なんか筆が乗った。
とても楽しかった。
ダブル主人公みたいな感じで良くねと考えた。
TS最高。
朝はあまり好きじゃない。
寝起きの朝一番にそう思うのは、優希にとって日常の一つになっている。
理由としては、いつも夢見が悪いため決まって朝は、心にぽっかり穴が開いたような心地になるからだ。
乗り越えた気になっていても、どうしても忘れられない過去に囚われ続ける。
ただ一つの過去を夢として追体験し、これを繰り返している。
しかし、どういうことか今朝は夢を見なかった。
おかげで久しぶりにすっきりとした朝を迎えることができた。
不思議に思いながらも優希はベッドから体を起こす。
ただ夢を見なかったからか、いつもに比べて体が羽のように軽く感じられた。
これが毎日続いてくれれば良いのに。と、ぼんやりと考えつつ顔を洗うべく、洗面台に向かう。
寝起きだからかうまく動かして辛い手足に、少しもたもたしながらも何とか到着する。そこで気づく、洗面台が一段高くなっているような気がする。何故…
脳が起きてないのか、思考がまとまらない。
目を覚ますべく、優希は冷水を出し顔を洗う。その際、顔を下げると顔に何かがかかる感触がある。
流石にここまでくるとおかしい事に気付き。恐る恐ると備え付けの鏡に目をやる。
信じたくなかった。昨日の臨時ニュースが優希の頭をよぎる。
男が女へと体が変化する現象。
「嘘だろ…」
鏡の中には、見慣れた自身の姿はなく。
代わりに、歳の同じくらいの少女と目が合うだけであった。
日向は一人、友人の家に向かい歩いていた。
朝食の際に、優希の家に行ってくるといえば、妹が「ずるいウチも行く!」と無理やりにでもついて来ようとしたが。残念ながら親父につかまり、今までサボっていた分のツケを払わされていた。
もっと効率よくサボればいいのになーと考えるも、特に日向自身も妙案が浮かぶわけでもないので、黙って頭の中で合掌をしておく。
優希だったら何かいい案でも思いつくのだろう、後で聞いてみよう。
なぞの信頼を友人に向けながらただ歩く。
今日は比較的涼しい気候のようだ。暑いものは暑いのだが、汗がだらだらと垂れてくるようなほどではなく、汗が風でちょうどよく冷やされて心地よい。
ポケットに入れていたスマホが着信を告げる。
十中八九、優希だろうと思いつつ取り出し、表示されt名前を見る。
やはり優希だ。
迷うことなく電話に出る。
「もしもし、どうしたんだ。つくのにはもう少しかかるぞ。」
『……』
「おい、優希?」
応答したものの、沈黙を貫く友人に少し戸惑う。
「おいって、ゆう…」
『…日向』
聞こえていないのか、一向に喋らない優希に再度問いかけた瞬間、携帯から聞きなれない女性の声が聞こえてくる。
明らかに優希の声ではないそれに、流石に度肝を抜かれた日向だが、すぐに立て直す。
「あんた誰だ。もしかして優希に何か…」
『…俺、優希だよ。』
さえぎるように言われたその言葉に、日向は気温が急激に下がったかのように感じた。
次々と疑問が浮かんでくる中、日向は少女の声に余裕がないことに気づく。
今は戸惑っている場合ではない、最優先は優希だ。
瞬間、日向の頭はクリアになっていく。
『信じられないかもしれないけど、俺もうわけわからなくなって・・・』
続けられた声に、日向も覚悟を決める。
「優希なんだな、信じるぞ。すぐにそっちに向かうから、もう少しだけ待ってろよ!」
そして、通話を切った日向は優希の家に向かい駆け出した。
日向との通話を終えた優希は一人、ベッドに横になる。
今朝、一時間前に自らの変化に気づいてから、驚愕や困惑は絶えなかったが今では、それ以上に漠然とした不安が優希の心を占めていた。
先ほども、それに耐えきれなくなり。日向に助けを求めるように通話をかけた。
無論、通話をかけること自体に不安がなかったといえば噓になる。自身の声が変化の前と比べて高くなっているのはわかっていた。そもそもの声質が違うのだ。実際、最初に日向は自分が優希であると思いもしていなかった。
それでも、最終的に信じて今こちらに向かってくれている。それだけで心が軽くなるように感じた。
しかし、今の自分が変わっているのは、声だけでない。
髪の長さも、身長も体重も、顔、体格すべてにおいて、以前の体とかけ離れている。
それでも、日向は俺のことを信じてくれるのだろうか。
