ノリと勢いと隙間時間で書いてるので作風とか時系列がぶれぶれなのは見逃してください。
「最近、不当にメジロの名が貶められている気がしますわ」
ほう、たとえば?
「やれガラが悪いだの、金と権力にモノを言わせるだの、何かあればすぐにバットを振りかぶるだの」
「……それ、メジロじゃなくて全部マックイーンの評判じゃないのか?」
野球ボールより大きい相手なら、全てをバットで解決するウマ娘と裏で呼ばれていたはずだ。
「……いえ、貶められているのはメジロの名です。ライアンやドーベルも迷惑していますわ」
おい、こっちを見て話せよ。完全に目が泳いでるじゃねーか。
「どうしてなんですの……。私はメジロに相応しい言動を心掛けているというのに」
さっき自分で挙げた例をちゃんと思い返せよ。あれがメジロに相応しいなら、どう考えても悪徳貴族の類いだろ。
「メジロを代表するウマ娘として、この汚名は雪がねばなりませんわ」
そうだな。自分が原因なんだから返上しないとな。
「で・す・の・で! 次に出走するGⅡレースの作戦会議をいたしますわ」
レースで結果出して名を上げるより、普段の行動を見直したほうが早いと思うんですけど。まぁ、アイツも出走するらしいから無策ってわけにはいかないか。
「『無敵のテイオー』、まさか私と同じGⅡレースに出てくるなんて。これは間違いなく我々に対する宣戦布告ですわ!」
実際、今更テイオーがこのGⅡレースに出てくる理由もないし、その通りなのだろう。先月はスカーレットの出走したGⅡレースに出てきて、見事に差しきられた。スカーレットの調子も良かっただけに、現在の実力差が如実に表れたと言える。いまのアイツはまさしく敵なしだな。
「お前に勝ったら、いよいよ次はスズカに狙いを定めるんだろうな。異次元VS無敵か。特撮映画のタイトルみたいでワクワクするな」
「私が負ける前提の話をするのはやめてくださいませんこと! それに笑いごとではありません! 万が一、スズカさんが負けたら次に狙われるのは誰だと思ってるんですか!」
え、次?……今のトゥインクル・シリーズでスズカ以外って言ったら、短距離のバクシンオーか長距離のゴールドシップ、あとはオペラオーとかオグリかな。それとも遂にルドルフに勝負を挑むのだろうか。
「……はぁ、レース以外でも勝負勘が鈍いんですのね」
「はぁ!? その評価には断固として異を唱えさせてもらう! 俺、勝負の仕掛けどころの判断とか完璧だからな!」
「確かに私たちへの指示では外したことありませんわね。ですが、少しは気付いてくださいまし。すでにテイオーさんは徹底マークからの差しきり態勢に入っていますわよ」
誰が狙われるのか分かってないんだけど、それはもう手遅れでは?
「そうならないように、私がテイオーさんをはり倒してきますわ!」
そういう言葉選びをするから、メジロがアレな家扱いされるんじゃないですかね。
「……おほん、お倒しあそばせますわ!」
うんうん、そうだね。ヘイローだね。
「とはいえ、実際どうするかねぇ。適正の話を抜きにして正攻法で攻めるなら、全員でテイオーを徹底マークして本調子を出させないのがセオリーだろうけど」
「いまのテイオーさんに通用するとも思えませんわね」
かつてのテイオーなら、周りと協調して囲みながらプレッシャーを掛けて抜けられなくすることはできた。最期まで囲い切れなくとも、スタミナを削り、予定していた作戦を破綻はさせられていたのだが……。
「仮にその方法を取ったとして、間違いなく前を走ってるやつらが抉じ開けられるな」
これがGⅠなら簡単に道を開けたりはしないだろうが、GⅡレベルのウマ娘では競り合いにすらならないだろう。
「GⅠに出てくるウマ娘たちであったとしても、抑えきれると断言できないのが恐ろしいところですわね」
絶望視された菊花賞での大復活。そして、今も継続中の無敗記録。その原動力は天性のバネと柔軟性、ではない。
「まるでターフを踏み砕くかのような力強い走り。いまのテイオーさんには、それを可能とするだけの筋力が備わっています。そして、力強くなったのは肉体面だけではありませんわ」
そういってマックイーンが視線を向けた先のモニターでは、録画していたスカーレットとテイオーのレースが第四コーナーに差し掛かるところだった。
「これで負けるってんだから、ホントどうすりゃいいんだか」
スカーレットの走りは文句の付けようがないものだった。もしかしたら、デビュー以降で考えても最高の走りだったかもしれない。だが、その最高を成し遂げているはずのスカーレットの表情には、怯えが見て取れた。
