私が産んだ子供……蜘蛛さんはライユって呼んでたそれは、予想以上の働きをしてくれていた。
今まで先が見えない思いをしていた火竜の処理が、あっという間に終わったのだ。
戦いだけでなく、作業も数だと教えてくれたよ。
ウロコの処理はもちろんのこと食べきるのも手伝ってくれた。
というか火竜のほとんどは子供達が食べた。
私たちはのんびり屋で食べる必要はあまり無いのだけれど、子供達は普通にお腹が減る。
子供達が食べたのはウナギとナマズ以外の火竜で、ウナギとナマズは蜘蛛さんが食べた。
美味しいものは蜘蛛さんのもの、そういうことなのだろう。
まぁ…それでも量が多すぎて食べきれなかったから途中から子供達が食べたんだけどね。
私?
私は全部の火竜種を平等に食べたよ。
美味しいものと不味いもののギャップがあって、美味しいものはより美味しく、不味いものはより不味く感じたね。
さて、火竜の食レポは置いといて、私たちにはやることがある。
それはこの中層から出ることである。
中層を出ると言っても下層に向かうのではなく、上層に向かう。
蜘蛛さんの生まれ故郷と言ってもいいのかもしれない。
私は行ったことがないからどんな感じなのか楽しみではある。
でも結局はエルロー大迷宮、魔物だらけなメシマズ生活からは抜け出せないだろう。
蜘蛛さんの話を聞く限りだと、美味しいものに初めて出会ったのは中層、上層に美味しいと感じるものは何一つ無かったらしい。
うーん。
美味しいものに関しては上層にはあまり期待しないでおこう。
それでも魔物のレベルが低いから生きることに苦労することは少なくなるはず。
あわよくばエルロー大迷宮の出口を見つけて外へ……。
そう思うと上層に行くメリットは多い。
デメリットはレベルが上げづらくなることかな?
まぁ続きは上層に上がってからで。
私は通りすがりの赤色の犬に破滅弾を撃ち込む。
MP消費は5、低燃費だ。
そんなものでも赤犬は被弾したお腹に破滅弾ほどの大きさの穴が開いていた。
十分死にかけだけど蜘蛛さんの追い撃ち。
頭に綺麗な穴が開いた。
今なにをしているのかというと、破滅弾の試し撃ちだ。
新しく手に入れた武器、使わない手はない。
何体かの魔物に試し撃ちをしていて分かったことは、破滅弾は、というより破滅属性は物体を削る力があるらしい。
腐蝕属性と違うのは当たったところだけという点と、塵になることなく消滅するという点かな。
非常に強力だけど、調べていく内にあることが分かった。
相手の抵抗能力が高いと防がれてしまうことだ。
自分の魔法能力ほどの抵抗能力があったら、完全に防がれてしまう。
ようはノーダメージ。
え?どうやって調べたのかって?
どうやったんだろうね?
そこは想像にお任せするよ。
ちなみに子供達が撃つとノーダメージだった。
まだまだ生まれたばかりで魔法能力が低いからだろうね。
赤蛙なら表面を削るくらいなら出来たけど。
そんな風に破滅弾を使ってたら破滅のレベルが上がった。
そこら中の岩が穴だらけになるくらい撃ってたし当たり前か。
『LV2:破滅小弾』
これはその名の通り小さな破滅弾を撃つ。
小型な分威力が落ちちゃうけどMP消費が少なめ。
なんとたったの1で発射可能。
グミ撃ちするのにぴったりだね。
……なぜか負けそうだ。
使うの控えようかな?
いや、これは先入観。
大丈夫大丈夫。
負けない負けない。
あ、そうだ。
子供達の数は100。
レベルはあまり上がってない。
それでも破滅弾の空砲を撃たせまくって大体の子供達は破滅LV2になっている。
これによりグミ撃ちの嵐を起こせるようになった。
なぜかあまり嬉しくない。
戦力増強が出来てるのにね。
そんなこんなで今、私と蜘蛛さん、そして100の子供達が上層を求めて中層を進軍中。
火竜戦で周りの火竜のほとんどを狩り尽くしてしまったのか、目に映る魔物は火竜以外のものばかりだ。
その魔物も、私と蜘蛛さんの恐怖を齎す者のせいですぐにマグマの中に逃げてしまう。
だから逃げ切る前に仕留めなければならない。
これがかなり大変。
子供達の破滅弾だとノーダメージで終わってしまうことが多い。
だから私と蜘蛛さんが邪眼で瀕死まで追い込んで子供達が止めを刺している。
レベルが上がれば魔法能力が上がり破滅弾が通ると思ったからだ。
しかしここで問題が発生する。
邪眼で瀕死まで追い込むのが難しいのだ。
呪怨や暗黒だとびっくりするぐらいのスピードで減っていき気づいたら死んでいる。
ならどうするか。
そこで悄然の邪眼の出番。
私たちに恐れて逃げ出してしまうのなら、もっと怖がらせて逃げられなくすれば良いじゃない。
これが大成功。
傷一つ与えず無力化し、子供達が生きたまま貪り食う。
レベリングと食事をダブルで行える。
結構あれなことしてるけど子供達の成長の為だ、許せ。
そんなことを繰り返していると子供達のレベルが上がってきた。
100体もいるので差があるが、一番強い子供はこんな感じ。
『リトルレッサーホロ・ライユ LV4
ステータス
HP:70/70(緑)
MP:70/70(青)
SP:70/70(黄)
:64/70(赤)
平均攻撃能力:140
平均防御能力:70
平均魔法能力:140
平均抵抗能力:70
平均速度能力:70
スキル
「腐蝕大攻撃LV2」「腐蝕大耐性LV3」「破滅LV2」
スキルポイント:0
称号
「破滅の子」』
バランスが良いというのが私の印象。
私なんか攻撃能力が1000ぐらいで抵抗能力が8000だからね?
