だが、ガチャから出ない彼女たちにも非があるのではなかろうか。
「ファル子、大ピンチだよ~! これいったいどういうことなんですかトレーナーさん!」
ファル子がこの部屋に来るの珍しいな。ユニットの打合せならスズカは居ないぞ?
「打ち合わせどころじゃありません! いきなりスズカちゃんが『逃げきり☆シスターズ』を脱退するって言って私の机に辞表叩きつけて行っちゃったの!」
え、スズカのやつユニット抜けるのか。なんだかんだと楽しそうにやってたから意外だな。
「なに自分は関係ないみたいに言ってるんですか~! どうせトレーナーさんが余計なこと言ったんでしょ!?」
いや俺はあいつのウマドル活動に何か言ったことはないぞ。最近は色々とありすぎて会話もあまりできてないしな。
「え……じゃあ、スズカちゃんは本当にウマドル活動に興味を失っちゃったってこと? そんなどうして」
レースに集中したかったとか?宝塚記念に対する気合いの入り方が傍から見てても少し異常だったからな。そんなに持ち家が欲しいのだろうか。
「いいえ、ウマドルに興味がなくなったわけではありません。むしろ、俄然やる気が湧いてきたと言っていいです」
「スズカちゃん!? ……とテイオーちゃんにライスちゃん? えっと、三人はどういう集まりなんだっけ?」
確かにあんまり見ない組み合わせだな。全然共通項が見当たらない。
「私は『逃げきり☆シスターズ』を脱退しました。そして、今日ここに『差し切り★デストロイヤーズ』の結成を宣言します」
「差し切り★デストロイヤーズ!?」
物騒な名前だなぁ。ファンのハートをデストロイするってことなんだろうか。それに大して差しが得意とも言えないメンバーのような。
「安心してくださいトレーナーさん。刺し斬りとのダブルミーニングなので」
なにを安心すればいいんだよ。辻切り同好会みたいになるじゃねーか。本当にアイドルユニットなのか?
「納得できないよ! 私たち『逃げきり☆シスターズ』は共にウマドルとして輝くことを誓い合ったじゃない! なのにどうして!」
「先に裏切ったのはファル子先輩、あなたの方でしょう。まさかレースに勝利してライブのセンターになるだけじゃなく、トレーナーのセンターにもなろうだなんて。うふふ、本当に驚きました。ユニットのメンバーすら出し抜いて逃げきる算段だったとは。これがファル子先輩お得意の『あぶそりゅーと☆LOVE』なんですね?」
なに言ってるのかさっぱり分からんが、たぶん違うと思うぞ。
「ち、ちがうよスズカちゃん! ファル子の愛は万人に惜しみなく注がれるものであって、特定個人にだけ向いたりしないよ!」
「……ライス、明るい性格で自分を可愛いと思っているピンクの要素を持ったウマ娘は、もうその時点でダメだと思うな。口では仲良しがどうのって言うけど、実際は倫理も常識もないよ。飢えた肉食獣だと思って接した方がいいと思う」
すげぇピンポイントな属性だけど、それはファル子のことでいいんだろうか。それとライス、その目から出してる炎は怖いから消してくれないか。
「トレーナー、前はスカーレットに委員長が好みのウマ娘って答えたらしいね? そしてスぺちゃんにファル子さん……元気で明るい性格な子が好みなんでしょ! だったらどうしてボクはその中に入らないのさ! やっぱりスタイルなの!?」
え、あー、うーん。テイオーはちょっとね……。
「くっ……。やはり男性は機能美よりもデカ盛りとか全部乗せに惹かれるんですね」
「……お兄さまも、やっぱりライスみたいな貧相な娘は好みじゃないよね」
部屋に乗り込んできてユニット結成宣言して落ち込みだすとか、テンションの乱高下が激しいな。
「しかもここに来てアイドルが好きなんてさ。後出しで色々と嗜好をオープンにするのやめてよ! なに目指せばいいのか分からなくて迷走しちゃうじゃん!」
迷走もなにも、俺は自分の嗜好をオープンにしたつもりないからな。……ていうかその話、なんでテイオーたちが知ってるんだよ。
「このふざけた現実をぶち壊す。それが私たち『差し切り★デストロイヤーズ』です。覚悟してください、ファル子先輩。あなたにトレーナーさんのセンターは渡しません!」
「ファル子、宣戦布告されちゃった!? もしかして、このままウマドル戦国時代編が始まっちゃうの~!?」
なんか女児向けのアイドルアニメとかでありそうな展開だな。戦国時代で逃げと言えば高坂昌信とかだろうか。デストロイヤーは……信長?
