同盟上院議事録外伝 自由と利益を尊ぶ国 ファイアザード国民共和国   作:山翁

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ファイアザードマフィア

ファイアザードマフィアとはファイアザード国民共和国内の広域犯罪組織を指した俗称である。
ファイアザードマフィアと呼ばれるが内実は海賊、カルテル、ギャング、三合会、マフィア、ヤクザ等の組織に分かれており、一つの統一された組織ではない。

電子百科事典より


宇宙歴796年 大統領選挙対策本部

宇宙歴796年4月

 

ファイアザード国民共和国

首都フィウメ・ドーロ

ヴェンディドーレ・デ・リーゾ通り エスタ街

 

金高大酒店[最高級ホテル ゴールデンハイ]

 

ホテル上階 チャイナ料理店「金龍」 貴賓室

 

チャイナ文化で装飾を施された貴賓室。

その室内に周りの調度品と調和が保たれる様に、チャイナ風の装飾を施されたTVが壁に付けられ、画面にはニュースキャスターを映し出していた。

 

「7月の大統領選挙・統一議会選挙に向けてFLUF(ファイアザード左派自由統一戦線)※1は大規模な選挙戦を展開しております。現職ベルトランド・クラクシ大統領は支持母体であるFLUFの大会で、左派統一候補ルイゾン・アルベルト・ルーラ・ダ・シルヴァ氏の応援を呼びかけました」

 

「しかし、昨年に発覚した政権の大規模な汚職事件により、FLUF及びルイゾン・ダ・シルヴァ氏に対しての世論の支持は伸び悩み、反対にFLRP(ファイアザード自由革命党)※2が応援するシルヴァーノ・ベルルスコーニ氏の支持率は高く……」

 

 

 

「ベルルスコーニは順調そうだな」

 

ファイアザード製の高級オーダーメイドスーツに身を包んだ黒髪の男が、キャスターのコメントに対しての感想を、蒸された蟹の殻を吐き捨てた後に言い放った。

 

サラディーノ・マランツァーノ。

ファイアザード人を中心にしたマランツァーノ・ファミリーのドン。

 

マランツァーノ・ファミリーは酒の密造、売春、賭博などの非合法ビジネスと食料品輸入の合法ビジネスに携わっている。

 

表の顔は輸入会社の社長。

 

シンジケート−ファイアザードだけではなく、同盟中の有力な犯罪組織が参加する集まり−の中では比較的穏健派に属している。

 

 

「ドン・マランツァーノ、事前の予定通りだ」

 

「ああ、その通りだ。へフェ・スエーニョ、全くもって私達の予定通りだ」

 

ドン・マランツァーノに話しかけたのは、頭から胸にかけて大きな矢十字の入墨をいれている禿頭の大男。

 

ルガール・デ・スエーニョ。

 

麻薬カルテル、ヘルマンダ・デ・ラ・ムエルテのへフェ。

 

同盟全ての麻薬ビジネスに関与していると噂される超武闘派。

 

麻薬で得た豊富な資金を駆使し同盟軍、帝国軍を問わず優秀な軍人を引き抜き、ヘルマンダ・デ・ラ・ムエルテの私設軍を作り上げた。

 

一説には同盟軍情報部傘下の特殊部隊を丸ごと引き抜いたとも噂されている。

 

カルテルのビジネスは麻薬の製造・販売、身代金誘拐、人身売買、違法ビジネスの護衛。

 

表の顔は民間軍事会社の顧問。

 

 

「まあ、今年の7月にある大統領選挙と統一議会選挙で儂らのベルルスコーニが勝ち、FLRPが返り咲く」

 

「しかしなぁ、選挙の後でもちぃとばかしは大人しくしにゃならん。あんの市議会議員上がりのせいで、バーラトと労働者共が煩いて」

 

具がタップリ入った分厚い春巻を旨そうに頰ぼる丸眼鏡の老人。

 

カサイ組の組長、カサイ・イソキチ。

 

カサイ組のビジネスは賭博、みかじめ料、売春、違法金融取引、通貨偽造。

 

鉱物資源輸送等の運輸業を表のビジネスとしている。

 

表の顔は運輸会社の社長。

 

 

「クラクシ大統領の労働関係法案が可決された後は、我が社もやり辛くなりましたよ」

 

身長と額が高い男がカサイ組長の話に乗り、愚痴をこぼした。

 

男の名前はウォーレン・ランドルフ・ハースト。

 

