ウマれた意味を探すRPG   作:ゆーり

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感想返信できてなくて申し訳ない。
諸事情により9月上旬くらいまでクッソ忙しくて育成していると時間が足りないのです。


理事長と秘書さん

「じゃじゃーんっ! VRウマレーター!!」

 

 見せたいものがあるから至急体育館に来られたし。

 

 わざわざ校内放送で呼び出されたから来てみれば、変な卵型の機械が鎮座していた。

 

「照覧ッ! このVRマシンを使用すればバーチャル空間で様々な体験ができるのだ! ファンタジー、SF、サイバーパンクなんでもありだ! どうだ、君も使ってみたいだろう!」

 

 バーチャルというと、タキオンが作ったやつの上位機種みたいなもんか。なるほど。

 

「ウマ娘の脚は消耗品。実験的なフォームやトレーニングについてはこれを使って危険性を事前に検証することでリスクを低減するわけですね。斜行の危険性のレクチャーやスタートのタイミングなんかの反復練習にも有用。さらには怪我をして体を動かせないウマ娘のレース勘を錆び付かせないようレース体験もできると」

 

 おいくら万円したのか分からないし、三機じゃ全然足りないだろうが、投資先としては悪くない。むしろ大いにアリだ。

 

 子供理事長などと反論のしようがない揶揄を受けることもあるが、やはり地位役職に見合うだけの才覚を有しているんだな。

 

「……明察ッ! そう、ウマ娘の栄達とトレセン学園の発展! そのためなら我が資産を擲つことを躊躇う道理はない!」

 

 うーむ、素晴らしい志だ。

 こんな子供でも皆のための行動をしているというのに、俺はまだまだ自分のことで手一杯なんだから情けない。

 

「あの、トレーナーさん。そういった理由が含まれていることは否定しませんが、半分くらいは道楽なのであまり褒め過ぎないでくださいね? 調子に乗ってしまうので」

 

 たづなさんの子育て方針は厳しいな。……まぁ、少し厳しいことを言った後、すぐに折れて甘い対応になるんだけど。

 

「否定ッ! 我が行いに一片の曇りなし!」

 

「とまぁこう言ってるので、今回は褒めてあげては? あと理事長、これを今から俺が使ってみてよいので?」

 

 VRシミュレータはタキオンにも貸してもらったことがある。ウマ娘の速度、見ている世界を実体験できたのは凄まじく有意義だった。おかげで俺の走行フォームも形になったからな。

 

 ……ただ、あまりのリアリティに実体の方も走り出してしまい、危うく事故になるところだったので使用禁止にしたのだ。

 

 タキオンが先回りして受け止めてくれたから助かったが、200mくらいは走ってたし、広大なトレセン学園でなければウマ娘か壁に激突していただろう。

 

 ウマレーターは着座して稼働させるみたいだから、流石に走れないし安心だ。

 

「無論ッ! どうだろうか、試運転を兼ねて私と王道ファンタジーや学園青春ストーリーを体験してみない……」

 

「では、晴れで良バ場の芝、次に雨天重バ場のダートから行きましょうか」

 

 極端な設定でバ場の再現度を確認。その後は18人のレース設定で臨場感やNPCのAIレベルを見てみるか。

 

「だから言ったじゃないですか。一緒に遊びたいならトレーニング用途の話は後にして、ストレス解消用の娯楽品だと説明しないと」

 

 実際のレース場を設定して観客数の増減によるラグも確認しておくか。ジュニアだと、見られていることに緊張して力を出し切れないウマ娘も居る。簡単に用意できない環境を手軽に再現できるのは便利だな。

 

「痛恨ッ! たづな~!」

 

「はいはい、少し待っていてくださいね。あの、トレーナーさん、ウマ娘からの視点という意味ではシンボリルドルフさんに試験を頼んでいます。ですので、VRゲームとして不備や不適切な点がないか確認をお願いできませんか? 学生のウマ娘だと楽しむだけになってしまうかもしれないので、大人の方に頼みたいんです」

 

 む、そうなんですね。トレーナーからの評価もあった方が良いとは思いますが。

 

「もちろん、それも必要ですが後日でも問題はありませんから。今日のところは、このドラゴンに攫われた姫を救うRPG『ウマゴンクエスト』を体験してみてください」

 

 ド直球の王道ストーリーですね。というかそれ、ラスボスはドラゴンじゃなくてウマ娘が出てきませんか?

