タニシですが、なにか?   作:マリモ二等兵

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雪山

 私たちが宿で留守番もとい待機している間。

 魔王さん達は食料等などの買い出しはもちろん近辺の情報を集めたりしていた。

 そして魔王さん達が帰ってきた時、魔王さんが予定より出発が遅れると私たちに伝えた。

 どうやら普通とは違うオーガ、特異オーガっていうのがこの街の近くにいるらしい。

 そのオーガは近頃冒険者軍団が討伐に出かけるから、それまでこの街に居続けるんだって。

 

 そんなことよりこっちのほうが重要。

 なんとソフィアさんがエルフに襲われたらしい。

 エルフに襲われたソフィアさんは無事だ。

 ソフィアさんがある少女に手を掴まれて、その少女がエルフだったから仕返ししたらしい。

 で、そのエルフはソフィアさんの攻撃が当たる瞬間そのエルフの隣りにいた奴によって転移していった。

 そのエルフ、十中八九ポティマスだよね。

 ポティマスは私たちが神になってから一度も会っていなかった。

 私たちは神になって弱体化した。

 もしポティマスが私たちを監視していたのならば、今が私たちを殺す絶好の機会だということに気づくはず。

 なのに手を出してこなかった。

 正直言って不気味だったけど、とうとう来たか。

 一体今まで何をしていたんだろう?

 何かよからぬ事を企んでるのだろうか?

 攻撃されてすぐに転移出来たことから元々転移の準備はしてあったはずだ。

 となると目的はソフィアさんの誘拐かな。

 突然手を繋いで状況を把握させる前に転移で誘拐。

 恐ろしい作戦だ。

 よくソフィアさんは反応できたね。

 そういえばソフィアさん最近人形蜘蛛とも模擬戦やってるみたいだし、もう龍ぐらいなら倒せるんじゃないかな。

 あったばかりは普通の赤ちゃん吸血鬼だったのが今では立派に龍殺し可能少女になって…。

 なんだか感慨深いや。

 

 

 

 

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 特異オーガ討伐で冒険者がまったく帰ってこなかった。

 

 そんな話が街中に広がっていた。

 街の住民は怯えている。

 でも私は違う。

 だって魔王がいるし。

 正直特異オーガが何をしようとどうでもいいかな。

 暇な日が続くけど、瞑想でもして時間を潰してよう。

 

 

 

 

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 国から派遣された討伐隊により、特異オーガを追い払うことに成功した。

 

 そんな話が転がってきた。

 どうやら冒険者じゃ無理だと判断したのか国からの討伐隊で倒そうとしてたらしい。

 “討伐”じゃなくて“追い払う”なのがちょっと不安だけど、いざって時は魔王が、魔王じゃなくても人形蜘蛛達が守ってくれるって信じてる。

 ちなみに特異オーガが逃げていった先は魔の山脈。

 そして私たちが魔族領に行く際に通るのも魔の山脈だ。

 特異オーガが魔の山脈に逃げたことで封鎖されていた道が開放されたので、魔王さんは明日には出発するつもりだ。

 

 なんとなく察してきた。

 これ絶対特異オーガに会うよね。

 特異オーガとは会わないなんて考えはしないよ。

 絶対会う。

 でも大丈夫。

 こっちには魔王さんに人形蜘蛛、ソフィアさんにメラさん、この人達が居るんだ。

 特に魔王さんが居るんだからもしこれに勝ったらその特異オーガは神だよ。

 比喩なしで。

 

 

 

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 嫌な予感を感じながらも出発することになった。

 馬車に乗り魔の山脈を目指す。

 途中警備らしき人に止められたけど魔王さんが何かを言うと通してもらえた。

 魔王さんから威圧感が出てたし、怖いことでも言ったのかな。

 いや、魔王さんが威圧すればどの言葉も怖く聞こえそうだ。

 

 ガタン!

 

 あだ!?

 いつつ…強いのが来た。

 腰が……。

 

 私が腰痛に苦しみつつ、馬車は魔の山脈に突入。

 馬車を引いていた馬じゃキツイので人形蜘蛛が馬車を持ち上げて運ぶことになった。

 流石ステータス10000。

 馬車を持ち運ぶことぐらい楽勝なんだね。

 かなり揺れるから酔うけど、これでも揺れないようにしてくれてるんだよね。

 そうだよね?

