梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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外伝:墓地の忘れ傘

てゐはゆっくりと体を起こすと、下半身には穴の開いた屋根からの日射しに照らされていた。

 

火はすでに消えており、近くには覚妖怪がいた。

 

「お早うございます」

「ああ、おはよう」

 

てゐは早速刀を背負い、元気よく立ち上がる。

 

「さぁて、行って見ようかね」

「お別れですね」

「情報ありがと」

「構いません」

てゐは彼女の膝の上で寝ている覚妖怪の妹を見て、少し寂しそうな顔をする。

 

「大丈夫です。私達妖怪はしぶといですから」

「こんな時は心を読んでも口に出すな」

「ふふ...これは失礼を」

「じゃあね」

 

てゐはボロボロの家を出ようとすると、覚妖怪に話しかけられる。

 

「古明地...さとりといいます」

「...私は何も言ってないよ」

「ええ、口では何も言ってませんね。それと...妹のこいしに握り飯をありがとう」

 

てゐは背中を彼女に向けながら手を振ると、ボロボロの家を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃村から歩き始めてから数時間。

てゐは方角を間違えないように、墓地へと向かっていた。

 

「全く...こりゃ刀直したら梟の旦那に色々して貰おうかな」

 

すると辺りが冬の寒さ以上に凍え始め、カラスの声が響き渡る。

 

そしててゐは名前のない墓地へと到着した。

 

「うぇぇ...不気味なところだなぁ」

 

てゐは足音を立てずに鍛治屋を探すが、見つからない所か生き物の気配すらない。

 

そんな中、てゐの耳に足音を感じとる。

生き物の気配は無いのに足音があるなんておかしいと、てゐは墓石を背に隠れる。

 

「だ、誰だよこんな墓地に...」

 

てゐはゆっくりと墓石から顔を出して見ると、そこには白い人魂が浮かんでいた。

 

「ぎゃっ!」

 

てゐは思わず声を出すと、人魂の近くから妖忌が現れる。

 

「てゐ殿」

「あ、妖忌さん!よかったぁ」

「驚かせてしまったか」

「いやぁ安心したよ」

「てゐ殿もここに鍛治屋がいるという情報を?」

「妖忌さんも?」

「うむ」

「なら話は早いね。ここいらを探してみよう」

 

二人は辺りを捜索する。

 

すると妖忌が大きな声を出す。

 

「てゐ殿!」

 

てゐは直ぐ様反応して、妖忌のもとへ急ぐ。

 

 

 

 

妖忌は寂れた小さな寺の扉の前に居り、てゐが来ると扉を開けた。

すると中には青い髪をした少女が傘を抱き締めながら眠っていた。

 

「この子か...?」

「起こしてみるよ」

 

てゐはその少女を起こすと、彼女は欠伸をしながらゆっくりと起き上がる。

 

「ふわぁ...だぁれ?」

「や、やぁ」

「!驚け!」

「わっ!」

 

いきなり少女は傘を使っててゐの目の前で舌を出しながら驚かせてきた。

てゐが驚いたのを見ると、キャッキャと喜んだ。

 

「驚いた驚いた!」

「な、何なのさ」

すると妖忌は彼女の持っている傘を見る。

 

「これは...から傘お化けか」

「妖怪の中じゃ珍しくもないじゃないか」

「から傘お化けは使用者がいなくなった傘に宿った神霊がヘソを曲げた付喪神と聞いたことがある」

「そんで大事にされれば合わせるが、捨てられると妖怪化する...だったね」

二人が話していると、少女は妖忌の腰にある刀をジッと見ている。

 

「...その刀見せて」

「なぬ?」

「あちしがきたえてあげる!」

 

すると少女は妖忌の腰の刀を奪い取り、勝手に鞘から抜いた。

 

「こらお主!」

 

しかし少女は刀を見た瞬間、がっかりとして鞘にしまい直した。

 

「きたえられない...」

「き、鍛えられない?」

 

てゐは言葉の意味がわからず悩むと、妖忌は刀を腰に差しながら話す。

 

「儂がいつも手入れしているからな。修理も必要ないとわかったのだろう」

「...つまり、この子が」

「噂の小さな鍛治屋らしい」

 

てゐは直ぐ様背中にある刀を少女に見せる。

 

「ねぇねぇ、これも見てくれないかい?」

 

少女は梟の刀を抜くと、折れた刃を見て悩み出す。

 

「うーーーーん...」

 

少女はずっと唸って悩んでいると、結論が出たのかてゐに刀を返す。

 

