ゲームで忙しかったので遅れました。
……ん?
ここはどこ?
目が覚めたら見たことのない場所にいた。
知らない天井…と思ったら天井がないや。
天井が無いということはここは外?
外にしては空が青くない。
空が白い。
地面も真っ白だ。
異空間という言葉が思い浮かぶ。
「んぁ…おはようタニシちゃん」
そこまで考えついたところで横から蜘蛛さんの声が聞こえてきた。
「おはよう蜘蛛さん。ここはどこなの?」
被っていた布団を畳みながら蜘蛛さんに聞く。
今更だけど私布団被ってたんだね。
白いし状況的に蜘蛛さんが作ったのかな。
「私が作り出した異空間」
「へー」
蜘蛛さんの異空間ねー。
ん?待てよ?
「蜘蛛さん、魔術使えるようになったの?」
「うん。そういうタニシちゃんはどうよ」
「どう……と言われても」
特に今までと変わったりは……ん?
なんかこの空間に流れみたいなのを感じる。
空気の流れじゃない。
それが分かるほど感覚は鋭くないし。
目で見えるような、肌で感じてるような、不思議な感じだ。
蜘蛛さんにもそれっぽいものを感じるし私にもある。
ひょっとしてこれが魔力?
だとしたらなんで見えるようになってるんだろう?
ちょっと記憶を遡ってみよう。
んー確か私はクレバスに落ちてそれで…それで?
死んだ…としたら今生きてるわけがない。
でも叩きつけられたのは覚えてる。
そこから…視線が高くなって…動いて…何か吹っ飛ばして…それで…蜘蛛さんが浮いて…そこからはあまり覚えてないね。
とりあえず私に何かが起きてそれが原因で蜘蛛さんと戦うことになっていた事は分かった。
そしてそれが原因で魔力が分かるようになった事も分かった。
「蜘蛛さん、その…ごめん」
「え?何?突然謝ってどうしたの?」
「私に何かあってそれで私と戦ったんだよね?それの謝罪だよ」
「……ああそれ?気にしなくてオッケーよ。そんなことより何か変わった?例えば力の流れみたいなのが分かるとか」
「うん、分かるよ」
「おーやっぱりか。私と戦ってる時魔術が使えてたからもしやと思ってたけど、そのもしや通りで良かったわ」
「魔術…ねぇ、どうやれば出来るの?」
「えー…簡単に言えば術式を組み立てて魔力を入れる」
「うーん?ちょっと見本見せて」
「あいよー」
蜘蛛さんが術式を作り上げる。
術式に魔力が入り込み、そこから見慣れた暗黒槍が飛び出てくる。
「…とまぁこんな感じ」
「おー」
システム内のものでも良いんだね。
てっきり全く新しいものを作り上げなきゃいけないと思ってた。
システムは神初心者の私にとって魔術の教科書みたいなものなのかな。
だってあれこれシステム内の術式を真似ていればそれらしいものは出来るんだから。
蜘蛛さんからいくつか魔術を教わって分かったことがある。
それは私は破滅とか腐蝕とかが得意だってことだ。
前よりも強力になってるって使った瞬間分かった。
腐蝕に関しては自滅が怖いので、腐蝕無効の術式を再現してからやった。
出来なくなったこともある。
私は蜘蛛糸が出せなくなっていた。
いや、出せないというよりかなり出しづらいが正しいかな。
前から蜘蛛糸は魔術で出してたからそれを真似れば出来るだろうと思ってたら、ものすごいやりづらかった。
何故出来ないのかは分からない。
なんか出来ない。
蜘蛛さんは蜘蛛だからか楽々出してた。
それを真似ても無理だった。
出せても脆くて短い糸しか出せなかった。
あれだ、絵心がある人の絵を絵心ゼロな人が真似ても上手く描けないみたいな。
そんな感じで糸は全く使えなくなっていた。
これは蜘蛛さんにもあって、蜘蛛さんは破滅属性が全く使えなくなっていた。
龍化のほうは難なく出来た。
どちらかと言えば人化を解除したのほうが正しいのかも。
どうやら今の私にタニシ形態は無いらしく、前で言う龍形態が普通になっていた。
じゃあ私はタニシじゃなくなったのかと聞かれれば、そこんとこ難しい。
なんとなくタニシだった頃の名残がある気がするんだよね。
それがどんなものかは分からないけど。
話を戻して龍形態についてだけど、前と結構違っていた。
ものすごく長くなったし、人形態の時と龍形態の時の力の差がかなり広がっていた。
でもその力の差の開きかたがちょっと嫌だ。
なぜなら龍形態の能力が前よりもかなり上がって、人形態の能力が前より酷く下がっていたからだ。
今は鑑定が無いから、どれだけ能力が下がったのか詳しくは分からない。
でも、下手したら数万単位でステータスが減ってる気がするんだよね。
うーん。
強くなった…のかな?
