梟の羽休め   作:ポン酢おじや

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迷い

あの少女と出会ってから既に1日経過していた。

流石の梟も、1日歩いても竹林から出られない事に違和感を覚えていた。

 

印を付けた竹を目印に移動しても、その竹は完全に無くなってしまう。

足跡も深くつけたにも関わらず消えている。

 

そして太陽がある方角へまっすぐ歩いても竹林は終らず景色は全く変わらない。

 

そして何よりここに入る前に木の上からこの竹林の規模を見ていたが、どう考えても歩けば半日もかからず抜けられるはずだ。

 

「確実に迷わせる竹林...」

 

梟は歩くのをやめ、竹を登り始める。

 

上から見下ろせばこの竹林の正体もわかるだろうと考えたが、ある一定の高さを越えた途端濃い霧が彼を包み目の前の掴んでいる筈の竹すら見えなくなった。

 

地面に降り立つと、梟はあの少女が話していたことは事実だと信じる他なかった。

 

すると梟の後ろには、いつの間にか昨日話した少女がいた。

 

「言ったでしょ?」

「...出口は知っておるのか」

「知ってはいるけど...ただじゃ教えられないねぇ」

 

少女は嫌な顔をして梟を見つめる。

すると彼は淡々と話始める。

 

「この場で無理矢理聞いてもよいのだぞ」

「おやおや、怖いねぇ」

 

梟は自分の背中にある刀がこの少女には見えていないのかとため息をつく。

 

すると少女は何か思い付いたのか、話始める。

 

「私のお願いを聞いてくれたなら出口を教えるよ」

「お願い? 」

「最近ここいらで凶暴化してる妖怪に困ってるんだ。ウサギ達も被害にあってる」

 

目の前の少女の口から妖怪という言葉を聞いて、梟は少し驚く。

 

「あんた強そうだし、背中の刀は飾りじゃないでしょ?」

「.....妖怪とは?」

「あれ?ここに来たんだから妖怪退治が目的じゃないの?装備も一杯だし」

「ここへは身を隠すために来た...まさか迷うとは思ってなかったがな」

「追われてるの?」

「いや」

「まぁいいや。とりあえずついてきなよ。お腹も減ってるし」

「腹は空いてない」

「私が減ったの」

 

少女は歩き始め、梟はため息をつきながらも少女の背中についていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩くと、平田屋敷にも匹敵する屋敷が竹林の中から現れた。

 

この竹林を1日歩いたがこんな建物の影すらなく、梟は驚いた。

 

目の前の少女はこの竹林について熟知している。

出口を本当に知っているかと心配していたが、そこは安心してよさそうだ。

「ほら、入りなよ」

 

少女は屋敷の入り口にある門を開き、梟を招き入れる。

 

庭は美しく整えられており、屋敷もそこらの名家以上の素晴らしさだった。

まさかこの目の前の少女がここに住んでいるのだろうか?

 

梟は屋敷に上がると、ここについて聞き始める。

 

「ここは何という場所だ?どこの者が住んでいる?」

「ここは永遠亭。住んでるのは姫様と医者兼薬師やってる人だよ」

「姫...?それでお主は」

「私はまぁ...居候?けど取引してるしなぁ」

 

少女は悩んでいるが、やがてまぁいいかと気にしなくなった。

 

「あ、そうそう。私は因幡てゐって言うんだ。あんたは?」

「.....」

梟は答えない。

忍びはあまり他人に自分の情報を明かさない。

情報というのはどこから流れるかわからないからだ。

 

「あ、そういえば昨日手裏剣持ってたよね?ということは忍びか何か?」

 

忍びという単語に梟はピクッとなる。

それを見逃さなかったてゐはニヤリと笑顔になる。

 

「忍びかぁ...噂は聞いてたけど実物は始めてみたよ」

「.....」

「さて、さっきの話だけど...引き受けてくれる?」

「妖怪とやらの話か」

「そうそう。この辺りである妖怪が暴れててね...ウサギ達や私ですらもう手がつけられないのさ」

「...聞くがお主、妖怪が本当にいると思うておるのか」

 

てゐは思わぬ質問に、唖然としてしまうが先程の話を思いだし腕を組んで悩み始める。

 

「あー、そうだった。妖怪退治が目的じゃないんだもんね...知らないのも当然か」

 

てゐは歩きながらどうしたもんかと考えながら、ある部屋に辿り着く。

部屋の入り口には診察室と書かれてあった。

 

「診察...」

「おーい永琳」

 

てゐは部屋を覗くも、そこには誰も居なかった。

二人は部屋に入り、てゐはさらに奥の部屋へと行った。

 

梟は部屋の中を見ていくと、机の上には奇妙な事が書かれている紙や、人体の中身が描かれた絵のようなものもあった。

 

