レミリアの奇妙な冒険   作:り-kei

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侵略者ディオと来訪者レミリア

 

 

 

「いつか勝てるようになってやる!」

 

 喧嘩で得た生傷に顔をしかめながら、ジョナサン・ジョースターはそうつぶやいた。喧嘩相手は何の関わりもない少年二人で、同じく何の関わりもないエリナという少女を助けるために自ら喧嘩を吹っかけたのだが、力及ばず逆に叩きのめされてしまったのである。

 

 なぜそんなことをしたのかと人に問われれば、彼は迷いなく「紳士とはそういうものだから」と答えていただろう。負けると分かっていても、戦わなければならないと感じたときにはどんな相手とも戦う勇気をもった少年だった。

 

 彼が自宅―伝統ある貴族、ジョースター家の屋敷として有名だった―に帰ってくると、家の前に見慣れない黒塗りの馬車が停まっていることに気がついた。客人だろうか―ジョナサンが怪訝に思っていると、ドアが開いた。

 

 大きなカバンが地面に投げ出された。次いで馬車から軽やかな足取りでおりてきたのは、金髪の少年だった。端正な顔立ちではあるが、目だけはぎらぎらと光っている。

 

(…そうだ、思い出した。今日はお父さんの二人の恩人の息子と()を引き取るという話だった)

 

 ジョナサンは記憶をひっかきまわし、二つの名前のうち一つ―ディオ・ブランドーという名前を探し当てた。そのときちょうど、ディオの方もジョナサンの存在に気づいたようだった。

 

「君はディオ・ブランドーだね?」

「そういう君はジョナサン・ジョースター」

「みんなジョジョって呼んでるよ…よろしく。ところでもう一人来るって話だけど」

「ああ、それなら隣にいた彼女かもしれないな」

 

 ディオが出たところとは反対側のドアがゆっくりと開いた。ジョナサンが見守っていると、その人物はおそるおそるといった様子で外へ足を踏み出し、傘を差した。

 

 もう一人の来訪者は青がかった髪に赤い目をもった少女だった。こちらもディオに劣らず顔は整っていたが、その肌は青白い。身体が弱いのかもしれない。少女はジョナサンとディオを見つけると、声をかけてきた。

 

「私はレミリア・スカーレット。貴方が…ジョナサン・ジョースターかしら?」

 

「ああ。よろしく」

 

 ディオはジョナサンと同じくらいの歳だが、レミリアは一、二歳年下らしかった。

 

「私、身体が弱いから太陽の光に当たれないの。…傘を差したまま言うのは失礼かもしれないけど、どうぞよろしく」

 

 レミリアが薄っすらと微笑を浮かべると、ジョナサンはレミリアの笑みに本能的な不気味さを感じた。が、すぐに頭を振ってそんな感覚を頭から追い出した。

 

(……勝手にそう思うのは失礼だな。紳士失格だ)

 

 内省しながら手を差し出した時、きゃいん、という犬の鳴き声と鈍い音が聞こえてきた。はっとして振り返ると、ジョナサンの「友達」である愛犬、ダニーがディオに顎を蹴り上げられていたのである。

 

「何をするだァーッ! 許さんッ」

 

 叫んだジョナサンを、レミリアが後ろから制した。

 

「ひょっとしたらディオは犬に怯えたのかもしれないわ。あの犬はあなたの?」

「友達なんだ! ダニー!大丈夫か!」

 

 ジョナサンが駆け寄ろうとしたとき、その父親―ジョースター卿がやって来た。

 

「一体何の騒ぎだ?」

 

 

 

 

 

「ディオくん。君の父親には世話になったね」

「いえ……むしろ僕の方が感謝したいくらいです。貧民街出身の僕にこれだけのことをしてくださってくれるとは」

「レミリアくんも。ご家族の件は本当に残念だった」

「確かに寂しいけれど、ジョースター卿、新しい家族と出会えたのは幸運でしたわ」

 