 正直吐きそう。

 あ、まってソリエルさん。

 背中を擦らないで。

 優しさなんだろうけど今はそれが辛い。

 胃から這い上がってくるから。

 

 ソリエルさんに止めるよう言おうとしたら、声の代わりに中身が出そうになったので口を閉じる。

 ちょっと口の中に溜まったのでそれをすぐに飲み込む。

 少しヒリヒリするけど我慢できる。

 ウグっ

 また来た!

 さっきまでの比じゃない。

 あれは前座だったのか!

 これは…我慢は無理だ!

 私は立ち上がり全力で走り馬車の外に顔を出す。

 

 

 ふぅ…少し楽になった。

 でもそれは吐き気だけでそれ以外はもっとキツくなってきてる。

 魔の山脈はものすごい寒い。

 魔王さんが石に火魔法を付与させたカイロを握って、毛布を被ってるのに寒い。

 う、また来た…!

 寒いと吐き気のダブルコンボがここまで辛いものとは!

 苦痛耐性とかないから、あった時に入ったマグマ風呂のほうが正直言ってマシだ。

 別の馬車にいる蜘蛛さんは無事だろうか。

 ただ馬車に乗るだけでもバテていた蜘蛛さんが、この環境に耐えられるだろうか。

 でも蜘蛛さんは私より多くカイロを持ってるし、案外大丈夫なのかな。

 できれば分けてほしいな。

 

 揺れる馬車の中で顔色を青くさせていると私たちはある村についた。

 その村は無人のようで廃村だった。

 ところどころに赤色の染みがあることから何かあった事が分かる。

 ソフィアさん曰く新しい血の匂いがするらしい。

 つまりついさっきまでここにいたということだ。

 しかもエルフが。

 さらにこの惨状を生んだのは特異オーガらしい。

 嗚呼、もうこれ絶対会うじゃん。

 ご対面するじゃん。

 人がいた痕跡が薄い家で、私はそんなことを思いながらも眠った。

 

 次の日。

 寒さと吐き気の厳しさが増していく中、馬車の進行が止まる。

 

 「げっ!猿じゃん!」

 

 魔王さんからそんな言葉が聞こえる。

 猿ってあの猿かな。

 アノグラッチ……だったっけ。

 もしその猿だったら危険だ。

 復讐のスキルでどちらか死ぬまで追いかけてくる。

 あいつか。

 

 「ホアー!」

 

 「ちょ来んな!」

 

 猿の声と魔王さんの声が聞こえた。

 あの猿、殺しちゃだめなのにあっちは殺してくるんだよね。

 仕返してたらそれで復讐の対象になって追ってくる……理不尽だよね。

 そんな事を思ってると奥の方から爆発音が聞こえた。

 何事?

 あまりに寒いもんで動けないから何か起きたのか見れないけど、何かが崩れる音が聞こえる。

 ここは雪山。

 爆発。

 崩れる音。

 ……これ雪崩じゃない?

 だ、大丈夫…のはず!

 だってステータス10000の人形蜘蛛が馬車を引っ張ってるんだから!

 雪崩を避けることなんて造作もないはず。

 だから大丈夫。

 大丈夫大丈夫。

 

 さっきからすごく揺れてるけど雪崩を避けてるから仕方ないよね。

 吐き気を感じる揺れじゃなくて体中を打ちつけて痛くなるレベルだけど、これは致し方ない犠牲だ。

 結構痛いけど。

 頭打ちつけてグワングワンする。

 目がチカチカする。

 これでも揺れないようにしてくれてるんだよね。

 もしそうしてくれてなかったら私はどうなってたの?

 想像するのも恐ろしい。

 

 私が寒さと痛みのダブルコンボを喰らっていると、大きな音とともに何故か体中に浮遊感が。

 目の前には白い世界が広がっている。

 ロマンチックだなー。

 顔には白いものが。

 雪のようだ。

 体に纏う毛布を吹き抜けて、冷たい風が体に絡みついてくる。

 立っていた鳥肌がより大きくなった気がする。

 

 あ、あ。

 駄目だこれ。

 落ちてる。

 近いけど遠くなった馬車が前に見える。

 私、あまりの揺れに振り落とされた?

