梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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応戦

正綱率いる孤影衆は迂回に迂回しながらも着々と永遠亭へ近づいていた。

 

いくつか罠もあったが、彼らは何とか突破していた。

 

しかししばらく進むと、正綱が腕をあげて全員の歩みを止める。

 

「如何いたしました?」

「...」

 

正綱達の目の前には、竹があまり生えていない広場のような場所が広がっていた。

 

「ふぅむ...迂回するぞ。この場所は嫌な臭いがする」

「確かに...」

 

正綱はその広場を避けるため、迂回しようとした瞬間

 

広場の真ん中に一本の矢が突き刺さる。

 

「!」

 

すると矢につけられていた瓶が割れて、中から紫色の煙が一気に吹き出し始める。

 

「煙を吸うな!毒かもしれん!」

 

正綱はすぐに口と鼻を布で隠し、広場から離れようとする。

しかし前にいた数人が煙を吸ってしまうと、急に大声をあげて刀を振り回し始める。

 

「この煙...正気を失わせる類いのものか」

 

すると正綱は懐から小さな刃物を取り出し、正気を失った孤影衆の額に投げる。

「情けない...それでも孤影衆か」

 

正綱は殺した仲間を見向きもせず、歩きを再開する。

 

 

 

 

 

 

しばらく歩くと、正綱が再び腕をあげて孤影衆を止める。

 

「...梟」

 

正綱と孤影衆が進む道には、梟が立ち塞がっていた。

 

「正綱殿」

「最早後戻りはできぬぞ、お主はわしを敵に回したのだ」

「この先に進めば...全滅を覚悟してもらいたい」

「...大見得切ったな。相手を殺す気なら黙って静かに殺すのが忍び...こんなところで喋る暇があったら罠の一つでも作れ」

「では...織部正綱殿、お覚悟めされよ」

 

梟は地面にある竹を持ち上げて、上空へ向けると導火線に火をつける。

竹の中にある火薬が爆発し、小さな玉が上空へ打ち上げられ花火のように爆発する。

 

「!?」

 

孤影衆は上空の爆発に気をとられ、梟の姿を見失ってしまった。

 

「ふ、梟が消えた!探せ!」

「馬鹿者!広がってはならぬ!戻れなくなるぞ!」

 

孤影衆が狼狽えていると、正綱は仲間の悲鳴を聞き逃さなかった。

 

「!」

「うぐっ!」

正綱はしゃがんで見ると、心臓を矢で貫かれて即死した孤影衆の仲間の姿を見る。

 

「弓で狙われておる!注意せよ!」

 

孤影衆は全員が刀を抜き、辺りを警戒するが矢は彼らの刀をうまくすり抜け心臓に突き刺さっていく。

 

「ぐおっ!」

「くっ...矢は何処から飛んでくるのだ!?」

「射ちながら移動していると思われます!」

「くっ...」

 

このままでは固まって移動する孤影衆はいい的であり、この迷路のような竹林では全員で走る事もできない。そのため正綱は全滅よりはましと判断し全員にある命を出す。

 

「仕方なし...!散開せよ!弓兵、あの兎の少女、梟を見つけ出し討ち取れ!」

「「「ははっ!」」」

 

孤影衆は二~三人で固まり、各方面に散開し始めた。

 

正綱は飛んで来た矢を掴み、地面に捨て竹林の奥へと走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、こっちじゃないのか?」

「い、いや、こちらから矢が飛んで来たのを見た」

 

二人の孤影衆は正綱の言う通り迷ってしまった。

足跡はなく、目印も意味をなさない。

遠くの景色も変わらず、大声を出しても反応はない。

 

「くそ...どうする」

「とにかく歩いて他の奴等と合流しよう」

 

孤影衆達は互いに頷き、歩き出そうとした瞬間。

 

片方の孤影衆の胸が刀によって貫かれた。

 

「がはっ!!?」

「なっ!」

 

胸を貫かれた孤影衆は刀を抜かれ、その場で血を吹き出し倒れる。

そして倒れた後ろには、刀を構える梟がいた。

 

「き、貴様!」

 

孤影衆は刀を抜くと、梟目掛けて振り下ろす。

何合か刀を交えると、孤影衆は得意の足技で連撃する。

 

「おおおっ!」

「...」

 

しかし得意の足技は梟に見切られ、逆に踏まれて地面に叩きつけられる。

 

「うおっ!」

 

そしてそのまま梟は孤影衆の背中へと回り、刀を突き刺した。

そして片方の手で祈りながら刀をゆっくりと引き抜く。

 

「孤影衆は組織ゆえに皆が同じ事を習わされる。忍びの世で一度見られた技は二度と効かぬわ」

 

梟は二人の孤影衆死亡を確認すると、他の所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ...正綱様の言う通り離れるべきではなかったか」

「他の奴等も見つからん...このままではまた狙い撃ちされるぞ」

「孤影衆がなんて様だ...」

 