「アレに追われたら怯えてしまうのも理解できますわ。実際、スタンドで観戦していたウマ娘の何割かは、顔が青褪めていました」
必死に走るスカーレットの後方、一バ身開いて走るテイオーの顔は、笑っていた。……いつもの快活で見るものに元気を与える笑顔ではない。獰猛に、燃えるように、歯を剥き出しにして笑っている。
「スカーレットさん、殺されるかと思ったと言ってましたものね」
実際のところ、テイオーにそんなつもりは欠片もなかったらしい。ただただ走れることが楽しくて、スカーレットという強敵の速さが嬉しくて、全力で挑んでいたら、ああなったと当人が言っていた。
「GⅡなんて弱い者イジメと見られかねないレースに出て、もし負けるようなことがあれば評判は地に落ちる。だが、今のテイオーにそんな雑音は一切意味なかったようだな。肉体の強さを得たことで精神が盤石になったのではなく、なにがあろうと揺らがない精神性を得て、肉体が仕上がったわけだ」
レースの結果がウマ娘に与える影響は大きい。当然、それを意識するが故の緊張や不安があるものなのだが。
「勝ち負けを越えて全身全霊でレースを楽しむ。その在り方そのものが、他のウマ娘たちにプレッシャーを与えていますわね。……めっちゃ先行したくねーですわ」
口調が崩れ始めてるぞ、お嬢様。
「とにかく! 相手が強敵であるからと諦める軟弱者はメジロにも、このチームにもいませんわ! 差してくるというのなら受けて立つ。タイマン真っ向勝負ですわ!」
おお、メジマク姉さん。その意気だ。
「結局それしかないかなぁ。他のウマ娘が上手く堰き止めてくれることに期待してると、こっちが崩れかねない。自分が絶対に前に行かせないって気概で勝つしかないな」
まぁ、前に行かせないという行動がどれだけ意味を持つかも怪しいもんだけどな。
「その表情、やはり他にも懸念点があるのですね」
「懸念というか、スカーレットとのレースで見せたのが全部じゃないだろうなって。走りの力強さに目がいってしまうけど、アレは柔軟性を犠牲にして得たわけじゃないと思うんだよな」
昔から持っていた一番の強みであるソレを、今のところ一度も発揮していない。それでも勝つ辺りが大概やばいけど。
「……バカ正直に私との勝負を受けなくても、前に立たれて邪魔なら、躱すのも可能ということですわね」
力強さと柔軟性を別けて使う必要なんてないからな。
「どちらか一方しか出せないものではありませんものね。組み合わせて使うのが一番強いに決まってますわ」
「抉じ開けるか躱すか、どっちの作戦を取ってくるかという二択を相手に強いて、プレッシャーを掛けることもできるな」
うーん、考えれば考えるほどゲロ吐きたくなる相手である。
「こういうとき、スズカさんは強いですわね。相手がなんであれ関係ないんですもの」
アイツはゲート開いた瞬間に他の競争相手が意識から消えてそうだからな。もう自分の速さしか見てない。それもまた、ある種の揺らがない強さなのだろう。
「という訳でマックイーン君、頑張って逝ってきてくれたまえ」
俺もスタンドから応援してるよ。
「投げやり! 投げやりすぎますわ! 『お前の勝利を信じてるぞ』くらい言ってやる気を上げてくださいませんこと!?」
なんだ、やる気下がってたのか。コンビニで買ってきたシュークリームあるから一緒に食べるか?
「そんな食べ物で機嫌を良くする安い女じゃありませんわ! シュークリームに罪はないのでいただきますけど」
そういう自分の欲望に正直なところ、けっこう好きだよ。
「負けて学べることもある。いまのテイオーは同期どころかトゥインクル・シリーズ全体で見ても屈指の強さを持ったウマ娘だろう。敗北は恥じゃない。……マックイーン、お前なら、そこからなにかを掴みとれるさ」
負けないと断言はできないが、そこで折れないってことは信じてるぞ。
「ふん。テイオーさんに勝って、トレーナーのへっぽこ予測を覆してあげますわ。私が勝ったらスイーツバイキング奢りですわよ!」
ああ、その日の店の売上が赤字になるくらい食っていいぞ。
この後、テイオーにボコられたマックイーンがブチ切れ覚醒してエンド・オブ・スカイ引っ掴んでリベンジかますのが劇場版『ウマれた意味を探すRPG』になります。上映未定です。
この話でなにが言いたいのかというと、いまのテイオーの腕力はフラワーの比ではないということです。