「はい、あー」
「「「「「「「「「「あー」」」」」」」」」」
「いー」
「「「「「「「「「「いー」」」」」」」」」」
私の声に合わせて前の子達が復唱する。
まるで合唱してるみたいだけど、歌っているつもりはまったくない。
何をしているのかというと、ソフィアさんと人形蜘蛛達の発声練習だ。
人形蜘蛛達は前からあーぐらいなら出せたけど、それだけじゃいけないんで発声をしている。
ソフィアさんもやってる理由は、赤ちゃんの頃から幼女に至るまでずっと念話に頼り切りだったから声帯が未発達になってしまっていた。
そのおかげで舌っ足らずになってしまい、しかも、成長による改善が見込めないとのことなのでこうして人形蜘蛛達と一緒に発声練習をしている。
それに、大声を出しながら歩くので鍛錬にもなる。
これを考案したのは蜘蛛さんだからか、非常に効率が良い。
メラさんの方も大変だ。
蜘蛛さんの引斥の邪眼で体を重くされながら歩いている。
どれくらい重くされているのかと言うと、足をつける度に少し沈み、ズシン、ズシンと怪獣みたいな足音を立ててる。
メラさんにとってこれはかなりキツイらしく、ステータスは順調に伸びてきている。
日々鍛錬は怠らない精神だね。
蜘蛛さんが強制してるけど。
さて、そんな私たちは今、とある人類未開の地に来ております。
見た感じただの荒野で人類が開拓できない理由が無いけど、そんな考えも空を見れば吹き飛ぶ。
空に無数にある黒い影。
あれは全て風竜である。
そう、竜。
その中には龍だっている。
上位竜とか龍は1体で人間の軍を壊滅させられるのに、この空にはそれがワラワラいる。
そりゃ未開の地だよね。
ちなみに襲ってこないのは魔王さんがここを通ると風龍達に叫んだからと思う。
龍にとって、魔王さんは一人で自分達を殺れるやばい奴。
襲おうとするほうがおかしいね。
「おー」
「「「「「「「「「「おー」」」」」」」」」」
む、探知に反応あり。
万里眼で確認。
メカメカしい姿をした飛行物体だ。
これはポティマスが作った監視装置。
魔王がサイボーグポティマスを倒した日から、この監視装置は定期的に来ている。
それほど私たちの動向を知りたいわけだ。
蜘蛛さんがその監視装置を歪曲の邪眼で空間を捻じ曲げ、破壊する。
そういえば蜘蛛さんはアラクネに進化してからスキルレベルも本体のレベルもまったく上がっていない。
ステータスも伸びておらず、成長が停滞しているのだ。
これは私にも言えることでステータスもスキルも何も上がってない。
まぁレベルなら空に浮かんでる風龍達を皆殺しにすれば多少は上がるだろうけど、そんなことをしたらギュリギュリさんが黙ってない。
宣戦布告と受け取られ、管理者パワーで蹂躪されるだろうね。
実際、私がお酒に酔った時、防御系ステータスはカンストした上に衝撃や破壊無効のスキルを発動してたのに圧倒的暴力でコテンパンにやられたからね。
流石管理者。
システムの力じゃどうしようもない力を持ってる。
ん?あれ?
叡智に反応、地下に空洞がある。
結構大きいね。
あ、メラさんが地面を突き抜けて落ちていった。
多分重くなったせいだね。
まぁ今のメラさんのステータスなら大丈夫でしょ。
空洞の中に沢山蟻が居るけど大丈夫。
平均ステータス100ぐらいで数が多い。
私たちがやっても…うーんレベルは上がらないだろうなぁ。
あ、アエルさんがメラさんが作った穴に飛び込んでいった。
それについていくようにノエルさん、ファエルさんが飛び込む。
3人も人形蜘蛛が居れば大丈夫って思ってたけど、そんなこと知るかとどんどん人形蜘蛛達が入っていく。
気弱なサエルさんとニエルさんもおどおどしながらも入っていった。
後に残ったのはオリエルさんだけ。
そのオリエルさんは虚をただただジッと見てる。
ちなみに虚を見つめるのはいつも通りだ。
ここは流れで私も参戦するべきかと思い、いざ入らんとしているとハイタッチの音がした。
どうやら蟻の殲滅が完了したらしい。
流石ステータス10000。
仕事が早いね。
さて、メラさんを引き上げよう。
私は糸を垂らしてメラさんを引き上げようとする。
それとは反対に蜘蛛さんは穴に入っていき、土魔法で下へと続く穴を掘りだす。
「蜘蛛さん?」
「白ちゃーん?どうしたのかなー?」
私たちの声を無視して蜘蛛さんは穴を掘り進めていく。
ある程度進むとまた蟻の巣に繋がり、そこにいた蟻達を殲滅してまた穴掘りを再開する。
んー?
