梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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外伝:生きた刀

一ヶ月後

梟はようやく部屋を歩ける程度には回復し、永琳のリハビリを軽く始めていた。

 

てゐは今か今かと刀の完成を待っており、永遠亭の玄関でウロウロしていた。

 

すると門の開く音が鳴り響き、てゐは直ぐ様玄関の引き戸を開いて外に出る。

 

そこには妖忌と刀を持った鍛治屋の少女がいた。

 

「出来たかい!?」

 

てゐがそう話すと、二人は項垂れて暗い顔をしながら彼女に刀を渡した。

そんな雰囲気の二人にてゐも冷や汗が垂れて、笑顔が消えていく。

 

「ま、まさか...失敗した?」

「.....」

 

少女は妖忌をチラチラと見て、彼も深いため息をする。

 

てゐは恐る恐る刀を見る。

 

鞘には特に問題はない。

問題なのは中身の刃なのだが。

 

「何とかいってくれよぅ!」

 

てゐは仕方なく目を瞑りながら刀を鞘から抜いた。

 

そしてうすら目を開くと、刀の状態に驚いた。

 

刃には傷ひとつなく、刃文は美しく輝いていた。

 

「あ、あれぇ!?」

「...ぷっ!あっはっはっは!驚いた驚いた!」

 

少女はてゐを指差し笑い転げる。

すると妖忌も少し笑い、てゐの顔は赤くなっていく。

 

「何なんだい!もう!何なんだい!」

「いや、すまぬなてゐ殿。この少女がどうしてもてゐ殿の驚く顔が見たいと聞かぬでな」

「驚くって...いい趣味してんね!」

「いや、どうもこの少女は他の生き物の驚きの感情で腹を満たしているようで...仕方なく」

「驚きの感情?」

「まぁそこは置いておこう。それよりも少女から刀の状態を聞くがいい」

 

すると少女はてゐの前に立ち刀をゆっくりと触り、説明し始める。

 

「成功したよ。もうこの子は意思を持ってる...人間の赤ちゃんより幼いけどね」

「...この刀は生きてるんだね」

「うん」

「...もう刃はくっついたの?」

「...あちしは皮鉄の上の層だけを繋げただけ。人で例えるなら皮膚のみを治したの。けど骨の部分、つまり芯金はまだ繋がってないみたい」

「じゃあ今刀を振ったら」

「折れるかも...」

てゐは刀の折れた部分を見て、ゆっくりと唾を飲む。

 

「さて...どうやって梟の旦那に伝えようかねぇ」

てゐは刀を鞘にしまうと、妖忌が彼女に話しかける。

 

「ありのまま話せばいいのではないか?」

「いやぁ、梟の旦那は普通の人っぽいし」

三人は話していると、永遠亭か永琳が現れた。

 

「妖忌さん、胃薬貰いに来たの?」

「む、永琳殿」

「あれ?梟さんの刀じゃない」

 

すると永琳はてゐから刀を取って、鞘から抜いて見る。

 

「直ってる...これどうしたの?」

「あ、いや、この子が直してくれてね」

 

すると永琳は少女を見て、頭を撫でる。

 

「こんな小さな子が?」

「こんなちっちゃくても凄腕の鍛治屋さ」

「立派ねぇ」

 

少女は少し照れていると、永琳は三人を永遠亭の中に入れる。

 

「なら梟さんに会って行きなさいな」

三人は永遠亭に入り、梟の患者室に入る。

そこには椅子に座る梟の姿があった。

患者服なのでいつもの大きい図体ではなく、痩せた老人の姿だった。

 

「因幡殿、帰られたか」

「へっへーん...実は梟の旦那にお見せしたいものが」

 

するとてゐは自慢気な顔で、持っていた刀を渡す。

 

「これは...」

「抜いてみてよ」

梟はてゐの言う通りに刀を鞘から抜くと、その刀の状態に驚いた。

 

「直っている...」

「凄いでしょ?この子が直してくれたんだ。それにこの御仁も手伝ってくれてね」

 

てゐは後ろにいた二人を前に出し、妖忌は一礼し、少女は彼の後ろに隠れている。

 

「お初にお目にかかる。魂魄妖忌と申します」

「怪我があるとはいえまともな挨拶ができず申し訳ない」

「いえ、てゐ殿から貴方の事は聞いています。梟殿」

すると梟は妖忌の後ろにいる少女をみる。

 

「...刀を直してくれたとか。礼を言う」

「う、うん...」

少女は梟の持つ刀を見て、小さな声で話始める。

 

「その子、大事にしてあげてね」

「む?ああ、そうしよう」

 

梟は一瞬少女が刀を人のように接しているのに戸惑ったが、職人とはそういうものかと納得していた。

 

 

「その子の名前は?」

「む、刀の名か?」

「うん」

「名か...」

「名前はとても大切なの...その子の先を決めるほどに」

「名はある、しかしこの場では答えられん」

「...」

 

妖忌とてゐはその言葉に少し驚くが、少女は何も言わない。

 

「ひみつなの?」

「その通り」

「...わかった。けど忘れないであげてね」

「勿論...さて、早速軽く素振りでも」

 

梟はゆっくりと立ち上がり、刀を振ろうとする。

しかしそれをみた三人の表情は一気に焦りの表情となり、てゐはその優れた身体能力を使い梟の胸へと突っ込んだ。

 

「だめぇぇっ!!」

 

梟はてゐの全体重による突進を受けて刀を手放した。

 

空に飛んだ刀は妖忌が掴み、鞘にしまう。

 

「あ、あっぶなぁ...悪いね梟の旦那...実はあの刀さ...ってあれ?」

 

梟の上に乗っているてゐは、白目を向いている彼の顔を見る。

 

「あ、やば」

 

 

 

 

 

その後てゐの突進のせいで梟は全治までの期間が延ばされ、刀はしばらくの間患者室にて手に取れないように飾られた。

 

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