同盟でも指折りのメディア・コングロマリットであるハースト・メディア・コーポレーションの代表。

 

彼はメディアを通じてファイアザードそして自らの利益に結びつく様に、様々な宣伝を行っている。

彼の宣伝によりファイアザードが犯罪帝国の本拠地というより、様々な娯楽を楽しめる巨大観光地として同盟国民に認識されているのは、間違いなくハーストのメディア帝国のお陰である。

 

 

「しかし、流石に国内の労働関係の梃入れは必要だった。あのままでは国民が納得しない。あの糞壺に手を突っ込む奴が必要だった」

 

黒いスーツを着込んだ童顔の男は手元にある紹興酒の古酒で口を湿らせ、ハーストの愚痴に突っ込んだ。

 

リー・チュンクゥオ。

 

三合会・金幇 首領。

 

三合会は密輸、賭博業、麻薬密売、人身売買、売春等の非合法ビジネスを運営している。

 

表の顔はチャイナ料理をメインに扱う飲食グループの代表。

 

このチャイナ料理屋も彼が経営する店だ。

 

 

「労働関係については同意しよう。FLRPでは無理だから仕方なくFLUFを当選させ、労働者から受けの良いクラクシを大統領にしたのだ」

 

「FLRPの体制は刷新した、面倒な労働法案が片付いた。クラクシとFLUFには、そろそろ表舞台から降りてもらおう」

 

「それに昨年の汚職事件、しばらくはFLUFに参加している連中も国民からの支持を得られまい」

 

鹿肉のチャイナ風ローストを肴に赤ワインを嗜む老人が、リー首領の言葉を受け話を始めた。

 

ジュリアーノ・アンドレオッティ。

 

ファイアザード終身上院議員。

 

政界では魔王ジュリアーノと呼ばれている政界のドン。

 

党首であるシルヴァーノ・ベルルスコーニを傀儡とし、党内での実力者として君臨している。

 

「連中の支持が落ちているのは結構な事だ。ジュリアーノ議員、選挙では確実にベルルスコーニとFLRPが勝つのだろう?」

 

ドン・マランツァーノがジュリアーノ議員に訊ねる。

 

「議会工作と選挙運動については安心してくれ、ドン・マランツァーノ」

 

「FLRPの議員に組合、退役兵協会、業界団体などに金をバラ撒き同意を取り付けた。選挙動員も順調だ。農村部や労働者もあんた等の力で大多数はコチラに靡いてる。選挙はコントロール出来とるよ」

 

「その話を聞き安心したよ、ジュリアーノ議員」

 

ドン・マランツァーノはジュリアーノ議員の話を聞いた後に、大盛りの海鮮炒飯を黙々と平らげている、窮屈そうにスーツを着ている大柄の男へ話を振った。

 

「軍部は大丈夫かね、提督」

 

海鮮炒飯を食べてる手を止め、手元に置いてある烏龍茶が入っている碗を手に取り、烏龍茶を飲み干すと碗をテーブルに置き提督が話し始めた。

 

「大統領当選後に軍部での人事異動は行いますが、この6年間で増えた左派の影響力を排除するのは難しいでしょう」

 

「現政権下で重職を務めている左派将官との妥協は必須であると、考えております」

 

ドン・マランツァーノの質問に答えた男はクリメント・イーゴレヴィチ・フタノフ。

 

共和国軍の宇宙軍大将。

そして共和国軍の統合参謀本部副議長を務めている。

 

「妥協?フタノフ提督、妥協とは具体的には何かね?」

 

「ドン・マランツァーノ、例えば免罪です」

 

「皆さんが知っておられる通り、FLUFに参加しているファイアザード行動革命協会は、極左ゲリラFARA(ファイアザード行動革命軍)と結びついております」

 

「一部の左派将官は自らの担当地区においてFARAと癒着しております。FARAが作った麻薬の密輸、密売を黙認する変わりに多額の献金を受けています」

 

「その金で部隊の一部を私兵化、またはFLUFの政治資金へと流用しています」

 

「選挙においてクラクシ大統領及びFLUFが負け、更に免罪が得られない場合、汚職発覚を恐れFARAと組んで武装蜂起を起こす可能性も有り得ると、情報部は睨んでおります」

 

「そこで奴等を免罪にし、爆発を防ぐと?」

 

「はい、免罪にする変わりに退役しては貰いますが。彼等にしてみても、逮捕されるよりはマシでしょう」

 