 ディオはジョナサンの父親―ジョージ・ジョースター卿と話しながら、その場にいる全員をつぶさに観察していた。

 

 まず、ジョージ・ジョースター。彼の機嫌を損ねるのはよくない。とはいえ、さきほども「突然犬が走って来たのに驚いた」というディオの嘘を信じてしまったことから、()()()()相手であることは分かった。温室育ちの貴族らしい間抜けである。

 

 そしてジョナサン・ジョースター。彼も父親と同じく間抜けなところがあるが、こちらには威圧的に出た方がいいだろう。いずれジョースター家の財産の相続から蹴落とさなくてはならないのだから。ダニーの件でディオにはいい印象を抱いていないようだが、知ったことではない。

 

 最後にレミリア・スカーレット。名家の生まれだそうだが、屋敷の火事で両親を失ったのだという。しかし彼女の父親はジョースター家を経済的に援助したことがあったため、その縁でジョースター卿が引き取ることにしたのだという。

 

 病気がちなので競争相手としては心配しないでいいだろう。邪魔になれば父親―ダリオ・ブランドーにしたように、毒を盛って病死に見せかければいいだけの話である。レミリアはどうにもディオに対する感情が読めないが、さほど問題ではない。

 

「来たまえ二人とも。部屋に案内してやろう」

 

 適当に返事をしているうちに、いつの間にかジョースター卿の話は終わっていた。ジョースター卿はロビーを歩いて階段へと向かっていた。

 

 ディオがそれに続こうとしたとき、ジョナサンがカバンに触ろうとしていたので適当に蔑みの言葉をくれながら手首を軽く捻りあげ、肘鉄を喰らわせる。

 

(ジョースター家を乗っ取るためにも、コイツの心は折っておかないとな)

 

「これからも僕の持ち物に触るなよ」

 

 そう言い捨て、ディオはジョースター卿の後を追った。

 

「…ごめんなさい、かばんが重くて階段を上れないの。持ってくれない?」

「あ……うん、わかった」

 

 後ろからレミリアとジョナサンの話す様子が聞こえてきた。今の一部始終を見ていたにもかかわらず、レミリアの声には同情も戸惑いもなかった。ジョナサンとディオの間のいざこざには無関心なのかもしれない。

 

 いいように使われているジョナサンの姿を想像して、ディオは片頬に歪んだ笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 レミリアは自分の部屋へ案内してもらい、荷物を運んでくれたジョナサンにお礼を言った後、疲れたので少し休ませてほしいとジョースター卿へ頼んだ。

 

「慣れない旅で疲れたろう。存分に休みなさい」

「お言葉に甘えさせていただきますわ」

 

 レミリアはベッドに座ると、ほうと安堵のため息をついた。

 

(今回は、長くいられそうね)

 

 レミリアの姿を見た人間は、彼女の年齢を14、5くらいと推定するだろう。しかし実際のところ、彼女は1()5()0()0()()()()ロンドンで生まれているのである。なぜそれだけの間生きていられたのか。結論から言ってしまえば、彼女が吸血鬼であったからである。

 

 1521年にアステカ帝国が滅びると、スペインを通してメキシコから多くの金銀財宝がヨーロッパへともたらされた。レミリアの家―スカーレット家はメキシコの貿易品を扱っており、自然とレミリアとその妹はメキシコからの品に触れる機会が多くなったのである。

 

 その品の中に、二つの石仮面が混じっていた。

 

 ある日レミリアとその妹が、父親の持って帰ってきた石製の仮面をかぶってふざけていると、どうしたわけか妹がころんで手のひらをすりむいてしまった。当然だが、石仮面で視界が制限されていれば転びもする。妹は泣きながら石仮面を外そうとした。

 

 血に濡れた手で触れた瞬間、骨針が飛び出て妹の頭をめった刺しにした。呆然としているレミリアの目の前で、妹はゆっくりと倒れた。

 

