騎士団長は転生しても女の子を守り続けるようだ。   作:ジンジャー・エール

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三話目を書けて嬉しいです。
お気に入り登録してくださった方々ありがとうございます!感謝しすぎて逆立ちしたら背中から行って腰がやられました()
それでは本編どうぞ!


第三話 騎士団長のトカゲ狩り

 朝、太陽が昇って少し経った頃。

 

 鳥が鳴き、季節外れの冷たい風が吹くなか、俺は父であるオケストラと一緒に公園に来ていた。

 

 もちろん朝の散歩をするために来たのではない。稽古をするためだ。

 

 父が言うには、公園のような広くて人の注目が集まるところで稽古したほうがなんとなくいい感じだという。

 

 その原理は分からないが、オケストラを信頼して付いてきた。

 

 そして今、もちろん俺は父と稽古をしている真っ最中だ。

 

 「よっしゃいけー!」

 

 「オケストラさん頑張れ〜!」

 

 「オケストラさんとこのガキも頑張れー!」

 

 なぜか市民に囲まれてるけどね!

 

 いや、こうなることは分かっていた。

 

 こんな人目のつくところで稽古なんてしていたら、人は必ずと言っていいほど寄ってくる。

 

 父はこうなることを予想していたのだろう。

 

 まさか注目を浴びたかったとか?

 

 そんな、騎士団長にまでなってそのような欲があるのだろうか。

 

 式典もあるだろうし、街を出歩けば声もかけてもらえるだろうに。

 

 「オケストラさん、かっこい〜!」

 

 「オケストラさ〜ん!」

 

 女の子が声を上げる。

 

 父はまんざらでもなさそうだ。

 

 オケストラよ、あなたはそれでも騎士団長ですか…

 

 「なあ、オケストラ団長! その小僧が勝ったら一杯奢ってくれよー!」

 

 「あぁ? じゃあ負けたら俺に一杯な?」

 

 「よっしゃ、小僧! 俺の奢りがかかってるんだから勝てよなー!」

 

 他人の稽古で賭けをするな!

 

 もっと言うと父親も賭けに乗るな!

 

 あとなんでみんな、俺が六歳の子供なのに心配してくれないの?

 

 もしかして遊んでるように見えてたりする?

 

 だとしたら悔しい。

 

 日頃の恨みも込めて父親に一発当ててやる。

 

 顔面に右フックを―

 

 「フンッ!」

 

 「――ガハッ…!」

 

 入れたその瞬間、俺の体が浮き、背中から地面に落ちた。

 

 ていうか今どうやって投げた?

 

 横からの攻撃を受けて、そのまま勢いで投げたの?

 

 お父さん怖いよ。ほっぺた痛くないの?

 

 まさか当たってないの?

 

 手応えはあったのに…俺は何を殴ったの?

 

 ほんとにホラーじゃん。

 

 「よし、俺の勝ちだな。約束通り一杯奢れよ? 第一部隊隊長、シンフォさん?」

 

 「ケッ、仕方ねぇ」

 

 シンフォ隊長か。

 

 初めて聞く名前だ。

 

 俺がいたときには騎士団にはいなかったようだ。

 

 シンフォが父の後ろについて歩いていく。

 

 「おい小僧! お前もついて来い」

 

 「え、俺?」

 

 「ミルクでも奢ってやるってんだよ。分かったら早く」

 

 「はぁ…」

 

 俺は二人の後について行った。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 「カーッ、生き返るな〜! 朝から他人の奢りで飲む酒はやっぱり最高だぜ!」

 

 「あんま飲み過ぎんなよ団長。この小僧のミルク代も俺が払ってるんだから」

 

 この街にこんな立派な酒場があったなんて、今まで気づかなかった。

 

 俺が騎士団長だった頃は、部下と一緒に朝まで飲んだものだ。

 

 懐かしいなあ、早く十ニ歳になりたいよ。

 

 ちなみにこの国では、十ニ歳が成人となっている。

 

 つまり、あと六年経てば俺は成人ってわけだ。

 