経験値のためじゃないね。
こんな蟻じゃレベルなんて上がりっこない。
となると、蜘蛛さんが掘っている先に何かあるのかな?
ちょっと叡智に意識を向けて先の様子を調べてみよう。
んー。
ん?
これは……?
なるほど、蜘蛛さんが穴を掘り進める理由が分かったよ。
これは調べなきゃいけないね。
私は蜘蛛さんの穴掘りの手伝いをする。
蜘蛛さんはチラッと私を見たあと、作業に戻る。
「えー篠前ちゃんまで?いったい何があるっていうのさ」
「魔王さん、この先に叡智に引っかからない場所がありました。何か心当たりはありませんか?」
私の言葉を聞いて、魔王さんは眉をひそめる。
「叡智に引っかからない?まさかッ!…白ちゃん、篠前ちゃん、そのまま掘り進めて。私も手伝う」
魔王さんが少し焦ったような顔をして、穴掘りを進めるように言ってくる。
その反応からして、かなりまずいものなのかな。
この世界でまずいもの…。
衰退前の文明かな。
そんな予想をしながら穴を掘り進めていく。
途中で女王らしき蟻がいたけど、今や原型をとどめてない。
ついてきているソフィアさんやメラさん、人形蜘蛛達は不思議な顔をしている。
説明したいけど、そろそろ目的地に着くしやらなくてもいいか。
穴を掘り進めていくと、大きな空洞に出た。
そして、そこには大きな銀色の扉があった。
金属、金属の扉だ。
これは…どう見ても今の世界の物じゃない。
つまりこれは衰退前の時代の物、遺跡だ。
蜘蛛さんの顔に帰りたいの文字がつく。
まさかこんなものが埋まってるなんて思ってもいなかったんだね。
ガコン!ギギギギギ……
魔王さんがその金属の扉を無理矢理こじ開ける。
蜘蛛さんは嫌な顔して納得してる。
魔王さんがこんな怪しい施設を放置するわけがないもんね。
知ってました。
って顔だ。
施設からビービーと警報が鳴る。
警報が鳴るということは、この施設は生きているということだ。
魔王さんが歩みを進める。
それに私たちはついていく。
ある程度進むと壁が音を立てて開き、そこから無数の銃口が顔を出す。
うわ。
私はメラさんとソフィアさんの防御に専念しようかな。
そう思い、銃弾が飛んでくるかと身構えたが、次の瞬間には魔王さんが全て壊していた。
蜘蛛さんが準備していた魔法を引っ込める。
どこか拗ねたような雰囲気を出してるけど、すぐにそれは飛散する。
そんな感じで施設内を進んでいく魔王一行。
魔王一行って言うと悍ましい姿をした化け物の群れって感じがするけど、見た目だけなら半分以上が幼い少女で他も女子高生ぐらいのと1人の男性。
ハーレムに見えなくもないかもね。
その殆どが平均ステータス10000だけど。
システム内最強も居るしね。
途中でエレベーターを見つけた。
魔王さんの話によると、昔流行ってた隠しエレベーターらしい。
上にある土はエネルギーでドロドロにするのだとか。
エネルギーの無駄使いだね。
そんなこんなである扉の前。
魔王さんがこじ開けるために近づく。
しかし、その扉は今までと違い、自動で開いた。
その光景に魔王さんが驚く。
いや、魔王さんが驚いたのは扉が勝手に開いたことにじゃない。
その先に居る、武骨なデザインのロボットを見て驚いたのだろう。
実際、私も驚いたし蜘蛛さんも驚いた。
そのロボットは壁から生えてきた銃より大口径な銃口が取り付けられたアームが1つ、それを支える胴体に移動用のキャタピラを持っていた。
