梟がここ永遠亭に住むことになり、てゐが部屋へと案内していた。
「さ、ここだよ梟の旦那」
「ほぅ」
梟は永遠亭にとって自分は招かれざる客なので、どんな部屋が待っているかと思っていたかいい意味で期待を裏切られた。
客室は広く、ふかふかの高級な素材が使われた布団や見たことのない家具等があった。
客室ですら達筆な文字が書かれた掛け軸や汚れひとつない壁や柱を見ると、この屋敷の権力の強さがわかる。
恐らく姫である輝夜の部屋はもっと素晴らしいだろう。
「これは見事な部屋だ」
「そうだろう」
「ここを使ってもよいのか」
「全然構わないよ。姫さんや永琳からも了承済みさ」
「ありがたい」
梟はゆっくりと部屋の中央に座ってみる。
やはりかなり広く、落ち着かない感じだ。
「刀置かないのかい?そこに刀掛けあるけど」
「む...ああ、いや...」
忍としては武器を手放したくない。
いつ何時も警戒を怠らないのが基本だからだ。
しかし自分は居候ゆえ仕方なしと梟は刀を置こうとするが、背中にあった筈の大太刀が無いことに気づく。
「!?」
梟は慌てて周りを確認すると、いつの間にかてゐが梟の刀を盗んでいた。
「お主...」
「いやすごい長いね...よく扱えるもんだよ」
梟は立ち上がり、てゐの前に手を出す。
「.....」
「ああごめんね。ちょいと見てみたくなってさ」
てゐは刀を梟に返し、そのまま彼は刀掛けに置いた。
「儂に気づかれずに刀を盗むとは...中々見込めるな」
「忍びから褒められるとは嬉しいよ。あ、これこの永遠亭の案内書ね。ちなみに非常時には信用できないから」
「?どういうことだ」
「まぁその時になったら話すよ。そういえばお風呂あるから入ってくれば?」
「風呂か...贅沢だのぅ」
「そう?」
戦国時代において風呂は偉い侍や武将が入れるレベルであり、結構裕福な人達しか入れない物だった。
「暖かいお湯に浸かりながら鬼退治の疲れを癒してよ」
「湯...?蒸し風呂ではないのか」
「ここでは湯に浸かって体の汚れを落とすのさ。外の世界じゃあまり見られないかな」
「湯に浸かるとはあまり聞いたことがないのぅ」
現代の日本で風呂に入るとなると湯船にお湯を溜めて入るのが普通(シャワーだけという場合もあるが)だが、戦国時代の風呂はサウナのように蒸した部屋で体を拭くのが普通だった。
ちなみに湯を溜めるようになったのは江戸時代からだと言われている。
「んじゃあ私は今日の夕飯何か聞いてくるよ。ごゆっくり~」
てゐは部屋を出ていき、襖を閉じた。
「...ふぅむ、思えば安全な寝床に寝るのは久しいな」
梟は座り、永遠亭の案内書を見る。
案内書には色々な部屋が書いてあり、かなり広い上に通路が沢山ある。
これならば屋敷内に侵入者に入られても簡単に撒ける上に後ろに回れるだろう。
「...この屋敷の構造...それに三人の会話...あの姫は明らかに何者かに追われここに隠れ住んでいると見えるな...」
しかしそれは梟には関係のない話であり、追われている筈の輝夜の余裕さを見るとここはやはり安全だと考えた。
「さて...どうするか...」
梟は風呂に入り、ホッカホカの内に部屋に戻って座布団の上に座る。
湯船に浸かるのは初めてであったが、体全体が暖まり疲れがかなりとれた気がした。
「.....湯に入るのもよいものだ」
服を着た梟は誰から見ても巨体だが、実はその腕や足、身体は思ったよりも細い。
フクロウは敵を見た時や驚いた時は自分を大きく見せて敵を遠ざけようとする習性がある。
細身であるのに巨体にみせるその姿、彼が梟と呼ばれる理由の一つであろう。
梟は鳥簑を羽織ると、装備を整える。
流石に刀は無礼と判断したのか、刀掛けに置いたままにした。
すると襖が開き、てゐとは髪型や顔が違うウサギの耳をもつ少女が部屋に入ってきた。
