梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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禁薬の煙

「これで良いですかな」

「もう少しドクセリを調合した物を加えましょう」

「御意」

 

永琳と梟は診察室の奥にある調合室にて、ある薬の調合を行っていた。

色んな毒を調合した物を慎重に混ぜ合わせているため、二人の顔には汗が垂れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間前

梟は永琳に呼ばれ、診察室に訪れていた。

 

「何用ですかな」

「てゐと姫様に聞いたわ。大切な鈴をくれたらしいわね」

「その事か」

「何かお礼がしたいの。それで考えたのだけれども...前に約束した薬の調合法を教えてあげる事にしたわ」

「ほう、それはありがたい」

「要望さえ貰えればどんな薬でも考えるわよ」

 

すると梟は考え出すと、申し訳なさそうに話す。

 

「では...斬られても再生する生物を再生させないようにする...などは出来ますかな」

「再生能力を阻害する薬ってことね。出来るわよ」

 

無茶な注文をした筈なのだが、いとも簡単に答えた永琳に梟は驚く。

 

「な、ならば...それと...他の薬を用いても治すことはかなわぬようにもしたいですな」

「成る程...他の薬の効果も阻害...予想はついてるけど戦闘用の物よね?」

「その通り」

「わかったわ。少し待ってて。それと...」

 

すると永琳は紙にスラスラとへ何かを書くと、その紙を梟に渡した。

 

「この紙に書いてある物を薬品倉庫から取ってきてちょうだい」

「心得た」

「瓶の色や特長を間違えないようにね。まぁ貴方なら大丈夫でしょうけど」

 

梟は薬品倉庫へ向かうために診察室を出る。

 

 

 

 

 

 

 

梟は永琳から借りた薬品倉庫の鍵を使い、中に入るとそこは独特な匂いを放つ多くの瓶が並ぶ光景が広がった。

中に入り近くの机にある蝋燭に火をつけて、早速指定の瓶を探し始める。

 

「...かなりの量だのぅ」

 

梟は永琳の指定する瓶を見つけ、入り口近くの机に置いていく。

 

彼は興味本位で、他の棚にある薬品を見てみる。

中には黄色地の上に三つ葉の赤い家紋のようなものが描かれた瓶や、髑髏が描かれた瓶。

紅い茸の絵が描かれた瓶や、トリカブトの絵が描かれた瓶もあった。

これらの瓶を見ると、梟の直感が危険信号を発していた。

 

「...全て危険な物か」

 

梟は指定された瓶をさっさと外に持ち出し、薬品倉庫に鍵をかけると瓶を持って診察室へと急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

ある程度の調合は終了し、永琳は梟が薬品倉庫に行っている間に作った調合法が描かれた紙を見つめていた。

 

「これで注文通りの物が出来る筈よ」

「ふぅむ...慎重に作らねば危険であるな」

「後は硝酸カリウムと砂糖ね...簡単だけど十分効果は出るわ」

「...砂糖...?」

「あら、わからない?煙玉の材料よ」

「煙玉の...?しかし高価な砂糖を使うなど」

 

戦国時代の砂糖はかなり貴重であり、有名な家の当主でも少量しか得られなかった。

 

「砂糖なら私があげるわ。いくらでもあるから」

「なんと...貴重な砂糖がいくらでもと...一体何処で手に入れているのですかな」

「...秘密」

「成る程.....して、その煙玉の効果はどれ程の物なのだろうか」

 

すると永琳は縁側に出ると、硝酸カリウムと砂糖を組み合わせた玉にある導火線に火をつけて庭に投げる。

 

火が玉の内部に入ると、白い煙が大量に一気に吹き出し始める。

その煙は延々と辺りを広く包み、先が全く見えないほど濃い。

 

「どう?」

「中々ですな...」

「これを薬に混ぜて、投げて地面についた瞬間毒煙が放出する玉にしましょ」

「...流石永琳殿、そんな事が出来るのですかな」

「勿論よ」

 

二人は診察室に戻ると、永琳は椅子に座り調合法を書き換えて紙を梟にもう一度毒煙玉を作らせる。

 

「じゃあ今度は一人で作ってみて。貴方なら出来る筈」

「わかりもうした」

 

梟はゆっくりと慎重に調合し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二時間後

毒煙玉が五つ出来たところで、梟は休憩に入る。

 

「ふぅ...根気がいる作業ですな」

「中々の腕前ね。もしかして過去に薬を調合したことあるの?」

「...かつて知り合いの一人が薬師であり、その者の真似をしてみただけ」

「へぇ、知り合いの薬師ね」

「無論、永琳殿の方が技は上ですがな」

「ふふ、そうなの?」

 

永琳は少し頬を赤らめ、梟の肩を叩く。

すると梟の手が机に当たり、毒煙玉が一つ床に落ちる。

 

 

「「あ」」

 

 

煙は地面に落ちた瞬間、緑色の煙が調合室全体を包み込む。

 

「永琳殿!」

「落ち着いて梟さん!大丈夫!死にはしない...筈よ!」

しばらくして煙が晴れると、二人は自分の体を見る。

 

体には緑色の煙が少し纏っており、特に苦しいわけではないが二人は急いで外に出る。

 

そして体を叩くも、煙は体から離れない。

 

「これは...」

「...気をつけて梟さん。今私達が怪我をしたら治らずに重傷化するわよ」

「...」

「とにかく落ち着いて。じっとしていればやがて毒は消えるわ」

「承知」

 

二人は椅子にでも座ろうと、診察室を見渡す。

 

しかしそんな二人を遠くに上機嫌なてゐが現れた。

 

「お!二人ともー!」

 

てゐは勢いよく二人目掛けて走り出すと、梟の体目掛けて突っ込んだ。

「ぬおっ!?」

 

梟は油断していたこともあってか、てゐの突撃に耐えられず後ろに吹き飛んだ。

 

「ふ、梟さーん!」

 

梟は壁に叩きつけられると、その痛みがずっと引かず立ち上がれない。

 

「こ、これは...!み、見事で...すな...永琳...殿」

「言ってる場合!?」

 

するとてゐの行動を見ていた他のウサギ少女達は、日頃からお世話になっている永琳に今なら甘えてもいいのかと勘違いする。

 

そして数十人が永琳の胸へ突っ込む為走り出す。

 

 

 

 

「...え?」

 

 

 

 

 

 

その後二人は即入院した。

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