タニシですが、なにか?   作:マリモ二等兵

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 サボった戒めに挿絵?を描きました。
 久々なせいでちょっとタニシの性格が違うかも……。
 


魔族領

 「もうそろそろ着くよー」

 

 魔王さんの声で目が覚める。

 

 どうやら私は馬車の中で寝てたみたい。

 初めて馬車に乗った時はあまりの揺れで寝れそうになかったのに、今では寝れちゃうとは……。

 これが神の力?

 

 そんな馬鹿な事を考えていると、気まずそうに馬車の窓から外を眺める笹島さんの姿が目に入る。

 怒りに呑まれ、理性を無くしていた笹島さん。

 何故そうなってしまったのか、その過去を聞く気はない。

 過去に七大罪スキル『憤怒』を獲得するほどの怒りを感じた。それだけ知っていればいい。

 負の記憶は知って気持ちが良いものじゃないからね。

 

 ちなみに笹島さんを気まずくしてる原因は笹島さんを不機嫌な様子で凝視するソフィアさんだ。

 

 何故こうなったのか簡単に説明すると、笹島さんがソフィアさんを転生者では無く本物の子供と間違えてしまい、「ソフィアちゃん」って子供扱いしちゃったから。

 あの時のソフィアさんを止めていなかったらと思うと、ちょっとヒヤッとする。

 ほんと、怖かったよ。

 その後に笹島さんが謝ってたけど、火に油を注ぐだけだったね。

  

 まぁ、今はそんなことがあった雪山から離れて魔族領に向かってる途中だ。

 もうそろそろらしいし、人生、いやタニシ生で初の魔族領を見てみようかな。

 窓からひょっこりと顔を出すのではなく、ここはあえて万里眼でその光景を見る。魔術の練習もしておきたいからね。

 

 万里眼の準備…完了。さぁ、緊張の瞬間だね。

 

 3、2、1…発動!

 

 わー……………普通。

 予想以上に普通。人族領と特に変わりない光景だ。

 なんかこう…世界が赤いと思わず言っちゃいそうなほど色々なものが赤いと思ってた。

 なんか拍子抜けだなー。でもそんなもんなのかな?

 それにもし本当に全部真っ赤だったら目に悪すぎるか。そこに住む魔族の人達の目が疲れちゃうね。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 色々あって現在、魔王城付近の大きい館にお邪魔中。いや、お住まい中?

 色々過程を吹き飛ばしすぎかも知れないけど、特に目立ったことはなかったし、その大半はのんびりしてて何があったか思い出せないしで語る必要も無し。

 ただ、魔王さんの事を良く思ってない人が多いことは分かった。

 

 さて、大きい館に着いてから、魔王さんが私たちの役割を割り当てた。

 ソフィアさんは家庭教師を雇ってお勉強、学校に行けれるようになったら行く。

 メラさんと一部の真面目人形蜘蛛は魔王さんと一緒に魔王城へ。

 笹島さんと私は戦争に備えての兵の教育。

 蜘蛛さんは糸で服作り。

 残りの人形蜘蛛はそれぞれの護衛または付き添い。

 

 ……笹島さんは分かるけどさ、なんで私が兵の教育に割り当てられてるんだろう?

 いや確かに腕っぷしはあると思うよ。これでも神だし。

 でもね、なんというか、教えられる自信が無いというか…。

 

 「蜘蛛さん、どうすればいい?」

 

 「いや、私に聞いても分からんよ。兵の教育なんかしたことないし」

 

 蜘蛛さんは人形蜘蛛と共に服作りしつつ、私の質問に困った様子で答える。

 今の蜘蛛さんは周りに人形蜘蛛と私以外誰も居ないので目を開けている。

 私はその赤い目を見て違和感を覚えた。

 なんだろうと思って目を凝らしてみたら、目の中の瞳の一部だけがこちら向いてて他は作業してる手元に向いてた。

 ちょっと気持ち悪いかな。違和感がある。

 人形蜘蛛達はそこんとこ気にしてないみたい。同じ蜘蛛だからかな?

