猿くんの足が近づいてくる。
あれに当たれば即終了、人生がね。
いや、タニシ生?
そんなことはどうでもいい。
確かにあの攻撃は凄まじいダメージを与える。
しかし、あの攻撃には重大な欠点がある。
それは空中に飛んでいるので軌道修正できないという点だ。
つまり前進するだけで避けれてしまう。
私は全力で前進する。
猿くんの足が地面に突き刺さり、地面が砕ける。
うわー…あんなのくらってたのか。
それで生きてるのは誇っていいのかもしれないね。
おっとそんな考えてる暇はない。
すぐに次が来る。
「グルルルル………。」
なんだかご立腹のご様子。
さっきまで攻撃が必中していたのに避けられたからかな。
浅い考えで私を倒せるとおもっているのか!
ほら!あの猿たちみたいに死ぬ気でかかってこい!
こっちもその気でいくからさ!
…………あれ?
こないな。
猿くんは威嚇したまま襲ってこない。
なんで?
カウンターでも狙ってるのかな。
私もカウンター狙ってるからね。
つまりふたりとも相手の攻撃を待ってる状態。
何もできないや。
静かすぎて蜘蛛さんのほうから猿の声が聞こえる。
まだ戦ってるみたい。
妙に高かったテンションが下がっていく。
この下がり方は静かな中一人で騒いでると急に寂しくなるのに似ている。
噂に聞く賢者タイムってやつだね。
ん?猿くんが適当に周りの石を拾い始めたぞ?
なんか嫌な予感がする。
これ絶対投げるよね。
君のステータスで石を投げられるのはキツイ。
こっちは遠距離攻撃なんてないから反撃もできない。
怠惰に任せるか。
となると私が今やるべき行動は猿くんの投石を避けること。
できるかな。
700のパワーで投げられた石を避けれるの?
普通の猿の7倍の投石を?
………頑張ろう。
それに猿くんは野生だから効率のいい投げ方とか知らないはず。
だから大丈夫。
そんなことを考えていると猿くんが私の予想通り投げの準備をする。
あれ?猿くんめっちゃフォーム良くない?
プロ野球選手みたいにすごい良いよ!?
「ガアッ!!」
猿くんが投げたと思ったら、横の地面が爆ぜていた。
見えなかったよ。
恐ろしく速い投石、私なら見逃しちゃうね。
やばいね。
回し蹴りよりやばくない?
これ……生き残れるかな?
猿くんが第2球の準備をする。
まって、強力な技ほどクールダウンは長いってゲーマーのお兄ちゃんが言ってたのにもう投げられるの?
あ、これもゲームの話か。
そんなことより避けないと!
バックステップ!
危な!
目の前に着弾すると生きた心地がしない。
やめてほしい。
やめてくれるかな?
やめてくれないね、第3球の準備してるね。
……よし、こい!
前進!
よし、当たらなかった。
こういう時に体が小さいのが役に立つ。
私という的が小さくて当てづらいからね。
なんだ楽勝だな!
ん?なんで石を砕いてるの?
なんで砕けた石を投げようとしているの?
何かで見たことあるよ、それ。
君が猿だから?
猿はそうする運命にあるの?
え、待ってやめて投げようとしないで!
「ガアアッ!!」
石の散弾が飛んでくる。
飛んできてたと言ったほうが良さそう。
だって気がついたら被弾してたんだ。
『HP:315/1180』
一発一発が細かいしいろんな所にバラけるからダメージは少なめだけど……避けられない。
まずい。
でも避けられないなりにできることはある。
のんびりしよう。
ただのんびりするんじゃなくて不規則に動きながら。
それのんびりじゃなくない?と思うだろう。
私もそうだ。
でも、これは有効だと思う。
それに私は普通ののんびりをやるのではない。
体はのんびりせず、心はのんびりする。
普通の猿に埋められてお尻踏まれまくった時もそうだった。
はたして踏まれている状況はのんびりしているといえるのだろうか?
いや、いえない。
しかし、あのときはHPは回復していた。
つまり、心さえのんびりしていれば回復するということだ。
まぁ、体はのんびりじゃないから回復量は半分ぐらいだけどね。
不規則に動きながら出来る限り被弾を避け、HPを回復する。
持久戦だ。
猿くんは絶えることなく投石を続ける。
ダメージレースでは負けているが、かなり耐えられるだろう。
私は怠惰で猿くんが力尽きるのを待つだけだ。
その時、なにか大きな音が聞こえてきた。
蜘蛛さんの方角だ。
一体なんだと見てみたら、壁にくっついていた大量の糸が剥がれようとしている。
何者かによって引き剥がされているのかな。
どうやら蜘蛛さんがやっているらしい。
操糸のスキルを使って猿が貼りついた糸で下の猿たちを下敷きにするつもりのようだ。
ん?まって?
この角度、私に当たらない?
ちょっと蜘蛛さん?
あまりの激戦で私の存在忘れてる?
そんなー。
音を立てて近づいてくる猿と糸の壁。
どう考えても巻き込まれる角度だ。
うん、今すぐここから離れよう。
こんな所にいられるか!私はこの場所から離れるぞ!