 「お、ソナタ。お前も飲むか?」

 

 「え、いいの?」

 

 「ダメだよ、子供に飲ませちゃ」

 

 オケストラと話していると、一人の少女が入ってきた。

 

 それも見覚えのある少女だ。

 

 「おお、オペラ! よくここが分かったな!」

 

 「父ちゃんはすぐお酒飲むから、酒場に来れば会えると思ったの。ソナタくんにも会えるとは思わなかったけどね〜!」

 

 「ん? って離れろよちょっ、てか力強っ!」

 

 そう、この少女はオペラ。

 

 昨日、学校で仕合をした少女だ。

 

 その力は凄まじく強く、そこら辺の騎士なら簡単に倒せてしまう程だった。

 

 というか今、父ちゃんって言った?

 

 「じゃあこのシンフォって人がオペラの―」

 

 「ん? ああ、俺の名前は、シンフォ・ニア。そしてこっちが」

 

 「オペラ・ニアだよ!」

 

 「うわぁ…」

 

 まさか、オペラの父親が隊長だったとは思わなかった。

 

 確かにこんな娘が育ちそうな感じするよ。

 

 「あ、そうだ! ソナタくん、今からミニトカゲ捕まえに行こうよ!」

 

 「え、ミニトカゲ?」

 

 「おお、いいなそれ。ミニトカゲの燻り美味いんだよな〜。ちょうどいいや、二人で獲ってきてくれよ」

 

 「え?」

 

 ちょっと待っ―

 

 「さあ、レッツゴー!」

 

 「ちょおい、引っ張るな〜!」

 

 俺はオペラに引かれるまま、ミニトカゲを捕まえに行くことになった。

 

 「なぁ、シンフォ。あの二人良さそうじゃないか?」

 

 「団長のとこの小僧には渡さねーよ」

 

 「別にいいだろ〜?」

 

 「ダメだ、団長は酒飲んでればいいんだよ」

 

 「おっ、久々にどっちが先に潰れるか勝負するか?」

 

 「望むところだぁ!」

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 「ソナタくん遅いよ〜」

 

 「いやいや、オペラが速いんだよ…」

 

 ここは街から少し離れた森の中。

 

 樹木が生い茂り、鳥や小動物が活発に動き回っている。

 

 騎士団長だった頃は、森の管理の仕事は嫌いだったが、久々に来ると自然とはやはりいいものだ。

 

 「ソナタくん早く〜!」

 

 「はいはい」

 

 この森に入って一時間弱。

 

 ずっとオペラの後ろについて行っているが、今のところミニトカゲらしきものは見ていない。

 

 本当にいるのだろうか。

 

 「ソナタくん、今からこの崖登るけど大丈夫?」

 

 「は?」

 

 「だから崖を」

 

 「登るのか…?」

 

 「うん!」

 

 ちょっと待ってくれよ。

 

 軽く50メートルはあるぞ。

 

 ところどころ風化してるし、もし落ちたりしたらお陀仏だ。

 

 「いつまでそこにいるの? 置いてくよ〜」

 

 「はいはい…ってえ!?」

 

 もうオペラが登り終わっていた。

 

 なんだ、見た目ほど大した崖じゃないのか。

 

 「待ってろー! 今行くから」

 

 俺は出っ張っていた場所に手をかけた。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 「はぁ…はぁ…」

 

 「ソナタくん大丈夫?」

 

 「大丈夫じゃ、ないかも…」

 

 あの崖は、見た目通り50メートルくらいあったし、ところどころ風化してた。

 

 一度ハズレを引いて落ちそうにもなった。

 

 なんとか登りきったが、疲労がすごい。

 

 改めてオペラは、人並外れた力を持っていると思う。

 

 「ところでオペラ、そのミニトカゲっていたのか?」

 

 「ううん、ここにもいないみたい。おかしいな〜、いつもはすぐ見つかるのに」

 

 オペラが唸る。

 

 それと一緒に、オペラのお腹が鳴った。

 

 オペラの顔が赤くなる。

 