「それじゃファル子が負けちゃうじゃない! 冷静に分析してないでなんとかしてよ、全部トレーナーさんが悪いんだからね!!」
何で俺が悪いんだよ。スズカが新ユニット結成した理由もよく分かってないのに。
「理由は単純です。ファル子先輩を打ち倒して、私の方がウマドルとしても優れていることを証明するためです」
……なにがそこまでスズカを駆り立てているんだろうか。
「ボクも予想外のとこからライバルが出現してきて立場が危ういんだよね。ここは一度、ぽっとでの連中を一掃して仕切り直しをしないと」
ダートならともかく、芝でファル子がテイオーに抗うのは無理そうだし、そんなに気にしなくてもいいのでは。
「ライスも、自信はないけど可愛さでも負けたくない。お兄さまのために、がんばるぞ、おー」
ライス……お前の可愛さはもう充分、お兄さまにも伝わっていると思うぞ。
「トレーナーさんのハートをゲットしたいのは分かるけど、そのためにウマドルを利用するなんてダメだよっ! ライブは応援してくれるファンのことを思って、ファル子たちがキラキラするための場所なんだから!」
俺のハートって、そもそもウマドルやってるウマ娘が好きなわけじゃないんだけど。
「……そうなんですか? なら、何故ファル子先輩の名前を挙げたんです。もしかして単にビジュアルが好みなんですか?」
「やだ~、トレーナーさんてばそうなの? でも、ゴメンね☆ ファル子はファンの皆のものだから、独り占めはダ・メ・だ・ゾ☆ ……冗談だから二人ともそんな殺気立った目でこっちを見ないで、お願い」
ビジュアルはまぁ好きだけど特別ってことはないな。
「だ、だったらファル子さんのどこがいいのさ! ウマドル要素抜いたら没個性的じゃん!」
「テイオーちゃん、その言いぐさはひどいよ!?」
うーん、あんまり言いたくないんだけど、このままじゃ引き下がりそうにないなぁ。
「俺はさ、泥に塗れてるウマ娘の方が好きなんだよ。無理無茶無謀って言われるような目標に向かって、足掻いて藻掻いて這い蹲っても進んでるようなやつ。ファル子が大きな舞台のセンターに立つって芝に挑戦してる時なんて最高だったなぁ」
その泥に塗れた中でキラキラ光るものに、どうしようもなく惹かれてしまうんだよな。
「だ、だったらボクなんて無敗の七冠目指してるんだよ! これかなり無茶な目標だし、いい感じじゃないかな!?」
今のお前は泥に塗れて進むというよりは高い空に向かって飛んでる感じだからなぁ。輝きが強すぎて、目が灼かれそうで直視できん。スズカも似たようなもんだな。
「うそでしょ……もしかして菊花賞勝たないのが正解だったの? いやでもワザと負けるとか論外だし、どうすればよかったの?」
「うそでしょ……トレーナーさんのおかげで大復活できたのにそれが敗因なの? え、これどうしたらよかったの?」
「ふ、ふたりとも元気だして。ライスはそのキラキラがたくさん努力して手に入れたものだって知ってるよ。きっとトレーナーさんも分かってくれてるから」
もちろん分かってはいるけどな。ほら、これ趣味嗜好の話だから。
「分かりました。『差し切り★デストロイヤーズ』は解散します」
……結成から解散まで五分てところか?
「そしてファル子先輩、ダートであなたに勝負を挑みます!!」
「えぇ~!? そ、それはどうなのスズカちゃん」
互いに逃げを得意とするウマ娘だが、ダートならさすがにファル子に軍配があがるだろうな。
「七冠の定義ってよく考えたら厳密には決まってないし、ボクも残りはダートのGⅠに挑戦する!」
なに急に言いだすんだ。ダートの勝利は別計算だろ。
「だって泥に塗れてるのが好きなんでしょ! 雨の日のダートならそうなるじゃん!」
そこまで物理的な話ではないんだが……いや、実際に泥に塗れたウマ娘も好きだわ。
「れ、レースの勝負はもちろん受けるよ。けど、『差し切り★デストロイヤーズ』は解散なんだから、スズカちゃんはこっちに戻ってきてくれるよね?」
「お断りします。私とファル子先輩は不倶戴天の敵同士。最後に立っているのはどちらか一方のみです。後任にはバクシンオーさんでも入れておいてください」
……俺はウマドルをやらせるならフラワーを後任に推すけど、逃げじゃないとダメなんだっけ。
天井までに星3が一回(会長三人目)ってうせやろ??
非常に攻略が面倒なトレーナーですが、ネイチャやヘイロー、芝ファル子などを担当した場合はチョロインと化します。折れてたときのスズカとテイオーもワンチャンあった。今チーム内で一番可能性があるのは、マックイーンが繋靭帯炎発症して心がへし折れるパターンですが、特にそんなこともなく元気に勝つのでやっぱりダメです。