全速力で走る私。
しかし悲しいかな。
体が小さく、スピードも速いとは言えない。
そんな私が逃げられるはずもなく……。
私は猿と糸の下敷きになった。
いてて……防御力が1000いってて良かった。
おかげでダメージはかなり少ない。
周りは猿だらけ、まだ生きているのもいるらしく少しだけ呻き声が聞こえる。
これ蜘蛛さんすごいレベル上がったんじゃない?
私も巻き込んでなかったら絶賛してたよ。
さて、そんなことは一旦置いといてと。
ここから出よう。
私は猿の死体と糸を腐蝕大攻撃で塵にして自分の出口を作る。
その出口からこの猿山を出ていくと、外の光景が目に飛び込んでくる。
どうやらほとんどの猿を倒したらしく、あと残ったのは猿くん似の猿3体だけだ。
1体は本物の猿くんだけどね。
残りの猿たちを見ていると後ろから蜘蛛さんが近づいてくる。
怠惰はOFFにしておこう。
『タニシちゃん、ごめん!巻き込んじゃって!』
『………………………いいよ、別に。』
『ほんとごめん!!』
猿の山に埋もれなければ石の散弾を浴び続けることになってたし、むしろ感謝したいぐらいだよ。
さすがに耐久力があるからって石を投げられたいとは思わない。
『ねぇ…あの猿たちどう倒す?』
『うわぁ…ステータスやば……え?う〜ん簡易ホームで戦う?』
『投石してくるけど耐えられる?』
『多分耐えられる。』
そう言いつつ蜘蛛さんから不安を感じる。
もし防げなかったら蜘蛛さんだと一発アウトかも知れないからだろう。
糸に自分の命を預けるようなものだ。
誰だって不安を感じるはずだ。
蜘蛛さんが簡易ホームを作る。
作っている間、猿くん達は動くことは無くじっとしていた。
一体なにを企んでいるんだろう?
私の頭では分からない。
深いかもしれないし浅いかも知れない。
おっとそんなことを考えている間に簡易ホームが出来上がった。
投石対策に猿くん達のいる方向は糸が多めだ。
逆に壁の方はスカスカでなにもはられてない。
簡易ホームというより糸でできた盾だね、これ。
『タニシちゃん、私の合図で怠惰を発動して。』
『ん?分かった。』
猿くん達が投石の準備をする。
今回はその場にとどまっているので石を砕かず素材のまま使うようだ。
3体がフォーム良く1つずつ、計3個の石を投げつけてくる。
その石は私達を葬る威力があったが糸の盾は耐えきった。
すぐに蜘蛛さんが糸の塊、クモーニングスターを猿くん達に投げつける。
猿くん達は体勢を整えている途中だったため1体の猿くん似の猿に命中、身動きが取れなくなる。
蜘蛛さんは次のクモーニングスターの準備をする。
『タニシちゃん、今!』
『わかった。』
蜘蛛さんの指示通りに怠惰を発動させる。
そうするとどうだろう。
糸に絡まった猿くん似の猿のSPがどんどん減っていくではありませんか。
なるほど、糸に絡まってもがくと体力を消耗する。
怠惰はその消耗を加速させるスキルだ。
だからこんなにも速くSPが減っていくのだろう。
《経験値が一定に達しました。個体、エルローゲーレイシューがlv7からlv8になりました》
HP全回復だ。
さっきは妙にテンション上がってたけどそれで痛い目にあったからもう上がらない。
蜘蛛さんもレベルアップしたようで、せっせと皮を脱いでいる。
そういえば私って脱皮しないね。
そういう種族なのかな?
『タニシちゃん、怠惰切って!』
『分かった。』
まったく同じ手順でもう1体の猿くん似の猿がやられる。
《経験値が一定に達しました。個体、エルローゲーレイシューがlv8からlv9になりました》
さて、あとは猿くん、君だけだ。
どうする?
猿くんは周りを見渡し、近くにあった岩に近づく。
そして岩を持ち上げてこっちを向いた。
え?まってそれ投げるの?
あはは、いくら猿くんでもさすがにそれは投げられないでしょ。
投げられないよね?
あ、これ投げられるやつだ。
だって猿くんから投げるぞっていう意思が伝わってくるんだ。
これやばいね。
『うそ!?あれは流石に防げない!タニシちゃん、早く逃げよ!!』
『う、うん。』
蜘蛛さんの頭に乗り、移動する準備をする。
「グオオオオオオオオ!!!!」
全私を震撼させる叫び声と共にさっきまでいた場所に岩が突き刺さる。
なんかもう…怖いより凄いって思っちゃう。
蜘蛛さんの話を聞いた限りだとこれより上が2匹ぐらいいるらしい。
なんか嫌になってくるなー。
おっと蜘蛛さんもう捕まえたのね。
怠惰発動。
《経験値が一定に達しました。個体、エルローゲーレイシューがlv9からlv10になりました》
《条件を満たしました。個体、エルローゲーレイシューが進化可能です》
お、これが噂に聞く進化ってやつか。
一体どんな進化なのか、期待しておこう。
私はスマホ投稿なので誤字があったら気軽に言ってください。
修正します。