤児でな」

「ああ、なんだ」

「倅に儂の技を全て教えた頃に褒美として授けようとしたのがあの鈴よ...渡せはしなかったが」

「何で渡さなかったのさ」

「忍びの世界はずっと親と子でいられるわけではない。儂は倅に親は絶対と教えたが...あやつもいつか時が来れば選択を迫られる。儂に逆らうか、掟に従うか」

「...」

「その時に、褒美として授けた儂の鈴が鳴ってしまえば倅の判断は鈍るかもしれん。だから授けなかった」

「けど...掟に逆らったらどうすんのさ」

 

すると雨がひどくなり始め、雷が鳴り響き永遠亭は一瞬光と轟音が響き渡る。

 

 

「その時は斬る」

 

てゐはその言葉を聞いて驚く。

 

「き、斬るって...息子でしょ?」

「それが忍びである」

「.....」

「...」

「?」

「儂の全ての技を教えた倅は強くなった。そしてこれは親としてか、それとも忍びとしてかはわからぬが...成長した倅と本気で刀を交えたいとかつては思うていた」

「かつて?今はもう思ってないってこと?」

「ふふ...今の儂ではなぁ...あやつに遅れをとるかもしれんのでの」

「.....」

 

梟は少し咳き込むと、立ち上がった。

 

「少し話しすぎた。ではな、因幡殿」

 

梟は自分の部屋に戻ると、てゐは大雨の空を見る。

 

「...変な親もいるもんだね」

 

 

 

 




梟は昔子供だった狼を鍛えるために薄井の森に置き去りにしたらしいです。
帰ってくれば息子のまま
死んだらそれまで
厳しすぎる

文字の読み方とか書き方とかも梟が教えたんでしょうかね?
気になりますなぁ
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