永遠亭に彼が住んでからもうすぐ三年に迫ろうとしていた。
「.....」
梟は謎の胸騒ぎがしており、完全装備でジッと動かず何かを待っていた。
するとてゐか現れ、梟の近くに寄る。
「梟の旦那」
「.....正就が来たか」
「竹林で待ってたよ」
「...すまぬな」
梟はてゐと共に竹林へ向かう。
二人は竹林の奥まで歩くと、正就の姿が見えてきた。
そして彼も二人が来たことに気づき、梟の前に立つ。
「正就」
「梟」
「.....来たか」
「ああ、一心が病にて倒れた。死んではいないが...最早余命僅かと報告が来た。まだ内府にも伝えられていない情報だ」
「.....ならば」
「しかし...その前にやる事がある」
「...?」
正就は刀を抜いて、てゐに刃を向ける。
「ひぇ!?」
梟はてゐの前に立ち、彼女を庇う。
「何をする」
「正綱様のご命令だ...『痕跡は残すな』と」
「...待て、ここは侵入者を迷わせる場所...情報が漏れることはない」
「我らの長はそう考えてはいない。退くんだ梟」
「.....」
「まさか逆らうわけではないだろうな?お前の野望を果たすには俺の協力は不可欠だぞ」
正就はゆっくりとてゐに近づくが、梟はどかない。
「...正就」
「もう引けんのだ...正綱様はすぐそこまで迫っている!」
正就は刀を振り下ろすが、梟は瞬時に刀を抜いててゐを守った。
「.....」
「...梟っ!」
梟は正就の刀を弾くと、てゐの前に立って刀を構える。
「いいか梟...俺はお前と繋がっていることが正綱様にバレている...!まだ本当の目的は知られてないが...疑っていることは確かだ」
「ならば何故因幡殿を殺そうとする」
「...正綱様は気づいていたぞ。その女がお前と正綱様の会話を聞いていたことを」
「!」
「知らなかったでは通せんぞ梟...いや、お前は気づいてた筈だ!なのに何故そいつを殺さなかった...!殺していれば何事もなくお前を迎えに来れた筈なのに」
正就は刀を構える。
「おかげで俺がこの竹林の始末を命令された...任を遂行し、孤影衆への忠誠心が試されているんだ」
「.....」
「そしてすぐに俺が始末の報告をしなければ...正綱様率いる大勢の孤影衆がこの竹林を攻める手筈...女を始末しなかったことでお前も狙われるだろう」
「!」
「梟、私情は捨てろ。俺とお前が一緒にこいつの首を正綱様に見せれば孤影衆はお前と共に葦名攻めを開始できる!それとも野望を捨ててまでこいつらを守るのか!?」
梟はてゐを顔を見る。
彼女は正就の殺気に怯えており、梟に小さな声で話す。
「ふ、梟の...旦那?」
すると梟は笑みを浮かべ、てゐの頭に手を乗せる。
「心配せずともよい、因幡殿」
そして梟は正就の方を振り向き、手裏剣を投げる。
「ぬぉっ!?」
正就は手裏剣を刀で防ぐが、その瞬間梟は刀を構えて思いきり左から右へ薙ぎ払う。
あまりの衝撃に正就の刀は後ろに吹き飛ばされた。
「お、追い斬り...!?」
「正就...」
正就は直ぐ様梟の顔面を蹴ろうとするも、簡単に防がれ地面に転ぶ。
「おのれぇ...梟!」
「正就、お主に頼みたいことがある」
「裏切り者が今更何を!」
「今すぐ本部に戻り、『一心危篤、葦名攻め好機』と内府に伝えよ」
「なっ!?」
正就は梟の思わぬ言葉に攻撃を止めてしまう。
「ど、どういうことだ」
「内府は好機あればすぐにでも葦名を攻めたい筈...一心危篤の報があれば兵や孤影衆に葦名攻めの命が下る」
梟は刀をしまい、腕を組んで話を続ける。
「そしてその命は正綱が不在でも無視できぬ筈だ。残る孤影衆は正綱捜索ではなく、内府の命を優先しすぐに戦の準備を始めるだろう」
「な、何を考えているのだ梟...!」
「...ここで正綱を討つ。正綱体制の孤影衆は何かと邪魔だったのでな」
その言葉に正就は驚きのあまり、後ろに下がってしまう。
「ま、正綱様を討つだと!?」
「不死の探索にお主の大将は障害になる」
「お、お前は」
「正就、考えてみよ。お前が例え不死の根元を探し当てたとしても、独占できると思うか」
「う...」
「必ず正綱にばれてしまうだろう。そして孤影衆は全員が不死となり、お前の野望は永久に叶わぬ」
「.....」
「だが正綱さえいなくなれば、不死の力はお前と儂のものだ。儂らに本当の目的があるのではと疑っているのは奴だけだからのぅ」
「だ、だが...」
「正綱が死に、お主が不死となれば次の孤影衆の長はお前しかおらぬ」
梟の話に、正就は汗まみれで聞いている。
「元々正綱は不死になってから暗殺しようと思うていた...順番は違うが構わぬだろう」
「し、しかし...ここで正綱様を殺せたとしても...すぐバレるのでは」
「ここは迷いの竹林...死体は土に還り、捜査しようにも捜査した者も帰れず報告は本部に届くことはない」
「.....」
「正綱がいない場合誰が孤影衆の指揮をとるのだ」
「...恐らく正長だろう」
「ならば問題はない。ここで儂は正綱、そして奴に従う孤影衆の首をとる。お前はここを去って内府に葦名攻めの好機と伝える。たとえ正綱がいなくとも葦名を早く攻めようと思う内府の命令は絶対下るであろう...臨時で孤影衆は正長が指揮をとり、ここを出た儂はそやつらと共に葦名を攻め、その隙にお前は不死の根元を探る...」
正就はしばらく考えると、汗まみれの顔で梟を睨む。
「か、勝てるのか...大勢の孤影衆と伝説の忍びである織部正綱に...!」
「...一人残らず狩り尽くそう」
「..........いいんだな」
「内府に伝えるのだ。一心危篤、今こそ葦名を攻めるべきと」
「わかった...!」
すると梟はてゐの方を向く。
「因幡殿、直ぐに正就を竹林の外へと案内してくれ。儂は永琳殿に事情を説明する」
「わ、わかった」
てゐは正就を連れて竹林の出口へと案内していった。
梟も野良ウサギが永遠亭まで案内するため後ろをついていく。