タニシですが、なにか?   作:マリモ二等兵

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お酒は人を変える

 夜。

 

 蜘蛛さんが糸を解除する。

 ソフィアさんが倒れる。

 メラさんが心配する。

 魔王が苦笑い。

 人形蜘蛛が煽る。

 うん、いつもの光景だね。

 とても平和。

 

 そう思いながら、さっきエルロー大迷宮でとれた魔物の肉を調理する。

 私の料理の腕は普通ぐらい。

 特別美味しいわけではないし、特別不味いわけでもない。

 作れる料理も家庭料理程度。

 まぁそれでも十分だと思うけどね。

 

 ソフィアさんとメラさんにエルロー風肉野菜炒め、魔王と蜘蛛さんには外で採れた食材スープを出す。

 エルロー風肉野菜炒めは野菜は美味しいと、外で採れた食材スープは普通に美味しいと言われた。

 人形蜘蛛達にはエルロー風毒ステーキをプレゼント。

 美味しく頂いてくれた。

 美味しそうに食べる姿を見るとこちらも作ったかいがあるというもの。

 次の機会があればもう少し手の込んだものを作ろう。

 

 「それじゃ、あの街に買い出しに行くから1日ぐらい待っててね。」

 

 魔王が私たちに言った後、ソフィアさんたちを連れて街に向かう。

 私たちは暇なので人形蜘蛛のカスタマイズをする。

 今度は声帯。

 出来るかどうかまだわからないけど、糸を上手く使えばイケそうな気がする。

 魔王が帰ってくるまで声を出させることに成功出来た。

 が、音はまだ糸を弾いたような音だし不安定だ。

 それでも人形蜘蛛達は声を出すのが楽しいらしく、暇さえあれば波のある声を出している。

 

 そんな日を一ヶ月ほど。

 

 ソフィアさんが中々仕上がってきた。

 スキルもステータスも年齢にしては上がり過ぎなぐらいで、赤ちゃん同士で運動会をやったら確実に1位が取れるね。

 多分、なんも嬉しくないだろうけど。

 そんなソフィアさんの鍛錬は次の段階に進む。

 でも、それをソフィアさんは拒む。

 強くなるのに一番効率が良いのになんでだろう?

 ただ自分に魔法を当てるだけなのに。

 蜘蛛さんも首を傾げている。

 

 『ムリムリムリ!ねぇ篠前!言ってやってよ!』

 

 「……うーん?」

 

 『え?ま、まさかあんたも?』

 

 「??」

 

 ソフィアさんはさっきから何を言ってるのだろう。

 もしかして度重なる鍛錬に頭がアレになっちゃったかな。

 だとしたらどうしよう。

 奇跡魔法で治るかな?

 

 『あんな魔法当てたら一瞬で死ぬわよ!おかしいんじゃないの!?』

 

 「蜘蛛さんぐらいの威力でやれとは1度も言ってないよ。」

 

 『……え?』

 

 なるほどね。

 蜘蛛さんのお手本魔法に触れて腕が吹き飛んだのがトラウマになってるのか。

 その傷を治しても数分間は泣き叫んで、メラさんの服がヌチョヌチョになってたし。

 

 『白、ごめんなさい。』

 

 蜘蛛さんはソフィアさんを見つめて動かない。

 どこか威圧的に見えるけど、念話で私に助けを求めている。

 ……今回は蜘蛛さんが頑張ってね。

 蜘蛛さんから嘆きの念話が来るけど、頑張らなきゃ人は成長しないからね。

 頑張れ、応援してるよ。

 

 ある日。

 

 ソフィアさんが蜘蛛さんに対して従順になった。

 それは昨日ソフィアさんが魔王に相談した時に、命の恩人である蜘蛛さんを嫌っていることにツッコミが入り、色々言われてたのが原因と思われる。

 蜘蛛さんはよくわからないけどヨシって感じだったね。

 

 いつものように街に行く魔王達を見送り、人形蜘蛛をカスタマイズ。

 そして魔王達が帰ってきた時、魔王が手に何かを握っていた。

 よく見るとそれはお酒だ。

 魔王見た目未成年なのによく買えたね。

 そういうのはこの世界には無いのかな?

