report:超光速の粒子とその行方   作:Patch

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メイクデビューへの最終仕上げ。
私はあの模擬レースのイメージを掴めないでいた。
苛立ちを感じるところを彼女に見られていた。
私の走り方が変わったことに気づいたらしい。
それをトレーナーにも聞かれてしまった。

私はこのチャンスを棒に振るわけにはいかない。


report:小さな一歩、神話への飛躍

「響けファンファーレー、届けゴールまでー」

 口ずさむと少しは心が落ち着く。トゥインクルシリーズでは勝者による歌と踊りのパフォーマンスが行われる。ウィニングライブという。

 ファンの応援を力に変え、精一杯走り切った勝者がファンへのお返しをするのだ。どうしてレース後にライブなんかやるんだ?と懐疑的な目を向ける者も多いが、応援したウマ娘が汗と涙をキラリと光らせるステージを見て心打たれる者も多い。

 

 メイクデビューで勝利すれば、もちろんウィニングライブのセンターとなる。レース前にイメージするのはレースの展開ではない、ライブだ。私は今日のウィニングライブでセンターに立つ。それだけだ。

 

 トレーナー君の作ったお弁当の味がしない。私のトレーナーは現在出走前の手続きを行なっているため席を外している。フルーツポンチが甘くないのだ。砂糖を入れ忘れたのか?そうではない、私は緊張しているのだ。

 コースは阪神芝2000、スタート直後の急な上り、第3コーナーから緩やかに下り、最終直線でまた急な上り。

「響けファンファーレー…届けゴー…」

 

 扉が開く。

「おい!トレーナー君!ノックくらいしたまえ!!集中しているんだぞ!」

「あぅ…すみません…」

 ただでさえ心臓が止まりそうなのに驚かせるヤツが居るか。ましてやライブ曲を口ずさんでいるとこなど見られたら死んでしまう。

「緊張とかするんですね、いつも実験とかしてるから緊張なんてしないものかと思いました!」

「緊張もするさ、今日は待ちに待った検証実験だからねぇ」

 そうだ、これは私が望んだ勝負だ。さらなる強者とぶつかったときに研究は進歩する。心の奥に灯がともるように体が暖かくなる。

 

「でも、いつも通りでよかったです。お弁当食べちゃいましょうか」

 おにぎりをぐいっと差し出してくる。かじりつくとあさりのしぐれ煮であった。甘みと出汁が効いてて良い。味がする。

「現在私たちは3番人気です。1番人気はライジングエンペラーさんで2番人気がワイアードフィデリティさんですね。」

「戦略としてはどうだい?ライジングエンペラーは後方からの差し、ワイアードフィデリティは逃げ・先行と記憶していたが、君ならどう走る?言ってみたまえ。」

 

 ライジングエンペラーはやや大柄、ストライド走法と持ち前のパワーでロングスパートを狙うウマ娘だ。

 ワイアードフィデリティは先行脚質。すでに出走経験があり、前走2着。勝負感を経験しているのは大きな強みである。

「そうですね…。」 

 

 ワイアードフィデリティが作るレースのペースを見ながら、少し前に場所を取る。3コーナー4コーナー中間でスパート、直線で並んで差し切る。

 コースの特色としてスタート直後に坂があるため序盤のスピードは出にくい。3コーナーから始まる緩やかな下りがあり、直線ゴール前で一気に斜面を登る。斜面の連続するコースレイアウトはスタミナを大きく削るうえにスパートを鈍らせる。後方から来るよりも逃げ切られるほうが怖いのだ。

 

 意見は完全に一致した。あとは走るのみ。

 

「あの…!すみません…!」

 言葉を発するたびに謝る癖は抜けていない。謝るのは私のほうだ。トレーナーの努力には未だ何も報いていないのだから。

「頑張ってくださいね…!」

 こんなにも近くに私が勝つ可能性を信じている存在がある。だから私は私として可能性を追うだけだ。




タキオンのキャラ崩壊してないか不安
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