私、篠前 ゆりかはよくのんびりとした性格だと言われる。
のろまだとも言われた。
いちいち行動を起こすのが遅いらしい。
あまり反論できない。
けど、のろまよりのんびりと言われるほうが好き。
のろまはやる時も早く動かないけど、のんびりはやる時は早く動くからね。
私はやる時はやるよ。
「これはこうでー……」
今は古文の授業中。
先生が教科書片手に古文を音読している。
この授業を真面目に聞いている生徒は一体何人いるのだろうか。
私は聞いていない。
意味も無く外を見ながらただボケーっとしている。
ノートは開いてあるしペンも持っているが、白紙だ。
嘘だ、モジャモジャ頭のキャラクターを描いている。
これで3人目。
そろそろバリエーションを増やしたほうが良いかな。
そんなことを思っていると何かが割れる音と共に体中が激痛に襲われた。
今まで感じたことがないレベルの。
目が見えないし手足の感覚が無い。
何が起きたのかよくわからなかったけど、今にも死にそうなことはよく分かった。
いや、死にそうなんじゃない。
私は死んだ。
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うぐぐっ…もう耐えられない…ん?
あれ?痛くない。
終わったのかな?
…あー!痛かった。
例えるなら全身が小指になって思いっきりタンスの角にぶつかるぐらい痛かった。
ひょっとしたらそれ以上なのかもしれない。
とにかく痛かった。
さーて、ここはどこだろう?
辺りは真っ暗、墨汁の中にいるみたい。
なんだか体が窮屈だし何か箱のようなものに入れられているのかな?
ひょっとして私は攫われたの?
いやでもたしか私は死んだはず…。
死後に入る…箱?
!!まさか棺桶の中!?
じゃあ今の私はゾンビということ!?
いや、もしかしたら吸血鬼なのかも…。
とにかくここから出てみよう!
私は卵が割れるような音と共に箱を突き破った。
目の前には沢山の虫がいた。
タニシみたいでのそのそ動いている。
壁に貼り付いているのもいる。
赤い卵から今さっき孵化したのもいる。
そして私は、今さっき孵化したものの一匹だった。
つまり、私は人からタニシになっていた。
ゾンビとか吸血鬼とかじゃなくて。
タニシに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
タニシになってから30分くらい。
タニシもなかなか良いなと思ってきた。
ボーとしてても何も言われないしのんびりしても良い。
先生に質問されて聞いていなかったでしょと怒られる心配も無い。
平和だなぁ……
そう思っていた時期が私にもありました。
今、目の前にどデカイ蛇がいる。
私を見てないけれどあの大きな口でガブリとされればあっという間に死んじゃう。
かなり怖い。
お母さんの比じゃない、何かがあったお父さんよりも怖い。
でも私にはのそのそと動くことしかできない。
なんとか逃げようとしてるけど蛇の大きさが変わらない。
私って、すごい遅いんだね。
そんなこんなで私に興味の無い蛇に最大限の警戒をし続けること数分。
蛇はどこかへと這っていき見えなくなっていた。
……助かった。
さっそく命が尽きてゾンビになるところだった。
タニシのゾンビって強いのかな?
小さいし知らない間に近くにいそう。
近くにいそうで思い出したけどこれって異世界転生だよね。
なにかで見たことがある。
死んだ大人の人が化け物になって国を作る話。
タニシは化け物じゃないけど人から別の生物になってるし多分異世界転生だ。
異世界転生といえばスキルがあって自分の中で特に有名なのは『鑑定』っていうスキルが有名かな。
鑑定があれば森羅万象を知り無知を素早く知恵に変えられる。
《現在所持スキルポイントは80000です。
スキル〈鑑定〉をスキルポイント100使用して取得可能です。
取得しますか?》
……あるんだ。
いやさ、あれはただの独り言だったのいうか、叶うはずのない願望というか…。
ま、いっか。
鑑定がとれるのなら文句なし。
《「鑑定LV1」を取得しました。残りスキルポイントは79900です。》
よし、これで森羅万象を知れるね。
さっそくあの壁を鑑定!
《壁》
おや?
もう一回!
《壁》
ならばあのタニシに!
《タニシ》
そして自分に!
《タニシ》
タニシだね!!