 レミリアが妹を介抱しようと駆け寄ると、そのときにはすでに吸血鬼と化していた妹に殴り飛ばされた。折れた肋骨が肺に突き刺さり、レミリアは吐血した。もちろん吐いた血は石仮面へ付着し、同じように作動した。

 

 かくして二人の吸血鬼が生まれてしまったのである。両親に捨てられた姉妹はヨーロッパの各地を転々としていたが、ある村で行われた魔女狩りのときに離れ離れになってしまった。

 

 妹と別れたあと、レミリアはその後も吸血鬼であることはひた隠し、錬金術師の真似事や貴族の家庭教師をしながら旅をしていた。一か所に留まると歳を取らないことがばれてしまうので、定住はしなかったが。

 

 もちろんジョースター卿が恩義を受けた家族とは血は繋がっていない。子のいない貴族夫婦がいたので養子になっていたのである。人のいい夫婦でレミリアも気にいっていたが、不幸な事故で二人が死んでからはほとんど思い出すことはなかった。

 

(この家は静かでいいけれど…あの二人はちょっと気になるわね)

 

 ジョナサンとディオ。ジョナサンは貴族の()()()()らしい甘っちょろさがあるが、稚拙ながらも紳士たらんとする姿勢は好感がもてた。ディオは貧民街出身というだけあってぎらぎらとした野心を身に纏っており、どうも気に入らない。

 

(まあ、少し占ってみようかしら)

 

 レミリアは自前のタロットカード―占星術師に弟子入りしていたころに手に入れたものである―を取り出してシャッフルした。

 

 カードを1枚引いて見たあと、片眉を上げて再びシャッフルし、引き直す。それを数度繰り返して、ため息をついた。

 

「……ひょっとして私、面倒ごとに巻き込まれたのかしら?」

 

 二人の運命、そしてジョースター家の運命。何度占っても出てくるのは正位置の(タワー)。意味は「破壊、破滅、惨劇」だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディオとレミリアが来てから、ジョナサンの苦しい日々が始まった。ディオは何かとジョナサンに嫌がらせをしたり非友好的な態度をとってくるうえ、あっという間に勉強やマナーを理解してしまったため、ジョースター卿はジョナサンに厳しい態度をとるようになっていたのだ。

 

 レミリアは病気がちで昼は自分の部屋から出てこず、あまり姿を見かけたことはなかったが父親に言わせれば、「完璧な淑女」であり、貴族らしい教養があるらしい。

 

「作法がなっとらんぞッ 作法が!」

 

 ひっくり返ったグラスがテーブルクロスに大きなしみを作ったとき、ジョースター卿はそう言ってテーブルに拳を叩きつけた。

 

「もういい、ジョジョ! お前の食事はぬきだ!」

「ええっ、そんな……」

「ディオを見習え!……もう自分の部屋に帰ってなさい!」

 

 給仕がジョースター卿の指示通りにジョナサンの食器を下げに来たときには、すでにジョナサンはすきっ腹を抱えて自分の部屋へと走っていた。

 

(父さんは二言目にはディオを見習え、レミリアを見習えだもんな……きっと僕が嫌いなんだ)

 

 ジョナサンは涙ぐんでいた。誰かと比べられることなかった今まで、ディオの罵詈雑言を浴びない今までが懐かしかった。

 

「あら、どうしたの?」

 

 涙をぬぐいながら歩いていたジョナサンに声をかけたのは、レミリアだった。

 

「いいや……なんでもない」

 

 泣いているところを見られてしまったので、ジョナサンはいささかの気恥ずかしさを覚えながらそう答えた。するとレミリアは、ああ、と納得したようにうなずいた。

 

「さっきジョースター卿の声が聞こえてきたのだけれど……マナーが悪かったのね?」

「……」

「まあ、確かに作法は大切ね。特にあなたのように紳士を目指しているのなら」

 

 レミリアは微笑を浮かべた。しかし空腹のうえにやり場のない怒りと悲しみを抱えたジョナサンには、レミリアがあざ笑っているようにしか見えなかった。

 