二人は歩き続けていると、目の前にいつの間に現れたのか謎の女性がいた。

そしてその女性は弓を持っており、孤影衆は直ぐ様刀を抜く。

 

「な!?貴様!」

「お前が仲間を射った弓兵か!」

 

「ようこそ迷いの竹林へ。そしてさようなら」

 

永琳は弓を構え、矢を放つと二人の孤影衆は軽々と避ける。

しかし避けた先を予測していたのか、永琳は直ぐ様第二の矢を放つ。

 

「がっ!」

 

矢は孤影衆の一人の額に当たり、鉢金を貫いて脳へと到達し後ろに倒れた。

 

「あ!お、おのれっ!」

 

孤影衆は刀を永琳目掛けて振り下ろすも、矢尻で受け流される。

そしてその隙に首の後ろを矢で貫通させられ、息が出来ず血が口から溢れ倒れた。

 

「ここに入ったのが運の尽きね」

 

永琳は他の場所へと移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうことだ!何故目印として刺した小刀まで無くなるのだ!」

「異常だ...常識を越えている...!」

 

二人の孤影衆は迷いの竹林の洗礼に、狼狽えていると近くで足音が響く。

 

「!?」

「今何かいたぞ」

 

すると上空からてゐが現れ、孤影衆の一人の頭に被さった。

 

「ほーら見えない見えない!」

「ぐわっ!何だ!?離れろ!」

 

てゐは孤影衆の頭を離さず、体重をかけてどんどん竹林の奥へと誘う。

もう一人の孤影衆もどうするべきかと迷っており、刀を抜いたまま唖然としている。

 

するとてゐが掴んでいる孤影衆の地面に落とし穴が現れ、二人は落ちていった。

 

「うわぁぁぁ...!」

 

もう一人の孤影衆が直ぐ様落とし穴を確認しようとすると、その瞬間てゐが彼の袖を引っ張り落とし穴へ落とした。

 

「ああああぁ...!」

 

てゐは地面に登り、落とし穴を確認する。

 

「ここは特に深く掘ったからね。しばらくは出れないよ」

 

てゐは薄い木の板を落とし穴に被せて、その場から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正綱は全速力で竹林の中を進んでおり、率いていた孤影衆は気にもしていなかった。

「...やはりな。この道を行けば...!」

 

この竹林は侵入者を迷わせ出れないようにしているが、正綱の調査の結果条件さえ揃えばここの中心に辿り着くことに気づいていた。

例えるなら迷いの竹林は数千ピースある『永遠亭が中心にある迷路の絵』のパズルのような物であり、二十四時間の経過によって永遠亭がある中心のピース以外は絵が変化する特性がある。

 

しかし変化するピースの絵の種類はそれほど多くはなく、それを全て覚えれば出口への道は見つかりやすい。

 

だが絵の中心である永遠亭へ行くとなると、中心まで道が繋がっているピースの全体絵を知っていなければならない。

勿論その絵の種類は膨大であり、とても人が覚えられる数ではない。

 

正綱は中心まで行けるピースの全体絵をいくつか発見しており、幸運にも現在の竹林は正綱が発見した永遠亭への道順に変化していた。

 

つまり彼は永遠亭へと辿り着ける道を知っているのである。

 

 

 

 

そんな彼を陰から見ていたてゐは、汗を垂らして嫌な予感を感じていた。

 

「まさか...永遠亭までの道を知っている...?こりゃまずいんじゃないかい...いや、永遠亭は隠してあるから大丈夫かな」

 

するとてゐの後ろから、二人の孤影衆が現れる。

 

「ようやく見つけたぞ...!」

「やば、見つかっちゃったね」

 

 

 

 

 

 

 

 

正綱はしばらく進むと何もない広場に到着する。

 

「...馬鹿な、ここが終着点の筈だ」

 

正綱は辺りを探し、地面を触っても特に変わった所はない。

 

「...ここがあの少女と梟の住み家と思っていたが...わしの勘も鈍ったか」

正綱は戻ろうとするが、目の前から野良ウサギがやってくる。

 

「.....」

 

正綱は野良ウサギを掴むと、慌てて彼から逃げようとジタバタと暴れ始めた。

 

「...それ、逃げろ」

 

正綱は兎を離そうとした瞬間、自分の影より大きな影が地面に写し出されている事に気づく。

彼は兎を抱えたまま後ろを振り向くと、先程の広場に巨大な屋敷が現れたのだ。

 

「こ、これは...」

 

正綱は兎を持ったまま屋敷の門を開ける。

すると屋敷の庭には多くの兎が居り、正綱の姿を見るや全員逃げてしまった。

 

「...よくわからんが...ここが奴等の...っ!?」

 

正綱は殺気を感じ、その場で高く飛び上がる。

すると彼がいた地面に手裏剣が突き刺さり、飛んでいなければ背中に穴が開いていただろう。

 

「.....」

 

正綱は地面に降り立ち、後ろを見る。

 

そこには刀を構えた梟が立っていた。

 

「決着をつけるか、大忍び」

「...参る」

 

 

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