梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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決着、そして別れ?

迷いの竹林では、多くの孤影衆の死体で溢れかえっていた。

 

永琳は正綱が率いていた孤影衆の最後の一人を弓で仕留め、安堵するため息をした。

 

「ふぅ...骨が折れるわね」

 

すると後ろからてゐが現れ、息切れしながらも永琳に話しかける。

 

「はぁ...はぁ...これで忍びは全滅だよ」

「お疲れ様、てゐ」

「まったく...ここまで走ったのは久しぶりだね」

「まだ一人残っているわ」

「...敵さんの大将か」

「急いで永遠亭まで戻るわよ」

 

二人は永遠亭へと走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せいっ!」

「おりゃぁ!!」

 

梟の刀と正綱の短槍が何十合と交差し、二人の戦いは激しくなっていく。

正綱は短槍を両手で操り時には竜巻のように振り回し、時にはキツツキのように連続で突く。

 

梟は攻撃を何とか弾いていき、反撃の好機を狙っている。

 

しかし正綱は梟が足を痛めておることに気づいており、得意の足技で彼の足を蹴り上げる。

 

「ぬぐっ...!」

「どりゃあ!」

 

梟が体勢を崩すと、正綱は回転して短槍で薙ぎ払う。

だが梟は攻撃を受け流し、二連続で刀を横に振るう。

 

正綱は足で梟の攻撃を受け流し、反撃にその場で回転しながら飛び上がり足の甲で梟の頭を狙う。

 

しかし梟は後ろに下がり、正綱の蹴りを避けた。

 

二人は互いに睨み合い、ほんの少しの静寂が訪れる。

 

「終いにしようではないか、梟よ」

「よかろう...!」

 

正綱は短槍を構え、それに答えるように梟も刀を構える。

梟は足元に落ちている短槍を思いきり正綱の方へ蹴り上げ、すぐに爆竹を目の前にばらまく。

正綱は梟へと走りながら飛んでくる短槍を掴み、二本の短槍を構える。

 

「纏い斬りか...学ばぬ奴め!」

 

しかしその瞬間、左手に持つ短槍が爆発が起こる。

 

「ぬおっ!?」

 

梟が蹴り上げた短槍には少量の爆竹の火薬がついており、音と衝撃に正綱は手で顔を隠してしまう。

 

そこを逃さず梟は纏い斬りで正綱に攻撃する。

 

正綱は二本の短槍で防御するが、纏い斬りは防御しきれず後ろに吹き飛んだ。

 

さらにその炎と刃は正綱の着ていた鎧を斬り裂き、二本の内の一本である短槍を真っ二つに分断した。

 

「がはっ...!」

「...」

 

梟は倒れた正綱に近づいて、刀を構える。

しかしその瞬間正綱は地面の土を梟の顔に投げつけ、短槍で彼の刀を弾く。

「ぐおっ...!」

「梟!覚悟!」

正綱は短槍を梟の喉目掛けて、力を込めて突いた。

その時、チリンチリンと鈴の音が二人の間に響く。

 

 

 

 

 

 

ようやく永琳とてゐが永遠亭に辿り着き、梟と正綱との戦いで驚くべき光景を目にした。

 

梟は目に入った土を払うと、目の前の光景に目を見開いた。

 

なんと正綱の槍が貫いたのは、永遠亭の主である輝夜であった。

 

「かはっ...」

「姫様!」

 

梟は直ぐ様刀で槍をもった正綱の腕を斬り落とす。

 

「ぐぁっ...な、何者だ...!」

輝夜が刺された姿を見た永琳は直ぐ様弓を構え、五本の矢を正綱の背中に放つ。

 

さらにてゐが正綱の足を蹴って地面に転ばせると、倒れた彼を梟が刀で胸を貫いた。

 

「がっ...」

 

梟は正綱から刀を抜くと、すぐに輝夜を支える。

 

「姫様...!」

「ケホッ...梟さん...無事かしら」

「...何故...こんな儂をお庇いなされた」

「だって...危なかったから」

「.....」

 

 すぐに永琳が駆けつけると、輝夜の腹に突き刺さった槍を見る。

 

「姫様!」

 

永琳は直ぐに輝夜を抱えて、永遠亭へと走る。

梟は輝夜が永遠亭に運ばれていくのを見届けてから、死にかけている正綱の前に立つ。

 

「...この様な決着となってすまぬな」

「くく...ガハッ...構わぬさ...」

「孤影衆の遺体は全て竹林に捨て置く...我が野望を果たすためにはお主らは見つかってはならんのでの」

「...なぁ梟...最後に教えてくれ、お前は何を為そうとしているのだ」

すると梟は正綱の傷を見て、最早助からないとわかると彼の耳に口を近づける。

そして小声で誰にも聞こえないように話始めた。

 

梟の話を聞き終えると、正綱は目を見開いて驚いていた。

 

「.....はは...これは...これは...とてつもない野望を持った男もいたものだ。野心家を越えて馬鹿の類いだ...」

「正就も、平田屋敷も、ここでお主を始末するのも全て野望の為...いや、もう始まっておる」

「.....お前は影に生きる忍びに向いとらんな」

「...ええ、儂も長年そう思っています」

 

