report:超光速の粒子とその行方   作:Patch

38 / 46
トレーナー日誌

 皐月賞を前にして、より一層気合いがはいっているようです。彼女はいつも雲を掴むかのような気難しさがありますが、やはり一流のウマ娘になるべくしてなる存在だと思います。

 

 最近は食欲が旺盛で、もっとお弁当を食べたいとわがままを言うようになりました。体が引き締まったぶん、エネルギー消費も大きくなったのでしょう。

 苦いものが苦手のようなので、野菜を食べさせることには苦労しています。そのぶんフルーツなどで補ってはいるのですが、これを気に入ってしまったみたいで、フルーツポンチが無いと目に見えてやる気が下がってしまいます。

 

 今日の練習メニューはラダーともも上げ、スキップなどの基礎練習と坂路のピッチ走とスパート練習を行い、仕上げに芝2000を2回走りました。

 専属トレーナーであることや、タキオンさんの評判などから、並走トレーニングをすることができないのは悔やまれますが、どんどんタイムを向上させていっています。走っている時の表情はレースのときのように見えない何かを追っているかのようで、ゴール板よりも先を見据えているのが印象的でした。私としてはゴール板が近づいて力が抜けてしまうよりは良いと思います。

 ただタイムは伸びているものの、どこか本調子のようには見えないことが気がかりです。精神的なプレッシャーもあるのでしょうか?

 

 特に今日は珍しく、練習後に門限を過ぎてラボに篭っていたようでした。普段のおかしな行動はたしかにちょっと問題ではありますが、どれも学園規則には抵触しないものばかりです。学園規則を破ってしまうほど何かに追い詰められていなければいいのですが…

 トレーナーとして身体能力の向上や技術の指導も重要ですが、メンタルケアにも力を入れていきたいです。トレーナーとしての至らなさを感じました。

 

 タキオンさんはラボで薬のようなものを作っていたようです。どうやらそれは私がトレーナー契約のときに飲まされてしまった薬のようで、タキオンさんのつまさきが黄緑色に光っていました。

 ドーピングを「白ける行為」と呼んで激しく嫌っていること、またクラシック制覇には十分すぎる実力を持っていることなどから、不正などではないと思います。

 寮まで送り届けましたが、結局のところあの薬の効能はまだわかっていません。

 もしかしたらただのいたずら用の薬という可能性もあるでしょう。

 

 アグネスタキオンさんは皐月賞にとどまらず、日本ダービーや菊花賞などを勝利する可能性があると私は考えています。

 

 今はただ無事に皐月賞を迎えられることを祈るばかりです。

 

 

 アグネスタキオン 専属トレーナー

 桐生院 碧

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。