「放っておいてくれ。それにきみも…ディオや父さんみたいに僕を嫌ってるかマヌケだと思ってるんだろ?」

 

 何を言っているのか分からないという様子で、レミリアは首をかしげた。

 

「そんなことないわよ。私はディオよりは貴方の方が好きだし……まあちょっと抜けたところはあると思っているかしらね」

「……やっぱりバカにしてるじゃないか」

 

 やはりこの家には自分の味方は一人もいないのだ。ジョナサンはレミリアと顔を合わせているのが嫌になり、再び駆けだした。

 

「あ、ちょっと待ちなさい」

 

 レミリアの制止は無視した。ジョナサンは自分の部屋へと駆けこむと、勢いのままベッドに突っ込み、ぐすぐすと泣きじゃくった。

 

 少しして涙は収まったが、空腹はジョナサンの思考を悪い方向へとねじまげ、心をどん底へと叩き落していた。

 

「……ああ、こうやって僕は涙にずぶ濡れになって死んでいくんだ……でも誰も僕の亡骸を見ても泣いてはくれないんだろうなァ……ディオは鼻で笑うだろうし、父さんもため息をつくくらいで…」

 

 

 そのとき、ノックの音がした。

 

 ジョナサンが口をつぐむと、ドアの向こうからレミリアの声が聞こえた。

 

「ジョジョ、入ってもいいかしら?」

 

 自分をからかいに来たのだろうか。ジョナサンは真っ赤になった目をこすりながら答えた。

 

「……また君か。何の用だい?」

「何の用とは冷たいわね。せっかく貴方のために食事を持ってきてあげたのに」

「えっ?」

 

 ドアを開けて入って来たレミリアは、ジョナサンが食べ損ねた夕食をまるまる一人分持っていた。

 

「それは……」

 

 ジョナサンが驚きの声をあげかけたとき、レミリアは人差し指を唇にあてた。

 

「内緒よ。私、食欲がないの。……まあ冷めてはいるけど一切手をつけてないから遠慮せずに食べなさい」

「いいのかい?」

「そのために持ってきたんだから。気にしないでいいわ」

 

 先ほどまで悪意に満ちていたように見えたレミリアの顔が、聖母のように見えるようになった。ジョナサンは自分の腹の現金さに苦笑しながら、感謝の言葉とともに食事を始めた。

 

 ジョナサンが無我夢中で食べている間、レミリアは窓から外を眺めていたが、食事が終わったとき、ジョナサンのベッドに飾り付けられている母親の肖像に目をとめた。

 

「あれはあなたのお母上?」

「うん。そうだよ。僕が生まれてすぐ死んじゃったんだけどね」

「……それなら、ジョジョにとってはジョースター卿が唯一の家族なのね。1人しかいないのだから、大切にした方がいいわ」

 

 そのとき、ジョナサンはレミリアが家族全員を亡くしたという話を思い出した。よく考えれば、レミリアはそれだけの悲劇の後、弱い体をかかえ、身寄りのない不安にさいなまれていたはずである。それなのにさきほど自分がとってしまった態度は、とても紳士とは言えないだろう。

 

「……ごめん、さっきは気が立っててね。何かあったら力になるから。……紳士たるもの、淑女に当たるべきではないよね」

 

 レミリアは、気にしてないわ、とつぶやいてから、ジョナサンの方に向き直った。

 

「貴方、やっぱり気に入った。ディオみたいな人間はさんざん見てきたけれど、貴方のようにバ…いえ、本当に紳士になろうとしている者は見たことがない……貴方も、もし困ったことがあれば私に相談しなさい」

 

 ジョナサンは、久しぶりに味方となってくれる人が現れたことに安堵を覚えた。どこか上からものを言ってくるようなところのあるが、それも愛嬌だろう。

 

「さて、と……そろそろ戻らないと使用人が私の部屋に食器の回収に来てしまうわね」

「食器は僕が持っていこうか?」

「遠慮しておくわ。あなたが食器を持ってるのを見られたらまずいでしょ?」

 