すると正綱の息は荒くなり、そして静かになった。

 

梟は彼の目に手を乗せて、目蓋を閉じさせる。

 

後ろからてゐがやってくると、梟はすぐに振り向き話始める。

 

「姫様は」

「...あれは助からないだろうね」

「...何と言うことだ」

「気にしない方がいいよ」

「...」

 

するとてゐは梟に近づき、刀を結ぶ紐に輝夜にあげた筈の鈴をつける。

 

「これは...」

「姫さんがやっぱり返すってさ。倅に渡してやれって」

「...そう言ったのか」

「うん」

「.....」

 

すると梟は刀をしまい正綱の死体を背負い、永遠亭の門から出ようとする。

 

「ちょいちょい、梟の旦那。どこへ行くんだい」

「...死体を始末する」

「...なら遠くには行かないようにね」

「承知」

 

梟は死体を担ぎながら門から出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梟は死体を埋めると、近くに座り一息ついた。

他にもウサギ達が続々と永遠亭から出て、竹林の中を走り抜く姿をみた。

 

恐らく竹林に危険なものはいなくなったので、解放されたのだろう。

 

「.....」

 

するとある一匹の野良ウサギが梟に近づく。

 

「...お主、ここの外へと案内できるか」

 

梟の話を理解しているのか、野良ウサギはコクコクと頷いた。

 

「ふふ...賢き兎よの」

 

すると梟は永遠亭から持ってきた筆と紙を懐から出すと、スラスラと紙に文章を書き始める。

そして終えると紙をたたんで懐にしまった。

 

「では、頼めるか」

 

野良ウサギはぴょんぴょんと跳ねて竹林の奥へと行こうとするが、その瞬間野良ウサギは二本の手に持ち上げられる。

 

「!因幡殿...」

「...去るのかい?」

 

ウサギを持ち上げたのはてゐであった。

 

「...うむ」

「そっか...寂しくなるね」

「お主らには最後まで迷惑をかけた...特に姫様にはな」

「大丈夫だよ。あの人は不死身みたいなもんだからさ」

 

梟は不死身と聞いて、笑い出す。

 

「ふふ...不死身か...羨ましいものよな」

「二人に別れの挨拶しなくていいの?」

「.....姫様は死に行き、永琳殿も嘆かれるだろう。それもこれも儂が原因だ...どの面さげて別れの挨拶を言えようか」

「気にしなくてもいいのに」

「慰めは不要」

 

するとてゐは梟を通り過ぎて、竹林の奥へと歩こうとする。

 

「ほら、ついてきなよ梟の旦那」

「...すまぬな」

「いいさ」

 

梟はてゐの後ろについていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人はゆっくりと歩き、竹林の外へと向かっている。

 

「梟の旦那」

「何かな」

「ありがとうね」

「...感謝されることは何もしておらぬ」

「いいやしたさ。今回の件...私が聞き耳しちゃったことも原因だからさ」

「その事か」

「私を殺しておけば...奴等もここには来なかったかもしれないし」

「因幡殿にはここにいさせてくれた恩がある...裏切れぬよ」

「.....」

 

するとてゐは梟の前に出て、歩きながら彼の方を向いて話しかける。

 

「ねぇ梟の旦那。そろそろ教えてもいいんじゃない?」

「...む?」

「梟の旦那は葦名って所にこれから攻めるんだろう?そこで何を求めてるのさ」

「.....不死の...竜胤の力を求めている」

「竜胤?」

「うむ...その力を手に入れれば、不死となれるのだ」

「不死に...何で不死を求めてるの?」

「不死となりて全てを喰らい、我が本当の名を世間に、天下に轟かせる為よ」

「本当の名前?梟ってのは偽名かい」

「忍びの世にてそう呼ばれているだけ」

「ふーん...何とまぁデカイ野望なこって」

「興味なさそうだな」

「ここは人間の世界の情報なんて入ってこないからね」

 

すると梟は少し笑い、竹林から見える空を見る。

 

「安心せよ、ここにも轟かせてみせようではないか」

「お、本当かい」

「...そして野望を果たしたら、姫様に報告しに来よう」

「そうだね、褒めてくれるかもね」

「.....」

「となると...私から姫さんに言わない方がいいかね」

 

てゐの疑問に梟は少し違和感を感じるが、あまり気にせず話を続ける。

 

「因幡殿にも世話になった」

「三年はあっという間だねぇ」

 

すると竹林の出口へと辿り着き、二人は互いに見合う。

 

「ではな、因幡殿」

「...永遠亭もしばらく静かになるね」

 

すると梟は懐から手紙を出して、てゐに渡す。

 

「...これを姫様に」

「手紙?」

「謝罪文の様なものだ。渡してくれ...姫様に死が訪れる前に」

「...わかった」

「世話になった。またいずれ、ここを訪れる」

「待ってるよ、梟の旦那。あんたなら大歓迎さ」

 