 「…えっと、お昼にしようか」

 

 「う、うん…」

 

 気まずい雰囲気の中、俺は昼飯を取り出した。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 昼飯を食べ終わり、太陽がちょうど南に傾いた頃。

 

 俺らは再び、ミニトカゲを探すために森を進んでいた。

 

 「なぁオペラ〜。昨日、オペラは西から来たって言ってたけど、どうしてこっちに来たんだ?」

 

 「えーっとね、父ちゃんは今まで西の方で警備をしてたの。それで今度は街でお仕事があるから、ってアタシを連れてきたんだ〜」

 

 「へー、そうなんだ」

 

 西の方と言えば、海のある方だ。

 

 警備するってことは何かしら危険性があるってこと。

 

 魚か何かが襲ってくるとか?

 

 「あ、いたよ! ほら、ミニトカゲ!」

 

 「ん? え、これがミニトカゲ…?」

 

 「うん!」

 

 オペラが指をさした方を見ると、そこには馬車より一回り大きい、四足歩行の爬虫類がいた。

 

 どこがミニトカゲだよ! 普通のトカゲより大きいよ!?

 

 「ソナタくん武器とかって持ってる?」

 

 「えっと、とりあえず訓練用の剣と、手作りの弓があるけど」

 

 「えー、アタシが使える武器無いじゃ~ん」

 

 なら使える武器があるか聞こうよ…

 

 「しょうがないな〜、素手で倒そ」

 

 「は?」

 

 オペラが飛び出す。

 

 ミニトカゲはオペラに気づきいたようで、戦闘態勢に入る。

 

 ミニトカゲが尻尾を振り、攻撃を仕掛けてきた。

 

 そこまで早い攻撃ではないが、あの大きさだ。

 

 もし当たれば、少なくとも骨折は免れないだろう。

 

 オペラはその攻撃を避けながらトカゲの懐に潜り込むと、ミニトカゲを持ち上げ、投げ飛ばした。

 

 ミニトカゲは背中から着地し、衝撃で一瞬怯んだ。

 

 オペラはその一瞬を見逃さなかった。

 

 オペラがすぐさまミニトカゲの腹部に向かって強烈な蹴りを入れる。

 

 その一撃は見事なもので、一撃で仕留めてしまった。

 

 まさに神童。

 

 無駄な動きはほとんど見当たらなかった。

 

 「ソナタくん見てた?」

 

 オペラがこちらを見てくる。

 

 その顔は褒めてほしいと言わんばかりの表情だ。

 

 「見てたよ、オペラはすごいね」

 

 「…ソナタくんあたしを子どもだと思ってるでしょ」

 

 「え、でも子どもじゃ」

 

 「そうだけどそうじゃないの! あたしは―」

 

 「ギョルェェェ!」

 

 「「 !! 」」

 

 しまった!

 

 奇妙な咆哮が聞こえ、振り返ってみると仲間のミニトカゲがいた。

 

 俺としたことが気づかなかった。

 

 オペラも気づいていなかったようだ。

 

 不意をつかれ、襲ってくると思いきや、そのミニトカゲは後ろを向いて走っていった。

 

 「…一体何だったんだ?」

 

 「分からない…とりあえず帰ろ! 父ちゃんたちが待ってるよ!」

 

 「そうだな」

 

 あのミニトカゲの行動は引っかかるが、目的も済んだことだし、帰ってミニトカゲの燻りとやらを食べよう。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 しばらく森を歩いて、日が少し傾き始めた頃。

 

 オペラの様子がおかしい。

 

 狂気だとかそういうのではなく、焦りに近いなにか。

 

 もしかして…

 

 「オペラ、まさか道に」

 

 「ち、ちちち違うよ! 別に迷子とかじゃないから!」

 

 「いや、でも―」

 

 「ほ、ほら! ここ通ったでしょ?」

 

 「ずっと同じ風景だから」

 

 「迷子じゃないもーん!」

 

 いいえ、迷子です。

 

 間違いなく迷子になりました。

 

