宴会から1週間が経った。
梟は朝早く起きて客室の近くにある広い庭で座り、じっと動かず瞑想していた。
「.....」
たまに永琳や輝夜が様子を見に来てちょっと談笑してから別れたり、ウサギ少女がじっと座っている彼に近づいてきてちょんちょんと触ってきたりした。
「あああぁああぁーーー!!」
梟の近くから女性の叫び声が響き渡る。
「む...」
梟はゆっくりと目を開けて、叫び声がした方向を見る。
「今のは...因幡殿の声か」
梟は後ろを見ると、ウサギ少女達が今の声で狼狽えていた。
少女達の会話を盗み聞くと、叫び声の方向すらわかっていないらしい。
仕方ないと梟は立ち上がり、叫び声のした所へ行くため永遠亭を囲む外壁を飛び越えて竹林に向かう。
梟はなるべく永遠亭から距離を取らないようかつ見失わないように気をつけながらてゐを探す。
なんせここは確実に迷う所だ。
唯一の目印と言える永遠亭を見失えば、梟はまた迷ってしまう。
「ふぅむ...この辺りからの筈だが」
梟は辺りを探して歩いていると、右足がほんの少し沈む感触に気づく。
「!」
すぐに飛び上がり、別の場所に移動する。
すると沈む感触があった場所の地面が大きな音をたてて崩れ、落とし穴が現れた。
「罠...!?」
梟は辺りを警戒する。
よく見ると近くにいくつもの落とし穴が隠されてあり、しかもかなり精密に地面と同化されている。
梟並みの視覚と経験がなければ回避は難しいだろう。
「これは...」
すると再びてゐの声が辺りに響く。
「誰かいなーい?」
「!...そこか」
梟は声のする方向へ歩くと、そこには既に露となった落とし穴があった。
「因幡殿か」
「あ、その声は梟の旦那!?」
梟は穴を覗き見ると、そこには土まみれのてゐが落ちていたのだ。
「何故そのような場所に」
「いやー、イタズラ用に落とし穴作ったら楽しくなっちゃってさぁ。何個も作ったはいいけど何処に作ったか忘れて」
「それで自ら引っ掛かったと」
「その通り。助けてくれない?」
梟は近くにある竹を刀で斬り、葉を削ぎ落として落とし穴にゆっくりといれる。
するとてゐは竹を使って地上に登って脱出した。
「よっと。ありがとうね梟の旦那」
「これからは仕掛けた場所を覚えておくことだ」
「そうするよ」
「.....それにしても」
梟はしゃがんでてゐが作った落とし穴を見下ろす。
「中々に深いのぅ」
「そりゃあ朝一番から掘ったからね」
「ご苦労なことだ」
「いつ何時も用心はした方がいいんだよ」
「...一理あるのぅ」
梟は立ち上り、辺りを見渡す。
「ここいらの罠は全てお主が?」
「そうだけど?」
「同じ作りか?」
「何が言いたいの?」
「いや...罠ならば斬った竹などを底に刺せば」
「殺傷力を高めろってことか...うーん、けどウサギ達がかかったらヤバイんだよね」
「確かに儂も危うく引っ掛かるところだったわ...勘のいい獣ですら騙せるだろう」
「おや、とうとう私も忍びを騙せる位罠を隠せるようになったか。嬉しいね」
てゐが嬉しそうにしていると、梟は罠の理由について話始める。
「罠の理由...悪戯ではなかろう」
「うん?何故そう思うんだい?」
「儂も未だ信じられぬが...あの姫は月の者に追われているとか」
「!」
「その者からここを守るためでは」
「...ふふ」
「?」
「あははは!月の連中にこんな罠通用しないさ!」
てゐの大笑いに、梟は少しムスッとする。
「それは...」
「罠に殺傷力がないから?いいや違うんだよね~」
「何が違うのだ」
「そうだねぇ...何から言えばいいかな」
てゐはその辺りを歩き回り、悩み始める。
「まっ、私もあの戦争に参加してないから詳しい事はわからないけど」
「戦争?」
「そ。月と地上の妖怪達の大戦争さ」
「.....」
「信じてないだろう?まぁ仕方ないよね」
「勝敗は如何に」
「月の大勝利」
「...その戦争とやらは儂が殺した鬼のような者が参加したのか」
「あいつの何倍も、何十倍も強い奴も参加したよ。大抵死んだらしいけど」
「そのようなことがのぅ」
「まぁとにかく」
てゐは梟の顔を見て、笑いながら話す。
「落とし穴の理由は本当にただのイタズラさ」
「.....」
梟はてゐの反応を見ると、どうやら本当の事を言っているとわかった。
そう思った瞬間彼の足になにか違和感を感じる。
「むっ!」
梟はその場で飛び上がると、地面から勢いよく紐が現れる。
「またも罠か」
梟は地面に着地し一息つこうとするが、横から複数の竹が縄でまとめられている物が勢いよく現れる。
「ぬぉっ!?」
梟はすぐに後ろに下がって竹を避けるが、再び足の裏に縄の感触を感じた。
すると後ろから四本の斜めに切られている竹が飛んで来て、彼は刀を抜いて竹を弾く。
弾かれた竹は地面に落ちると、てゐは笑いながら梟に近づいてくる。
「あはははははっ!引っ掛かった引っ掛かった!」
しかしてゐが梟に近づこうとした瞬間、地面から紐が現れ足に絡まり宙吊りとなる。
「ありゃ!?」
さらに梟の時と同じようにまとめられた竹が横から勢いよく現れ、てゐの体に思いきりぶつかった。
その衝撃で足に絡まった紐は千切れ、地面に叩きつけられる。
「あいたたたた...」
てゐは腰を押さえながら立ち上がろうとするも、その瞬間地面が崩れ落とし穴が現れた。
「あああああぁ.....!」
てゐは落とし穴の底へと落ちていった。
梟は落とし穴に近づき、穴を覗いた。
「因幡殿」
「た、助けてくれよ梟の旦那」
「.....最早呆れすら感じるのぅ」
梟は頭を押さえながら竹を持ってこようとするも、その瞬間
「うおっ!?」
梟の足元が崩れ、彼は落とし穴へと落ちていった。
彼は落とし穴の底に落ちた後、てゐが底に竹等を突き刺してなくて良かったと心底思った。
遅くなり申し訳ありません。
久しぶりに心中の義父に挑んだらボロ負けしました。
やっぱ霧がらすはアカン。