その答えに、へフェ・スエーニョが疑問の声をあげる。

 

「大人しく免罪程度で麻薬ビジネスから手を引くかな?」

 

「へフェ・スエーニョ、ではどうしろと?更に犬に餌をやれと?」

 

「リベルタ※3で将官連中を逮捕すれば良い」

 

「しかし失敗した際のリスクが……」

 

「リスクを取るべきだ。麻薬ビジネスは提督が思っているより大きく、携わるものに大きな利益をもたらす。今まで得られた利益を失うなら、部隊ごとFARAに寝返るかもしれん」

 

「そうなれば、我々のビジネスにさらなる影響が出るかもしれん。今でも左派の麻薬で、私のビジネスに影響が出ている」

 

「提督。我々の、コミッションのビジネスに影響が出る事の重大性は理解しているたろう?」

 

フタノフ提督はしばらく腕を組み、押し黙った。

 

数分が経ち、フタノフ提督は「分かりました。リベルタに作戦を立案させます」とへフェ・スエーニョに答えた。

 

へフェ・スエーニョは満足そうに何回か頷くと、懐から葉巻を取り出すと悠々と吸い出した。

 

 

「軍は一安心という訳だ」

 

ドン・マランツァーノも提督の回答に満足気に頷くと、視線を私に向け、話しかけてきた。

 

「さて、弁務官殿。今回バーラトでは面白い話を聞けたそうじゃないか。議会の議員諸氏に報告する前に私達に聞かせてくれんかね」

 

私―エルンスト・ツー・ヘルテフェルト―は手に持っていた烏龍茶が入った碗をテーブルに置くと、事前に頭の中で整理していた話を喋りだした。

 

「先ずはルンビーニ船団事故につきまして。この事故自体の影響も大きいですが、問題は同盟全体の労働問題として事故が取り上げられる事です。皆様も良くご理解はされてるとは思いますが、同盟政府がファイアザード国内に首を突っ込む際の常套手段は労働問題と麻薬問題です」

 

「同盟政府の反応は?」

 

すかさずリー首領が突っ込む。

 

「現時点では反応は鈍いです。これは次に報告します、アスターテ関連によるものですが、そちらの対応に同盟政府が引き摺られている事により、相対的にルンビーニ事故への対応優先度が低くなっております」

 

「なら今回は同盟政府は儂らに介入せえへんと?」

 

「はい、サカイ組長。ルンビーニ事故はそもそも同盟政府の受注案件です。批判の矛先が向くのならば先ずはー」

 

「情報交通委員会ということだな?」

 

「その通りです、ジュリアーノ議員」

 

「また船団を運行していた会社ですが、案件を取る際に些か不審な動きが合ったとルンビー二のシンジケート加盟団体よりタレコミが有りました。もちろん直ちに調査しましたが、この会社にシンジケートの手は入っておりません」

 

「移民共とルンビー二のスキャンダルですか。いい酒のアテになりますよ、ジュリアーノ議員」

 

「確かに移民共が火消しで慌てふためく姿は良い肴にはなるな、ハースト代表」

 

「だが小火が大火になると困るのは我々もだ。国民共和党に話を振るべきだろう、ジュリアーノ議員」

 

「リー首領、ならばファイアザードから選出されている下院議員に話を通すか」

 

「下院で取り上げるなら、ファイアザード選出の共和党議員からの議案提案は避けた方が良い。やれトカゲの尻尾切りかと痛くない腹を探られる」

 

「なら何人か間を通して、共和党の非主流派の議員にさせたら良い。トリューニヒトにとって良い点数稼ぎになる」

 

「どうかな、トリューニヒトも現政権にダメージが入る情報に食いつくか?トリューニヒトはアスターテの件で頭がいっぱいだろう」

 

「なら労農連帯党はどうでしょう?」

 

「はっ!奴等とは唾を吐きあう仲だぞ、食いつくものか」

 

 

私は彼等の話を耳に入れながら碗に入った烏龍茶を一口飲んで喉を潤し、話を続けた。

 

「次にアスターテでの帝国軍との戦闘ですが、結果から申しますと動員艦隊の56%を失う大惨敗です」

 

「軍の敗北により、交戦星域におけるミリタリー・バランスは更に帝国優位へと傾きました」

 

「国境付近の安全保障の悪化は確実視されており、8年前のエル・ファシル占領の様な事が起きても可笑しく無い状況です」

 

