THE LAST PHANTASM -OBITO- 作:大兄貴
無限月読。十尾の最終形態である神樹の蕾を開花させる、もしくは十尾の人柱力となりし者が輪廻の力を第三の眼として開眼、大筒木の瞳力を月に投影させて発動する大幻術。意識が同一化した地上の生物を終わりなき夢の世界へと誘い、争いや苦しみのない夢幻へと閉じ込める。あらゆる影を見通す無限の月光からは逃れられない。
黒ゼツが保有する輪廻眼は、かつて忍世界に永遠の幸福と破滅をもたらさんと見開かれた。その眼がカグヤの物となり、忍世界のみならず幻想世界をも呑み込まんと、今もどこかで密かに脈打っている。
妖怪の山から東の山道までの長い道のりを短時間で移動した時のように、道なき道を跳び進む忍の足腰は好都合だった。レミリアの遊びで捕まった案内役の妖精を奪還するために、咲夜の案内で人里の北地区を経由して魔法の森の一角に入り、暗い森に生い茂る樹々の間を縫うように跳び進み、暗闇の中を走りに走って最終的に森を抜けていた。
現在地は霧の湖。辺りには咲夜曰く、山道と同程度には妖怪やら妖精やらが出没するようだ。夜間の放射冷却現象による産物なのか、微細な水滴で視界が不明瞭なのは名前通り。
時刻は二時を回っている辺り。漆黒の空に浮かぶ月、ぼんやりとした雲が流れている。頬を撫ぜる風は涼やかだ。
写輪眼で見通せないほどの濃霧でもなければ、妖術の類による力も及んでいない様子。招いた客人の道中に罠を張り、歩みを妨げるような無粋な真似はしないなどと、レミリアなら誇らしげに言い放ちかねない。
「……この辺りでいい」
赤い目を鋭く光らせつつ、オビトは腕に抱えた咲夜を地面に降ろした。
まるでレミリア探知機のように扱い、乱雑気味な横抱き、俗に言うお姫様抱っこで湖まで連れてきたオビト。里を出た辺りで徒歩を否定された本人も、従者の身分で主人を差し置いたからか、若干困惑したような、不思議そうな表情をしている。
恥じらいや逆上といった激情を露呈させない辺り、揺るぎなき冷静さが窺えるものの、心なしか楽しんでいるようにも見えた。
「驚いたわね――」
当初は咲夜も、主であるレミリアの従者として、道中の森で襲い来るであろう妖怪達の魔の手から客人を護りながら、通常の移動手段で紅魔館を目指す予定だった。結果はご覧の通り。
咲夜はオビトの足腰を不測の事態と捉えてはいない。何の変哲もない外来人と思われた人間が、妖怪相手にも通用する程度の身体能力を持つ忍だった。主人が騒ぎを起こしかけた和菓子屋に居た、その時点で察していたとはいえ、未曾有の事象を間近に映して驚きを隠せない。
「まさか、あろうことかこんな。身軽でもあるのね、貴方」
「実感はないがな」オビトの目が走る。「悪いがこちらの一存で運ばせてもらった。のんびり歩いて妖怪共と出くわすよりはな……上手い具合に撒けたようだ」
「物を扱うみたいに乱暴だったのは少々アレだけどね。抵抗の必要性は辛うじて生まなかったから、まあ良しとするわ」
「雑な輩が多いんでな。忍ってのは」
本来の喋り方であろう、従者としての丁寧な仕事口調をしまい込み、咲夜は軽い感じの口調で話している。余所者相手でもその辺の切り替えに非の打ちどころがないのは、オビトにして賞賛できる良さの一つである。
「だが……コトの方は上手く、とはならなかったようだ」
「みたいね。残念だけど」
スカートに付着した土埃を払う咲夜の目が、オビトの視線に同調した。館がある湖中央の小島を目前に足を止め、案内役の咲夜が地面に降ろされて、霧の向こうに注意を払っていた理由がある。