 ちなみに一部の人形蜘蛛は糸ではなく蜘蛛さんの髪の毛をイジってるが、そのことにとくに突っ込む気はない。

 いつもの事だ。

 そんなことより、さっきの蜘蛛さんの発言にひっかかりを覚えた。

 

 「でも蜘蛛さんはソフィアさんとメラさんを“教育”したじゃん」

 

 「あれは転生者とその付き添いだったから。でも今回のは違うんでしょ?だから分からん」

 

 「んーそっか」

 

 「まぁ、適当にやれば良いんじゃない?」

 

 「例えば?」

 

 「重い荷物持って泥沼の中で匍匐前進とか」

 

 「あー」

 

 そういう普通の訓練で良いのか。

 蜘蛛さんの事だからてっきりマグマに手を突っ込めとか言いそうだったけど、案外普通のアドバイスをくれた。

 

 「なんか失礼な事考えてない?」

 

 「気のせいだよ」

 

 蜘蛛さんは数秒私をジッと見て、まぁ良いかと思ったのか視線を手元に戻した。

 

 蜘蛛さんのアドバイスを参考に訓練内容を考える。

 強くせず、かといって弱くしてはダメ。人族とちょうど良い戦いが出来るように訓練をしなくちゃいけない。

 しばらく考えたけど思いつかない。

 場所を変えてみようかな。

 

 「………ちょっと外に行ってくるね」

 

 「ん」

 

 適当な場所に転移する。

 転移先はどうやらエルロー大迷宮の上層のようだ。

 エルロー大迷宮……ここにいると懐かしい気分になってくる。

 そう、目を閉じればあの日の思い出が………。

 あまり思い出したい内容じゃないので目を開けた。

 

 すると目に入ったのがタラテクト。

 姿形からしてかなり下位のタラテクトのようだ。

 多分、蜘蛛さんが言ってたスモールレッサータラテクトかな?

 そういえば前に見たことがあるような気がする。

 確か大量のアークタラテクトとその仲間達が攻めてきたことがあったっけ。で、その時に暗黒弾と破滅弾の餌食になってたね。思い出したよ。

 

 そんな事を考えてる内にタラテクトが襲いかかってくる。

 私はすぐに異空間から槍を取り出し、素早くタラテクトを真っ二つにした。

 すると真っ二つにしたタラテクトが干からびていく。

 

 これはこの槍、『終焉之龍槍』が神化に伴い新たに得た能力。

 いや、‘既存の能力が変化した’のほうが正しいか。

 この能力は簡単に言うなら『力を吸収する能力』だ。元の能力は多分『弱体化付与』。

 で、この能力の凄いところは力を吸うスピードがめちゃ速いとこと、死体にも適用されるというとこ。

 だから適当な死体とかに刺しても死体に残った力を吸収して、吸いきったらこのタラテクトのように干からびる。

 吸った力はこの槍に蓄積されて、私はそれを自由に取り出せる。

 

 この能力、強いけど欠点もある。

 それは私以外触っちゃいけないこと。

 どうやらこの能力、相手がどんな奴でも構わず勝手にグイグイ力を吸うみたいで、しかもオンオフが出来ない。

 私は吸われても回収出来るから良いけど他の人だとそうはいかない。

 間違えて触ろうものなら力を吸われて終わり。

 あとこの能力のせいなのか、この槍からやけに禍々しいオーラが出てくる。

 ドス黒いっていう表現が合う色をした気配が常時垂れ流しされてる。これに当てられると気分が悪くなるって、前に蜘蛛さんが言ってた。

 

 今の私はそんなヤバイ槍を構えている。

 するとどうなるかって?それは気配を探れば分かるよ。

 意識を集中させると私から一斉に離れていく魔物の気配が感じられる。

 環境破壊だね。

 ……うん、しまおう。

 

 なんというか成長する度に私が攻撃に特化してきてるように感じる。

 タニシとして生を受けたばかりを思い出せ。あの時の私は、明らかに防御力よりだった。

 しかし成長する度に攻撃手段が増えていき、今では破滅や腐蝕、龍化にこの槍だ。

 

 エルローゲーレイシューは戦闘向きの種族だったっけ?