 さて、どうしましょう。

 

 「ソナタくん! ここ見たことない?」

 

 「ここは…」

 

 それは、行くときに登った、あの高い崖だった。

 

 ようやくこの地点までたどり着けた。

 

 「やったねソナタくん! これで家に帰れるよ!」

 

 オペラが喜び、はしゃいでいる。

 

 小さい頃のアリアを見ているようだ。

 

 「あたし帰ったら父ちゃんとみんなで一緒に、このミニトカゲの燻りを食べるんだ! そしてお腹いっぱいになってみんなでお泊りするの!」

 

 みんなで一緒にか〜。

 

 …ん? なんだよ作者。

 

 フラグ? フラグって何。

 

 「ギョルェェェ!」

 

 聞き覚えのある鳴き声。

 

 ミニトカゲがついて来ていたのか。

 

 「オペラ!」

 

 返事がない。

 

 「オペラ、聞いているのか!」

 

 オペラは震えて固まっていた。

 

 「ソ、ソナタくん…あれ……」

 

 「ん…!?」

 

 現れたのはミニトカゲ一体、それとその五倍は大きい、化け物がいた。

 

 「グォヴェェェェェ!!」

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 「くそ、なんてデカさだ。オペラ! この森にあんなのがいるなら先に言えよ!」

 

 「知らないよ〜! あたしもあんな化け物がいるならこんな森入ってないよ〜」

 

 俺たちは、森の中を逃げ回っていた。

 

 何からか。

 

 もちろん、あの巨大な化け物からだ。

 

 普通のミニトカゲと同じ容姿だが、大きさが尋常じゃない。

 

 唯一の救いは、走るスピードがミニトカゲと同じだったこと。

 

 しかし―

 

 「グュロォォ!」

 

 「うわぁ…!っと!」

 

 攻撃の速さは桁違いだ。

 

 威力も比べ物にならない。

 

 さっきの攻撃で、樹木が二本折れてしまった。

 

 それでも勢いが衰えないのだから、捕まれば即終わりだろう。

 

 「ソナタくん何かいいアイデアはないの〜!」

 

 「あるけど確実じゃない! それでもいいかー!」

 

 「もちろん! それで終わるなら大賛成だよー!」

 

 「じゃあついてきて!」

 

 ゆっくりと旋回する。

 

 なるべく木の多い道を通って、巨大な化け物を誘導する。

 

 思ったとおりだ。

 

 あまり知能は高くない。

 

 俺の動いた方に突進してくる。

 

 これはいける!

 

 「ソナタくん! 元の場所に戻ってる気がするんだけど!」

 

 「それでいいんだ! 俺が合図したら横に避けろ!」

 

 そろそろだ。

 

 この場所には…

 

 「オペラ、今だ!」

 

 「分かった!」

 

 あの崖がある!

 

 「グォルェェェェ!」

 

 化け物は崖の下へ落ちていった。

 

 「ソナタくんどう?」

 

 「ああ、作戦大成功だ」

 

 「やったね!」

 

 さて、帰ろ…って今日は多いね作者。

 

 お前フラグ立てるの大好きだねって?

 

 だからフラグってどういう―

 

 「「 !? 」」

 

 急に地響きが起こった。

 

 まさか、あいつ…

 

 「グォヴェェェェェェ!!」

 

 「まじ…かよ……!」

 

 言われてみればそうだ。

 

 あの巨体がこの崖から落ちたとしても、俺たちにとっては階段から少し落ちるくらいのこと。

 

 見通しが甘かった。

 

 「ソナタくん、どうするの…? あたしあいつ倒せないよ?」

 

 「俺もだ…一体どうすればいいんだ!」

 

 「お困りか?」

 

 その声に顔をあげる。

 

 「そんな顔してどうした。お前の父さん、オケストラがやってきたぞ〜!」

 

 その声の主は父、オケストラだった。




三話最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ちょこっと忙しくてなかなか書けませんでした…
評価感想誤字報告等ありましたらよろしくおねがいします!
それでは!
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