永遠亭に梟が戻ると、直ぐ様診察室へ向かい永琳に会いに行く。
「永琳殿!」
「!?どうしたの梟さん?」
「重要なお話が...!」
梟は直ぐ様永琳に説明した。
孤影衆がてゐと自分を狙っていること。
その長と大量の忍びが攻めてくること。
そしてこの永遠亭に危険が迫っていると伝えた。
「.....」
「申し訳ありませぬ...決して迷惑をかけるつもりは無かったのですが」
梟は頭を下げて、永琳に謝る。
「...いいえ、謝らないで頂戴。てゐや貴方に何かあれば姫様が悲しむわ...それよりも、敵が来るなら準備しなくちゃね」
「.....」
「...ウサギ達はてゐが戻り次第ここに避難させましょう」
「敵の大将はこの竹林の仕組みを理解してました。ここも隠しているとはいえ見つかるかもしれませぬ」
「大丈夫よ。たとえここを見つけられてもこの永遠亭の内部は有事の際に侵入者を迷わせる仕組みにできるの」
「なんと」
「...問題はこっちの数の少なさね...」
すると永琳は永遠亭の屋根に飛び上がり、梟も彼女に続く。
そして二人で竹林を見渡すと、作戦会議を始めた。
「敵は忍びだったわね」
「孤影衆と呼ばれる熟練の忍び達です。足をまるで刀のように扱い、毒手、忍犬を引き連れる事もある...恐らくこの世で最も厄介な忍び達と言ってもいいでしょう」
「...」
「しかもそれを率いているのは伝説の忍びである織部正綱という者。内府の無理難題な依頼を全て完璧にこなした強者でございます」
「全く頭が痛くなるわ」
「如何いたしますか」
「そうねぇ...」
永琳は悩んでいると、てゐが永遠亭に帰って来た。
「梟の旦那ぁ!あの忍びは無事逃げたよぉ!」
てゐも屋根に登り、梟の前に立つ。
「すまぬ因幡殿、ご苦労であった」
「それよりも...あの忍びが言ってたんだ。あと一刻もすれば攻めてくるだろうって」
「一刻か...」
一刻は現代の時間で約二時間程である。
「永琳...私はどうしたらいい?」
「まずウサギ達を永遠亭へ避難させなさい。それと永遠亭内部を迷宮にしておいて」
「わ、わかった」
てゐは屋根から飛び降りて、再び竹林へ走っていく。
「梟さん」
「何でしょう」
「竹林の仕組みを敵は理解しているのよね」
「恐らくは...正綱のみかもしれませぬが」
「理解しているのは大将のみ...なら敵は大将を先頭に集まって行動する可能性が高いわ」
「となると手出しは難しいですな。孤影衆数人ならばまだしも、何十人となると分が悪い」
「なら散開させて、個々に倒していけば」
「それならば孤影衆は何とかなるかもしれませぬ...しかし正綱はどういたしましょう」
「そうねぇ...少し危険だけどいいこと思いついたわ」
「どんな策で」
「てゐが帰ってきたら早速行動開始よ」
一刻後
竹林の外では五十人程の孤影衆が全身黒の服で身を包んだ正綱の前に屈んでいた。
「.....正就はしくじったか」
正綱は立ち上がると、孤影衆も全員立ち上がる。
「では行くぞ。兎と梟狩りだ」
「「「はっ!」」」
正綱を先頭に、孤影衆は迷いの竹林へと入っていく。
正綱の後ろにぴったりとついていく孤影衆。
本来忍びは群れることはなく、異様な光景であった。
それは孤影衆達も違和感を感じており、ある一人が正綱に問いただす。
「正綱様」
「何だ」
「何故この竹林では単独行動が許されぬのでしょうか」
「お前にはこの竹林の異常がわからんか?」
「.....?」
「ならば足跡を見てみろ」
孤影衆は全員後ろを向いて地面を見ると、大量にある筈の足跡が全くない。
「な、何だこれは」
すると正綱は孤影衆の背中にある刀を抜いて、近くの竹を斬った。
竹は倒れてくるがすぐに地面に吸い込まれるように消えて、地面に埋まった短い竹はすぐに成長し先程と変わらぬ高さにまで成長する。
「こ、これは一体...!?」
正綱は刀を部下に返すと、話ながら進軍を再開する。
「ここは侵入者を確実に迷わせる場所なのだ。辺りの風景が似ている事は勿論、足跡は消え、竹に目印をつけても消える...夜になれば霧も出て、月の光でさえ射し込まぬ...」
「お、恐ろしい場所ですな」
「このわしでさえ当初は迷った。二週間かけてこの竹林の特性を知って帰れるように理解したのだ」
「...」
「わしから離れたらお前らは二度とは生きて帰れぬ。だから単独は許さなかったのだ」
「ご説明感謝いたします」
すると一人の孤影衆が驚き声をあげる。
「あ!」
全員が孤影衆の指差す方向を見ると、そこには殺害の対象であるウサギ耳をした少女がいたのだ。
「貴様...!」
「ようこそ迷いの竹林へ」
孤影衆全員が刀を抜くと、正綱が前に出る。
「...わしと梟との会話を聞いていた少女だな」
「あんな神妙な顔つきで話してたら聞きたくなるもんさ」
「その好奇心がお前の命を縮める結果となる」
正綱はてゐに近づこうとすると、彼女は笑いだす。
「あははは!殺されると知ってて何もしないわけがないだろう?」
するとてゐは近くに結んである紐を引っ張ると、孤影衆のいる場所に多くの竹が空から落ちてくる。
「うおっ!」
何人かは頭に竹を受けてしまうが、ほとんどは刀で竹を斬って避ける。
「小細工を」
「悔しかったら追いついてみなー!」
てゐは竹林の奥へと走り出すと、孤影衆が追おうとする。
「おのれ!」
「まて!」
正綱の声にほとんどの孤影衆は止まったが、数人はてゐを無視して追いかけようとする。
しかし数人がてゐのいた場所に足を踏み入れた瞬間落とし穴が現れ、全員落ちてしまった。
「がっ!」
「ぎゃっ!」
落とし穴に落ちた者達の声が途絶え、一人が確認にいくと正綱の方を向いて首を横に振る。
「罠か...しかも孤影衆でも避けられないほど地面に同化した落とし穴...よいか!わしからはぐれるなよ!」
孤影衆は更に警戒して進み始める。
それを遠くから見つめるのは月の頭脳と呼ばれる永琳と、大忍びと呼ばれる梟であった。