タニシですが、なにか?   作:マリモ二等兵

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蜘蛛の反乱

 いつものように魔王達を見送り、蜘蛛さんや人形蜘蛛達と服作りや人形蜘蛛達のカスタマイズをする。

 最初は置いてかれた寂しさを紛らわすように始めた服作りとカスタマイズだが、ここ最近これが楽しみになってきている気がする。

 だって楽しいんだもん。

 蜘蛛さんと人形蜘蛛達と一緒に相談しながら、あれこれ想像するのが楽しい。

 そんな生活を続けていると、人形蜘蛛達をいつまでもちょっと、とか、そこの、とかで呼ぶわけにはいかない。

 だから人形蜘蛛に名前は何か聞いてみた時、首を横に振った。

 もしかして名前が無いのかな。

 帰ってきた魔王に聞いてみると無いらしい。

 それを聞いて私は勿体ないなって思った。

 

 だから蜘蛛さんと話し合って決めようとしたけど、魔王に止められてしまった。

 なんでか聞いたけど教えてくれなかった。

 なんでだろう?

 まぁいいか。

 それで魔王が名前をつけようとしてたけど結構悩んでたね。

 9人もいるからね。

 ぱっと出るものじゃないよ。

 それでも魔王は意地でも私たちの知恵を借りず、9人の人形蜘蛛に名前をつけた。

 

 アエル、サエル、リエル、フィエル、ニエル、ファエル、ソリエル、ノエル、オリエル。

 

 みんな個性的で覚えやすい…と良かったんだけど、結構性格が似てる所があるから見た目に差異がないとあまり分からない。

 とりあえず大きく分けるとこんな感じ。

 

 アエル、ノエル、ファエルはしっかりしてるくせにちゃっかりさん。

 サエル、ニエルは自己主張の薄い気弱タイプ。

 リエル、ソリエルは天然ボケお転婆。

 フィエルはお調子者。

 オリエルはよくわからない、不思議ちゃんかな。

 

 うん。

 賑やかだね。

 あーとかなら喋れるから、あーあーってずっと言ってる。

 ちょっとやかましいけど、一緒に遊んでる姿は平和だし可愛い。

 見た目も相まって子供がワイワイしてるのを見てる気分になるよ。

 

 そんな風にアエルさん達が遊んでるのを眺めてると、空間に歪みが発生しギュリギュリさんが現れる。

 

 「久しいな。」

 

 「そうだね、ギュリギュリさん。」

 

 「時間がないので本題から話そう。そこの、分体が暴れてるので何とかしてくれ。」

 

 ギュリギュリさんが蜘蛛さんに向けてそんなことを言う。

 え?分体が暴れてる?

 確か蜘蛛さんは並列意思を孵化していない卵に移らせて、分体を作ってたんだっけ。

 それでその分体にレベリングをさせてるって言ってたのを覚えてる。

 その分体が、暴れてるの?

 んー蜘蛛さんの分体の事だしあれかな、本体は美味しいものを食べれているのに分体である私達はなんで食べられないんだ!ズルいぞ!って感じで駄々こねてるのかな?

 いや、そんなのだったらギュリギュリさんが直接言いに来たりはしないか。

 一体何をしたんだろう? 

 

 「見せた方が早いな。」

 

 ギュリギュリさんが空間に映像を出し、私たちに見せる。

 そんな魔法を使っている事に驚いたしそこに映っている映像にも驚いた。

 だって、そこにはソフィアさんの生まれ故郷に数え切れないほどの白い蜘蛛が迫っていたからだ。

 あれは十中八九、蜘蛛さんの子供だ。

 蜘蛛さんの子供はあまり意思というものを持たない。

 ただ生きる。

 それだけが彼女らの頭にある考えで、それ以外はおそらくだけど無い。

 それほど虚無に近い精神を持ってるから、人間の街を襲うなんてありえないことだ。

 蜘蛛さんが命令しない限り。

 私は蜘蛛さんの方を見る。

 一切表情に出てないけど雰囲気で分かる。

 これは驚いてるね。

 つまり、蜘蛛さんの意思でやったわけではない。

 じゃあ誰か?

 ここでギュリギュリさんの言葉を思い出す。

 分体が暴れている。

 つまり、蜘蛛さんの並列意思達が彼女らに街を襲うよう命令しているということだ。

 でも、なんでだろう。

 経験値のため?

 そんな目的でやっちゃったら、ギュリギュリさんに怒られるのは必然だ。

 それが分からないほど、蜘蛛さんは馬鹿じゃない。

 うーん。

 駄目だ、分からない。

 なんの目的があってこんなことをしているのだろう?

 

 「止めてきます。」

 

 蜘蛛さんがギュリギュリさんにそう言う。

 蜘蛛さん……敬語言えるんだね。

 

 「そうか。」

 

 ギュリギュリさんが安堵したように短く返事。

 そのままどっかりと近くにあった倒木に座る。

 

 「タニシちゃん。」

 

 蜘蛛さんが私に手を差し出す。

 私も行けってことか。

 うーん、まぁいいかな。

 なんで蜘蛛さんの分体がこんなことをしたのか気になるし。

 私は蜘蛛さんの手を取る。

 ほんの少し、蜘蛛さんは微笑み、問題の場所に転移する。

 

 周りの景色が変わる。

 転移出来たらしい。

 目の前に広がっているのは何処までも続きそうな森の中ではなく、白の絨毯に覆われている街だった。

 これは、うん。

 凄い量だね。

 分体さん、こんなに産んだんだ。

 この量じゃ分体さんはずっと産んでそうだ。

 おっとそんなことを考えてる場合じゃない。

 分体さんになんでこんなことをしたのか聞き出さなくては。

 えーっとえーっと、ああいたいた。

 