それが広い空間の中に整然と並べられ、こちらに銃口を向けている。
これは…撃たせる前に壊すのは無理だね。
防御の準備をしよう。
ロボット達の銃口が一斉に光を放つ。
魔王は敵の弾丸を物ともせずに素早く接近し、その莫大なステータスと糸を使った攻撃でロボット達を破壊していく。
ソフィアさん達に光の弾丸が迫ってくる。
私は予め持っておいた龍槍を使い、必要な分だけ弾く。
蜘蛛さんがいつの間にそんな芸をって目で見つめてくるけど、今は無視。
破滅弾をロボット達に撃つ。
高速で飛んでいく破滅弾はロボットに命中すると、その部分を消滅させ後ろのロボット達を貫いていく。
やっぱりだ。
破滅属性はどうやらこのロボット達に有効らしい。
破滅属性は抵抗力で防がれる。
そしてこのロボット達には抵抗力がないらしい。
それか低いか。
どちらにせよ破滅属性には滅法弱い。
撃ちまくれば楽に倒せるだろうね。
9人の人形蜘蛛が自分達も活躍したいと前に出る。
あ、ちょ、前に出ないで、撃てなくなる。
そんな私の嘆きを無視し、彼女らはロボット達を六刀流の力でバラバラに斬り刻んでいく。
例外にオリエルさんは2本の短槍に二刀流、ソリエルさんは2本の鎌だ。
多分私たちを真似てる。
破滅弾が撃てなくなるから出来ればどいて欲しいけど、なんだかすごい楽しんでるし言おうにも言えないや。
そんなことを考えながら、私はロボット達を槍で切り裂く。
ステータス強化のために人化のまま龍化、闘神法に魔神法も発動。
そのステータスのまま槍を振るいロボット達を破壊する。
かなり順調だ。
このままいけば、特に危機もなくロボットを全て破壊できるだろう。
多分これはフラグ。
突然、凄まじい轟音とともにサエルさんが吹っ飛んだ。
一体何が起きたと視線を向けて見ると、そこには戦車がいた。
頑丈そうな装甲を纏い、今までとは比較にならないほどの巨大な砲台を乗せたそれが、切り刻まれたロボットの残骸をキャタピラで踏み潰しながらゆっくりと前進している。
その巨大な砲台から放たれた攻撃でサエルさんの腕と足は全てとはいかないものの吹っ飛んでいる。
普通の人間だったら致命傷だが、サエルさんはパペットタラテクト。
胴体にいる本体が殺されない限り死ぬことはない。
私は糸で素早くサエルさんを回収、暇してる蜘蛛さんに投げた。
いや、蜘蛛さんは暇してなかった。
戦車に暗黒槍を放ってる。
でもキャッチできてたし、いっか。
蜘蛛さんは魔王さんにサエルさんを渡す。
魔王さんはソフィアさんのいる所に持っていく。
これなら大丈夫そうだね。
それより暗黒槍だ。
戦車に当たると思ったら装甲手前であたかも初めからなかったかのように暗黒槍が消え去った。
ポティマスが張ってた抗魔術結界の効果に似てる。
というか同じだね。
つまりあの戦車は抗魔術結界を張っているということになる。
幸いポティマスのように広範囲ではなく、戦車の装甲に纏う程度のものらしい。
それでも、魔法が効かないことには変わりないけど。
うーん。
魔法が効かないか。
でも、そういう時の対処法は蜘蛛さんと話し合って決めてる。
それは、レベルを上げて物理で殴る。
ようは力、パワーでねじ伏せるのだ。
そんなのが対処法になりえるのか、代表例として魔王さんがそうだ。
技術も大事だけど、やっぱりステータスは正義だね。
「蜘蛛さん、5」
「ん」