「あ、あの梟さん」
「何だ」
「えっと...お食事の用意が出来たんですけど」
「ああ、すまぬな」
「えっと...ひ、姫様のご要望で一緒に食べたいって」
「...輝夜と呼ばれていた女性か」
「は、はい。ですので姫の部屋へと案内します」
「あいわかった。では行こうか」
梟は立ち上がり、ウサギ少女についていく。
しばらく永遠亭を歩き回ると、やけに長く広い通路へとたどり着く。
「ここを真っ直ぐ行けば姫様の部屋に」
「ご苦労であった」
梟はウサギ少女の言う通りに、長い通路を歩き出す。
すると少女が梟を呼び止めた。
「あ、あの!」
「.....」
梟は振り向かず、その場で止まった。
「お、鬼を退治してくれてありがとう」
少女は梟にそう言うと、彼は右手をあげた。
ゆっくりと手を下げると、彼は再び歩み始める。
廊下の先にはこれまでのとは違う見事な絵が描かれた襖が現れ、梟はゆっくりと開けた。
部屋は客室の何倍も広く、そこから見える庭の景色は空に浮かぶ満月に照らされ絶景であった。
縁側には多くのウサギ達が料理や酒、お餅を用意しており、部屋の中央に座っていたのは輝夜と永琳、それにてゐであった。
「やぁ、待ってたよ梟の旦那。風呂は楽しめたかい?」
「中々良いものであった」
「そうだろうそうだろう」
てゐはニヒヒと笑いながら、隣にある座布団を叩く。
「ほらこっちこっち」
梟は彼女の隣に座り、ウサギ少女が運んできた料理を見る。
「今日は姫さんが特別な日だって事で宴会することになったのさ」
梟はてゐからそう聞くと、輝夜の方を見て一礼する。
輝夜も梟を見て少し手を振る。
しかし彼女の近くで座っている永琳は、未だ梟を警戒しているようで睨んでいる。
その様子を見たてゐが、彼女に話しかけた。
「永琳も顔が怖いよー?宴会なんだからもっと笑顔にならなきゃ」
「.....わかってるわよ」
するとウサギ少女達が全員のお猪口に酒を注いでいく。
てゐは酒が入ったお猪口を持ちながら立ち上がり、部屋の中心へと移動して皆の注目を浴びる。
「皆酒は持ったね」
てゐは周りを見渡し、全員酒が入ったお猪口を持っていることを確認する。
「...今日も鬼によって仲間のウサギ達が犠牲になった。人の形に為ってから日が浅い奴等ばかりなのに」
てゐの話にウサギ達の中ですすり泣く者もいた。
「けど仇は梟の旦那がとってくれた。竹林はこれまで通り平和に戻る。仲間の犠牲も辛いが、それを乗り越え明日を生きよう」
てゐがお猪口に注がれた酒を一気飲みする。
「...ぷはぁっ!さぁ竹林の平和を祝おうじゃないか!死んだ仲間達の分も生きるため、逝った奴等を安心させるために酒を飲んで騒いで飲んでやろう!」
部屋の外にいる多くのウサギ達やウサギ少女達もてゐの言葉を合図にどんちゃん騒ぎを始めた。
「ほら梟の旦那ももっと飲んでよ!」
「う、うむ」
梟はお猪口に注がれた酒を飲み干した。
1分後
梟の顔は真っ赤に染まり、目蓋も重いのかかなり眠そうだ。
でかい図体なのに酒にくそ弱い事を知り、輝夜は含み笑いし、永琳も笑ってはいけないと口を手で押さえながらも笑ってしまい、てゐは大声をあげての大爆笑であった。
「う...うぅむ?」
「あっはっはっは!梟の旦那酒弱いなぁ!一杯でもうこんな真っ赤になるなんて!」
「て、てゐ...そんな事いっちゃだめよ...お酒の強さは人それぞれなんだから...プッ」
「ふふ...これから面白くなりそうね」
梟は酔っぱらいながらも、2杯目を口につけた瞬間ダウンした。
隻狼で好きでも嫌いでもないキャラは赤備えの二つの小刀を持つ敵です。
すげぇかっこよくて小刀って所も近接戦闘に特化してるみたいでかっこいいけど、まともに戦うと終盤の経験値稼ぎで痛い目見ます。
隻狼DLCはよ、はよ