遅れた。
でかい。
とてもでかい。
語彙が無くなるぐらいでかい。
ほんとでかい。
『おいおいおい!なんだよこれはよぉ!聞いてねぇぞ!説明してくれ!』
空からチャラい口調の風龍が降りてくる。
口調が見た目にまったくあってない。
龍ってクールなイメージあったんだけどなぁ…。
もしかして火龍と地龍も心の中ではこんなのだったのかな。
蜘蛛さんみたい。
「あ、あのアリエルさん。どうするんですか?」
ソフィアさんが魔王さんにあの巨船をどうするか聞く。
「どうしようか。あれを落とすのは無理な気がするし、ギュリエに任せようか。…そこの風龍!」
『お?なんだ蜘蛛の。俺を殺ろうってんならあの方が黙っちゃいないぜ?』
「ギュリエを呼べ」
『え?なんでだよ』
「お前にはあれが見えないのか!!」
『見えてるぜ!見えまくってるぜ!てかさっきから聞いてるけどなんだよあれ!?』
「そりゃこっちのセリフだわ!あれがこの荒野に埋まってたんだよ!?なんで気づかなかったのさ!」
『え?』
風龍が間抜けな顔になる。
うーん。
龍のイメージが崩れるね。
そんな風に魔王さんと間抜けな風龍が話し合っていると、あのUFOからこちらに向かってくるものがあった。
万里眼で確認してみると、それは戦闘機だった。
戦車とあまり大きさは変わらない。
それがまるで虫の大群のように群れていた。
「撤退!」
魔王さんが叫ぶ。
流石にあの量の戦闘機と戦えば、いくら魔王さんが強かろうとも私たちが不死を持っていようと勝ち目がない。
魔王さんはソフィアさん達を、蜘蛛さんと私は人形蜘蛛を抱え、全速力で逃げる。
風龍は自力で逃げている。
すごくチャラいし三下感があるけど流石龍、あの戦闘機を振り切るぐらいのスピードは出せてる。
「いやー参った」
『まじやべーわ。あれまじでやべーわ。やべーよやべーよ』
「はぁ…確かにやばいわ。で、ギュリエは呼んだの?」
『あ』
「早く呼べ!今呼べ!すぐ呼べ!そのための管理者でしょ!?」
『わかったわかったわかったから!!だから首を絞めないでくださいなんでもしますから!』
「ん?今なんでもするって言ったよね?だったら早く呼べよオラァ!」
魔王さんと風龍さんが漫才をする。
結構この人達仲が良かったりする?
そんな魔王たちから視線を外し、ボロボロになったサエルさんを修復する。
元の人間のような姿は無理だけど、機能を復活させるだけなら数分で終わる。
いや、蜘蛛さんも手伝ってるから1分もかからないかも。
サエルさんの修理が終わった頃に、転移の予兆を感知。
でもギュリギュリさんじゃない。
ギュリギュリさんならもっと綺麗に転移してくる。
じゃあ誰だろう。
ポティマス?
…可能性はある。
槍を取り出し、いつでも貫けるように構える。
空間転移で現れたのはお爺さんと男だった。
んー。
誰?
「失礼。非常事態と見て転移で目の前に突然現れた非礼を謝りましょう」
豪華な服装をしたお爺さんが穏やかな笑顔で謝罪する。
なんか優しそうだけど、空間転移をして来た人は警戒したほうがいい。
空間転移を使える人が仕えてるとってことは、とんでもない人だってことになる。
試しに鑑定してみたけど『鑑定が妨害されました』の文字が。
七大罪か七美徳のスキルを持ってるね。
魔王さんとお爺さんが話す。
会話がなんだか昔からの付き合いを感じる。
チートスキルを持ってるしその可能性はありそう。
「わざわざ駆けつけて来てくれた所悪いけどさ、正直ギュリエに対処してもらったほうがいいよ」
魔王さんがUFOを睨みつけて言う。
お爺さんは特殊部隊を呼ぶらしいけどそれは全て人間。
正直龍ですらキツそうなのに人間が耐えられるとは思えない。
「その通りだ。あれは私が対処すべき案件で、貴様らが憂慮すべき事柄ではない」
突然、声が聞こえる。
そしてすぐに空間感知に反応が。
相変わらず凄く綺麗な術式だ。
1人の男が転移してくる。
全身真っ黒な男、ギュリエディストディエスが現れた。
「報告ご苦労。アリエルには私が見落としていたがために迷惑をかけた。後は私に任せておけ」
おーすごい安心感。
流石管理者、あのUFOを1人で落とせるのか。
そんな風にギュリギュリさんの圧倒的パワーを再確認していると、もう1つの空間転移の予兆が。
嫌な予感がする。
まだ転移して来てないけど、もう誰が来るのか分かる。
「役者は揃っているようだな」
転移してきたのは男。
その男に、この場にいる全員が殺意を向ける。
「そういきり立つな。今回ばかりは手助けに来たのだ。残念ながら、あれはギュリエディストディエスだけではどうにもできん。この場にいる全員が力を合わせなければならない。大変遺憾なことだがな」
エルフの族長であり全ての元凶、ポティマス・ハイフェナスが現れた。
一気に空気が悪くなる。
正直今すぐにでもここから離れたい。
実際、ソフィアさんとメラさんは離れてってるし、私くらいかけても大丈夫だよね?