 そう言うと、レミリアは食器を抱え、部屋のドアへと歩いて行った。

 

「今日はありがとう。これからも…友達として、よろしく」

「こちらこそ」

 

 レミリアがバタンと扉を閉めたとき、彼女の身にまとっていた甘い香りがかすかに残っていた。

 

 

 

 

 

 ある日、ディオはジョナサンの部屋にこっそりと忍び込んだ。ジョナサンはいい懐中時計を持っていたので、それをいただいておくつもりである。この前、ボクシングで徹底的に痛めつけておいたので多少物を盗んでも何かを言ってくる気にはならないだろう。

 

「ム、見つけたぞ」

 

 きらりと輝く真鍮の懐中時計が引き出しの中にしまわれていた。ディオはそれを取り上げ、ためつすがめつしてからポケットに入れると、ジョナサンの部屋を出た。

 

「あらあら。ディオ。ジョナサンの部屋で何をしていたの?」

 

 するとそこでちょうどレミリアと鉢合わせた。手には広間にかけてある不気味な石仮面を持っている。レミリアは昼間には自室にいることが多いはずなのだが、今日はたまたま外に出てきていたらしい。

 

「……そういう君だって、広間にあるはずの仮面を持っているじゃないか。どうしてだい?」

「この石仮面に興味がわいたの。だからジョースター卿に許可を貰って自室でゆっくり見ることにしたの」

「フン、そんな骨董品、金になりはしないのに……よほど暇なんだな」

「ええそうね。……それで、貴方はどうしてジョナサンの時計を持ち出しているの?」

 

 レミリアはじっとディオの返答を待っていた。

 

(ち、面倒くさいな)

 

「借りるだけさ。僕は自分の時計を持っていないんでね」

 

「そう、ならいいわ。……まあ貴方もジョナサンの友人として、いや、ジョースター家に住む人間として、盗みなんてするわけはないと思っていたけれど」

 

 そのとき、ディオはレミリアの向ける視線が盗人を見るそれであることに気づいた。貧民街でよく向けられた、取るに足らないものを見るような目。ディオはふつふつと怒りがわいてくることに気がついた。

 

(このディオをコケにしやがって……!)

 

 しかし、ディオは激昂しそうになるのをぐっとこらえた。レミリアの身体は華奢で、ディオが右ストレートでも放てば容易に倒すことができるだろうが、ジョースター卿や使用人の手前、それはできない。相手がジョナサンであれば喧嘩として片づけられるかもしれないが。

 

「まあいい……じゃあな」

「あともう一つ教えてほしいことがあるのだけれど」

「…なんだ」

 

 踵を返そうとしたディオを、レミリアは呼び止めた。

 

「今日は早めに学校が終わったのかしら? ジョナサンは帰ってないみたいだけど」

「……ちょっと忘れ物を取りに来ただけさ」

「そう。じゃああなたがダニーに猿ぐつわをして箱に入れたのはどうして?」

「なに?」

 

 こいつは、とディオはレミリアを睨みつけた。

 

「外を眺めていたらあなたがダニーと一緒にいるところを見かけたのよ。犬嫌いのはずのあなたがね。……それにしても、いつの間にそんなに仲良くなったの? 焼却炉でかくれんぼなんかしちゃって。助けるのに骨が折れたわ」

「……見間違いだろう」

「ふーん、ならいいわ。私はけっこう犬が好きなの。…一生懸命人間に尽くすところが特にね。だからあなたも『ダニーが事故にあわないように』気をつけてあげて」

 

 レミリアはそう言い残すと、自室の方へと引き返していった。それを見送ったディオは、自分の目的を達成するうえでレミリアが思った以上に邪魔な存在であることを知り、ひそかにある決意を固めた。

 

(こうなったら、早いかもしれないが、レミリアは始末する。そう、俺のあのカスみたいなオヤジと同じように、毒でゆっくりと殺してやろう)

 

 かさり、とポケットに入れていた毒薬の包みが音を立てた。

 

 

 

 

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