 

「協力ッ! トレーナーが剣の勇者となり、私が魔法で支えるポジションだ。笑いあり涙ありのハートフルな内容になっている」

 

 へー。自分ではゲームなんてやらないけど、ちょっと面白そう。

 

「たづなさんは外でモニタリングですか? なんだか申し訳ないですね」

 

 試運転とは言うが実質遊びみたいなもんだろ。

 

「いえ。私はゴールで攫われた姫役をして待っていますので、カッコよく助けに来てくださいね、トレーナーさん」

 

「なにぃ!? そんな話は聞いてないぞ! 私を差し置いて美味しい役を奪うとは何事かたづな! こういう時は上役に譲るものだろう!」

 

「嫌ですよ。何のために徹夜して超特急で調整したと思っているんですか。モニタリングも並行しますから、これくらいの役得はあって然るべきです」

 

 ワーキャーと二人で騒ぎ出したが、やはり女性というのはお姫様に憧れを抱くものなんだな。

 

「でも姫役がたづなさんだと、俺は勇者として見劣りしてしまいますね」

 

 ただでさえ才色兼備なたづなさんだが、何よりこのヒト、女性かつヒールを履いてるのにとんでもなく脚が速いんだよな。

 

「謙遜なさらないでください。ウマ娘の育成と自身の鍛錬を両立しながらも、チームの実績を挙げ続ける能力。そして、明らかなオーバーワークにも関わらず、全く不調に陥らない肉体の頑健さ。なによりも尊ぶべき才能だと私は思いますよ」

 

 なにやら潤んだ目で見つめられながら、そんなことを言われた。たづなさん程のヒトにベタ褒めされるとコチラも気恥ずかしくなる。

 

「憤慨ッ! 真っ昼間の学内でいい年した大人が甘酸っぱい空気を出すのはやめてもらいたい! トレーナー、さっさとウマレーターに入りたまえ!」

 

 ぷんすこ怒りだした理事長にグイグイと押されてウマレーターに押し込まれた。理事長も子供なのにパワフルなんだよなぁ。

 

「あ、最初から全てプレイしていると時間が足りないのでコマンド『すべてのイベントを短縮』と『未読スキップ』をONにしておきますね」

 

 ゲームを起動する直前、たづなさんからとんでもなくメタなセリフが聞こえてきた。

 

 ――そうしてなんやかんやあって辿り着いた、姫が囚われている竜の根城。

 

 俺と理事長は遂にウマゴンと対峙したのである。

 

「私は勇者役をその辺のヒト男に奪われたことで悪堕ちし、欲深い竜へと変貌してしまったウマ娘『悪ネスデジタル』。私がウマ娘の間に挟まるのを邪魔する物は全て排除する!」

 

 出てきたのは、そんな訳の分からないことを宣うアグネスデジタルだった。特段、竜要素は見当たらない。

 

 ……あれ、本人じゃなくて模したNPCでいいんだよな? 

 挟まるってなに? 

 そもそも此処にはウマ娘お前しか居なくない? 

 

 などなど疑問は多かったが、デジタル(竜)の後方に捕らえられているたづなさんがノリノリでヘルプミーと言っているので戦闘開始。

 

 どうせ出落ちのギャグキャラだろとか思ってたのに戦ってみるとめっちゃ強くて『これ負けイベでは?』と諦めの感情が出てきた。

 

 どうしたものかと考えていると、業を煮やしたらしい理事長とたづなさんが悪ネスデジタルを拳で黙らせてゲームクリアと相成った。

 

 支援役の魔法使いと姫という設定はなんだったのか。

 えらく腰の入った拳から繰り出される重たそうな打撃音が妙に耳に残った。

 

「デュフフ、たとえ私が滅びようとも、ウマ娘の間に挟まりたいという欲望がこの世にある限り、第二第三の悪ネスデジタルが生まれるであろう。束の間の平穏を噛みしめるがいい……グフッ」

 

 消える寸前にそんなことを言っていたが、挟まりたいというのは物理的な話なのだろうか。その行為になんの意味があるのか分からないのだが。

 

「ゲームクリアおめでとうございます、トレーナーさん! さぁ、囚われの姫にキスをして目覚めさせれば感動のフィナーレです!」

 

 それは別の童話では?

 

「不潔ッ! そもそも、たづなは眠っていないだろう! 私の目が黒い内は学園内で斯様な行いは看過せん!」

 

 うがーっ!と理事長が吼えているが流石に冗談の類いだろ。

 

「もちろん冗談ですよ。ただ、昨夜からの激務で疲労とストレスが溜まってるんです。トレーナーさん、リフレッシュのためにも、このあと"学園外"で一緒に食事などいかがですか?」

 

 そうイタズラっぽい笑みを浮かべながらお誘いを掛けてくるたづなさん。

 

「ええ、構いませんよ。速く走るコツをまた聞かせてください」

 

 ヒトの中で最速にならねばウマ娘に勝てるはずもない。たっぷりと速さの秘密を聞き出させてもらうとしよう。




今日は七夕だからお願い事を書くぞい。
完凸たづなさん欲しい。赤テイオーほしい。白黒マックイーンほしい。完凸キタちゃんほしい。
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