だからさ、魔王さん。
私はここから離れても良いよね?
私の問いかけに魔王さんは笑顔で答える。
駄目。
というわけで私と蜘蛛さんはここから離れたいけど離れられない状態にある。
そんな私たちを置いて、魔王さん達はどうあのUFOを対処するのか話し合いをする。
話し合いは終始空気がギチギチ言ってたけど、無事作戦が決まった。
要約するとこんな感じ。
あのUFOの名前はGフリート。
ポティマスが半ば冗談で設計した兵器。
どっかの国に売ってその国が組み立てたものらしい。
これは対龍想定した兵器であり、この兵器の中心部にはGMA爆弾という大陸1つを吹き飛ばすエネルギーがある爆弾が存在している。
そのため、龍であるギュリギュリさんが対峙した場合その爆弾で自爆する可能性がある。
だから、Gフリートの対処は私たちがやらねばならない。
GMA爆弾の処理は魔王さん、蜘蛛さん、ポティマスの少数精鋭で行くらしい。
その3人は風龍に乗ってGフリートに接近、蜘蛛さんがバズーカでGフリートに穴を開けるそうだ。
ギュリギュリさんはGフリートと一緒に飛んでいき、現在宇宙まで到達しているGメテオという兵器の対処をする。
Gメテオは小惑星を牽引してこの星に落とすというとんでもない兵器。
ギュリギュリさんしかそれは対処できない。
こんな感じかな。
蜘蛛さんが私もGMA爆弾の処理にいかないと知って念話で文句を言ってきたけど、地上の敵は十万はいるので私まで行くわけにはいかない。
そう言ってみたけど蜘蛛さんは渋々といった感じだった。
まぁ蜘蛛さんの役割って失敗したら作戦そのものが失敗するみたいなものだし、重めの責任があると思う。
そんなものは背負いたくないよね。
まぁ背負わせるけど。
「篠前さん、宜しくお願いします」
お爺さんが私に穏やかな笑顔で言ってくる。
「こちらこそよろしくお願いします」
このお爺さんと話してると肩の力が抜けそうだ。
ひょっとしてそういうスキルとか持ってたりする?
…あるわけないか。
ヒュゥゥウ…
遠くからSFとかでよく聞く音が近づいてくる。
見ればあの戦闘機がだんだん近づいてきていた。
これは…話してる場合じゃないな。
蜘蛛さん達が風龍と共にGフリートへ向かう。
ヒュバンと呼ばれた風龍は蜘蛛さんの文句を言いながら飛行する。
蜘蛛さん達の姿がだんだん小さくなっていく。
それとは反対に戦闘機の姿は大きくなっていく。
風龍、人間、クイーンタラテクト、機械兵団の軍勢。
Gフリート率いる機械の軍勢。
その両軍の戦いの幕が切って落とされた。
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耳元で戦闘機の空を切る音がなる。
テレビ越しで聞いた時は全然大丈夫だったけど、いざ実際に聞いてみるとものすごいうるさい。
防御能力が低かったら鼓膜が破れてたかもしれない。
現在私は龍形態で戦闘機を中心に鉤爪やら暴風魔法やらで落としている。
本当はポティマスやお爺さんに龍形態を見せるべきか悩んだけど、別にこの形態は最後の手段だとか最高機密というわけじゃないから龍形態になる事にした。
闘神法や魔神法は発動してない。
なくても戦闘機ぐらいなら落とせるからだ。
それに長い戦いになりそうだから出来る限り消費は避けたい。
戦闘機が私に光の弾を撃ってくる。
私の鱗に命中するけどノーダメージ。
私の取り柄は防御力だからね。
抵抗力はカンスト、防御力もカンスト間近まである。
これで突破されたらもうこの戦闘機の攻撃はシステム内じゃどうしようもないことになる。
ふっはっは。
効かん効かん。
私は蛇のように長い体で薙ぎ払う。
周りに暴風魔法を撒き散らし、次々に戦闘機を落としていく。
偶に地上に突進して進行中のロボットや戦車を轢き逃げしていく。
ブレスを吐いて一網打尽っていうのも考えたけどここにいるのは私だけじゃないからね。
もし他の人達を巻き添えにしてしまったらいけない。
おっと戦闘機だ。
東洋龍の短い腕で叩き落とす。
鋭い爪が突き刺さり、装甲を抉る。
叩き落された衝撃と機体のバランスが崩れ墜落する。
