ブルーローズをそばにおく   作:蒼月柊

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03. 空白時間

 ずっと一緒にいたいと思いつつも、社会でしか生きる術を持たない以上はどうしてもライスと離れてしまうことがある。

 

 今日はまさにそういう日だ。

 

「いってらっしゃい……」

 

 編集からの依頼のために家を出る時は、いつもライスは沈んでしまう。そう思ってくれることは嬉しいし、俺もきっと同じように思うのだろうが、やはり見たくはないものだ。

 

「すぐに帰ってくるから」

 

「うん……待っているね」

 

 弱々しく笑うライスの頭を撫でて、俺はドアを閉じた。

 

 時間的にはだいぶギリギリに家を出ているため、すでに到着しているだろうタクシーへ急ぐ。

 

「駅まで」

 

 乗りこむと同時に行き先を伝え、タクシーは出発した。

 

 普段はオンラインミーティングのツールを使っているのだが、なんでも担当してくれていた方が異動されるということで、新しい担当の方と一度くらいは会ってほしいということだった。

 

 とはいえ、俺と担当してくれていた方はビジネスライクの付き合いだったので、新しい担当の方にも同じ対応をお願いしたいものだ。

 

 そう思って編集部があるビルで受付を済ませると、やってきたのは担当してくれていた方とおそらく新しい担当だろうか、緊張気味の女性だった。

 

「どうぞ、こちらに」

 

 担当してくれていた方の先導で打ち合わせ用のスペースに入り座ると、緊張気味の女性は目を震わせて俺を見上げてくる。

 

「こちらが、新しく担当する者です」

 

「よ、よろしくお願いいたします!」

 

 少し気負っているような新しい担当の方は、勢いをつけて頭を下げた。あまりに緊張しているので、俺は少し引き気味に挨拶を返してしまう。

 

「実は先生の玉稿を拝読してから、ファンなんです」

 

「ありがとうございます。なんと言いますか、直接言われると照れますね」

 

 照れ臭くなり、頬をかく俺に、前の担当の方が紹介を進めた。

 

「彼女は今年の新卒なのですが、礼儀もしっかりしていますので、ぜひこのまま進めさせていただければと思います」

 

「こ、これからよろしくお願いいたします!」

 

 再び、勢いよく頭を下げる新しい担当の方に、俺は緊張をほぐしてもらうために親しみを込めて笑顔を作り、言葉をかける。

 

「気安くしてもらったほうが、きっとお仕事もやりやすいかと思いますので、どうぞ笑ってください」

 

 そのまま手を差しだした。

 

 新しい担当の方は少し放心していたかのようにきょとんとしていたが、すぐに両手で俺の手を握る。その様子は、さながら交流会で握手をする時のファンそのままであった。

 

「ありがとうございます! これからよろしくお願いいたします!」

 

 新しい担当の方が落ち着くまで少し待った後、そのまま打ち合わせを行い、俺はすぐに家へ帰った。

 

 途中、SNSのアカウントに新しい担当の方より挨拶とウマ娘をデフォルメしたイラストのスタンプが送られてきていたので、俺もスタンプで返事をした。

 

 そのまま、家のドアを開けると、どこからかハサミの刃をこすり合わせる音が聞こえてくる。

 

「ただいま」

 

「わあ、お帰りなさい!」

 

 俺が声をかけると、脳裏にライスの笑顔が浮かんでくるような声音で返事があった。そして、リビングから駆けてきたライスは俺の胸に抱き着く。見上げてくるライスの目尻には涙が光っていた。

 

「ごめんな」

 

「ううん。大丈夫だよ。ライスは大丈夫だったよ」

 

 ぐりぐりと俺の頭に額をこすりつけるライスの頭を抱きしめる。すると、ライスはこすりつけるのをやめた。

 

 いつもならもうしばらく続くので不審に思う。

 

「どうかしたか?」

 

 俺の問いかけに、顔を上げたライスの瞳はどこか暗く澱んでいた。

 

「ライス以外の女の匂いがするよ? ライスはもういらないの?」

 

 その言葉に、俺は用意していた理由を伝えた。

 

「新しい担当の方が女性だったんだが、その時に握手をしたからかな。だいぶ緊張していたんで、握手で少しでも緊張をほぐしてもらえたらと」

 

「優しいね……」

 

「だからさ、この匂いをライスの匂いに戻すために早く触れたかったんだ」

 

 その言葉で、ようやくライスの瞳が元に戻る。

 

「そっか、そうだよね。ごめんなさい。早とちりしちゃった」

 

「いや、俺の方こそすまなかった。突然、別の女性の匂いがしたら嫌だよな」

 

「しょうがないよ。あなたも嫌だったんでしょ? ならライスも我慢する。これも、二人で生きるために必要なことだもん」

 

 再び始まる額のこすりつけを味わいながら、俺もライスの髪質と温もりを堪能していた。

 

 この日は一緒にお風呂に入り、食事をし、就寝した。同じ時間をすごすことができる幸せを再確認した一日だった。

 

 こんな珍しい出来事も、当然、大切なライスとの一ページだった。




こ、これが俺の全力のヤンデレだあ!(満身創痍)

というわけですね、ヤンデレを求められていたので書きましたよ! でも、これが俺の限界だぜ……

ヤンデレになっているよね?(揺れる心)

この後、少し長めにしてやろうかと分割も辞さない展開を考えていたのですが、ライスちゃんが曇るし、その表情は見たくないし、書く気力と時間がね(言葉を濁す)

考えていた話の流れは今回とほぼ同じなので、許して。

というわけで、今回もありがとうございました!
そろそろネタが尽きてきた(最初から尽きている)ので、次回は期待せんでくださいな……(これで明日とかに更新したら、盛大に笑ってやってください)
それでは!
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