千冬SIDE
「ええとね、千冬がオルコットさんや凰さんに勝てない……というか相打ち、になるのは単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ」
「うっ……い、一応把握してるつもりなんだが」
シャルルが転校してきてから五日が経った。シャルルは一夏兄と同じく兄がいるらしくその兄と一夏兄が友人だったと聞きシャルルとは名前で呼び合うようになった。今日はシャルルにISの実戦におけるレクチャーを受けている。しかも今日は休日ということもあり私たち以外にも実習に来ている生徒も多くいる。
「うーん、知識として知ってるだけって感じかな。さっき僕と戦った時よりも殆ど間合いを掴めなかったよね?」
「……確かに『瞬間加速』も読まれていたしな」
「千冬の白式は格闘戦闘オンリーだから、より深く射撃武器の特性を把握しないと対戦じゃ勝てないよ。軌道予測されて攻撃されちゃうからね」
「うーん」
「千冬は『瞬間加速』した後にフェイントを掛けた攻撃が得意らしいからそれをもっと工夫すれば大抵の相手は倒せると思うよ?、でも零落白夜がある以上余りエネルギーは使えないけど」
確かに。『零落白夜』は自身のエネルギーを引き換えに対象のエネルギーをすべてを消滅させるチートとと言ってもいい『単一仕様能力』。当たれば確実に大ダメージを与えられるが当たらなければエネルギーを無駄に消費してしまうというデメリットもある。一夏兄は雪片と『単一仕様能力』『零落白夜』だけで世界最強の座に君臨した。
「それにしてもシャルルは教え方が上手だな、とても解りやすい」
「そう?ありがとう、千冬」
「……箒たちの教え方は色々と…解るだろう?」
「う、うん……まぁね」
あれはもう教え……ではないな。箒に至っては。
『こう、ずばーっとやってから、がきんっ! どかんっ! という感じだ』
もはや教えではなくただの擬音。
『なんとなくわかるでしょ? 感覚よ感・覚。……はあ? なんでわかんないの!!』
確かに私も感覚で覚える方だが、それでは誰も解らん上、キレられるぞ?。
『防御の時は右半身を斜め上前方へ五度傾けて、回避の時は後方へ二十度反転ですわ』
……頭がパンクする。
「千冬の白式って『後付装備』がないんだよね?」
「あぁ。何回か調べてもらったんだが、『拡張領域』が空いてないらしい。だから『量子変換』は無理だと言っていた」
「それは多分『単一仕様能力』に容量を使ってるからだよ」
「『零落白夜』は『拡張領域』を埋め尽くす程のコストがかかってるって事か……」
「そうだね…でもね『単一仕様能力』ってのは普通は『第二形態』してから発現するものなのにそれが『第一形態』から使えるってだけで千冬は凄いよ」
「そ、そうなのか?」
「うん。『第二形態』になっても発現しないことが多かったから、それらの特殊能力を複数の人間が扱える様にしたのが第三世代型IS。オルコットさんのブルー・ティアーズや凰の衝撃砲がいい例だよ」
『第一形態』からアビリティーが扱える私は前例のないイレギュラーって事なのか?。
「『第一形態』からアビリティーが使えるって時点で異常事態だよ。しかもその能力って織斑先生の――――――初代『ジーク・フリート』が使ってたISと同じなんだよね?」
そう。『零落白夜』は一夏兄が現役時代から使っていた『単一仕様能力』。しかも武器までも同じという何とも因縁がある。
「兄妹という理由でなるってわけではないのだろう?」
「うん。もしそうなら現役だったIS操縦者たちの姉妹が同じ『単一仕様能力』を扱えてもおかしくないしね」
「確かにな」
するとシャルルはアサルト・ライフル《ヴェント》を展開すると私へ渡してくる。
「兎に角、今日は射撃武器の練習をしてみよう」
「他の武器は扱えないのではないのか?」
「普通はね。でも所有者が『使用承諾』すれば、登録してある人全員が使えるんだよ。――うん、今千冬と白式に『使用承諾』を発行したから、試しに撃ってみて」
渡されたアサルト・ライフルを受け取ると、一夏兄を真似てアサルト・ライフルのトリガーを引いた。
バンッ!!