 そんな疑問が生まれ、それを確かめに下層に向かった。

 

 久々の下層に、久々の同族。

 壁をノロノロと這い進み、壁をカタツムリの如く食べている。

 そんな同族を一匹だけ摘み、別の手の甲に乗せる。

 何処か困惑した雰囲気を出すかつての同族を細部まで観察する。

 が、特に分かることもなく、少し寂しい思いのまま同族を元の場所に戻した。

 戻された同族は少し硬直していたがすぐに移動を再開し、また岩の壁を食べ始めた。

 

 その様子をしばらく眺めていると、背後からデカい牙が私の体に食い込んだ。

 しかし皮膚どころか服すら破けず、背後の存在は力を込めるも服のシワを増やすだけだった。

 後ろの存在を見てみると、それはグレータータラテクトだった。

 グレータータラテクトをこんな至近距離でじっくり見たのは初めてかもしれない。

 当たり前だがマザーに似ている。

 

 そこで私はある事に気づいた。

 そういえば私のお母さんって誰だろう?

 タニシとしての私を産んでくれたお母さんは何処だろう?

 

 私は卵から生まれた。

 ならその卵を産んだ母が居るはず。

 私は目の前のエルローゲーレイシュー達を見る。

 みんなすぐそこにグレータータラテクトが居るにも関わらず、のんびり壁を張っている。

 この中に居るのだろうか。でも、私には彼らを見分ける方法は無い。

 

 私を産んだ親に1つでも特徴があれば見分けられるけど、あの時は突然の事で親のことを気にしてなかったから記憶に無い。

 というかあの時、近くに親は居たのだろうか?

 エルローゲーレイシューとして生まれて今に至るけど、彼らの生態は全くと言っていいほど知らない。

 記憶にある彼らは、ただ壁や地を張って食べて寝てただけだ。

 それにエルローゲーレイシューの卵はどれくらいで孵化するのだろうか。

 私が産んだ卵は確か数日はかかってた気がする。

 彼らのもそれくらいかかるのだろうか?

 だとしたらあの場所に親はいなかったのかもしれない。

 彼らはなんだかんだでよく動く。その歩みこそ遅いが、数日もあれば数kmぐらいは動ける。

 

 もしかしたら卵を産んで、そこから生まれた子など彼らにとってはどうでもいい事なのかもしれない。

 蜘蛛さんは言っていた。

 ただ生きてるだけで幸せって。

 彼らも同じなんだろう。

 ただ動いて寝て食べて産んで生きる。

 それだけで彼らは幸せなんだ。

 

 (……なんか哲学みたいになっちゃったなー。自分のお母さんについて考えてたら、いつの間にか彼らの幸せについて考えてたよ)

 

 まぁ、私も似たようなものかな。

 のんびりしてれば幸せだし。簡単に幸せになれるのは良いことだ。

 そう結論付け、家に帰ろうとするとある事を思い出した。

 

 (……訓練について全く考えてないじゃん)

 

 一体何のためにここに来たのか、その本来の目的を忘れていた。

 …でもまぁ、なんとかなるか。流れでやれるよきっと。

 

 そう決め、干からびたグレータータラテクトを尻目に転移で帰宅する。

 すると目の前に前世で言う現代風の服を来た蜘蛛さんが立っていた。

 蜘蛛さんは私を見るなり手を差し出し、こう言った。

 

 「タニシちゃん、これから私は地球に行くんだけど、一緒に来る?」

 

 ……そんな軽いノリで誘うものじゃないのでは?

 そう思いつつもOKを出した。

 

 

 

 

 


 

 黒悠のイメージ画像。(変にロリっぽくなっちゃったけどこれはこれでヨシッ!)

 ↓

 

【挿絵表示】

 

 

 下手くそだけどこれが限界です。

 やけに暗いのはガバを隠すため。

 

 

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