 無さそうだね。

 

 「ほ〜ら白ちゃ〜ん、篠前ちゃ〜ん。お土産、持ってきたよー!」

 

 え?お酒がお土産?

 私、前世合わせても未成年だし飲まないほうが良さそうだけど、良いのかな。

 今世だけならまだ赤ちゃんなんだけど。

 というか私ってお酒飲めるのかな?

 それにタニシってお酒飲めるの?

 一応前世のお父さんは結構お酒を飲んでたけど、今はその血を受け継いでないし参考には出来ないなぁ。

 う〜ん。

 まぁでも、飲んでも死にはしないだろうから、今回はお試しで飲んでみようかな。

 蜘蛛さんも同じ考えみたい。

 

 「はいどーぞ!」

 

 魔王がお酒の入った瓶を手渡ししてきたので受け取る。

 自分で注げってことかな。

 アルコール度数は……書いてない。

 でもちょっと高そうだ。

 酔っ払っちゃうかも。

 そういえば酔っ払うとその人が普段しないような行動をするようになるんだっけ。

 私が酔っ払ったら何をするんだろう。

 んー普段やらない行動なんて思いつかないや。

 蜘蛛さんが酔っ払ったら……なんだろう。

 謙虚になるとか?

 お酒は人の気を大きくさせるから、それはないか。

 となるともっと傲慢になる?

 えー…それはちょっと嫌だな。

 その時は糸で縛り付けて拘束しよう。

 もし暴れだしてソフィアさんやメラさんに被害が出たら嫌だしね。

 

 蜘蛛さんはコップにお酒を入れる。

 そしてちょいっと恐る恐る飲み、その後気に入ったのかゴクゴク飲み始める。

 私もコップに注ぎ、口にする。

 うん。

 甘いね、果実酒かな?

 お酒に詳しくないからわからないや。

 とりあえず、美味い。

 メラさんも私たちが飲んでいるのを見て観念したのかゆっくりと飲み始める。

 

 「まだまだあるからねー!じゃんじゃん飲みな!」

 

 魔王はそう言いお酒が入っているであろう樽を叩く。

 そう、樽。

 飲みきれないでしょ。

 そう思ってたけど、魔王、見た目に合わず結構飲む。

 一人で一樽飲み尽くし、二樽目に突入している。

 はやい。

 それにしてもお酒って飲むと頭がホワホワしてくるというか、なんだか幸せになってくるというか。

 

 「う、ひっく、ううぅ……」

 

 メラさんが泣いている。

 これが泣き上戸か。

 お酒は本音を出すって言葉があったような無かったような。

 つまり今のメラさんは泣きたいってことかな。

 

 「いかん!いかんよ君!酒を飲んで飲み込むんだ!」

 

 「ブホッ!?」

 

 蜘蛛さんがメラさんにお酒を飲ませる。

 蜘蛛さんそんな性格だっけ?

 私は蜘蛛さんの方を見る。 

 そこには顔が赤く、ヘロヘロな笑顔を浮かべた蜘蛛さんがいた。

 蜘蛛さん、酔いやすい体質だったんだね。

 そういえば蜘蛛ってコーヒーで酔うって聞いたし、案外酔いやすい生き物なのかな。

 いや、コーヒーとお酒は一緒にするものじゃないか。

 どちらにせよ、今の蜘蛛さんは酔っている。

 その事実は変わらない。

 

 「な、何を!?」

 

 「辛気臭い顔してんな!」

 

 再び蜘蛛さんがメラさんにお酒を流し込む。

 メラさんは気道にお酒が入ったのかむせる。

 蜘蛛さんが上機嫌に笑う。

 ゲラゲラゲラって感じだ。

 

 「ゲホッ!ゴホゴホッ!…ふぅ…」

 

 どうやら落ち着いたみたい。

 無理矢理お酒を流し込まれて怒ったのか蜘蛛さんを睨むメラさん。

 