 下には雪崩が。

 待って。

 助けて。

 

 魔王さんは猿で埋まってる。

 ソフィアさんは落ちた蜘蛛さんに手を伸ばしてる。

 でも届いてない。

 ていうか蜘蛛さんも落ちたんだ…。

 そういえば結構前に蜘蛛さんとは運命共同体って言った気がする。

 でもこんな運命まで共有しなくていいから。

 こんな事を思ってる場合じゃない。

 誰でもいいから助けて。

 あ、だんだん雪に流されていく。

 ちょ、助けて。

 

 

 

 

 

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 「ぶは!」

 

 暗かった視界が白くなると同時に溜まっていた息を吐き出す。

 寒い。

 その寒さは言葉にはできない。

 体中にツララが刺さったみたいだ。

 寒い日でよくある耳が痛くなるやつが、全身に広がって痛みを増やしましたみたいな。

 やばい、どうしよう。

 このままじゃ凍え死ぬ。

 

 周りを見渡してみると白く険しい山々が広がっていた。

 え?

 ここにいるのは私だけ?

 そんな……。

 

 私が絶望していると視界外からひょっこりとノエルさんが顔を出す。

 

 「ノエルさん…!」

 

 私は嬉しさのあまり名前を呼んだ瞬間、口の中が凍るような感覚に襲われる。

 痛い。

 手にあるカイロを強く握る。

 マシになった気がする。

 それでもまだ痛い。

 毛布を被ってるのに寒い、痛い。

 まずいぞ。

 周りを見渡してもノエルさん以外誰もいない。

 居たとしても豪雪のせいで見えない。

 うっ…こうやって考えてる間にも私の体に雪が積もっていく。

 ノエルさんが払ってくれてるけど積もった雪は私の体温を奪っていく。

 なんとかして体温を上げなければ。

 

 火をたく?

 こんなところで火はたけないし、火魔法を使える人はここには居ない。

 カイロを増やす?

 これを増やせるのは魔王さんだけだ。

 その魔王さんはここには居ない。

 かまくらを作る?

 周りに雪は十分にあるしステータスの高い人形蜘蛛であるノエルさんがいれば早く作れるかも。

 

 よし、かまくらを作ろう。

 

 「ノエルさんかまくら作って」

 

 口が凍らないように出来る限り早口で喋ったけど聞き取れたかな。

 ノエルさんを見てみると首を傾げている。

 駄目か。

 …仕方ない。

 今度はいつもどおりの速度で頼む。

 それでもノエルさんは首を傾げている。

 あれ?おかしいな。

 これぐらいの速度なら聞き取れるはず。

 あ、もしかしてあれかな。

 

 「ノエルさん、かまくら知ってる?」

 

 ノエルさんは首を振る。

 やっぱりだ。

 まぁこの世界にかまくらがあるイメージないし。

 でも作ってもらわないと死にそうだ。

 かまくらが何なのか教えたいけど私は寒くて動けない。

 短く、分かりやすい言葉でノエルさんに頼まなければ!

 えーっと……。

 

 「ノエルさん、雪で家作って」

 

 これで伝わってくれるかな。

 ノエルさんが六本の腕で雪を動かし積み重ねていく。

 伝わったみたいだ。

 ノエルさんのペースなら私が凍える前に作り上げるはずだ。

 私は凍傷を起こさないように1つのカイロと毛布で体を温める。

 ノエルさんがかまくらモドキを作っているのを見ながら、私は同じく放り出された蜘蛛さんの安否について考えた。

 

 

 

 




 朝起きたらスモールレッサータラテクトになっていた。どうする?ただし、スキルやレベルアップ等は自分にのみ存在しているものとするアンケート結果。

 1位 スレッドを立てる 339人
 2位  わー(^q^)   136人
 3位 人間モグモグ    88人

 総投票者数916人
 
 

朝起きたらスモールレッサータラテクトになっていた。どうする?ただし、スキルやレベルアップ等は自分にのみ存在しているものとする

  • 家に引き籠もる
  • 路地裏を散歩
  • コンビニに行く
  • 森に行く
  • 保護施設に行く
  • 人間モグモグ
  • 親愛なる隣人のモノマネをする
  • アニメを見る
  • 冷蔵庫に入る
  • とりあえず寝る
  • 風呂に入る
  • トイレに行く
  • わー(^q^)
  • 親に報告する
  • 殺虫剤を浴びる
  • 自撮りする
  • 床下に潜む
  • 屋根裏に潜む
  • 下水道に潜む
  • スレッドを立てる
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