report:超光速の粒子とその行方   作:Patch

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私に専属トレーナーがついた。トレーナーはどうやら頭が悪い。
頭が悪いくせにいつも全力で、自分の身を顧みない。
私はトレーニングを放棄した。楽をしたいわけじゃない。楽をするべきなのはトレーナーなのだ。
それでもトレーナーは私を待っていた、だから気まぐれに外に出た。
すると、トレーナーが駆けてきてぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。
私は緑色に輝く芝の上を走った。


report:燃焼・食道を駆けるプラズマ

 食事というものは非常に面倒である。この話は以前もした気がする。誰に話したんだったか。

 まあいい、とにかく食事というものは非常に面倒なのだ。体を動かすためにはエネルギーが必要であるが、食材によって含まれるエネルギー量が異なる。エネルギーは多すぎても少なすぎてもいけない。

 エネルギー少なければ体を動かすことが出来なくなってしまう。エネルギーの枯渇は直ちに死に関わる深刻な状態ともなりうる。

 エネルギーが多すぎれば体重が増加する。体重増加はエネルギーの枯渇に比べればやや緩慢な変化ではあるが、体質の変化はさまざまな健康被害をもたらす。

 ウマ娘にとってはどちらも恐ろしい。2000mという距離を2分程度で駆ける私たちはエネルギーの枯渇は深刻な問題であると同時に、体重という無駄なウェイトはただひたすらに不要である。

 

 食事で課題となるのはエネルギーだけではない。私たちの体では作られない栄養素を補給するという意味合いもある。筋肉の健全な育成にはアミノ酸類が必要不可欠であるし、ビタミンと言われる化学物質は体内で製造されないものも多い。血液をはじめとする体液にはナトリウムや鉄といったミネラルも求められる。食事とはとかく考えることが多い。

 

 G3やG2など、G1レースへの挑戦権がかかった重賞レース前になると、カフェテリアの利用者が減少する。もちろん理由はレースに向けた食事制限だ。私はいちごジャムが食べられる。良いことだ。

 スイーツを我慢し耳の下がったウマ娘の横で、いちごジャムを山のように盛ったスコーンをいただく。なんと愉快なことか。あとフィナンシェもいただこう、気に入った。

 普段から美食などに現を抜かすのがいけない。私はラボで作成する栄養素を補完するスムージーによって栄養補給をし、紅茶とスコーンを娯楽食としている。あとフィナンシェも。

 私の作成するスムージーは、箸やスプーンを使わないために非常に効率の良い食事となる。喉の奥に押し込むのみで満腹になり、腹持ちも良い。一日に必要な糖質を除くエネルギーを全て摂取でき、体は健康そのものである。糖質は角砂糖を別途食べたいので抑えめなのだ。

 

 トレーナーが私と食事を摂りたいと言ったために、ラボでスムージーを作成している。少しくらいはトレーナー君の意思を汲もうじゃないか。トレーナーとウマ娘のコミュニケーションは大切だ。今の状態では良好な関係性とは言いがたい。

 トレーナー君は少々残念な頭を所持しているため、食事などに気を配ってはいないだろう。倒れられては困るのだ。少々値は張ったが滋養強壮に良い材料を入れておいた。ささやかな恩返しくらいしてもいいだろう。

 どんな顔をするだろうか、ただ気まぐれでアイシングスプレーを持って外に出ただけでぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいたかわいいヤツだ。もしかしたら感動でむせび泣くかもしれない。ティッシュも用意しておこう。あぁ、そうだスムージーの効果を見るために試薬も混ぜてみよう。

 

 カフェテリアに行くと、トレーナーが縮こまって座っていた。脚はぴったりと閉じ、手は膝の上に置かれて両肩が上がっている。

 こちらを見つけると笑顔で手を振ってきた。脇が閉まっていて振る速度がとても速い。

 

「やあトレーナーくん、昼食のお誘い感謝するよ。」

「すみません、突然お誘いしてしまって…でもありがとうございます!」

 

「ああそうだ、トレーナーくんのためにこんなものを用意したんだ。」

「!?」

 

 スムージーを取り出すと、とても驚いた顔をした。それはそうだろう、トレーナーに出したことがあるのは、まずいコーヒーと試薬、あとは髪を水色に変える水薬だけだ。突然の優しさは心に衝撃的に映るものなのだからね。

 

「それはなんですか…?」

「スムージーさ!私が愛飲しているものに少しだけ滋養に良いものをいれたんだ。トレーナーくんはいつも働いているだろう?疲れていると思ってさ、作ってみたんだよ!」

 

「じゃあいただきます!!あの、今度は私にもお弁当作らせてくださいね…?」

 スムージーを少し見つめてから、トレーナーは一気に飲み込んだ。

 顔が紅潮して、目に涙がたまってゆく。鼻息が荒くなり、体全体を震わせる。

 やはりティッシュを用意しておいてよかった。本来は一気飲みなんてできる代物ではないが、よほど嬉しかったのだろう。私としても良い贈り物ができた。これでトレーナーが黄緑色に光らなければ完璧で__

「うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」

 雄叫びが聞こえた、目の前のトレーナーが虹色に発光している。空を駆ける勢いでカフェテリアから飛び出して行った。

 

 私は初めて実験に失敗したのだった。

 結果としては大満足。久しぶりに腹を抱えて笑った。




このあと2人には厳重注意の処分が下った。
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