まぁ龍形態の方は前よりも格段に強いんだから、戦闘時は龍形態になっていればいいか。
そんなこんなで異空間で色々知った後、魔王さん達のところに戻ることになった。
蜘蛛さんと手を繋ぎ、転移に連れてってもらう。
転移した先には糸で出来た白いテントが。
蜘蛛さんが作ったのかな?魔王さんが作ったのかな?
まぁどっちでもいいか。
蜘蛛さんがテントを開ける。
そこには見慣れたメンバーがいた。
魔王さんにソフィアさんにメラさんに人形蜘蛛、そして糸で出来たベッドで寝ている笹島さんがいた。
ん?笹島さん?なんでいるの?
雪山であった記憶があるけどその時はものすごい怒ってなかった?
怒り疲れて寝ちゃったのかな。
「お、タニシちゃんを元に戻せたんだね」
魔王さんが私と蜘蛛さんを交互に見て言う。
ソフィアさんとメラさんは私を見て黙ってる。
人形蜘蛛はいつもどおりかな。
「ん?どしたの白ちゃん」
魔王さんの声に釣られて蜘蛛さんを見てみると、どこかをジッと見たまま止まっていた。
その視線を辿ってみるとそこにはベッドに横たわった笹島さんが。
気になってしょうがないらしい。
私も気になる。
「ああ、この子か」
そん私たちの興味に感づいたのか、魔王さんが笹島さんについて話し始める。
「まぁそうだねー。メラゾフィスくんから聞いた話だけど、龍になったタニシちゃんにふっ飛ばされて、すぐに叩き落されたらしくて。それで白ちゃんがタニシちゃんと戦ってる間に私がこの子の安否を確認しに行ったら、ピクピクして気絶してるのを見つけて回収したって感じ」
え?私笹島さん吹っ飛ばしてたの?
…笹島さんが目を覚ましたら謝ろう。
吹っ飛ばしてごめんなさいって。
謝って済みそうにないけれど。
だって自分を吹っ飛ばしてからの叩き落としたんだよ?
そんな事をされた後に、致命傷負わせてごめんって吹っ飛ばした本人からの謝罪。
私だったらグーパンする。
狂気を感じるレベルの善人じゃないと許されないだろうね。
出来れば笹島さんはそうであって欲しいな。
私は笹島さんの心の広さを期待しながら人形蜘蛛達にもみくちゃにされる。
お酒に酔ったおじさんみたいに背中をバンバンされたり、抱きつかれたり、首を絞められたり。
最後のは首元を抱きしめられて起きたことだから故意でやられたものじゃないけど。
多分人形蜘蛛なりのおかえりなんだろうね。
人形蜘蛛の1人が服を持ってくる。
それ以外は周りから見えないように立ち回りつつ私の服を脱がす。
あ、早速着せ替え?
周りから見えないようにしてくれてるのはありがたいけど、もうちょっと時と場所を考えてほしいな。
「篠前、なんで龍になったの?そのせいでこんなところに居なきゃいけなかったんだけど?」
ソフィアさん、今話しかけてくるの?
