ブルーローズをそばにおく   作:蒼月柊

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After Story〜ブルーローズをそばにおいた生活〜
01. 温泉旅行


 新婚旅行として、俺とライスはとある温泉宿に来ていた。観光地としても有名な場所ではあったが、平日ということもありお客さんは少ないように見える。

 

 そのおかげで、俺とライスはのびのびと温泉や旅館の風情を味わうことができていた。

 

「なんか、落ち着くね」

 

 そばで寄り添ってくれるライスに、俺は相槌を打つ。本当に、彼女と結婚することができてよかったと思う。言葉がなくても居心地がよい空気になれる相手はそういないだろう。

 

 浴衣を羽織り、石畳を下駄で歩く。かっかっ、という音がそろう。

 

 月や星が照らすことができない闇から、虫の鳴き声もあった。かすかな夜風が心地よい。

 

「くしゅん」

 

 ライスを見ると、顔に手を当てていた。

 

「戻ろうか」

 

「ありがとう、あなた」

 

 お兄さまから変わった呼び名に、心が暖かくなる。そのせいで少し口元がほころぶ。ライスも笑っていた。

 

 部屋に戻り、緑茶をいれる。湯気の下で茶柱が立っているのを見つける。

 

「いいことがありそうだね」

 

「これ以上いいことって言ったら、どんなことだろうな」

 

 そんな軽口を言いながら、俺とライスは食事の時間を待つ。それぞれが持ってきていた本を開き、背中を合わせて読み始める。

 

 

 俺が持ってきていた本は、とある文豪の作品だった。正直、現代の感覚と離れているところもあり、理解し難い表現もある。それでも、理解し難い表現を基に過去の風俗に想いを馳せることは心が落ち着いていく。そこに込められた人々の想いはきっと尊いものだと思うのだ。

 

 しかし、やはり頭を使うために時々集中が途切れてしまう。固まってしまった首を軽く動かしながら、ライスの本をうかがった。

 

 ライスは新書版のおそらく児童文学を読んでいた。所々に挿絵があり、ルビも振られている。

 

 タイトルはわからないがわからないままでもよいかと思い、俺は読書に戻った。

 

     ⭐︎

 

 気がつけば、俺はライスに膝枕をされていた。頭を撫でられる感触がある。

 

「あ、起きた?」

 

「すまない」

 

 俺の謝罪に、ライスは首を横に振った。

 

「ううん。あなたの可愛い寝顔が見られたから」

 

 そう言われてしまうと、少し照れ臭くなってしまう。照れ隠しに起きあがろうとするが、額を抑えられてしまった。

 

「もう少し、このままでいさせて」

 

 ウマ娘に力で敵うわけもないので、俺はライスの言う通りにする。そのまま、頭を撫でられていると、再び眠たくなってきた。

 

「まだ時間はあるから、おやすみなさい」

 

 ライスの、子どもをあやすような声と手に、俺は眠りに就いた。

 

     ⭐︎

 

 ノックの音が聞こえて、俺は目を開けるが辺りは暗かった。すぐにライスの匂いが香ってきて、ライスも眠ってしまったのだと気づく。

 

 俺はどうにか腕を上げて、ライスを横にする。そのまま、ノックの相手をした。

 

「申し訳ございません。お休みされておりましたか?」

 

「大丈夫です。それで何か?」

 

「お食事の用意ができましたが、いかがされますか?」

 

 その言葉でようやくお願いしていた夕食の時刻になったことに気づく。

 

「申し訳ないです。十分後に配膳をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「承りました」

 

 そのまま丁寧に仲居の方は戻っていく。俺はライスを肩を揺らす。

 

「もう、食べられないよ……」

 

 そんな寝言を久しぶりに聞き、トゥインクルシリーズ時代を懐かしく思うが、今はライスを起こすことが優先だった。

 

「ライス、時間だぞ」

 

 その言葉で少し瞼を開けたかと思えば、ライスに抱きしめられ俺も横になってしまう。

 

「好き」

 

 未だ寝ぼけているらしいライスを、あまり動かすことができない腕で押してみる。ほどよく引き締まったままの筋肉が反発してきた。

 

「えへへ、くすぐったいよ」

 

 どうやら押してみても効果がないようなので、俺は強硬手段を取ることにした。

 