連中は最後の最後で新鮮な餌を嗅ぎつけたようだ。湖畔と小島とを架ける橋への道を塞ぎ、捕食対象の人間二人を包囲している。妖怪が活発化する時間帯も関係しているのか、チャクラの数を見る限り、敵は八、九――数えて十という多勢。
霧のせいで視界はよくない。湖に先回りして待ち構える狩人なら、霧を利用して姿や手数、動きを隠しながら、鬼人のごとく静かに獲物を仕留めにかかるだろう。しかしながら、感知を阻害する効力を持たない霧は脅威となり得ない。うちはの者として写輪眼という瞳力を持ち、忍としてチャクラ感知も行えるオビトには、霧に紛れた姿や動きは見通せる。咲夜の方は『眼』こそ持たないが、落ち着いた様子から察するに慣れがあるようだ。
――いずれもチャクラの色は妖力のみ。人の姿をしたミスティアなどに比べると大した相手ではない。黒ゼツが差し向けた刺客でもなさそうだ。霧に紛れた巨大な姿と眼光は、知性を欠いた獰猛な化け物、見た目通りの獣。
(…………)
この場合はどう動くべきか。血の気の多い者や好戦狂は別としても、自身や仲間の命を脅かすに足りない輩と積極的に戦う気にはならない。後先を考えるなら無駄な労力は回避する方が賢明だろう。レミリアの底は視通せていないのだ。
避けて通ろうにも、平坦な湖畔では樹々やでこぼこなど障害物が多い森とは違い、撒くのは霧の中でも困難を極める。理性もなく殺戮しか考えられず、話が通じるか以前の問題なら、妖怪とて獣に情けをかける必要はない。
「野蛮な獣たち。スペルカードは……まあ、考えるだけ無駄よね」
「どう対処する? ここはお前の判断に任せたい」
知の足らぬ獣相手でも油断は禁物。先走るべきではない状況に変わりはない。護衛を買って出られる者を余所に飛び出す喧嘩っ早さもない。右も左も分からない外来人が無闇に出しゃばるよりは、土地勘や(おそらくは)戦いにも慣れた者に判断を任せるべきだろう。多勢の獣を前に余裕を失わない姿勢を嘘偽りとは思うまい。
館が湖畔にあろうと、湖中央の小島にあろうと、湖と周辺は咲夜の独擅場とも解釈できる。
「あら、冷静じゃない。外来人なのに」
「油断ならん奴が相手なら、冷静さは失うべきではない。それだけのことだ」
「その言葉と表情、見えているみたいね。連中の底が」
「獣は人型より浅い。物事を見通す眼力なら多少心得がある」
「真面目な人」咲夜は微笑む。「――じっとしていなさい。お嬢様のメイドとして、貴方を無事に館へ送り届けることが、私の勤めであり努め。客人には指一本、欠片だって触れさせやしないわ」
咲夜はオビトに目配せすると、脚に巻いたケースからクナイではなく、小ぶりな銀のナイフを取り出した。手慣れた動作で構える辺り、刃物を駆使した戦闘には経験や自信があるのだろう。妖怪共へ向けられた威圧的な眼光が拍車をかける。
人里では子供っぽさを見せていた主人でも、咲夜は従者として誇りを持っている。ならば無粋な真似はせず、彼女の断固たる意志を尊重すべきだろう。
「こいつらは人ならざる者、並外れて強靭な肉体を持つ……気を抜けばあっという間だ」
「心配されるのも悪い気はしないけれど。この程度の輩に遅れをとっていたら、あの方のメイドなんてやってられないわよ」
怖れの感情は微塵もないようだ。じりじりと距離を詰める獣共を前に、客人を敵の目から隠すように背を向ける。
大半の獣は知性を欠き、本能に任せて行動する。内包する妖力も雑で質はよくない。その代わり、人の姿をした妖怪より頑丈な体を持つために、普通の人間が真正面から太刀打ちできる相手ではない。凶暴性も上であり、人間が食い殺される事例も獣の方が多い。