蜘蛛さんは魔王さんが近くにいるからか、避難したメラさんとソフィアさんが奥の廊下にいるからか、いつもより短く返事をして鎌を担ぐ。
そして鎌を構えながら戦車に近づく。
あの戦車は中の人はいないらしく、一番近くの敵を狙うように出来ているのだろう。
サエルさんが真っ先に狙われた理由がそれだ。
この戦車にとって、サエルさんが一番近くにいたから狙われたんだ。
そんな戦車は当然、接近してくる蜘蛛さんを標的にする。
砲台から光の砲弾が放たれる。
それを蜘蛛さんは鎌で切り裂き、素早く横にステップする。
それと同時に私は全力で龍槍を投げる。
戦車は反応する暇もなく、槍に貫かれる。
私は素早く二槍目を準備するが、戦車はボロボロと塵になっていった。
「…あれ?」
私の口から困惑の声が漏れる。
それはそうだ。
だってあの塵になっていく現象は腐蝕属性の死の崩壊。
でも戦車は死の概念がない無機物だ。
なのになんで塵になってるのだろう?
んー。
駄目だ、わからない。
とりあえず戦車には腐蝕属性が効く。
それだけ覚えておこう。
「これは、また……」
魔王さんが塵になった戦車の残骸を見て顔を引きつらせている。
人形蜘蛛達も同じような顔をしている。
なんだか責められてるみたいだ。
魔王の背後から、ソフィアさんとサエルさんを背負ったメラさんがひょこっと出てくる。
うーん。
正直言って、ここは危険だ。
ソフィアさんやメラさんじゃ荷が重いだろう。
「うーん。予想以上にここはやばそうだねー。サエルも負傷しちゃったし、ソフィアちゃんとメラゾフィスくんは地上に戻ったほうがいい」
魔王がそう言い放つ、その瞬間。
施設が大きく揺れ始めた。
揺れは大きく、ステータスが高い私と蜘蛛さん、魔王さんは平然としてるけど、人形蜘蛛達はフラフラしてるしソフィアさんやメラさんに至っては床に手をついて座り込んでいる。
そして、けたたましい警報が鳴る。
なんか、やばそうだ。
「なんかやばげ?…前言撤回、みんなで逃げるよ!」
魔王さんがソフィアさん達を抱えて来た道を戻る。
その後を人形蜘蛛達が続くが、如何せんフラフラしていてスピードがない。
なんだか後ろから恐ろしい何かが来る予感がしたので、フラフラしている人形蜘蛛の4人を抱え魔王さんについていく。
蜘蛛さんは残りの5人を抱え込み、全力で出口へと向かう。
私の速度でかなり負担がかかっているのか、こころなしか苦しそうだ。
私は自分の服に衝撃無効を付与し、少しでも楽になるようにする。
蜘蛛さんもそれを見て同じことをした。
魔王さんが壊した銃口、魔王さんがこじ開けた金属の扉、蜘蛛さんが倒した女王蟻、3人で掘った穴、蟻が掘った穴、数多の蟻の死骸、そしてメラさんの重さ故に出来た太陽の光が漏れ出す穴を抜け、外に飛び出す。
次の瞬間さっきまでいた穴が爆発し、大きな火柱が立つ。
もし少しでも逃げるのが遅れていたらあの火柱で焼かれていた。
そうならなかったことに安堵する、が、それはすぐに消え去る。
なぜなら先程の火柱が比べ物にならないほどの特大の火柱が上がってたからだ。
まるで太陽フレアのような超巨大な炎。
そしてそのフレアの中を物凄い速度で天に向かって飛び上がる何か。
その何かが浮上しきった頃に、何かの姿が見えてきた。
それはキロメートルはありそうな超巨大円盤。
まるでSF映画で出てきそうなUFOだ。
いつの時か、テレビの特集でも見ない超巨大な未確認飛行物体。
それが、私たちの目の前で浮いていた。