そうこう考えていると、玄関の扉がたたかれる。
日向が到着したのだろう。
正直、出会うのが怖い。
それでもと、勇気を振り絞り。玄関に向かう。
玄関の前、日向は乱れた息を整えながらドアを叩いた。
いくら、夏にしては涼しくても全力で走れば関係ない。
汗が額から滴り落ちる。
肩にかけたタオルで拭いながら、待っていると。ふいに、ドアの鍵が開く音がした。
そして、ゆっくりとドアが開かれる。
その姿を視界に収めると同時に、日向は息をのんだ。
ドアを開け出てきたのは、まぎれもなく美少女と称されるべき少女であった。
身長は、女子の中でも小さめだろうか、腰まである長い黒髪に整った目鼻立ち。
日向は思わず見とれてっしまう。
「…黙ってないで、何か言ってくれよ。」
それを見た少女は不安げに日向を見やり、口を開いた。正気に戻った日向はごまかすように答える。
「え、あ、おう、悪い。…本当に優希であってるんだよな、ドッキリではなく。」
「うん、俺、優希。…やっぱり、信じられないよな。」
「信じられないわけじゃない。ただ現実味がなさ過ぎて、理解が追い付いてないんだ。」
少し落ち込んだ様子の優希に、日向は慌てたように訂正を入れる。
日向は、気合を入れなおすようにほほを叩いた。
優希はそんな日向の様子にほっとしたように息をついた。
「…とりあえず中入れよ。飲み物出すから。」
「悪いな、お邪魔します。」
リビングに通されて、日向は腰を下ろす。
優希はキッチンに入り、飲み物を用意する。しかし、手足の長さが変わったことで、少し飲み物を注ぎにくい。歩幅も小さくなって、部屋がいつもより大きく感じる。
先ほども、日向の顔を見るのに上を向かなければならなかっため、いやでも体の変化を意識させられる。
注いだ飲み物を、二人分持ってリビングに向かい、日向にグラスを差し出すも、少し間が離れてしまう。
「サンキュ」
そういって立ち上がり、受け取った日向は、瞬く間に半分ほどをのみ切ってしまう。
よほど焦ってきてくれたことをどこか、嬉しく思う反面、罪悪感を感じる。
優希は日向の向かい側に腰を下ろす。それと同時に日向はグラスを置くと座り、話しだす。
「それで単刀直入に聞くが、何時変化があったんだ」
「よく分からない。朝起きた時にはもうこの状態だった。」
いつになく真剣な表情の日向。
日向は普段あまりこういった表情を見せない。それが、どれだけ今回のことを重く受け止めているのかを表していた。
何か原因があるのならば突き止めておきたい、それは優希も同じだ。
しかし、優希自身、兆候のようなものはなかったように感じる。それこそ、寝て起きたら女になっていたとしか言えないのである。
「やっぱ、これって昨日ニュースで言ってたあれだよな。」
「うん、そうだと思う。状況的には全く一緒のことが起きてるし。」
まだ事例が一つしか出てないため確証は持てないが、概ね合っている。
「体調とかはどうなんだ?どこか調子悪いとか。」
「今のところ、問題なし。ただ、色々サイズ感が違うから少し動きづらいし、距離感も測りづらい。」
優希は苦笑しながらそう言う。
先ほど、グラスを渡す際に少し距離感が外れていたのはそのせいであったらしい。
しかし、少し顔に影があるのは、まだ受け止め切れていない表れだろう。
「とりあえず、昨日のニュースについて調べてみるか。」
「…そうだな、もしかしたら新しい情報も出てるかも。」
方針が決まったところで、早速各々がスマホを取り出す。
少しでも有益な情報が出てくれば、優希の不安も軽減できるだろうという意図もあるが、やはり、現状では情報不足が1番の問題だ。
もし、何か戻る方法が見つかっていれば、それこそ全てが解決できる。
「…え?」
ふと、一足早く検索をかけていた優希が声を上げる。
一瞬、どんな情報が出たのかと聞こうとした日向だが、優希のその声音に眉を顰める。
呆然としたようなその声に、嫌な予感が拭えない。
だが、ここで引いても仕方ないと、優希に声をかける。
「…どんな情報が出てきたんだ。」
優希は無言のまま、そのスマホの画面を見せてくる。
そこには
[性転換した元男性が失踪、現在行方不明に。]
現状、最悪の部類の見出しがそこにあった。
もう少し書こうと思ったんだけど、キリが良かった。
あと、優希TSに決めた。いつか逆も書きたいなーと考えている。
気に入ってくれた人は、シーユーネクストタイム