厄介なのは打たれ強さや妖力ではない。加減を知らない獣の性質だ。不釣合いに大きな力を手にした赤子のように、ブレーキの利かない攻撃を人間相手にも容赦なくお見舞いする。分別のある悪党でも相手取る方がマシだろう。
もっとも、要らぬ心配だったようで――その辺を理解した上での行動だろう、咲夜は己の答えを証明するかのごとく、妖怪共が動くと同時に地面を蹴って飛び出した。
――すかさず写輪眼で観察する。どこに隠し持ち、いつの間に手にしたのか――指の間に挟んだ多量のナイフを、襲い来る妖怪共へ投擲する動きを確認した。爪や牙を避ける軽やかな身のこなし、素早い機転は常人とは程遠い。百発百中の腕かは視通せないが、クナイを持たせれば咲夜も、忍の世界でかなりの実力を発揮するのではと思わせた。
とりわけ驚くべきは、写輪眼の基本性能の一つである『洞察眼』をもってしても、その動きの全てを追えるわけではないこと。素早く動いているだけではない。むしろ「目で追えるほどゆったり」と立ち回り、妖怪共の数は減少の一途を辿っている。
(十六夜咲夜、か。膂力もだが……あの動き、何の能力だ?)
時空間忍術の一種なのか、咲夜は先ほどから何度も点々と、謎の瞬間移動を絶えず繰り返している。
どれだけ動作が速かろうと写輪眼が見切る。相手が使う術の印や技の動きを先読みして、瞬時に真似て複製まで可能とする力でもある。体の動きならともかく、眼の動きが追いつかないなど、これまで一度もなかった。
咲夜はどうだろうか。左手に銀色の懐中時計を握り、余裕の浮かんだ表情で敵を殲滅している。無傷で息切れもせず、返り血さえ浴びずに。
専有空間ではなく共有空間、つまり現実の空間内における移動に限られるなら、かつての師だった四代目火影・波風ミナトや千手扉間が使う『飛雷神の術』など、正体は色々と想像できるとしてもだ。あの術とは違い、印やマーキングもなしに行使して、写輪眼でも先読みできずとなれば、神威にも比肩するように――下手をすると、その場で移動先を自由に選択できる様子から、それをも凌駕する力と思えてしまう。
変則的という程度では片づけられず、写輪眼でも見通せない未知の現象を見ていると、あの八雲紫のように時空間、つまり空間や時間などの概念に干渉しているようにも感じられる。意味ありげに手にする時計が能力の要であるかは判らない。
「終わったか」
「ええ」
色々と考えを巡らせるうちに事態は終息したようで、咲夜は銀髪を振り払い、ゆったりと近づいてきた。軽い運動とでも言いたげに、柔らかな微笑を浮かべている。ナイフだけでどう料理したのか、原型を留めていない肉塊が血溜まりの中に転がり、形ある死骸は残されていない。
「鬱陶しいほどの多勢を本当に一人でやるとはな……大した奴だ」
外見や思い込みだけで他人を判断せず、確かな現実を目の当たりにしてしまえば、オビトが感心した顔を向けるのも当然だった。
「ありがとう」咲夜はにっこりとする。「お褒めの言葉は素直に受けておくわ。物珍しげに言ってくれる人、もう周りにいなくてねえ」
「レミリアの奴もか」
「賞賛に値するならね。そんなのは稀」
長く付き合う内に当たり前となる景色。忠実なる従者の人並外れた強さも、口に出して褒めることではない。そんな彼女をも従えるレミリアとは、どれほどの使い手なのか。
「さてと……お待たせしたわね。下卑た者たちに血の臭いを嗅ぎつけられる前に、さっさと離れましょう。お嬢様も館で待って――」
物事はそう都合よく進まないようだ。咲夜が湖面の方に目を向けようとした瞬間、戦いの間に駆けつけ捕捉を始めていたらしい、二匹の獣が唸り声を上げて霧の中から飛びかかった。さすがに不意を突かれたのか出遅れてしまう。