その間に多くの戦闘機が私に向かって集中砲火してくる。
中には自爆特攻してくるものもあった。
私はそれを物ともせず体をムチのようにしならせて戦闘機を散らす。
4体のクイーンタラテクトがロボットにブレスを放つ。
瞬間、すさまじい轟音が鳴り響き散りばめられたロボットが広がる。
しかし、そのブレスが直撃しても傷のない敵がいた。
それは戦車。
戦車の表面装甲に張られている抗魔術結界がブレスを消し去っているのだ。
戦車が反撃とばかりに砲弾を発射する。
戦車の数が多いため、前で前進していた人間が吹き飛ぶ。
普通ならそれで人間達は逃げ惑うが、ここにいる人達は吹き飛ばされ、原型がなくなった屍を越え前進する。
彼らは戦力として来たのではなく肉壁として来た者達。
覚悟はとっくにできているのだろう。
そんなことを思っているとGフリートから気配がする。
何かを実行しようとする気配が。
『総員全力回避!』
蜘蛛さんから念話で注意喚起してくる。
その念話は私だけにではなく、空を飛ぶ全ての竜達に向けられていることに驚くと同時に蜘蛛さんが切羽詰まった声を上げたことで事の重大さに気づけた。
私はすぐに回避行動を取るが、遅かった。
空がほんの一瞬だけ、光に包まれる。
Gフリートから放たれた極大の光線。
それに竜の半分が消され、私の下半身も消し飛んだ。
龍形態の私は非常に長い。
どうやら大きさはステータスと比例するらしく、初めてなった時よりも数倍も大きくなっていたため、回避をしても間に合わなかった。
HPが一気に削られる。
浮遊のスキルが解除され、私という巨体が落ちていく。
私はすぐに人化を発動、上半身だけのハダカだがそんなことを気にしてる暇はない。
クイーンタラテクトの背中に落ち、そこで奇跡魔法で体を直していく。
「はぁ…はぁ…」
久しぶりに息を乱す。
人の状態でなら異世界初だろう。
万里眼で自身の体を三人称視点で見る。
奇跡魔法で回復してきているが、まだ脚がない。
次にステータスを見る。
HP、SP、MPともに飽食のストックを切れており、SPに関しては底が見えてきている。
自分では気づかなかったがかなり消耗していたらしい。
少しだけのんびりしてSPを回復させるべきか。
脚が直っていく。
まだ出来たばかりの脚で立ち上がり、戦況をこの目で確認する。
地上軍は変わらず、空軍はGフリートによる戦闘機の増援が来ていた。
Gフリートの主砲は地上軍に向き、戦闘機もそれを標的にしている。
…のんびりする暇はなさそうだ。
浮遊で宙を浮き、ある程度飛んだら人化を解除。
見た目全快の龍が現れる。
すぐに地上軍を狙っている戦闘機に向かう。
戦闘機は私が危険だと判断したのか地上を狙うのを止めて私に集中砲火してくる。
見れば戦闘機だけでなく戦車やロボットも狙ってきている。
流石にこの量の攻撃にはHPが減っていくが、それは治療魔法で回復させる。
敵の攻撃の嵐を突き抜けて、前方にいる戦闘機に突進する。
私の質量なら突進だけでも落とすには十分な威力が出るため、戦闘機が様々な方向に吹っ飛んでいく。
黄色のSPが切れる。
次に赤のSPが消費されていく。
私は攻撃の手を緩めず戦闘機を落としていく。
気づけばGフリートの主砲も私を狙っている。
Gフリートが主砲を撃つ準備をする。
あれが撃たれれば私は消える。
エルロー大迷宮に確か孵化していない卵があったはずだ。
復活は出来る。
でもこの戦闘には参加できなくなるだろう。
なにか最後まで役に立てるものはあるかな。
よし、あの敵の地上軍を巻き添えにしよう。
私は敵の地上軍の上に移動し、Gフリートの主砲の巻き添えになるようにする。
これで私が消える代わりに敵の地上軍は消し飛ぶ。
さぁ来い。
と覚悟したところに、主砲が爆発を起こす。
その近くに人の部分が消し飛び、蜘蛛だけとなった蜘蛛さんの姿があった。
その蜘蛛さんを風龍が自身の背に乗せる。
蜘蛛さんは無事らしい。
なんであんなことになっているのか、よく見てなかったから分からないけど多分あのバズーカの爆発に巻き込まれたのかな。