梟は一礼すると、すぐに風のように消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭では、永琳がてゐから梟の手紙を受け取っていた。

「.....てゐ」

「なぁに?」

「この謝罪文見る限り...貴方言わなかったのね」

「...」

永琳の隣では、腹を槍で刺さ瀕死だった輝夜が悲しそう手紙を読んでいた。

その腹には既に傷もなく、普通に立っているのだ。

 

「姫様が梟さんの求める不死だったこと」

「あんまりにも梟の旦那がしんみりしてたからさぁ...けど気にしなくていいって言ったんだけどね」

「...まぁいいわ。彼が原因で姫様が傷ついたのも事実...このくらい意地悪しても文句はないでしょ」

「梟の旦那が求めた正解が三年間近くにいたなんて思っても見ないだろうね」

 

輝夜は手紙を全て読み、ため息をついた。

 

「はぁ...寂しくなるわぁ」

「姫様、次は人を庇うことなんてやめてくださいね。不死とはいえ痛みまで消えるわけでは無いのですから」

「たまには痛みも感じとかないと忘れちゃうのよ」

するとてゐは手紙を覗き込むと、文章の最後に梟の本名が書いてあることに気づく。

「薄井右近左衛門...それが梟の旦那の本名かぁ」

「...けど梟って名前の方が私は好きね」

「私もだよ姫さん」

「永琳は?」

「...梟さんの方が私も...」

 

三人は互いに見合い、笑いが起きる。

 

そして輝夜は、手紙を閉じると話始める。

 

「...彼の名前が天下に広まることを祈りましょう」

「んでここに来たら姫さんを見せて呆気にとられる梟の旦那を見ようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし輝夜の祈りは通じず、梟は孤影衆と共に葦名を攻めるが、掟を破った狼によって不死の力を得ること叶わず討たれることとなる。

孤影衆の正就も梟が攻めている間に不死について探ろうとしたが、不幸にも葦名の天狗に出会い討死。

 

彼の野望は潰えたが、最後に輝夜から返された守り鈴によって『全身全霊で狼と刃を交える』と言う梟の願いが叶えられた事は誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在

 

永遠亭には鈴仙・優曇華院・イナバという新たな住人を迎え、平和に暮らしていた。

 

「こらぁてゐ!また罠仕掛けたでしょ!私を何回落とせば気が済むのよ!!」

「あはっはっはっ!引っかかる鈴仙がまぬけなのさ!」

「こうなったら一度痛い目に遭わないとわからないようねぇ...!」

「お、やるかい?まぁ私の罠はさ、忍びも認めた位の高度な罠だから鈴仙如きが引っかかるのも無理はないウサ」

「なぁにが忍びよ!なぁにがウサよ!そんなのいるわけないでしょ!」

 

二人がぎゃあぎゃあ騒いでいるのを、永琳と輝夜が見ていた。

 

「平和ねぇ」

「姫様、お茶が入りましたよ」

「ありがとう永琳」

 

輝夜はお茶を飲んでいると、玄関から大きな声が響く。

 

「すいませーん」

 

すると永琳が対応しに玄関へと向かった。

輝夜はお茶を飲みながら、空に浮かぶ満月を見る。

 

「...未だ名声は轟かず忘れ去られたまま...歴史は残酷ねぇ」

 

すると庭に永琳と鈴仙の知り合いである魂魄妖夢が現れる。

「ほらうどんげ。貴方にお客よ」

「え?あ、妖夢」

「こんにちは鈴仙」

「今日はどうしたの?」

「また剣術の練習相手になってもらいたくて」

「いいけど...まだあのわけのわからない剣術使ってるの?弾幕ごっこには無用だと思うけどなぁ」

「いいの、私が極めたいと思ったから」

「そう?まぁ私が口出しすることでもないけどさ」

 

妖夢が刀を抜くと、輝夜はお茶が入った湯飲みを置いて庭に立つ。

そして妖夢の近づくと、彼女に話しかけた。

「ねぇ、ちょっといいかしら?」

「?何でしょうか」

「私も剣術を少しは嗜んでるの。少し見てもらえない?」

「え?ま、まぁいいですけど」

 

すると輝夜はてゐに頼んで木刀を持ってこさせ、妖夢の前で刀を構える。

 

「いくわよぉ...」

「ちなみにどんな流派の剣を?」

「昔教わったの。名前はえーっと...『葦名一文字』...だったかしら」

「.....え?」

 

すると輝夜は木刀を大きく振り上げ、右足を前に踏み込み木刀を勢いよく振り下ろした。

 

その衝撃は庭の小さな石を全て吹き飛ばし、輝夜の周りだけ土が現となっていた。

 

「どう?教えてくれた人はこれで合格って言ってくれたのだけども」

「...今の技をどこで?」

「何百年も前に教わったの。かっこいいでしょ?」

「.....まさかここで葦名流と出会うとは」

すると妖夢は満面の笑顔で輝夜に答える。

 

「不合格です」

「ええっ!?」

 

 

 

 

 

 

 




あとがきと外伝もあるのでよければどうぞ
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