「また、軍では第13艦隊が新編成されました。これは恐らくイゼルローン絡みであると思われます。アスターテの敗戦をイゼルローン方面で補うつもりかと」

 

「取り敢えず簡単な報告では有りますが以上です。詳細は後程に書面にてお渡し致します」

 

「弁務官殿、報告ありがとう。君の話は何時も私達の耳を楽しませてくる」

 

「そう言って頂きありがとうございます、ドン・マランツァーノ」

 

「さあ、諸君。かたい話も取り敢えず終わりにしよう。リー首領の旨い料理を残してはいかん、食べよじゃないか」

 

 

会食より2時間後

 

 

首都フィウメ・ドーロ

エシリオ通り インペロ街

ヘルテフェルト邸

 

「お帰りなさいませ、若旦那様。旦那様が書斎でお待ちです」

 

「わかった」

 

玄関で出迎えた執事に上着を預け、そのまま書斎へと向かう。

 

書斎に据えてある重厚な木製作りの扉をノックし「エルンストです」と言うと中から、「ああ、入っきてくれ」との声を聞いてから、扉を開けた。

 

「ただいまです、お義父さん」

 

「ああ、お帰り婿殿。バーラトから帰ってきて早々に悪かったね」

 

「そんな事はありませんよ、お義父さん。コミッションへの説明はこの国の弁務官なら、まあ、仕事の一つですから」

 

書斎とは言ってはいるが、半ば義父―カール・ツー・ヘルテフェルト―の趣味の部屋となっている。

 

部屋はそれ程広くはなく、両脇の壁が書架となっており義父の集めた本が入れてある。

 

唯一、書架になっていない面は邸の中庭を見渡せる様に窓が設置されており、その窓際には書斎机の代わりに安楽椅子が2つ、椅子の間には少々大きいサイドテーブルが置かれており、テーブルにチーズやドライフルーツが入った皿と栓が空いた赤ワインの瓶、中身が入ったワイングラスと空のワイングラスが一つずつ置いてあった。

 

2つの安楽椅子のうち、窓から見て右側の安楽椅子に義父は腰掛けていた。

 

私は挨拶を交わしながら、義父の近くまで歩み寄り左側の安楽椅子に腰掛ける。

 

義父が手ずから空いてるワイングラスに赤ワインを注ぐ。

 

ファイアザード・ボンベェント産

宇宙歴786年のピノ・ノワール種ミディアムボディ。

 

ソコソコ当たり年の赤ワインだったはず。

 

軽く飲むには最適だろう。

 

「最近はワインの飲む量ばかり増えとる」

 

「良い事じゃないですか、お義父さん」

 

「それに、体も中々言う事を聞かん」

 

「そんな事は無いですよ、まだまだお義父さんはお若い」

 

「婿殿、自分の体は自分で分かる。それより今日の、コミッションはどうだった?」

 

「詰まらないものでしたよ。それにしても今日のコミッションはなぜ来られなかったのです?招待状は来ていたでしょう?」

 

「なに、体がな。それに酔っぱらいの男の話なら、わざわざ行って聞くこともない」

 

「次期大統領もお義父さんに掛れば、酔っぱらいですか」

 

「ふん、事実だろう。何度、酔った末の失言を揉み消したことがあると思う?数えだしたら手指の本数じゃ、足らんよ」

 

「まあ、確かに」

 

「それでだ、婿殿。弁務官の仕事は何時になったら終わる?早く家業を継いで、そちらに専念して貰いたいのだが」

 

義父の家業。

 

義父は表向き同盟ではソコソコ知られたワイン商だ。

 

しかし、裏側は亡命及び捕虜から帰化した帝国系ファイアザード人の纏め役。

 

帝国系マフィア−グーテカメラーデン−のボス。

 

 

義父の家業の始まりは大親征が終わって直ぐだった。

 

始めたのはファイアザードに亡命したヴォルフ・ツー・ヘルテフェルト男爵。

 

この男の家系は意外に古く帝国開闢まで遡れる。

 

初代当主のベルトホルト・ツー・ヘルテフェルトは銀河連邦時代において有名なワイン会社の代表を務めていた。ある時に国家革新連盟の主催した政治パーティーに参加しルドルフ・フォン・ゴールデンバウムと出会う。

 

その後ベルトホルトは国家革新連盟とルドルフの政治活動を手助けした。

 

帝国成立後は連盟時代の功績を認められ、男爵に任じられる。

 