今までカチカチになる種族ばかり選んでいたらこんなカチカチになっちゃったよ。
こんな大人になっちゃ駄目だよ。
あ、私女子高生だった。
………女性としてカチカチなのはいかがなものか。
今はタニシだし気にしない気にしない。
そういえば蜘蛛さんはスキルポイントで空間魔法なるものを取った。
スキルポイントは500。
狂による制限ギリギリだ。
空間魔法とは空間を操る魔法だ。
低レベルだと空間を指定するぐらいしか出来ないが、高レベルになれば転移が出来るらしい。
まだレベル2だから分からない。
でももし転移が出来るのなら行動範囲が一気に広がるだろう。
叡智のマッピング能力との相性もピッタリ。
今は魔法担当の私3号が空間魔法を使い続けている。
レベルが上がるのが楽しみだ。
む?叡智に反応あり。
これは……火竜?
滅んだはずじゃ!?
なんてね。
流石に滅ぼしたなんて考えてないよ。
まったく見かけなかったけどね。
うん。
それにしてもこの形……見たことがない。
火竜の次は……火龍?
ありえるなー。
む?また反応あり。
これは…?
デカイ蜘蛛?
『これ……ひょっとしてマザー!?』
『マザー…?蜘蛛さんが言ってたやつ?』
『そうそう!』
『タラテクト種って火に弱いんじゃなかったっけ。』
『マザーは大丈夫なのかも。』
へーと私は返事をしながら、マザーが来るであろう縦穴を岩石から覗き見る。
叡智で大きな反応が上層から下がってくるのが分かる。
反応が下がる度に禍々しい雰囲気が縦穴から溢れ出してくる。
そして上層から下層まで続いていそうなその縦穴からゆっくり…ゆっくりと、それでいて威圧感を出しながら、マザーが姿を表す。
叡智である程度の大きさを見ていたが、やはり直で見ると迫力が違う。
絶対に勝てない。
そんな自信が心の奥から沸き上がってくるような風格を見せていた。
うわぁ……。
あれが蜘蛛さんのお母さん?
なんというか……遺伝子の繋がりをあまり感じないよ。
そんなことを考えていると火龍がマグマから顔を出す。
タツノオトシゴやナマズ、ウナギはもちろんのこと火竜でさえも引き連れた火の王者だ。
火龍達はマザーをロックオンしている。
擬人化すればナンパに見えないこともないかも。
そんなことを考えていると、火龍達がマザーに大量の火球を飛ばす。
マザーはその巨体故に避けられず、全弾ヒットしてしまっている。
これほどの火球、喰らったらひとたまりもないだろう。
我々の勝利だ、ダハハ。
そんな声が火竜から聞こえてくる。
爆発の嵐に飲み込まれているマザー。
爆煙が晴れれば中まで火が通ったジューシーな蜘蛛焼きが出来上がっている。
そう思わせるには十分な姿だ。
止めだと言わんばかりに火龍が極大の火球を吐き出し、マザーに直撃する。
その瞬間、マザーは今までの爆発を超える大爆発に包まれる。
ーー誰もが死んだと思った。
火龍達が攻撃を止める。
その顔には勝利を確信した表情を浮かべているように見えた。
ーー反撃も抵抗も、何も出来ずに死んだと思った。
爆煙が晴れていく。
ゆっくりと煙が薄くなっていくその光景は、早くマザーの姿を見せてくれと煙を急かしたくなる。
少し経つと煙が完全に晴れ、マザーの姿がくっきりと見えるようになる。
そこには、醜く焼け焦げたマザーの姿が……。
ーーだが違った。
……見えてくることは無く、傷一つ無い蜘蛛の女王がそこに立っていた。
火龍達に衝撃が走る。
そんな火龍達を無視し、マザーは口にエネルギーをため始める。
そのエネルギーを火龍達に放つと、凄まじい轟音と共に世界が揺れた。
マザーはそれで満足したのか、またゆっくりと下層に降りていく。
叡智の反応は……1。
恐らく火龍だろう。
あの一撃を耐えるとは流石龍種。
………止めを刺しに行こうかな。
多分、勝てるでしょ。
原作より一段階進化が進んだ蜘蛛子
+
防御力と抵抗能力は下手な龍種より多いタニシ
+
龍種相手にはまったく役に立たないタニシ’s children
VS
マザーの攻撃でHPほぼ半分で疲労状態な火龍