獰猛な牙が届く前に一匹目はナイフを構えた咲夜の前で、二匹目は攻撃対象を変更した瞬間に沈黙を余儀なくされ、いずれもオビトの催眠眼を受けて崩れ落ちる。
輝きを帯びる銀のナイフを仕舞い、咲夜はオビトを見つめる。
「お嬢様の目に留まるのも納得ね。あの方の客人とはいえ、一緒に叩いた方が早かったかしら? こんなことなら」
「人のことは言えんぞ。空間を歪めて飛んだか、時間でも止めたのかと思ったくらいだ。オレのいた世界では類を見なかったからな」
「よく分かったわね」懐中時計を見せる咲夜。「――貴方の思う通りよ。私には変わった力がある……『時間を操る程度の能力』ってね。そんな感じに言われてるわ、阿求には」
「ほう」オビトの咳払い。「なるほど、本当にアレが……勘が当たっていたのか。そんなものを軽々と……」
阿求。稗田阿求。同じ名を聞こうとは。程度なる表現が些か気になるが、言葉通りに受け取るならば、他者の目から見た客観的な評価という意味合いか何かで付けたのだろう。操るという言い方と合わせて、基準が曖昧で解釈し放題である。
時間操作と類似性の高い術を無理に当てはめるなら、己に不都合な現実を夢に書き変える力、時間の巻き戻しとも解釈できる『イザナギ』が挙げられる。あの術は写輪眼を扱える者のみが使用できる、失明のリスクを背負った使い捨ての瞳術であり、何の負担もなさそうな咲夜の様子を見るに、やはり違うように思える。
強力な術や技には何かしらのリスクや制限が伴う。万華鏡や穢土転生も例外ではない。時間を操る力は回数、イザナギのように巻き戻しや解釈ができない可能性もあるだろう。
驚愕を押し殺した表情を浮かべているオビト。咲夜は畔を歩きながらくすくすと笑っている。これ見よがしに懐中時計をぶら下げているのは果たして。
――◇◇◇
紅魔館。霧の湖に浮かぶ小島に建つ洋館で、館主のレミリアや従者の咲夜を含めて、幻想郷でも指折りの有力者達が暮らしている。この世界では和の様式が表立つことからも判るが、異色の館に住まう人間や妖怪は新参者という扱いだ。
曰くパチュリーの魔法で造られたという大きな橋を渡り、見上げるような壮大な門へ辿り着いた二人。
門を越えて見える館の外観は真っ赤で、血を啜る吸血鬼のイメージに隙間なく符合する。高くそびえる時計塔を照らす青白い月は、館の不気味さを鮮明に映し出している。
じっと館を観察するうちに、咲夜が「こっちよ」とオビトを呼ぶ。案内を任された彼女に伴い、門との距離をある程度詰めた辺りで、今度は別の声が「咲夜さん」と名を呼んだ。
「お前の仲間か?」
「ええ、紅美鈴。門番のね」
この人物も妖怪だろうと直感する。うずまき一族と見間違えそうな真っ赤な長い髪、華人服に星型のエンブレムを付けた帽子。愛想のよさそうな表情と雰囲気だ。髪色と長さのせいか、ナルトの母であるうずまきクシナを連想させる、ような気がしないわけでもない。咲夜に続いて何らかの能力持ちだろうか。
「へえ。相変わらず深夜だけは仕事してるわね。あの盗っ人が来る時間帯ならもっと助かるんだけど。明日からでもその辺り、考えてくれない?」
「うーん……朝昼は辛いですかねえ。妖怪ですし私」
「――『辛い』?」
「あ、いえ。えっとその、努力します!」
夜間帯が主な活動時間らしい美鈴。根っからの妖怪である。
種族や力の強弱が館での地位を決めるわけでもないのか、二人のやり取りからして妖怪の美鈴よりも、人間である咲夜の方が立場は上に見える。時間を操るという強大な能力ゆえか、レミリアとの信頼関係なのか。真相は本人達のみぞ知る。