蜘蛛さんの予想以上にあのバズーカは強力だったということか。
いや、あのバズーカを作ったのはポティマス。
そうなるように仕向けた可能性がある。
…許さん。
それが本当かどうかはどうでもいい。
あいつはバズーカを作った。
つまり間接的とはいえ蜘蛛さんを傷つけたことになる。
考えが飛んでいる気がするがそれだけ私は苛立っている。
やっぱりポティマスはクズだ。
いつか絶対に殺す。
私はGフリートから視線を外す。
戦況は有利。
戦闘機やロボット、戦車はまだ残っているが私抜きでも十分に対処可能だろう。
私は口にありったけのエネルギーをため、地上に薙ぎ払うようにブレスを放つ。
抗魔術結界が張られている戦車には吹き飛ばされた地面などの間接的な攻撃しか通らないが、ロボットは別。
私のブレスでほとんどのロボットが破壊された。
自分のステータスを見るとMPがもう殆どない。
後はクイーンタラテクトや人形蜘蛛達、ポティマスの呼んだ機械兵団に任せるとしよう。
いや、機械兵団には期待しないでおこう。
少しでも怪しい動きをしたら吹き飛ばすか。
そう決意し、クイーンタラテクトの背に人化して乗る。
またすぐに龍化することを考慮して服は着ない。
こんな状況で覗き見る奴なんて居ないだろうしクイーンタラテクトは大きいから見ようにも見れない。
クイーンタラテクトのブレスによる轟音をBGMに仰向けのまま目を閉じる。
少し休憩して回復しよう。
SPとMPを回復したらまた戦いに戻ろう。
それまでは、のんびりしよう。
そう思っていると突然、久しく聞いていなかった天の声が聞こえてきた。
《スキル「同心」の効果により、エネルギーが共有されました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「神性拡張領域LV9」が「神性拡張領域LV10」になりました》
《条件を満たしました。神化を開始します》
その瞬間、とんでもない激痛が私を襲った。
それは今まで感じた事がない痛み。
痛覚無効で感じていなかった痛みという感覚。
あまりに痛すぎて一体何処が痛いのか、どんな風に痛いのかが全く分からない。
体の内側から何かが膨らんでいるようで、今にも爆発しそうだ。
本能が語りかける。
もしこの痛みを乗り越えられなかった場合、私は死ぬと。
不死も卵復活も関係なく、魂が破裂し二度と転生が出来なくなる真の死を迎えることになると。
あまりの痛みにクイーンタラテクトの毛を握る。
強く握ったせいなのか抜けてしまっているが、そんなことは気にしていられない。
痛みがどんどん膨れ上がり、襲いかかってくる。
『本当に、あなた方は面白いですね』
何処かから声が聞こえる。
でもその内容は把握できない。
それどころじゃない。
意識が薄れていく
嫌だ死にたくない
死にたくない
嫌だ
いやだ…
《スキルを還元します》
《ステータスを還元します》
《称号を還元します》
《スキルポイントを還元します》
《経験値を還元します》
《D謹製「神の基本講座」をインストールします》
《神化を終了します。これ以降システムサポートを一切受けられません。ご利用ありがとうございました》
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「本当にあなたは面白い」
声が聞こえる。
不気味だけど、綺麗な声だ。
「まさか爆弾を食べるとはこちらも予想外でしたよ」
爆弾?
爆弾を食べたの?
誰が?
「そしてその力を吸収し、スキルで共有。まさか1度に神が二柱も生まれるとは思ってもいませんでした」
神?
「流石に大陸1つを吹き飛ばすエネルギーをシステムから取り出すのはあの星が耐えられないので、私が補助してあげましたが」
「それでもあなた方は神になったことには変わりありません。おめでとうございます。そのお祝いに私が神としての名前をプレゼントしましょう」
「蜘蛛さんは白織、タニシさんは黒悠。それがあなた方の神としての名です」
「ようこそ、神の領域へ。」
「歓迎しますよ、私の眷属候補さん」
その言葉を最後に、私の意識は覚醒した。