 目をつぶり続けるお姫様へは一番の手段だ。

 

 ゆるんだライスの口へ自分の口を持っていき、軽くキスをする。すると、パッと目を開けてライスは赤くなった。

 

「え、え」

 

「おはようライス。寝起きで悪いが、そろそろ食事が運ばれてくる」

 

 動揺したままのライスは、すぐに俺を離し、起き上がった。

 

「ご、ごめんなさい! すぐに用意します!」

 

 慌てると未だに出てくる丁寧語に俺は苦笑した。

 

 身だしなみを整えて、ライスはようやく落ち着いたらしい。かすかに顔はまだ赤いが、まあ大丈夫だろう。

 

「ライスも寝ちゃった」

 

「寝顔が見られて嬉しかったよ」

 

「うう……」

 

 からかい気味の言葉に、ライスは恥ずかしそうに唸った。

 

 そして、夕食が運ばれてくる。配膳されていく懐石料理に、ライスは目を輝かせた。

 

「わあ、美味しそう」

 

 仲居の方による料理の説明をうなずきながら聞くライスに、心を癒される。そして、仲居の方が部屋から出ると、俺とライスは箸を手に取った。

 

「いただきます」

 

「いただきます」

 

 俺の静かな言葉に対して、ライスはとても喜んでいる声音だった。尻尾が抑えきれていないようで、控えめに振られている。

 

 まずは汁物をいただく。湯気が立つ腕を口に運ぶと、かすかな味噌の香りと共に、ほどよい温かさが沁みてくる。

 

 具もしっかり火が通っていて、美味しい。

 

 次にご飯茶碗を手に持つと、向付の刺身を一つつまみ、醤油をつけ、ご飯と一緒に食べる。新鮮な刺身はしっかり下拵えをしているようで臭みがなく、また刺身と醤油がよくご飯にあった。

 

 ふとライスを見ると、笑顔でひたすら口を動かしている。

 

 俺は再び、自分の料理に視線を戻し、さつまいもの煮物を口へ運んだ。さつまいもの甘味がよく感じられる一品であった。

 

 焼き物は秋鮭の塩焼きだった。粗塩と鮭の身が白米の甘さを引き立てる。

 

 最後にたくあんをかじり、お茶をすすって食事を終えた。

 

 俺が食べ終わる頃に、どうやらライスも食べ終えたようで、お茶をすすっている。そして、差し合わせたように、「ごちそうさま」とそろった。

 

「美味しかったね」

 

 その言葉に同意し、簡単に食器を整理する。しばらく待っていると、仲居の方がやってきて運んでいってくれた。

 

 そして、いよいよ誰にも邪魔されない二人だけの時間がやってくる。

 

「一緒に温泉入ろ?」

 

 ライスのその言葉で、本日二度目の混浴露天風呂が決まるのだった。

 

 この時間もかけがえのない、忘れられない二人で歩む物語の一ページになった。




昨晩、完結して、甘い続きは期待しないでくださいって言ったな。それは嘘だ! 甘いの部分は嘘じゃないけど。

いや、実は仕事が休業中でして、日中もライスシャワーを育てていたんですよ。
そしたら、温泉旅行券が当たりましてね、その時のステータスが春の天皇賞すら勝てないレベルでダメかと思ったわけです。そしたら、案の定、負けましてね。

少し自分に苛立ちながら、またライスシャワーを育成していたんですよ二、三回ほど。そしたら、最後にまた温泉旅行券が当たりましてね。今回も、ちょっときついか? と思いながら育成していたわけですよ。そしたら、ついにURAで優勝できまして。ようやく俺もライスちゃんと温泉に行けたぞ! オラァ!

というわけで、初温泉旅行を祝しまして、結婚後の最初のエピソードは元トレーナーくんとライスシャワーの温泉新婚旅行でした。正直、最後のほうとか、料理の描写しかしてないから申し訳ないと思っている。
でもさ、美味しい料理って食べ始めたら、一緒に来ている人のことを気にせず食べるよね? 今回は、元トレーナーくんもライスシャワーもそんな感じだったんだよ(甘いデートが描けない言い訳)

というわけで、もうすぐ休業は終わると思うから続きがいつになるかわからないけど、またいつかお会いしましょう。
いつも、読了、感想、評価やお気に入り登録も本当にありがとうございます! それでは!
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