 「うん、いい顔だ。うじうじしてるよりよっぽど男前だね。」

 

 その言葉を聞いて、メラさんの怒りは溢れ出した。

 

 「あなたに何がわかる!!」

 

 「何もかも失って、その上吸血鬼になってしまった私の気持ちが、あなたに分かるか!?」

 

 メラさんが大声で、悲痛な声で叫ぶ。

 …うるさい。

 蜘蛛さんがメラさんになんか色々言ってるけど、私はそれどころじゃない。

 うるさい。

 喧嘩するな。

 イライラしてきた。

 ああ!もう。

 ゆっくり飲みたいのに!

 なんで喧嘩するの!!

 

 「そんなイヤなら死ねばいいじゃん。」

 

 蜘蛛のそんな言葉が耳に入る。

 死ねばいい?

 殺す?

 なんで?

 ああ、イライラ。

 待て待て待て。

 落ち着け私。

 力んじゃってコップにヒビが入ってる。

 お酒が漏れ出してきた。

 これじゃいけない。

 魔王に替えのコップを出してもらわないと。

 

 「死ねない!私はお嬢様のためにも死ぬわけにはいかない!」

 

 メラのそんな叫びが聞こえる。

 イライラ。

 

 「マジか…篠前ちゃんって怒り上戸なんだ……。」 

 

 魔王からなんか言われる。

 何を言ったのか気になるけど、そんなことよりお酒だ、替えのコップだ。

 

 「早く、魔王。」

 

 自分でもビックリするくらい低い声が出る。

 うぐぐ、落ち着け落ち着け。

 魔王はなにもやってない。

 

 「うん、その前に威圧のスキルを解除しよ?」

 

 「………あ、うん。」

 

 ふぅぅぅぅ……。

 まだちょっとイライラしてるけど、大丈夫。

 魔王から替えのコップとお酒を貰う。

 それをごくごくと飲む。

 ふぅ。

 蜘蛛とメラの喧嘩もおさまったみたい。

 これでゆっくりお酒が飲めるよ。

 ふぅ…平和が一番だね。

 落ち着いてきた。

 

 「タニシちゃんや!もっと飲まないのかい!?」

 

 蜘蛛さんがそう言いながらお酒をグイグイ飲ませようとしてくる。

 イラ。

 

 「……蜘蛛さん、私はゆっくり飲みたいの、邪魔しないで。」

 

 「あらやだ!いつもより過激!」

 

 イライラ。

 

 「ほらほらほら!!もっともっと!」

 

 蜘蛛が酒をぶっかけてくる。

 イライライラ。

 

 「うるせぇよ蜘蛛。」

 

 「タニシちゃんったらいつの間に不良になっちまっただか!?」

 

 ……プツン

 私の中で何かが切れる音がした。

 もう駄目だ。

 我慢の限界だ。

 龍化、発動。

 

 私は瞬きをする間に龍になる。

 

 『終焉の龍レベル8、終焉の嵐。』

 

 平坦な声でその名を口にし、エネルギーを貯める。

 怒りにまかせてありったけの魔力を注ぎ込む。

 

 『死ね。』

 

 私の口から死の嵐が放たれた。

 

 

 

 う、うん?

 あれ?

 いつの間に私は逆さ吊りになってるんだ?

 えーっと記憶を遡ると……あー!!

 お酒のんで酔って怒りっぽくなっちゃってそれで蜘蛛さん達に終焉の嵐を撃っちゃったんだ!

 それで少し暴れてたらギュリギュリさんが止めに来て……そこから記憶がないね。

 多分コテンパンにやられたんだろうなぁ。

 うわぁ…。

 あの時蜘蛛さんのことを蜘蛛って呼び捨てしてるしこれは蜘蛛さんの言う通り不良だね。

 まさか、こんなことになるなんて……。

 

 うん、お酒は飲まないでおこう。

 

 

 

 

 




 
 蜘蛛子はコミュ障で喋れないのに喋れるようになる。
 ならタニシは……?
 って感じでこうなった。
 
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