ここは地獄。
閻魔に生前の行いを咎められ、罰を受ける場所である。
ここに来た魂のほとんどは永久に解放されず、辛い労働を毎日こなしている。
そんな中、地獄の奥深くきある場所には戦国の時代を生き抜いた男達が集っていた。
「梟、聞いたかい?」
「...何がだ」
丸太の上に座る梟に話しかけたのは、彼とはもうかなり長い付き合いのお蝶であった。
「葦名の大将がここに来るそうだよ」
「ようやく死んだか」
「お陰で葦名衆は大騒ぎさ。何百年と不在だった大将がようやく戻ってくるんだから」
「儂には関係のないことだ」
「そうかい...そういえば狼はまだ帰ってこないんだね」
「閻魔に呼ばれそれっきりよ」
二人が話していると、近くで大勢の歓声が響き渡る。
「一心様!」
「一心様がご到着!迎えにいこう!」
「葦名の大将がようやく戻ったぞ!」
「葦名衆復活だぁ!」
葦名衆は労働を放って一心が来る地獄の入り口へと向かう。
「どいつもこいつも阿呆ばかりよの...地獄鬼に後で仕置きをされるとわかっておるのか」
「葦名衆は仕方あるまいて...あやつらはどれだけ大将を待っていたか」
「ふん」
地獄の入り口には葦名一心が既に到着しており、門のそばでは葦名衆が涙して座りながら一心の到着を喜んでいた。
「カカカっ!元気そうじゃな皆の衆!」
「お帰りなさいませ一心様!」
「おう鬼刑部!久しいな!」
一心は他の葦名衆とは一際体格が違う男に近づき、肩に手を乗せる。
その男は葦名にて大手門の番人として活躍した鬼庭刑部雅孝であった。
「一心様!お元気そうで...何よりでございます!」
「カカカっ!お前もな刑部!少し痩せたか?」
「はは...ここは中々に鍛えられる場所ゆえに...」
「だがまだまだ衰え知らずよの、頼もしいぞ」
「ありがたき幸せ!」
鬼刑部は頭を下げると、後ろにいた七本槍の武将達や葦名流の佐藤甚助、水生氏成も頭を下げる。
すると一心は辺りを見渡し、近くにいた寄鷹衆に話しかける。
「エマや九郎は何処か」
「はっ...エマ様や九郎様は閻魔から咎められる事はなく、天界へ向かったと聞いております」
「...そうか、ならばよし」
すると一心は遠くに梟の姿を確認する。
「ほう、あんなところにいたか」
一心が見ていることに気づいた梟は、軽く一礼する。
すると一心は梟に近づき、話しかけてきた。
「久しいな、梟」
「...お元気そうで何よりでございます」
「カカカっ!心にもないことを言いおって」
「葦名が落とされてから何百年も何処におったのですかな」
「なぁに、少し冥界にて鍛えておっただけよ」
「...相変わらずですな」
「ところで梟よ。弦一郎を知らぬか?」
「いえ、まだ地獄には来ていないと思われまする」
その言葉に一心は驚いた。
「まだ来ていない?」
「儂らもおかしいと思いますが...地獄にいては何もできぬゆえ」
「ふぅむ...」
二人が話していると、地獄の鬼が一匹やってくる。
「こらぁぁ!何サボってんだお前らぁぁ!」
金棒を振り回しながら走ってくる鬼を見て、一心と梟は鬼を睨む。
「梟、手を貸せぃ」
「よかろう」
すると梟は鬼の顔に膝蹴りをくらわし、よろけた所を一心が柔術を使って一本背負いのような技を使う。
鬼はそのまま気絶してしまい、一心は鬼が落とした金棒を拾う。
「ふむ...中々の得物じゃ」
「一心殿、鬼に逆らっては後が怖いですぞ」
「カカカっ!今のが鬼ならば地獄も生ぬるいわ!」
「...」
梟は半ばあきれ果てながらも、少し笑う。
「ふふ...」
「なんじゃ」
「いえ、一心殿はそういう男だったなと思いだしましてな」
「わしから見ればお前も変わらん。相変わらず狡猾で、わしに似て強さに貪欲な男よ」
「.....」
「さぁて、梟よ。わしは地獄に新たな葦名を造ろうと思うが...どうじゃ、わしにつかんか?」
一心の話に梟は少し悩むも、その場で屈んで答える。
「いいでしょう。この梟、再び貴方に仕えまする」
「よぉし!ならば...行くぞ!」
一心は金棒を片手に歩き出すと、梟や葦名衆が彼の背中についていく。
外伝はここで終了です!
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またいつかお会いしましょう!