…あらま、このスキル意味無い。
いくらポイントが沢山あるとはいえ無駄使いは良くない。
ちょっと勿体無いことしちゃった。
反省。
うーんでもまだLV1だしいらない子判定は早いかな?
じゃあ無駄使いじゃないね。
いっぱい鑑定すればきっとLevel Upするよね。
するよね?
すると信じてたくさん鑑定しておこう。
やりすぎると頭が痛くなるけど我慢我慢。
あれから数日ほど、鑑定さんはかなりレベルが上がってきている。
ただ鑑定をやって上がったのもあるけどスキルポイントを使って上げることができるらしいのでやってみたのもある。
1LVあたり100ポイント。
それに気づいたのは「鑑定LV3」になってからでとりあえず「鑑定LV9」にした。
ここまでやったんならキリよくLV10にしようとしたけど、あと1ぐらいポイントを使わなくてもすぐに上がるだろうと思いやらなかった。
そんな成長した……いや、課金した鑑定さんの実力を見せてあげよう!
《エルローゲーレイシュー(篠前 ゆりか) LV1
ステータス
HP:108/108(緑)
MP:3/3(青)
SP:105/105(黄)
:105/105(赤)
平均攻撃能力:4
平均防御能力:104
平均魔法能力:3
平均抵抗能力:103
平均速度能力:1
スキル
「腐蝕攻撃LV5」「腐蝕耐性LV5」「鑑定LV9」「のんびり屋LV1」「n%I=W」
スキルポイント:79300
称号
「のんびり屋」》
わぁ、すごい。
いろいろなことを知れるね。
さすが!課金に目覚めちゃいそう…。
とにかくいろいろ鑑定出来るみたいだから鑑定してみよう。
《腐蝕攻撃:攻撃に腐蝕属性を付与する》
腐蝕属性?
《腐蝕属性:死の崩壊を司る属性》
え?タニシって死の崩壊を司るの?
水槽によくいるタニシにそんな能力があったなんて…。
意外だなぁ。
《腐蝕耐性:腐蝕属性に対して耐性を得る》
だろうね。
《のんびり屋:HP、SP、平均防御能力、平均抵抗能力にスキルレベル×100分のプラス補正が掛かる。また、レベルアップ時にスキルレベル×10分の成長補正が掛かる。さらに、のんびりしているとHP、SPが回復していく。》
…これすごいね。
1つのスキルにたくさん詰め込まれてる。
強化と回復。
これが転生特典ていうやつかな?
耐えるっていう言葉が似合うスキルな気がする。
なんだかのんびり屋っぽくないような?
ま、いっか。
次は称号。
《のんびり屋:取得スキル「のんびり屋LV1」:所得条件:選ばれしのんびり屋であること:説明:選ばれしのんびり屋に贈られる称号》
のんびり屋があるのは君のおかげか!
というか私って選ばれしのんびり屋なんだね。
誰に選ばれたんだろう?
異世界転生だし神様かな。
タニシに転生したのも神様のせい…いや、おかげというべきかな。
とりあえず、一通り鑑定してわかったことがある。
私強くない、弱い。
のんびり屋はすごいけど耐久力が上がるだけで攻撃力は上がらないんだよね。
腐蝕攻撃がそこらへんをカバーしてくれると思ったけど、攻撃を当てられるほどスピードは無いと思う。
だって平均速度能力1だよ?当たらないよ。
体もちっちゃいからリーチも短い。
正直カバーできてないよね。
今すぐに強くなる方法としてはのんびり屋や腐蝕攻撃にスキルポイントを振ってレベルを上げるか、それ以外の強化系スキルを取得してステータスの穴を埋めるか、その両方か。
でもそんなことをしたらスキルポイントが無くなっちゃいそう。
幸いここの生物は私を食べようとしないから急ぐ必要はない。
ゆっくりじっくり考えよう。
カサッ…
すぐ近くで虫か何かが止まった。
私は恐る恐る見てみると、そこには白い蜘蛛がいた。
かなりデカイ。
怖い。
なんで私をじっと見たまま動かないの?
……?何だか体中を舐め回すような感じがする。
なにをされてるの?
よく分からないけど、鑑定!