「この子治すのむずかしい...芯までぽっきり折れてるもん」

「やっぱりぃ?」

「ではこの刀を素材に新たな刀を作ると言うのは」

「うーん...この子を素材に戻して作っても別の刀になっちゃうよ?」

「ふぅむ...」

 

妖忌は悩んでいると、てゐが話についていけず困惑しているので少女の補足をし始める。

 

「刀というのは芯金という柔らかい金属を芯に、皮鉄という硬い金属を包み、折り返しをして伸ばすという作業を繰り返し出来る物なのだ」

「そ、そうなんだ」

「そのため複雑に幾層にも重なった金属に再び刃をつけるとなると、約三万程の層全て繋ぎ合わせなければならん。それは不可能だ」

「...」

「その為前も言うたが...折れた刀は他の刀を使う時の素材にするか、脇差し等の短刀にするかの二つしかないのだよ」

 

それを聞くと、てゐはがっかりしてしまう。

しかし少女は首を傾けて、二人に話す。

 

「むずかしいけどできるよ?」

「...む?」

「つなげることできる」

「...」

 

妖忌は少女の言うことが一瞬わからず、唖然としてしまう。

 

「ならば聞くが...どうやって直す」

「この子次第」

「?刀次第とはどういう意味かな」

「この子に自分には命があるって気づかせるの」

「命を...?」

 

てゐと妖忌は互いに顔を見て、首を傾げる。

 

するとてゐは少女の持つ傘を見て、あることに気づく。

 

「もしかして...その刀を付着神にするって事かい?あんたと同じように」

「この子が生きれば...時間はかかるかもしれないけどゆっくりと治るよ」

「けど付着神なんて100年経ってから成るのが普通じゃないのかい?」

 

少女は立ち上がり、てゐが持つ刀に手を触れる。

 

「だからこの子次第。命があると気づいても、幼すぎてすぐに消えちゃうかもしれない...そうなったらこの子はもう治ることも、使うこともできない」

「...」

「けど消えなければ...この子は生きようと思ってくれる。そしたらあちしが折れた刃を軽く繋いで、そこからはこの子の出番」

 

妖忌は少女の話を聞いて、難しい顔をしながら考える。

 

「ふぅむ...刀を付着神に成らして意思を持たせる...付着神ともなれば妖怪のように早い再生能力を持つ...それを利用し刀を修復するというのか...」

「そうそう」

「そもそもどうやってこの刀に付着神に...」

「あちしならできるよ?」

「そうではなくてな...いや、説明を聞いてもわからぬか」

 

てゐもなるべく考えようとしているが、結局わからず妖忌に意見を聞く。

 

「ど、どうなるのかな」

「何とかなるかもしれぬが...問題も多い」

「例えば?」

「付着神に成らせるのはわかるが、この少女のように人型が付いてくるのではないか?そうなっても刀は治るが...」

「常にお供ができちゃうね」

 

すると少女がその疑問に答えた。

 

「この子が命を持ってもあちしのようにはならないよ」

「...人型になる前に幼すぎるからか」

「うん。生きたいと考えるだけで精一杯」

「成る程...」

 

するとてゐが少女に質問し始める。

 

「刀に意思を持たせるってのはわかったけどさ...持ち主に反抗とかしてこないのかい?」

「酷い扱いしなければだいじょうぶだと思うよ」

「酷い扱いって...例えば?」

「うーん...わざと金槌で叩くとか?」

「人を斬ることとかは大丈夫なの?」

「刀は何かを斬るためにある。むしろ満足すると思うよ」

「そ、そんなものかね」

てゐはしばらく考えるが、少女の肩を掴み顔をジッとみる。

 

「わかった。お願いできるかな」

「!...まかせてよ!」

 

少女はウキウキし始め、てゐから梟の刀を受けとる。

 

「あとは...鍛治場!」

「鍛治場?そんなのどこにあるの?」

すると妖忌が話始める。

 

「鍛治場ならばわしのところにある。存分に使いなさい。修復に必要な素材もある」

「流石妖忌さん」

「少女よ、その刀の修復にはどれ程かかるかな?」

「ひとつき!」

「だそうだ」

「決まったね!あ、そういえばお代は...」

「おだい?」

「.....飯奢るよ」

「やったぁ!約束だよ!」

 

こうして鍛治屋の少女に梟の刀を託し、妖忌と少女は冥界へと向かい、てゐは竹林へと帰っていく。

そして一ヶ月後に永遠亭で待ち合わせとなった。

 

 

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