梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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護身

雪も溶けて、春の暖かい風が竹林を吹き抜けていた。

 

梟もここに来て二年と約半年が経つ。

 

正綱との件もあり、彼は最近永遠亭の中といえども警戒していた。

彼は部屋で装備の手入れをしていると、輝夜が部屋に入ってくる。

 

「梟さぁん」

 

輝夜は座っている梟の肩に抱きつき、涙目で彼を見る。

 

「...如何しましたか」

「永琳がぁ...危険だからってウサギ達と散歩も許してくれないの」

「...永琳殿が正しいのでは」

「梟さんまでぇ...」

 

梟はどうしたものかと考えていると、隣にいる輝夜の事について考える。

ここに住まわせてもらっている頃から一番よくわからないのが彼女である。

永遠亭の主らしいが、あの永琳の主に相応しい器量があるだろうか。

 

むしろ少しワガママな所がある子供のようである。

 

そんな彼女は月にいるらしい住人に追われていて、てゐや永琳によって隠されている。

 

彼女は何故追われているのだろうか?

 

すると梟はかつて葦名城の資料で少しだけ読んだ本の事を思い出す。

 

「...竹取翁」

「え?」

「あ、いや...姫様が竹取翁に出てくる姫と同じ名前と思いましてな」

「それは当然よ」

「...?」

「私だもの」

「...姫様、お戯れを」

「嘘じゃないわよ。あの時は大変だったんだから」

 

梟はからかわれていると思い、先程の話に戻した。

 

「姫様、お外に出たいのならば護身術でも習われては?」

「護身術?」

「剣術、柔術でも。それこそ永琳殿から弓術を教わってみては如何ですかな」

「成る程...私が強くなれば永琳も許してくれるかしら」

すると梟は輝夜の手首を一瞬見る。

細くしなやかで、力を入れたら折れてしまいそうな手首だった。

これでは剣術は無理かと判断する。

 

「...姫様ならば柔術か弓術の方が」

「決めた!梟さん、私に剣術教えて?」

「...は?」

「梟さんの持ってる長い太刀を扱えるようになれば永琳も強くなったって許してくれる筈よ」

「お待ち下さい、儂は」

「木刀ならウサギに持たせてあるから庭へ行きましょ」

 

すると輝夜は梟の着ている服のえりをつかむと、とんでもない力で彼を引きずっていく。

 

「ひ、姫様!?」

 

梟は全体重をかけるも、輝夜を全く止められない。

その細い手首からは想像できない怪力であった。

 

「な、なんという力だ...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梟と輝夜は庭に出ると、彼女はウサギ少女から木刀を受けとる。

格好も黒の袴に白の道着に着替え、長く美しい髪も一つにまとめていた。

 

「さぁ、何すればいいのかしら」

「.....」

 

梟は悩んでいた。

正直梟の技は全て相手を確実に殺すものであり、護身術というよりは殺人術という方が正しいだろう。

 

そんな彼が、姫という地位についている者に殺人術を教えるわけにはいかない。

 

手裏剣の投げ方でも教えようと思った時、葦名に世話になっていたある記憶を思い出す。

 

「.....姫様、ならば一つ教えられる剣術があります」

「それは何かしら」

梟は刀を抜いて、大きく上に振り上げる。

そして右足を前に踏み出すと同時に力強く振り下ろした。

 

輝夜はその姿を見て軽く拍手していた。

 

「今のは何かしら」

「儂が長く世話になっていた場所で教わる剣術『葦名流』でございます」

「葦名流...かっこいい」

「そして今のは葦名流『葦名一文字』...単純ではありますが、葦名流はこれを極めなければ話になりませぬ」

「葦名一文字...うんうん、強そうね。けどただ刀を振り下ろすだけなの?」

「足の踏み込みも大事でございます。刀の振りと足の踏み込みを同時に合わせれば巨大な丸太すら紙切れのように斬れる...と話しておりました」

 

輝夜は自信無さそうな梟に疑問を抱く。

 

「?話していた?」

「はっ...実は儂も葦名流としてはこの技しか知りませぬ」

「そうなの?」

「その上に儂はこの技を極められませんでした。葦名流を起こした者から不合格を貰いましてな」

「あらあら」

「しかし極めた者の一文字は何度も見ています。合格等の判断は出来るかと」

「よぉし、ならやってみるわね」

 

輝夜は木刀を構えて、振り下ろした。

 

「やぁ!」

「...」

 

わかっていたことだが、姫の素振りは素人以下だった。

足の踏み込みは力が足りず、刀の持ち方さえ間違っている。

 

「姫様」

「何かしら」

「刀というのは右手が上で左手が下でございます」

「そうなの?」

「出来るだけ刃先を上を向けるように」

「ふむふむ」

「それと、出来るだけ全力で振ってくださいませ」

「...いいの?」

 

梟は輝夜の困った顔で許可を求める問いに、疑問を抱くが頷いた。

 

すると輝夜は息を整え思い切り踏み込み、木刀を振り下ろした。

 

その瞬間地面が大きく揺れ、木刀は握り締めていた部分より上から折れてしまった。

 

踏み込みと刀を振るタイミングは全く合っていなかったが、その威力は硬い木刀が地面に触れず折れるほどの威力。

 

梟はただ唖然としていた。

 

「出来たかしら!?」

 

少し息が荒い輝夜は、梟に問いただす。

 

「..........合格でございます」

「やったぁ!」

 

梟は輝夜の怪力に驚いていた。

もしかすると力は鬼と同等かもしれない。

 

輝夜は嬉しさのあまり折れた木刀を落としてしまい、梟は代わりに拾おうとする。

 

そしてその折れた木刀にまた驚いた。

その柄には彼女の握りしめた跡がくっきりと残っており、それは彼女は相当な握力を持っている事を示していた。

 

 

梟は何故彼女が永遠亭の主なのかという疑問が晴れ、納得と同時に少しばかりの恐怖を覚える事となった。

 

 

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