そのベルトホルトが男爵に任じられた功績というのが、連盟とルドルフの為の金集めだった。

 

財界からの企業献金集めでは中々に活躍したという。

 

しかも、このベルトホルトという男は企業献金の中に自らの違法な活動(脱税、ピンハネなど)で得た資金も混ぜて資金洗浄を行い、幾ばくかの利益を得てたという。

 

抜け目のない男である。

 

その男の子孫がヴォルフ・ツー・ヘルテフェルト。

 

この男は貴族という地位と祖先から続くワイン会社、そして違法ビジネスの手腕をキッチリと受け継いでいた。

 

だが、帝国内における違法ビジネスがコルネリアス1世にバレかけ、お家取り潰しが秒読み段階になりかけた時に、大親征へ志願したらしい。

 

大親征への意気込みは凄く、動員できる全ての艦艇と一族郎党ほぼ全てを連れ、遠征軍へと馳せ参じた。

 

彼曰く「不名誉な噂を戦働きで払拭したく」とコルネリアス1世に述べたそうだ。

 

コルネリアス1世も取り敢えずは従軍を許可した。

 

しかしヴォルフはそもそも武功を立て、身の潔白をアピールする気は無かったのだ。

 

逆に乾坤一擲の大博打に打って出るつもりだった。

 

自由惑星同盟への亡命。

 

お家が取り潰しになる位なら、新天地で生き残りを図る。

 

それこそがヴォルフの目的だった。

 

かくしてヴォルフは自由惑星同盟の構成邦たるファイアザード国民共和国へ亡命を申請し、そして彼の亡命は認められた。

 

大親征後、引き連れた私兵艦隊と輸送船に満載した家財(貴金属、高価値労働者、帝国内における違法ビジネスの取引記録、ワインの原木や育成記録、農園の技術者まで!)を元手に帝国系ファイアザードマフィア−グーテカメラーデン−を作り上げ、組織をファイアザードの有力ファミリーまで育て上げた。

 

今では賭博、密輸、売春、労働組合等のビジネスをファイアザードのみならず同盟中で扱うまで成長した。

 

「あと1期2年ほどしたら、家業を継ぎますよお義父さん」

 

「あと2年か……、まあそれぐらいなら待てるか」

 

義父は何度か頷き納得したようだった。

 

「あー、それで、孫娘のフランツィスカはどうなんだ、元気にやってるか?」

 

「フェザーンで元気にやってますよ」

 

「ああ、フェザーンか。ならば、帝国のヘルテフェルトに預けたか」

 

「ええ、そうです。あちらの流儀を勉強するのも良いかと」

 

「ああ、そうだな。帝国のヘルテフェルトの元ならば仕事を覚えるのも早かろう」

 

帝国のヘルテフェルト。

 

亡命したヴォルフの姉−コンスタンツェ・ツー・ヘルテフェルト−。

 

当時は他家に嫁いでおりヴォルフには付いて行かず帝国へと残り、ヘルテフェルト家が行っていた違法ビジネスを継承したもう一人のヘルテフェルト。

 

彼等はフェザーンが出来てからは、フェザーンを経由しビジネスパートナーとして手を結んでいた。

 

同盟のヘルテフェルトは帝国のヘルテフェルトへ、帝国のヘルテフェルトは同盟のヘルテフェルトへ留学し、双方の流儀を覚えるのが代々の習わしであった。

 

エルンストの娘、フランツィスカも習わしに従い帝国のヘルテフェルトへ留学していた(表向きはフェザーンへの留学)

 

しかし、そろそろフェザーンに戻しても良いかもしれない。

 

弁務官の任期もあと2年で終わり、同盟中を駆けずり回る事も無くなる。

 

落ち着けば娘に会いに行く時間も増えるかもしれない。

 

うん、そうだ。

 

フェザーンに戻そう。

 

今の帝国本土も少しばかりキナ臭い。

 

それならまだフェザーンの方が良いだろ。

 

明日にでも連絡し手続きを進めよう。

 




※1:左派諸派による議会会派 Firezard Leftist United Front(ファイアザード左派自由統一戦線)の略。現職ベルトランド・クラクシの支持母体。
会派に所属している政党:ファイアザード共産党、労働者党、ファイアザード行動革命協会、ファイアザード・トラヴァイユール党が参加。

※2:Firezard Liberal Revolutionary Party(ファイアザード自由革命党)の略。
6年前までは政権与党だった。

※3:ファイアザード空挺特殊作戦群の愛称。
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