「ふぅむ...」

 

梟は書類に目を通してみると、そこには幾つか知っている薬草や毒の名前が載っていた。

「薬師か...」

 

その瞬間

 

梟は後ろから殺気を感じ、後ろを向き背中にある刀を抜いて防御する。

刀に衝撃が走ると、床に落ちたのは矢であった。

 

梟は直ぐ様部屋から出て、広い庭へと走る。

 

すると再び矢が飛んできて、梟は防御し飛んできた方向に手裏剣を投げる。

 

しかしその手裏剣も矢によって落とされ、梟は後ろに飛び矢を避ける。

 

「何者か」

 

梟は屋敷の奥を見ると、そこには弓を構える美しい顔立ちだが奇妙な格好をした女性がいた。

長い銀髪で彼と同じように三つ編みにしている。

 

左右で青と赤に分かれる特殊な配色の服を着ており、頭には青色の前面中央に赤十字がある物を被っている。

 

「動かないでもらえるかしら」

 

女性は弓を構え、梟の眉間を狙っている。

しかし彼は全く動じず、刀を構えた。

 

「さて...どうするか」

 

梟は話終えた瞬間、目の前で黒い粉をばらまいた。

 

「!」

 

黒い粉は地面に落ちる前に爆発し、大きな音と煙を生み出す。

 

「火薬...?」

すると煙の中から刀を構えた梟が突進し、女性に突き攻撃を仕掛ける。

 

女性は直ぐ様矢を放つも、梟の頬をかすりはしたが止められない。

 

第2の矢を放とうとするも間に合わないと判断したのか、梟の突きを何と矢尻にあるほんの少ししかない刃で受け流す。

 

「!」

 

梟はまさか渾身の突きが矢で流されたのに驚きつつも、女性の腕を踏み台に高く飛び上がる。

 

そして地面に降りつつ回転しながら女性に攻撃。

彼女の回りにある柱や襖が紙のように斬られるも、女性は弓で刀を防いでいく。

 

梟は直ぐ様距離を取り、女性を見つめる。

 

「ふむ...ただの女ではないな」

「貴方も普通の人間ではなさそうね」

 

女性は庭へと進み、何処から取り出したのか3本の矢を構える。

 

「人間がここに何の用かしら」

「...兎の耳を持つ少女にここへ案内されてな」

「ウサギ?」

 

女性が梟の口からウサギと聞くと、一瞬警戒が緩んだ。

彼はそれを見逃さず刀を構えて、女性の首を狙い走り出す。

 

「ちょっと待ったぁ!」

 

しかし屋敷からてゐが走って現れ、二人の間に入る。

 

「永琳!この人は私の客人!忍びの旦那も!この人はこの屋敷の住人!」

 

てゐの言葉を聞いて梟は彼女の首元から刀を下げ、永琳もいつの間にか彼の脇の下に構えている矢をゆっくりと下げた。

 

「てゐの客人だったのね。失礼なことをしたわ」

 

永琳と呼ばれた彼女は、弓と矢をしまった。

梟も刀を鞘にしまい、彼女と距離をとる。

 

「.....」

 

てゐはため息をして、間に合ったことに安堵する。

 

「間に合ってよかったぁ...あのままやってたら二人ともただじゃ済まなかったね」

 

そう話すてゐを伏し目に、梟の顔には一粒の汗が垂れていた。

あのまま行けば良くて瀕死、最悪相討ちになっていただろう。

永琳と呼ばれた女性はかなり強いと思わざるをえなかった。

 

「それで、てゐ?この人紹介して頂戴」

「それが私もさっき会ったばかりでね。竹林で迷ってたから連れてきた」

「連れてきたって...放っておけばいいのに」

「出口わからなくて困ってたからさぁ。それに強そうだから前頼まれてた妖怪退治に手伝ってもらおうかなって」

 

ニッコニコのてゐとは反面に、ため息をついて困った顔をする永琳。

その二人を見る梟は、どうするべきかと考え話し出す。

 

「...その妖怪とやらを殺せば出口を教えるとそこの少女が話しました。仕事が終わりましたらこの竹林から早々に立ち去りましょう」

「私はてゐだよ。少女じゃ...いや、少女でもいいか」

「何を言ってるの貴方は...」

 

永琳は悩んだがため息をつくと、梟に近づいていく。

 

「仕方ないわね。なら妖怪退治をお願いできるかしら」

「...では儂を雇うという事で」

「そうね」

「ならば...儂の事は梟とお呼びください」

 

梟は永琳の前で地面に膝をつける。

 

「では...その妖怪とやらの子細をお聞かせ願いまする」

 




遅くなり申し訳ありません。
次回もいつになるか...
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