まぁいいけど。
えーっとなんで龍になったのか…ね。
んー…私にも分からん。
私の記憶にあるのはクレバスの底に落ちたら龍になっていたっていう、世にも奇妙なものだし。
かといって、こんなことを言ってもソフィアさんは納得してくれなさそうだしなんか考えないと。
うーん?
なんにも思いつかない。
もう適当でいいや。
「えー…クレバスに落ちた衝撃で私の中で眠っていた暗黒龍が飛び起きたからだよ」
「は?」
「ごめん自分でも分かんない」
だから睨まないでソフィアさん。
まぁちょっと厨二っぽくなっちゃったからふざけてると思われたんだろうね。
でもさ、正直異世界なんて厨二らしさの塊じゃんか。
ソフィアさんは吸血鬼だし、魔王さんは魔王だし、私や蜘蛛さんにいたっては神だよ?
…なんか苦しい言い訳を言ってるみたい。
これ以上考えるのはやめとこう。
「はぁ…まぁいいわ。そんなことより聞いて?あそこで寝てる鬼野郎を殺そうとしたらアリエルさんに止められたの」
「へ?」
「何度言っても駄目だって言って止めてくるからちょっとアリエルさんを説得してくれない?」
「え?えー…な、なんで殺そうとしてるの?」
なんで?
ソフィアさんは殺しを楽しむ子じゃなかったはず。
記憶に居るソフィアは強い恨みでも持たないとこんなこと考えないよ。
となるとソフィアさんは笹島さんに恨みを持ってるってこと?
なんでそんなに笹島さんを恨んでるんだろう。
「なんでってそりゃあメラゾフィスを殺そうとしたからに決まってるでしょ?」
「いやでもあの人は元クラスメートだよ?流石に殺すのは…」
「アリエルさんにも同じことを言われたわ。前世で全く関わりが無かったし私にとってあいつは他人なのよ他人。殺すことに躊躇なんてないわ。今だってあのクソ鬼の無防備な首に大剣を振り下ろしたくて堪らないのよ!」
おかしいな。
こんな子に育てるはずは無かったのに。
どこかで育て方間違えたのかな。
まぁまだソフィアさんは幼いし、今から再教育しても間に合うかも。
間に合うよね?
まぁそれは後にしてと。
「ソフィアさん、彼を殺すのは禁止」
「なんでよ」
「…んーそうだね。ソフィアさんにとっては他人かも知れないけど、私にとっては他人じゃないからかな」
「…篠前はあいつと何か接点があったのかしら?」
「ほぼないよ。でも元クラスメートだしね」
「理由はそれだけ?」
「うん、それだけ。ソフィアさんもほぼ同じ理由で助けたし、笹島さんは助けないなんてしないよ。助けが必要じゃないのなら助けないけどね」
「…………そう」
ソフィアさんは短く返事をしたあと、私から逃げるようにメラさんへ歩いて行った。
まぁ大切な人を傷つけた人を恨まないなんて無理だろうし、殺したいと思っても変ではないかもしれない。
私も蜘蛛さんや魔王さん達を傷つけられたら殺意は向けなくても怒りはする。
そういえばソフィアさんにとって私ってどんな存在なんだろう?
赤ちゃんの頃は一緒に学んで遊んで、幼女の頃は修行させた。
師匠…ではないね。
保護者かな?
ソフィアさんの心境的には親に怒られた感じかな。
親といえば私が産んだ子たちは元気かな?
神になってから1度も見に行ってないし、良い機会だから後で会ってみようかな。
子供達に会いにいく予定を立てていると、突然後ろからうめき声がした。
振り返って見てみると笹島さんが薄く目を開けていた。
どうやら目が覚めたらしい。
予想以上に早く目が覚めた気がするけど、確か私に吹っ飛ばされて数日は経ってたんだっけ。
となると笹島さんは私のせいで数日眠ることになったと。
なるほど。
いつでもジャンピング土下座の準備は出来ている。
書いてるとき何故か頭がこんがらがった。