 「へい貴様ら、どういう了見だ?」

 

 蜘蛛さんが分体さん達に聞き出す。

 分体さん達は蜘蛛のため表情はわからないが、ゲッなんて声を出してそうな空気を出す。

 

 『げ!?本体!もう嗅ぎつけてきたのか!?』

 

 1体の分体さんが念話で驚きを口にする。

 蜘蛛さんは鎌を肩に担ぎ、ふぅと息を吐き出して分体さん達に問い詰める。

 

 「どういうつもりでこんなことしでかしてるわけ?ギュリギュリが私のところに文句を言いに来たんだけど。」

 

 『ええー?』『ギュリギュリも動き早ーな。』

 

 「すぐこれをやめてくれないと殺されそうな雰囲気だったんですけど!ていうかやめろし。何してくれちゃってんのホント?」

 

 蜘蛛さん、イラついてるね。

 分体さん達のせいでギュリギュリさんに敵意を向けられかけたのだから仕方ないか。

 そんなイライラな蜘蛛さんの言葉を聞いて、分体さん達はお互いに顔を見合わせ、蜘蛛さんの言葉を理解出来ないといった視線を向けてきた。

 

 『えー。だって人族とか全員ぶっ殺したほうがいいじゃん。』

 

 物騒だね。

 

 「は?意味わからん。」

 

 『それで理解しないそっちが意味わからん。』

 

 んー?

 分体さんは並列意思、つまり蜘蛛さんの意識そのものだ。

 だから意見の食い違いなんて起こるはずがないんだけど。

 でも今はそれが起きてる。

 これが今回の人族襲撃の正体かな。

 そんなことを考えていると、蜘蛛さんが前触れもなく1体の分体さんに接近。

 無防備な顔に腐蝕属性を纏った鎌を振り下ろした。

 鎌は突き刺さり、分体さんの脳を破壊する。

 そして蜘蛛さんは他の分体さんに闇魔法を放ち、足止め。

 その間に鎌と鎌状の前足を使って分体さんを引き裂いた。

 あれ?

 蜘蛛さんの分体だからスキルを共有してるはず。

 貫通無効があるから鎌は突き刺さらないはずなんだけどな。

 ん?蜘蛛さんのステータスを見ると貫通無効が一瞬だけオフになっていた。

 

 「蜘蛛さん、いいの?」

 

 「いいよ。こいつらはもう私じゃない。私を名乗る別の誰かだ。」

 

 蜘蛛さんの返答を聞いて、私は分体さん達に容赦をする必要がないことを知る。

 なら、本気で殺ろう。

 まぁ蜘蛛さんという本体がいるから殺せないだろうけど、今宿っているその体から出すことはできる。

 とりあえず龍化、からの魔神法、闘神法。

 

 さて、今の私のステータスなら分体さんであろうと破滅属性は効果ありだ。

 うーん。

 ここは適当にブレスでいっか。

 分体さんにブレスを吐く。

 分体さんは素早くバックステップし避ける…ところにもう一発ブレスを放つ。

 空間機動で避けられる。

 むぅ。

 流石にブレスは当たらないか。

 なら破滅LV10の破滅世界で。

 これは多くのMPを消費して破滅属性の大爆発を起こすもの。

 その爆発範囲がかなり大きいって説明に書いてあるから、きっと当たる。

 ぶっちゃけまだ1度も使ったことない。

 

 私はブレスの要領で破滅世界を放つ。

 ブレスの速度ほどで飛んでいき、分体さん達は直撃を避けた。

 しかし爆発範囲が説明通り大きく、破滅世界の餌食になった分体さんは跡形もなく消え去っていた。

 お、予想以上に破壊力があるね。

 これで分体さんは後5体。

 良いね。

 蜘蛛さんは肉弾戦で戦っている。

 鎌があり、相手の使えるスキルを操れるからか有利に戦えている。

 相手の魔法を封じ、物理攻撃なら無効スキルでノーダメージ。

 しかし蜘蛛さんは攻撃するその一瞬だけ無効スキルを解除、それだけで、分体さんらは手も足も出ない。

 そんな一方的な戦いが続き、やがて分体は1体になる。

 その分体に蜘蛛さんは冷ややかな目を向け、その白鎌でバキバキっと外骨格が砕ける音を乗せながら縦に切り裂く。

 

 ふぅと蜘蛛さんは疲れが混じった息を吐き出し、白に覆われた街を見る。

 そこではちょうど、私が龍になって間もない頃に出会ったお爺さんが蜘蛛さんの子供達に獄炎魔法を放とうとしていた。

 獄炎魔法は火魔法系最上位のスキル。

 あのお爺さん、実は凄いんだね。

 蜘蛛さんはお爺さんと子供達を交互に見、広範囲転移の準備をし始める。

 子供達をエルロー大迷宮に戻すことにしたらしい。

 子供達はさっき言った通り意思というものはかなり薄い。

 今回の襲撃は分体さんに言われたからこうしたのであって、あの子らが勝手に決めて実行したわけではない。

 蜘蛛さんはそんな彼女らは被害者のように思ったらしく、この場で散らすよりエルロー大迷宮で生かすことを選択したみたいだ。

 

 蜘蛛さんが大規模転移を発動させる。

 その瞬間、さっきまであった白い絨毯が消え、そこには行き先を失った獄炎魔法の準備をするお爺さんと、酷く倒壊したソフィアさんの生まれ故郷だけが残った。

 

 「終わったか。」

 

 私たちが戻ると、まだそこに、全く同じ位置に座っているギュリギュリさんと、そのギュリギュリさんを見つめる9人の人形蜘蛛が待っていた。

 

 

 

 




 
 
 
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