「もういいわ」咲夜は呆れ気味。「オビトは……こちらの客人はこれから、お嬢様に用があってね。そういうわけだから、その間は誰も――」
「あ、待ってください」
「……何?」
「咲夜さん、実は申しつけでして――うちはオビト様、そちらの方を黙って通すわけにはいかないんです。門番の私と戦って、勝ってからにしろと……お嬢様が」
「待て。どういうことだ」
途端に嫌な予感がしたオビト。咲夜は息を吐き、厄介ごとかと顔に書かれたオビトに向き直る。
「こうなったか……簡単に帰すつもりはないのね。なら私が手を貸すのを望んでいない――貴方一人で辿り着くのを期待している」
遊び好きなレミリアにとって、月夜の稀有な客人ほど悦ばしく待ち望んだ者はいない。
さも当然のようにウォーミングアップを始めた、やる気満々の美鈴を映してから、オビトは避けられない運命を悟った。
「貴方がすべきは一つ。最上階の向かって一番右側、お嬢様の部屋を目指すこと……簡単じゃないだろうけどね。貴方を邪魔する罠を館中に仕掛けてるでしょうから」
「咲夜、お前の主は何に駆られて張り切っている。奴の望みは何だ?」
「あの方のみぞ知るわ」咲夜は哀れみの目を向ける。「そういうことだから。悪いけどオビト、私はここまで。くれぐれも死なないように……ベストを尽くして頑張りなさい」
時間操作の能力で咲夜が忽然と姿を消した後、残されたオビトの前でポーズをとりながら、「そーゆーコトです!」と挑発的な言葉を投げかける美鈴。
「こうなったからには、この紅美鈴――幻想郷でも随一の門番として、偉大なる我らがお嬢様を、全ての悪しき者共より護り抜いて見せましょう! かかってきなさい!」
並の妖怪を凌ぐ妖力はもちろん、鬼にも通ずる気力を宿した中国拳法の達人が、その身に内包した膨大な妖気を今ここに解放する。
気合いを込めた大声と共に、凄まじい気力の渦が解き放たれた。二人を囲んで突風が駆け巡り、長い赤髪が巻き上がる。可視化されたチャクラが黄色いオーラとなり現れた。
「ふふふ……どうしました? 闘る前から足がすくみましたか? 降参なら構いませんよ」
どこからでも来なさいと言いたげな、余裕の笑みを浮かべて奇抜なポーズをとり、『悪しき侵入者』であるオビトを映している。そのオビトが微動だにせず、思い出したように「お前」と口を開いた。
「普段は寝てるとかで、門番として機能していないそうだな」
「え?」目を丸くする美鈴。「あー……ま、まあその、そうなりますかね。いやあ、体質かわかりませんけども、なんででしょうかねえ」
「レミリアはどうだ。奴も妖怪、日中は布団の中か?」
「いえ、お嬢様は朝昼も出歩くんですよ。でも私の場合、睡眠を十分に確保した日でも、習慣になってるのか……なんかこう、寝ても寝ても瞼が重くて」
「ほう?」
「あれですよたぶん。眠りと休養の宿命を背負って生まれてきた、みたいな? いやあ、仕方ないですよねそれじゃ」
「なら従者の仕置きはこれからも続く。お前の体は特別睡眠を求めるようにできてるんだろう」
「そんなっ! 咲夜さんの雷とナイフのダブルパンチなんて……どーすればいいの、私っ!?」
主人であるレミリア直々の命令なのだ。彼女は愛想がいいだけでふざけているのでは決してなく、オビトとの会話の中で気を抜いたわけではない。
「悪いがお前の悩みは取り除けんな。無力なオレにできるのは、詳細な敗因を頭で理解する暇もなく……この場で朝を迎えるのに一役買うくらいだろう」
そう言うが早いが、オビトの眼を直視した美鈴は、哀れにもポーズをとったままの形でその場に倒れた。