《スモールタラテクト LV3 名前 なし
ステータス
HP:38/38(緑)
MP:38/38(青)
SP:38/38(黄)
:38/38(赤)
平均攻撃能力:21
平均防御能力:21
平均魔法能力:19
平均抵抗能力:19
平均速度能力:369
スキル
「HP自動回復LV2」「毒牙LV8」「毒合成LV1」「蜘蛛糸LV8」「操糸LV5」「投擲LV1」「集中LV1」「命中LV1」「鑑定LV7」「探知LV3」「隠密LV5」「外道魔法LV2」「影魔法LV1」「毒魔法LV1」「過食LV3」「暗視LV10」「視覚領域拡張LV1」「毒耐性LV7」「麻痺耐性LV3」「石化耐性LV2」「酸耐性LV3」「腐蝕耐性LV3」「恐怖耐性LV5」「苦痛無効」「痛覚軽減LV5」「強力LV2」「堅固LV2」「韋駄天LV2」「禁忌LV2」「n%I=W」
スキルポイント:0
称号
「悪食」「血縁喰ライ」「暗殺者」「魔物殺し」「毒術師」》
化け物じゃん。
勝ち目が無い。
私の生よ、もはやここまでなのか……。
えぇいなら噛みつかれた瞬間全力腐蝕攻撃だ!
蜘蛛さんよ!私はあなたを道連れにする気だ、やめておいたほうがいいよ。
私はいつ噛みつかれてもいいように身構えていると蜘蛛さんが足を動かして何か抗議をするような姿をみせる。
私に何か伝えたいのかな?
だとすれば一体何を伝えたいんだろう?
私は蜘蛛さんをじっと見る。
その足が、顔が、体が、一体何を伝えようとしているのか理解するために。
……まったく分からない、何か理解ができるスキルは無いのかな?
いや、理解できるスキルじゃなくて会話ができるスキルのほうが良いか。
何かないかな?例えば念話とか。
《現在の所持スキルポイントは79300です。
スキル〈念話〉をスキルポイント100使用して取得可能です。
取得しますか?》
お、あるんだ。
じゃあ取得。
《スキル「念話LV1」を取得しました。残りスキルポイントは79200です。》
よし、さっそく念話開始!
『あー、あー、聞こえますか?』
『……え!?頭の中に声が!?』
あれ?案外普通の声だ。
もっと化け物みたいな声だと思ってた。
『どうもタニシです。』
『あ、これはどうもご丁寧に、蜘蛛です。』
すごい普通だ。
『あの〜これはなんですかね?』
『念話です。今あなたの心に直接語りかけています。』
『へーそんなスキルもあるんだ〜。』
今さっきとったけど便利なスキルだなぁ。
『ここであったのも何かの縁ですし自己紹介しませんか?』
『いいよ!いろいろ聞きたいことがあるしね!あと敬語はいらないよ!』
まさかの快諾。
蜘蛛らしくないなこの蜘蛛さん。
『私はタニシ。他のタニシより変わったタニシだよ。』
『……え?それだけ?』
『?それだけだよ。』
蜘蛛さんが前足を頭に乗せる。
これ頭を抱えてる……のかな。
『えーっと次は私ね。まぁ、見ての通り蜘蛛だよ。ちょっとタニシちゃんに聞きたいことがあってさー、聞いていい?』
『いいよ。』
蜘蛛さんが私に聞きたいこと?
というかタニシちゃん呼びなんだね。
それ以外に呼び方はないけどさ、もうちょっとかわいい呼び方にして欲しかった。
『前世の名前、篠前 ゆりかだったりしない?』
!!
『……なんで知っているの?』
前世を当てるとか何かのアプリで見たことがあるけど、この蜘蛛さんはそれ無しで当てたということ?
スキルのみならず頭も化け物だったか。
『何でって…鑑定で分かるから。種族名の所にその名前が書いてあるんだよね。』
『え?…あ、ホントだ。』
い、今まで気づいてなかった……。
蜘蛛さんありがとう。
ん?もしかして蜘蛛さんも転生者の可能性があったりする?
確かめねば。
『ひょっとして蜘蛛さんも転生者?そうだったら名前を教えて?』
蜘蛛さんがその問いを待っていたと言わんばかりに答える。
『そのとおり!前世の名前は若葉 姫色だよ』
若葉ってあの超美人なクラスメートの?
あの美人さんが蜘蛛に…。
神様はひどいなぁ。
なんだか中身が若葉さんだと分かった途端目の前の蜘蛛さんが美人に見えてきた。
美人パワー恐るべし。
100回読まれたら続きます。