report:超光速の粒子とその行方   作:Patch

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私はこれから行う2つのプランを立てた。
ひとつは私自らの体で可能性を探求する。
もうひとつは可能性の先に行くウマ娘を私が作り出す。

模擬レースの結果からウマ娘の体の可能性の片鱗を見た。
私のメイクデビューがひとつの検証実験の場になる。待ち遠しい。


report:熱量は人を動かす愛情足り得るか

 トレーナー君の努力は時にして目に余る。私は確かにモルモットのように実験材料にはしてはいるが、ぞんざいな扱いはしていない。かわいいモルモットであり助手でトレーナーなのだ、愛着も湧こう。

 だがこいつはいらぬところで努力をし、自らの体をぞんざいに扱うのだ。

 専属トレーナーであるのだから、私の世話だけしていればいい。肩を揉んでほしいし、ラボの掃除をしてほしい。研究の手を休める訳にはいかないので食事を食べさせて欲しい。ピーマンは抜いておくこと。ティータイムには甘い紅茶を作っておいて欲しいし、飲む時にはフーフーして少しだけ冷まして欲しい。スコーンといちごジャムもあるといい。フィナンシェを作ることは難しそうなので、無ければ無いでも結構だ。

 

 先日、私のモルモットは虹色に光ってどこかへ行った。許しがたい背信行為だ。だが私の助手であるという矜恃は失っていなかったのか、私の昼食を作ると言い出した。

 私はかわいいモルモットの善意を無碍にするほど不粋な女ではない。喜んで受け取ることにしたのだ。

 

 したのだが、

 

 食事というものは面倒だ。非常に面倒だ。

 まず私は箸が嫌いだ。我が国では一般的な食器ではあるが、他国から見ればそれはとても奇怪に写る。片手で2本の棒を保持するのだ。1本は親指の付け根と薬指で動かぬようにしっかりと持ち、もう1本は親指と人差し指と中指の側面でつまみ、ワニの顎のように上下させる。この動作で切る、押さえる、つまむ、掬うといった様々な動作を行う。

 切るのであればナイフ、押さえるのであればフォーク、掬うのであればスプーンを用いれば良い。つまむことに至っては非合理的だ。小さいものはスプーンで掬えば良い。大きなものはフォークで刺せば良いのだ。また、箸に至っては先端が細く鋭利になっているにも関わらず、不可解なことに刺すことが禁じられている。よくお母さんに怒られたものだ。

 

 弁当箱を開けると色とりどりのおかずが入っていた。いざ食べようとすると、プチトマトの活きが良い。何度も跳ねるのだ。私の箸遣いは完璧であるが、プチトマトが言うことを聞かない。米が箸の間から落ちる。粘りがあるとは言えそもそも微細な種子を2本の棒でまとめてつまむのが間違いなのだ。ウィンナーに至っては脂で滑るので結局刺した。お母さんは見てないから大丈夫だ。ピーマンが入っている。これは許されない。別容器にフルーツポンチが入っていた。仕方ない、箸で食べるのは些か億劫だがピーマンの件は不問にしよう。

 

 愛情を感じる弁当であった。味も良く、栄養素に偏りもほとんど無い。ただもう少しフルーツポンチは多くてもよかった。

 知性を持ち合わせていないとか、頭部に不安がのこるとか、そう感じていたのは誤りであったかもしれない。申し訳なく思う。だが改善の余地があるのは確かだ。これに関しては誠意を持って今日のミーティングで報告することにしよう。

 

「トレーナー君、お弁当をありがとう。」

 トレーナーの顔に大輪の華が咲く。可愛らしいが単純なヤツだ。

「わざわざすみません…どうでしたか…?」

 すぐに表情が曇る。発言をするたびに謝罪をするくせは治っていないらしい。数秒前のように笑っていてくれ、改善点の指摘がしづらいだろう。

 

「うーん、言いづらいのだが私は研究の合間に食事を摂っていてね、箸を使うのは億劫なんだよ。片手で持てるメニューに変更するか、食器を変更してほしい、タンパク質やビタミンなどをバランス良く含んでおり、そこは評価できるが、糖質はもう少し多くても良いんじゃないかな、君は優秀なトレーナーであるから、明日も期待しているよ。」

 

「はい!報告ありがとうございます!」

 

 単純なヤツだ。褒め言葉を聞いてまた笑顔になっている。これで食事環境は改善されるだろう。

 

 翌日のお弁当はおにぎりと少しのおかずだった。ピーマンは入っているくせにフルーツポンチは無い。食器はスプーンとフォークに変更されていた。意思疎通ができていない。これは大きな問題だ。やはりヤツには知性が備わっていないのだ。

 

 

 ヤツのトレーナー室に駆け込む。

 

「トレーナー君!全くもって改善されてないじゃないか!しかもフルーツポンチが無い!スプーンとフォークだって持ち替えるのは面倒だ!両手に持ったら次はおにぎりが持てないぞ!」

 

「えっ……でも……。」

 困惑した顔をするな。お前が悪いんだぞ。私は怒っているんだ。

 

「なんだいその目は、君が食べさせてくれるとでも言うのか?君には私に対する愛情はないのか!」

 

 

本日の昼食はトレーナー室で摂ることになった。

「おにぎりー、おにぎりが遅いぞー、はやくー」

「はい、どうぞ」

 スプーンとフォークを両手に持つと、口におにぎりが運ばれてくる。これが私の求めていた最も効率の良い食事である。味はいつも以上に格別で、トレーナーも何故か笑っている。これからもトレーナー室で昼食を摂ることにしよう。




アグネスタキオンさんはあたまがいいのでごはんをたべるときにも最高効率をみちびき出したのだ!すごいぞ!
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