久しぶりに彼女がラボに現れたので、コーヒーを出した。
今回はコーヒーを受け取ってもらえた。
彼女の才能はやはり素晴らしいもので、専属トレーナーがついていることを会話の中で知った。
負けないと言う彼女、そして私にも熱いものが滾っていた。
トゥインクルシリーズには俗にシーズンと呼ばれるものがある。正式なものではない。
シーズンと言われる所以は1年間に行われるレース出走者のクラス分けに起因する。
トゥインクルシリーズにはクラスというものがある。
クラスは学年によって分けられる。若いほうからジュニア・クラシック・シニアとなっている。私は現在ジュニアクラスだ。
シーズンについてだが、これがややこしい。
1年間のうち1月から6月までに行われるレースはクラシッククラスのみ出走可能なレースとシニアクラスのレースが多い。
それ以降の下半期はジュニアクラスのみ出走可能なレースと、クラシッククラスとシニアクラス混合で行われるレースが多い。
上半期はクラシックとシニアがそれぞれ分かれて世代ごとに真剣勝負し、下半期は若きホープのジュニアたちが夢を追い、その横で真の強者を決める激しい戦いが行われる。
よくわからなければ、ジュニアクラスは下半期のレースにしか出れない。と思ってもらっていい。
ジュニアクラスは下半期しかレースに出れないから、と言って手を抜くことは許されない。トレーナーへのアピールを行わなければチームに所属できず、出走すらままならない。
私は断じて手など抜いていない。私の脚が壊れようとも、可能性の先を見るために研究をしていたのだ。どうやら一定の効果があったようで、少し頭部に不安は残るが、優秀な専属トレーナーまでついた。まさに僥倖。これを活かさぬほど私は愚か者ではない。
私はこれから行う2つの研究プランを立てた。
まずはプランA、私の脚を補強し、自らの手でウマ娘の肉体に秘められた可能性を研究すること。
そしてプランB、私の脚が壊れた場合などに、他のウマ娘を指導することで、可能性の先に到達したウマ娘を作り出すこと。
幸い、私の肉体に可能性の片鱗を見つけることができた。あの模擬レースを思い出して欲しい。
私は焼きそばを売るウマ娘の声に気を取られ、完全に出遅れた。2人のみのマッチレースでは駆け引きなどできない。致命的なミスだ。
相手は絶対の強さを既にレースで発揮している生徒会長。追いつくことなど不可能なはずだった。
しかしながら、私はその背中に迫ることができた。あわや勝利というところまで肉薄した。この結果を無視することはできない。
あの後にトレーナーと出会った。トレーナーは目に涙をためて鼻水を出しながら狂った目で「あなたの持つ可能性を見たい」とか言ってきたんだったか。よく覚えていないが、おそらくそこですでに心惹かれていたんだろう。ただ、涙を出さずに鼻水を出すのはどうなのだろう。涙も出していた方が良かったのではないだろうか。
何にせよデータが足りない。あの結果が何か原因となるものがあるはずだ。メイクデビューが待ち遠しい。そこが私の検証実験の舞台となるのだ。
今回は展開があまり動かないですね。