「うぅ!」
物凄い火薬の破裂音に驚いてしまった。
「一夏兄が使ってたライフルとは違うな」
「織斑先生のはビーム兵器だからね、至ってこっちは実弾だから反動があるのは当然だよ」
それはそうだな。火薬を爆発させて弾を放つわけだしな。
「今度はちゃんと構えた状態でやってみよう。センサー・リンクはちゃんと出てる?」
「それが……さっきから探しているんだが見当たらない」
ターゲットサイトを含む銃撃に必要な情報をIS操縦者に送る為に武器とハイパーセンサーを接続する事に関しては、普通はどのISでも付いてると教科書に書いてあったはずなんだがな……。
「うーん、格闘専用の機体でも普通は入っているんだけど……」
「100%格闘オンリー機だから、ついてないのだろう」
「それじゃあ仕方ないね、じゃあ、しょうがないから目測でやってみよう」
私の後ろに回ったシャルルが私の動きを誘導してくれる。そしてライフルのトリガーを引こうとしたその時。
「ねえ、ちょっとアレ……」
「ウソっ、ドイツの第三世代型じゃない…」
「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」
急にアリーナ内がざわつき始め、私とシャルルは撃とうとするのを止め注目の的に視線を向けた。
「・・・・・・・・」
そこにいたのはシャルルと同じ転校生である、ドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒだった。転校初日以来、クラスの誰ともつるもうとしない、ところか会話さえしない。
「おい」
ISのオープンチャネルが開きボーデヴィッヒの声が飛んでくる。
「……なんだ?」
気が進まないが無視するわけにもいかない。取り敢えず返事をボーデヴィッヒへ返すとボーデヴィッヒが飛翔してきた。
「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。―――――私と戦え」
「理由がない」
「貴様にはなくても私にはある」
……前々から感づいてはいたが、ドイツ、一夏兄と来たら思いつくのは一つしかない。あの時のISの世界大会第2回『モンド・グロッソ』の決勝戦の事だろう。……私が一番思い出したくなくそして一夏兄の目を失ったあの忌々しき日。
「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなし右目を失う事などなかったことは容易に想像できる。だから、私は貴様を―――――貴様の存在を認めない!!!織斑千冬ッ!!」
……確かに私があの時『モンド・グロッソ』に行かなければ益々誘拐されず、一夏兄の右目や優勝を失うことはなかっただろう、だがこれは私と一夏兄の問題だ。部外者がのこのこと口を出すな……ッ!。私は怒りを抑えつつその場を去ろうとする。
「ではな」
「ふん。ならば――戦わざるを得ないようにしてやる!」
そう言った直後、ボーデヴィッヒは漆黒のISを戦闘状態へとシフトさせる。そして左肩に装備された大型の実弾砲が撃たれた。だがいつの前に私の前に出ていたシャルルが即座にシールドを展開し砲弾を弾いた。
「こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツの人はずいぶん沸点が低いんだね」
「フランスの第二世代型ごときで私の前に立ちふさがるとはな」
「未だに量産化の目処が立たないドイツの第三世代型ルーキーよりは動けるだろうからね」
シャルルはアサルト・ライフルとショットガンを同時展開し銃口をボーデヴィッヒへ向ける私も雪片を展開しボーデヴィッヒへ構える。お互いに激しいにらみ合いが続く。その様子を見ていたのか箒とセシリア、鈴が合流してきた。
「大丈夫か!千冬!?」
「お怪我はありませんこと!?」
「いい度胸じゃない、あのドイツ」
近接ブレード、スターライトMk-Ⅲそして双天牙月を構える三人。それを見たボーデヴィッヒは口を吊り上げる。
「ふん、雑魚が五人か。中国の甲龍にイギリスのブルー・ティアーズか……データで見た時のほうが強そうであったな……まぁいい―――――――全員捻りつぶしてくれるッ!!」
そういってボーデヴィッヒは右腕の装甲から紫色に光るレーザーブレードを展開し私たちへ切りかかってくる。それを見てセシリアとシャルルはスターライトMk-Ⅲとライフル、ショットガンの引き金を引こうとする。だが。
私たちとボーデヴィッヒの間にいつの前にか黒い人影が佇んでいた。
ガシンッ!!!
「なっ!?」
「「「「「っ!?」」」」」
「やれやれ、これだからガキは疲れる」
砂煙が風で払われると、そこに立っていたのは何と普段の黒いスタイリッシュスーツを着た一夏兄だった。右手をポケットに入れ左手はボーデヴィッヒのレーザーブレードを”素手”で受け止めていた。
「きょ、教官!?」
「「「「織斑先生!?」」」」
「一夏兄ッ!?」
あのボーデヴィッヒすら一夏兄が素手でレーザーブレードを受け止めているのを見て驚愕していた。私や箒達も一夏兄のその姿を見て驚愕していた。一夏兄はレーザーブレードを受け止めていた左手を離すと私たちやボーデヴィッヒを睨み付けてきた。
「模擬戦をやるのは構わん―――――――だが、周りにはお前たち以外にも実習に来ている者たちが来ている。もし生徒に被害が出るとなれば教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントで決着をつけてもらおうか?」
いつの間にか周りを見れば実習をしていた生徒や観客席に多くの野次馬が集まっていた。
「………教官がそう仰るなら」
素直に頷き、ボーデヴィッヒはISの装着状態を解除した。私たちも同じようにISを解除する。
「織斑、デュノア、オルコット、凰、篠ノ之。お前たちもそれでいいな?」
「「「「は、はい……」」」」
「僕もそれで構いません……それよりも織斑先生、あの左手は大丈夫なのですか?」
「安心しろ、あのくらいなら怪我などせん」
いや、普通は切り落とされてもおかしくないと思うのは私だけだろうか。素手でレーザーブレードを掴むとか一体何をしたら。
「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」
パンっ!と一夏兄は強く手を叩く。それままるで銃声の様にアリーナ全体に響いた。
千冬OUT
やっと学年別トーナメントのその手前まで来ましたね!早く福音戦を書きたいです!
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